チーム名
ここサランは、輸入に頼り切っているため、食料となる肉、野菜は新鮮であればあるだけ価値がある。ちなみに魚は、大きな川が近いため安い。
ハンター組合の依頼も、討伐だけの物はほぼない。
森が遠いため、徒歩では少しずつしかもってかえれない。なので、荷車持ちでなければなかなか骨が折れるのだ。
割高で依頼されているが面倒なので、違う町で遊ぶ金を稼いで、護衛依頼でサランにくる。そして賭博を堪能し、護衛依頼を受けて次の町へ…と言うのがハンターの定番らしい。
私達はと言うと、荷車持ちなもんでせっせと依頼片付けてましたよ……
なんせマリッサ夫人のお願いですからね。
ギャバ嬢…受付嬢のお願いは、他のハンターにも火を付けるんですね。わかります。誰も二児の母だとは思わないでしょう。
まぁ私も上級ハンターになり、その上ガッポリ稼げたことだし、とりあえず良かったのかな?
じーじの家にはあれから何度かお邪魔した。
紙飛行機を飛ばすため、だだっ広い広間の端で食事をとり、終わると競技が始まる不思議な習慣がついてしまったサルバルート公爵家…
私はというと、折り紙の先生である。朧気な記憶を呼び起こし、鶴を知らない皆には白鳥といい、他も何個か伝授した。
賭博場の現経営者であるエリクトールさんに、何故か賭事の相談をされ、ダーツや競馬、トランプの大富豪などを提案してみたが、どうなんだろうか…
「馬の訓練にもなるか…」と、呟いていたので、数年後、競馬場が出来てたりしてな…
何だかんだひと月過ごし、3日後町を出る事になった。
もうすぐ雪が降る季節だからだ。南にいき、仕事のある場所へ。
最後になる公爵家での食事会。
何だか感慨深いもんがある。もう、敬語や丁寧語は姿形もなく、素で喧嘩(主にじーじとヴィリウスと)することすらある程馴染んだ家…。
私と別れるからって泣いてくれるアリエとマーシュ。
また会いにくると約束し、指切りを教えて笑わせた。
皆と握手して別れを惜しむ中、ヴィリウスだけはそっぽ向いてしようとしなかった。
「照れんなよ〜ギルと同い年のくせしてさ〜。くくっ」
「そんなんじゃないよ。」
「ふーん…」
「いくぞ、カナメ。」
「はいはーい。御世話になりました。お元気で。まったね〜!!」
出発当日、やたらとニヤニヤするアルに苛つきつつ、幸子と花子を連れ、メンテナンスついでに改造した荷車を取りに行った。
集合場所の東門に着き、護衛依頼の商隊へ挨拶に行ったギルを待っていた時だ。
「よいしょっと…」
真後ろで声が聞こえて、バッと振り返ると、なんとヴィリウスが乗り込んでいる!
「お前っ…!」
「ハハハハッ!それ!その顔が見たかった!」
アルが心底可笑しそうに言ってきた。
「はぁ?…まさか!」
「…まさか、ヴィリウス様が一緒に来てくれるなんて!きゃあ嬉しいわ!って感じかな?」
「ぶっ!…ヴィリウス様、最高です!」
「ヴィルでいいって話だったでしょ?くくっ」
「そうでしたそうでした。」
「それも。ハンター同士身分もない。これから一緒なんだし、遠慮はなしなし!」
「ちょっと待った!マジで付いてくんの?」
「そうだよ。男前3人も侍らせて幸せもんだね!」
このどや顔殴りたい…
「アホか!…ってか来年から軍に入るっていってたよな?!」
「あぁ…別に急ぎじゃないし、俺優秀だから、世間様見て来いってすぐ許可出たんだ。まぁ正味な所、こっちの方が面白そうだし止めた。」
「て、適当過ぎ…この国の上位貴族って…」
あほか?!
「ま、そうゆうことで、よろしくね!アル、ギル、バカメ!」
「「よろしく(!)」」
「うぜぇ…」
「いいね〜その嫌そうな顔。からかい甲斐あるよ〜ふふっ」
「チッ…負けねぇ…坊ちゃん育ちには負けねぇよ!」
「カナメだって男爵令嬢じゃんか。」
「なんで知ってんだよ!」
「爺様に知らないことはない!ハハハッ」
「うざい。とことんうざい…じーじめ…今度髪の毛抜いてやる!」
「年寄りいじめちゃうの?…ふふ」
「なら、子供の私をいじめんなよ!侮辱罪で拘束の上、荷車にぶち込んでやろう…」
「何?そういう趣味なの?俺、こう見えて攻めるほうなんだけど。」
「…朝から下ネタかよ…あー疲れる。勝手に言ってろ。」
「へいへ〜い。」
ホントコイツ調子良い奴だな…問題児1人追加か…剣は握れるんだろうか?細マッチョのアルより線が細い気がするし…
ま、いいか。舌先の回るコイツは苛っとさせられるが、知恵者が仲間だと心強い。私の目的のヒントをもらえるかもしれないしな。
女たらし感はプンプンするが、私に被害がなければ問題ない。
「ヴィル、よろしくな!」
「うん!御者しっかり頼むよ。」
「…やっぱりお前は上から目線だな」
「…でさ〜前から思ってたんだけど、」
「無視か…」
「チームの名前は付けないのかな?」
「あ〜考えちゃいたけど…」
「カナメも上級ハンターになったんでしょ?付けようよ。」
「そうだな…なにか良い名前はあるか?」
「………」
「なーに、黙ってんのカナメ。なにかない?…入ったばかりの俺が付けるわけにもいかないし。」
「そんな殊勝な性格してねぇだろ…」
「心外だな〜くくっ。じゃあ、珍品珍味とか、奇想天外とか、…珍妙兄弟は?」
「「却下!」」
「…」
当たり前だが、無言で首を振るギルも同意見だ。
「なんでさ〜。こんな珍妙なチームいないと思うよ?ギルは変わり者侯爵家の人間だし、アルは王女の近衛兵試験を途中でやめてハンターしてるし。一番珍妙なのはイベルナ人に間違われて、成人前の男のフりしたカナメだけどね。」
「アルが王女の近衛兵?なにそれ!初耳だ!」
「過去の話。」
「ちなみに、侍女にモテてたって聞いたけど『やめろやめろ!カナメにネタをやるんじゃねーよ!』…くくっ」
「やっぱりそうか。やりまくってたわけね。貞操の危機だわっ……」
「だから、お前にゃ興味ねえって…気持ちわりぃ演技やめろ。」
「アハハハ!」
「…うるさい。依頼中だ。」
「「「ごめん(すまん)」」」
私達は商隊の殿なため、一番狙われ易いのだ。
まだ町を出たばかりだから危険はないが、暢気に騒いでいると反感を買う。
「…で、名前何にするの?」
声のトーンをさげて、ヴィルが再度聞いてくる。
「お前の知る、もうちょい良い名前ないのか?」
「私?…どんな感じがいいんだ?例えば、色とか動物とか、強いとかのイメージでもいい。題を考えてくれ。」
「うーん…」
「やっぱり珍妙だよ珍妙!」
「こう、威圧感のある名前が良いんだって!」
「…威圧感のある…色なら黒…?」
「珍妙だって!」
黒…珍妙…しつこいな珍妙…
連想するアッチでの言葉は…
「くろ、まっくろ、しっこく、ブラック、ダーク、グレイ、シュバルツ…が黒とか灰色。珍妙は…へんじん、へんたい、ばか、あほ、…エキセントリック?げいにん…ピエロ!」
「シュバルツはシュベルドの名に似てるな。」
「ピエロってなに?」
「グレイは言い易い…」
「ピエロは、道化師。人を騙す、詐欺師って意味もあるし、白塗りの顔に笑える化粧して、赤い鼻に赤いや青のチリチリの髪。道端で可笑しな芸をして金を貰う、愉快で珍妙な芸人かな?」
「はい、ピエロ採用!チリチリはここにいるし。」
「だな!赤い鼻にしてやれ!」
「やめろ!ギルのグレイで決定だ!」
「良いじゃん、ピエロのアルがトレードマークで。」
「とれー?グレイピエロ…語呂が悪いな…グレインピエロ…グレイズピエロ…グレイトピエロ…」
「あ!グレイトピエロは、凄い、素晴らしいピエロって意味になるぞ。」
「…ククククッ」
「…ギルが笑ったので採用!グレイトピエロに決定だ。」
「異議あり異議あり!俺をおちょくりたいだけだろ?!」
「まあ、まぁ…私達しか意味わかんねぇんだし、気にすることないって!一緒に丸い赤鼻つけてやるからさ。くくっ」
「…チッ。お前らもピエロってチームなんだからな。ピエロは俺だけじゃねーぞ?」
「そうそう。俺達命も立場も共同だよね。皆赤鼻にしよう!」
「…拒否する」
「ギルは嫌らしい。仲間じゃないらしいよ。」
「ギルが鼻つけたら…ククククッ…ない、ないよ…くくっ…」
「「アハハハハッ!」」
「うるさい!荷車に行け!」
「ごめんなさい。」
「スイマセンデシタ…」
再度の叱咤に、深々と頭を下げる私とヴィルだった。




