02-04 魔法少女たちと豆鉄砲。
「……なんだっておれは、こんなところでこんなことをやっているんだろう?」
口に出して内膳英知は呟いた。
なぜかといえば、西城沙奈、辺見洋子、夢川明日夢、奥地八枝の四人に連れ込まれたからなのだが、それにしてもこのカラオケ屋に入ってからそろそろ三時間が過ぎようとしている。外ではどっぷりと日が暮れている時刻のはずだ。何度か内線で店からの連絡が来ていたが、そのたびに誰かが速攻で受話器を取ってなにも考えずに、
「延長で!」
と答えて現在に至る。
一応、突如はじまったゲームに勝ち抜くための指針を話し合う、という名目があって集まったはずだったが、内膳を連れ込んだ四人の少女たちは本題をきれいに忘却して歌い、騒ぐことに熱中していた。
J-ポップからアニソン、アイドル曲、ボカロ曲はもとより昭和時代の古い歌謡曲まで、少女たちのレパートリーは幅広く、だからこそ、いつまで経ってもこの宴は終わらなかった。
「なに一人で黄昏てんの、短小くん!」
「なんか暗いよ、短小くん!」
「そうだよ! ノリが悪いよ、短小くん!」
「たまにはないか歌わんかい、短小くん!」
「……いちいち、短小短小つけて連呼するなあ!」
内膳は、叫んだ。
幸い、いくら大声を出しても咎められることがない場所であった。
「あー、もう。
いい加減、遅い時間だしな。
真面目にゲームのことをはなす気がないのなら、おれはもう帰るけど……」
強いていえば、テストプレイ時に取得したスキル『ジャック・ザ・リッパー』を使用して紙を切り続けている奥地八枝だけが、この中で真面目にゲームに取り組んでいるといえる。
その他の連中は、ゲームを口実に遊んでいるだけだった。
「あ、帰るのはいいけど、ここのお代は払っていって!」
西城沙奈が、伝票を内膳の前に差し出す。
「おお。
おれの分、これで十分に足りるはずだ」
内膳は財布から千円札二枚を取り出し、伝票の上に置く。
「……え?
奢ってくんないの?」
「なんでおれがお前らに奢らなけりゃならないんだよ!」
そんなやりとりをしている最中に、
《瀬川太郎のスキル『見取り稽古』が????に奪取されました。》
というアナウンスがその場にいた全員の頭の中に響いた。
「今の、聞こえた?」
「瀬川くん。
見取り稽古っていってた」
「最初の犠牲者だね」
「スキルを奪ったやつの名前が、ノイズ入っていて聞き取れなかったけど……」
五人はお互いの顔を見合わせて、それが幻聴でないことを確認しあう。
「……本当にゲームをはじめちまったやつが、出てきたんだな」
ぽつりと、内膳が呟いた。
彼ら、一年D組の生徒たちは、わけもわからずスキルとルールを押しつけられた身だ。
実をいえば、積極的にゲームに参加しなければならない理由など、なにもなかったりする。特殊な例外は、あるというかいるではあろうが……「なにがなんでもかなえたい願い」などを持っている高校一年生の方が、どちらかといえば少数派だろう。
今、この場でゲームそっちのけで遊んでいた四人の少女たちなどが、そのいい例だ。
大半の生徒たちは、同じようなものだと内膳は思っていた。
つまり、この押しつけられたゲームに対して、あまり真剣に受け止めていない。受け止める必要がない。
それでも……実際にはこうして本気でゲームを開始したクラスメイトが存在したことに、内膳は戦慄にも似た悪寒をおぼえていた。




