じーじとデート
「おはよう!」
女将さんに挨拶して朝飯を食べた。今日の予定を聞くと組合に行ってから自由時間だと。お腹も満腹になったところでいざ出発!
王都の様な外観で、石畳に等間隔で椰子の木っポイのが生えている。これで海があれば言うこと無しのリゾート地だ。
それが次第に露天や喧騒でゴチャゴチャし出すと、見慣れた筋肉の町に変わる。
朝一広場の向こう側に、鷹のマークの組合所が見える。リーンやナハルよりかは断然豪華な建物だ。
組合所に入り、昨日もマジマジと田舎者丸出しで見物していたが、ヤハリ見てしまう。
受付姉ちゃんの露出具合を…
へそまで切れ目の入った黒いニットは、谷間の部分に組合のエンブレムがあり、見せたいのか 見せたくないのかよくわからない…
それに美人ときたら受付で侍る男でも居そうなものだが、そうではなく静かだ。
「あらあら、おはよう。」
ザワザワする組合所で、奥から入り口までそう大きくない声が届き、手招きされた。
「お手紙来てるわよ、ギルバート。」
昨日初めてあったにも関わらず名前を把握しているようだ。親しげに呼び捨てだが、それをああの一言で受け取り、すぐさま離れるギル。
惑わされないのか?あんなウインクされといて…アルも全く興味なさそうなのが遺憾だ。
もしかしたら知人なのか?と、首を捻りながら、ざっと掲示板を見て組合所を出た。
早速ギル達と別れ、町を回ることにした。
うーん…高い!二割三割相場が高い。何故かと聞くと、食料から木材、貴金属を全て仕入れているかららしい。自給自足は出来ない土地なんだそうだ。そういえば建物ばかりで農地は見てないなと思い返した。
ここで安いのは細工関連のもので、一手間加えた装飾家具、アクセサリー、置物など、裕福層向けのものが周りの町より安値で手に入るらしい。
だがしかし、リンゴが1ネルで買えないとは有り得ない町だ!けしからん!
買い物は諦めて観光に切り替えると面白い事がわかった。
大通りの歩道脇に般若のような顔や、蛇などが彫られていて、蛇を辿ると賭博場。竜を辿ると教会。般若のその目の先は領主館だった。
警備兵に警戒されながら、外から華美溢れるコンパクトな城を見ているとゾロゾロ兵士が出てきた。
その後ろに見覚えのある白い頭が見え、とっさに隠れようと辺りを見渡すが、隠れられる筈もなく…
「カ、ナメーーーぃ!」
「はぁ…」
昨日賭博場で会ったじーじが、護衛を引き連れ、小走りで駆け寄ってきた。
「なんじゃなんじゃ、予定より早すぎじゃよ。そないワシに会いたかったんかの?」
含み笑いでご機嫌なじーじとは対称的に、護衛陣は鋭い目で私を舐めるように見ている。
それにニコッと笑みを作り、じーじに向き直して、軽く頭を下げる。
「おはようございます。まさか貴方様が出てくるとは思いませんでした。また日暮れに出直しますので…お邪魔致しました」
と、かかとを返そうとしたら、肩を軽く掴まれた。
「なになに、逃げることもなかろう。屋敷の者に会うつもりじゃったんかの?」
「いえいえ、怖い顔に導かれて来ただけで対した意味はありませんでした。綺麗な領主館に少し見惚れてしまいましたが。」
「ほう、さようか。ワシも退屈しとったんじゃ。老人は朝が早いからのぅ。…ワシとこれから逢い引きなんてどうじゃ?」
「…いや、ご迷惑でしょう。共の方達が心配しておりますよ。」
私が睨まれてるって気づいてるくせに…
「心配などしておらんわ。面倒がっとるだけじゃ。ホッホッホッ」
「主…」
「あい、すまぬ。ほら、知り合いじゃて、警戒せんでええ。で、行かぬか?どこでも案内してやるぞいっ」
「いや、その……」
やいやい言い合ってる内に丸め込まれ、2人の護衛は後ろを歩き、他は遠巻きで護衛するらしく散らばっていった。
「昨日のように話してくれんか?どうも他人行儀で心地悪い。」
護衛居るのにいいのか?ま、いっか。
「…いいよ。じゃあ、どこに連れてってくれるんだ?」
「昼はもう取ったかえ?」
「あ、もうそんな時間?」
ゴーン…ゴーン…ゴーン…
鐘の音がタイミングよく鳴る。
「ワシ行きつけの茶店にまず行こうぞ。」
「…高いんじゃないの?」
「阿呆。ワシが出すに決まっておろうが」
「いやいや、いいよ!晩は出してくれるでしょう?ふふふ」
「それがの、ワシの家になったんじゃ。ワシの夜遊びにこやつが怒りよっての…つい、今日の予定を漏らしてしもたんじゃ。ほんなら、料理長も割り込んできよって、爺のくせに張り切り出すもんじゃから…」
「御爺様、護衛を着けずに行くからです。それにドランも暇なのですよ。御爺様が外でお食べになるから。」
「ん?お孫さん?なんで護衛と同じ服?」
「はじめまして。ベルギリウス=サ『シッシッシッ!まだゆうておらんのじゃ。』…御爺様……はぁ」
「今晩ゆうつもりじゃったんじゃ!ワシはちなみに貴族らしきどこぞのじーじじゃ。よいな?…こちらはカナメ。ちなみにおなごじゃから、失礼のないようにの!」
「はじめまして、カナメです。」
「御爺様が申し訳ありません…よろしくお願い致します。」
「私はベルギリウス様の補佐、ナトールでございます。よろしくお願い致します。」
「お、お願いします。スイマセン、護衛の方と勘違いしてしまいまして…てゆうか、私場違いでしょう!」
「気にするでない。ほれほれ入らんか。」
「ええーー!」
そんなこんなで問答無用に奥の個室に入り、じーじの隣に座らされた。
じーじの前には眉毛が凛々しいベルギリウス。私の目の前には優男っぽいナトール…
「ワシは金しかないからの、民に還元せねばならんのじゃ。代は気にするな。じゃんじゃん食べよ!ホッホッホ」
「わかったよ…もう食いまくってやる!」
もう自棄だ!
目を細めて微笑んでくる三人。なんで警戒しないかな?私剣持ってんのに危機感ないなぁ。
「ギルバートらはどうしたんじゃ?」
「今日は依頼受けないから別々なんだ。だから意味深な石盤探検してたの。ちなみに羽の生えた馬はどこに着くの?」
「役所じゃよ。」
「へぇ〜面白いね。」
「じゃろう?あれは見習い彫刻士の昇格試験なんじゃ。じきに石畳が彫りもんで埋まるじゃろうの!ホッホッホ」
「だから全部、迫力ありすぎなわけか…」
「じゃろう、じゃろう。そいやカナメ…ハンターは辛くはないかえ?」
「ん?全然。私、ハンター向いてると思う。獣の解体とかもう肉屋並みだと思うな!我ながら惚れ惚れするぐらい。ふふふ」
「ホッホッホ、さようか。」
「…お歳をきいても?」
「女性に年を聞くの?『い、いや…』嘘だよ。ふふふ、14歳です。」
「「なっ?!」」
「乳がないわけじゃのう」
「じーじ…さらし巻いてんだよ。邪魔だからな」
「失敬失敬。しかし、邪魔とは世の男が泣くぞ」
「御爺様…」
「私の胸なんかで泣くわけ無いじゃん。そこら中に女は居るんだから。お…きたきたご飯!」
「ん、たくさんたべるんじゃぞ。乳のためにの!」
「乳は関係ないっしょ!…じゃ、遠慮なく。」
「「…………」」
「うま!もっちもち!」
「ここのバンズはうまいじゃろ?挟まれておる、タレがからんだ肉がまたうまい。やらかいしの」
「うん、美味しい。いくらするの?持って帰りたい!」
「いくらじゃったかの?まあ、土産に頼んでやるから気にせず食べなさい。」
「うん。じーじ、ありがと!」
「ホッホッホ」
子供ってやっぱ得だわ〜
「ご馳走様でした!お土産もありがとう。」
「よいよい。しかしそん体に4つもよう入ったのう!ホッホッホ」
「4種類あるんだから食べないと!アハハ」
「ハハハハ」
「そんなに美味しそうに食べられるなら店の方も本望だったでしょうね。ふふふ」
「ナトールさん、こんな小娘ですから敬語はいらないですよ。」
「いえ、普段通りですのでお気になさらず…」
「そうですか…」
「ではゆくかの。」
「では、御爺様お気をつけて。カナメ嬢は夕食まで…」
「はーい。じーじはちゃんと護衛しますから、またあとで。…ナトールさんも、お仕事がんばってください。」
「はい、ありがとうございます。お気をつけて。」
サラン巡りの開始だ!
初めは芸術志向の建造物や像、噴水などをみていたが、絵を見せると言いながら服屋や宝石店に連れ込まれ、何かと貢ごうとするじーじ…
結局手鏡だけ貢がれて、服やなんやは回避に成功した。休憩がてらのジュースの方が嬉しかったりしちゃったり…
しかし元気すぎる爺さんだ…。
しみじみそう感じながら賭博場まで話をしながら向かった。
「そいや、領主館に入るのにこの服でいいの?」
「だから服を買えとゆうたんじゃ。」
「いやいや、じーじの選ぶ服はドレスばっかじゃんか!」
「見てみたかったんじゃもん…」
「もんって…可愛くねぇよ。くくっ」
「服装などきにせんでいい。泥まみれなら風呂に入れて、女もんに着替えさせるんじゃがのう…」
「どんだけ着せたいんだよ…」
「…………」
「そんな顔しても駄目!」
「…生い先短い爺の願いじゃ…」
「じーじが病床に入ったら着てやるよ。まだまだ死にそうにねぇから大丈夫!ハハハハッ」
「頑固者!」
「カーナーメー!」
「あ、アル!」
「ハディル様、少々コイツをお借りします!失礼致します!」
「何だよ〜!?」
首根っこを掴まれ、連行される私…
「私は猫じゃないぞーーー!!」




