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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
五日目。
97/109

06-18 交渉決裂。睦月庵。知念はな。

 放課後になってから一時間も経過してから、ようやく睦月庵は大人たちの事情聴取から解放された。

 教師や警官など、大人たちは睦月のことを恐々とした様子で扱っていたが、それでも訊くべきことは訊きだし、睦月がどういう思考を経てあのような凶行を実行に移したのかを確認した。

 睦月の思考自体は正常であり、なにが異常かといったらこのような手段を選ばなければ勝ち抜けないルールを持つこのゲームが異常なのだ、という認識をどうにか共有することができた。

 その結果としての、釈放である。


 ……スキル以外になんの能もない女子高生が、これから男子やもの凄いスキルを持つ同級生たちと戦って勝ち抜く必要があるっていうのに……。

 手段なんか、選んでいる余裕はない、というのが睦月のスタンスだった。

 現在、睦月のスキルは、最初から与えられている『ファイブセンス』と、昨日、分配された形の『ジャック・ザ・リッパー』、それに、今日、林道鈴から略奪したばかりの『パラライザー』、『アイスエイジ』、『マックススピード』の五種類になる。

 構成的に見ても、なかなかいいバランスになったな、睦月は思った。

 若干、攻撃に特化したスキルが多めであるが、その他に索敵と逃走に便利なスキルも揃っている。

 あと、難点をいえば、防御に重点を置いたスキルが欲しいところであるのだが……。

 その防御に特化したスキルといえば、矢尻知道の『バリヤー』と叶治郎の『リヴェンジャー』の二種類になる。

 新堂零時の『ナイトシールド』も、防御に特化したスキルといえないこともないのだが、あれを奪ったところで睦月にはあまりメリットがない。

『ナイトシールド』は、一番あとに回しても支障はないだろう。

 それ以外にも防御に有利なスキルはあるのかも知れないが、睦月はその存在を知らなかった。

 それでは、矢尻と叶のどちらかから狩ることにしましょうか……と、睦月は思う。

 現在、睦月が持っているスキルを駆使すれば、物理的な攻撃を無効化ないしは反射するこの二人のスキルは、容易く破ることができる。

 睦月は、そう自負していた。

 これまでその二人に手を出さなかったのは、学校という横やりが入りやすい環境に居たからだった。


 二人の居場所は把握していなかったが、睦月は特に心配もしていなかった。

 スキル『ファイブセンス』のおかげで、睦月はすでにクラスメイト全員の体臭を記憶している。

 あまり離れているとその体臭もたどれないのだが、数百メートルから一キロ以内にまで近づけばまず確実にその人物の居場所を特定することができる自信があった。

 そして睦月は、矢尻と叶の自宅について、詳しい住所までは知らなかったが、漠然と「こちらの方向」という程度には把握していた。

 そこまで特定できれば、あとはスキルに任せておけばまず間違いはないのだった。

 その二人のうち、さてどちらから攻めようか……と、睦月は考える。

 矢尻の自宅は確か市街地の中にあったが、叶の自宅は近隣の家との距離が空いている農地にあるという。

 余計な邪魔がはいらなさそうなのは後者であるのだが……それよりも、先に矢尻の方を片づけておくか、と睦月は思う。

 矢尻は確か、『バリヤー』以外にも睦月と同じ『ファイブセンス』も持っていたはずだ。

 あのスキルの有効性に気づく前に取りあげておいた方が、あとのためにもいいかも知れない。


 そんなことをつらつらと考えつつ、睦月は人気のない教室に寄って自分の荷物を取ってから、下校をする。

 まだ時間も早いことだし、一度自宅に帰って荷物を置いてから出直すか……とか帰る途中で考えていると、記憶にある体臭が近づいてきた。

 睦月は反射的にスキル『マックススピード』を起動、その体臭の持ち主から距離を取る。

 その体臭の持ち主、つまりはクラスメイトの一人。

 例の、プレデターだ。

 振り返ると、少し離れた場所に知念はなが立っている。

「あんまり驚いていないようだけど?」

「なんとなく、プレデターの正体はわかっていたから」

 睦月は、そういってから慌ててつけ加えた。

「消去法で」

 実はこの時点で、スキル『ファイブセンス』のおかげで、睦月は裏庭であった西城らと知念とのやり取りもほぼすべて把握していた。

「消去法、か」

 知念は、このやり取りを面白がっている顔つきになった。

「それなら、そういうことにしておこう。

 それで、肝心の用件なんだけど……」

「悪いけど、あなたとは組めない」

 睦月は、即答する。

「他人のことをいえた義理ではないけど、いまいち信用できない」

「正常な判断だと思う」

 知念も、もっともらしい顔をして頷く。

「なんというか……わたしら、似たもの同士じゃない?」

 ともに、不意討ちや奇襲を得意とするタイプだ。

 というか、女子ならば、よほど最初に与えられたスキルに恵まれなければ必然的にそうなるわけだが。

「そういわれても、あまり嬉しくない」

 睦月は、不機嫌な顔をして答えた。

「あなたはどうか知らないけど、わたしはこのゲームに最後まで勝ち残りたいと思っている。

 どんな手を使っても」

「どんな手を使っても、か」

 知念は、空を見あげた。

「そういう動機がある人は、強いよ。

 最後まで勝ち残れるかどうかまではなんともいえないけど、睦月さんもいいところまでいくんじゃないかな?」

「いいところまでいっても、最後まで勝ち残らないと意味はないんだけどね」

 睦月は、目を細めて呟いた。

「それで、用はそれだけ?

 わたし、これから忙しくなるんだけど」

 この町中で、知念が仕掛けてくることを睦月は警戒している。

「いや、それだけ」

 知念は、そういって肩をすくめる。

「交渉は決裂したし、今はまだ、睦月さんと事を構えたくはないし。

 それじゃあ、もう消えるね」

 その言葉の直後に、実際に知念は姿を消した。

 体臭やかすかな足音が、通常の歩行速度で知念がその場から遠ざかっていいくことを確認し、ようやく睦月は全身の力を抜いた。

 多くのスキルを所有し、それに実戦経験も豊富に積んできている知念はなは間違いなく強敵といえる。

 今の睦月が正面から戦ったとしても、勝率は限りなく低かった。


 ……おとなしく引いてくれて、よかった。

 と、睦月は心の底から安堵する。

 いきなり、あんな難易度の高いにぶつからず、最初の数回はもっと与しやすい相手を選ぶことにしよう。

 と、睦月は改めて、そう決意をする。


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