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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
五日目。
87/109

06-08 休憩時間の光景。

「なあ、新堂くん」

 次の休み時間に、西城沙名、奥地八枝、辺見洋子、夢川明日夢の四人が新堂零時の席にやって来た。

「わたしら四人、昨日、スキルを奪われているんだけどな」

 四人を代表して、西城が口を開いた。

「……知っている」

 新堂は、頷く。

「このクラスの中で、知らない者はいないだろうな」

「それで、わたしらを新堂くんのスキルで護って欲しいんだけど……」

「断る」

 新堂は即答した。

「そんな必要がない。

 スキルを持っていないということは、誰かに襲われるおそれもないってことだ。

 それともなにか?

 お前ら、スキルを一個も持っていない身で、何か妙なことを企んでいるんじゃないだろうな?」

 そういって新堂が四人の顔を順番に睨みつけると、四人は露骨に視線を泳がせた。


 図星か……と、新堂は呆れる。


「あのなあ」

 新堂は、続けた。

「スキルを奪われたんなら、こんなゲームのことはスッパリ忘れて、元の生活に戻れよ」


 新堂自身は、このゲームに関して、

「ろくでもない!」

 という印象しか持っていない。

 リライターとか名乗るやつらに、いいようにオモチャにされているだけではないか。

 せっかくスキルを失ったのに、自分の意志でゲームに復帰しようとするこの四人の思惑は、新堂にしてみればまったく理解の外にある。

 もちろん、協力するつもりもなかった。


 新堂の意志が硬いと判断したのか、四人組はすぐに引き下がってくれる。

 まったもって、馬鹿馬鹿しい。

 このゲームも、このゲームに踊らされているやつらも……と、新堂は思った。


「……ぴたっと止まってね。

 それで、でもゆっくりと動いていて、自分だけが動けた。

 空気抵抗っていうの? それ、かなり感じたけど……」

 少し離れた場所では、芦辺素直が林道鈴が得た新しいスキルについて聞き取りをしていた。

「……自分だけ高速で動けるスキル、か」

 芦辺は呟く。

 大昔のマンガにあったような、加速装置みたいなものか。

「凄いといえば凄いスキルだけど……」

 と、芦辺は言葉を濁す。

 最近、芦辺は各種のスキルに対して、

「単体で見ると十分に立派なのだが、なにかしらの重要な弱点が隠されている」

 という見方をするようになっていた。

 一見して便利だったり協力だったりするスキルも、なにかしらの理由で実用的ではないことが判明したり、天敵といっていいスキルが存在したりするパターンが多い気がするのだ。

 だから、スキルは単独で使用するよりは、短所や欠点を補うように、複数のスキルを組み合わせて使う方が実際的なのではないか……と、芦辺は考えはじめている。


「いいや、その『マックススピード』は、そのまま林道が持っていて」

 もともと、スキル『シーフ』を持っている林道には、強力な護身用のスキルを持たせようとしていてところである。

 すでに林道が持っていた『アイスエイジ』も十分に強力なスキルなのだが、さらに『マックススピード』を持っていればたいていの状況に対応できる。

 最低でも、逃げ延びることが可能であるはずだった。

 芦辺は林道の『シーフ』には今後も活躍して貰う予定だったし、他の三人の誰かに『マックススピード』を与えるよりは、そのまま林道に持って貰った方が今後のためにも有効な気がした。


「……それで、次の標的なんだが……」

 芦辺は、今後の予定を口にする。

 このまま放置しておいても、芦辺以外の三人は暴走しかねない。

 それに、いつまでも守勢に回っていても、事態が進展しないのだった。

「一応、この四人全員に、攻撃系スキルが行き渡ったところだし……これからしばらくは、攻撃系というよりは特殊系を集めていこう」

 そうした方が、いあざというときに、より、臨機応変に動ける気がした。

 

「……とか、いってるけど……」

 叶治郎が、田所一にはなしかけている。

 芦辺たちはもはや逃げ隠れをする必要もなし、と判断したのか、教室内で堂々と打ち合わせをしている。

 芦辺の席からさほど離れていない田所の席にも、彼らがはなしている内容はだいたい耳に入ってきていた。

「だからどうした」

 田所は、不機嫌そうな声を出す。

「やつらがなにを考え、誰を襲おうともおれには関係ねえ。

 むしろ、危ういのはお前じゃないのか?

 叶……」

 そういって、田所は叶の顔をまじまじと見つめた。

「……『リヴェンジャー』っていったっけ?

 お前のスキルなんて、いかにもあいつらが狙いそうなスキルじゃないのか?」


 スキル『シーフ』を使えば、叶の『リヴェンジャー』を奪うこともできるのではないか?

 なんとなく、田所はそんな風に感じていた。

 実際には、田所は『シーフ』の詳しい発動条件を知らなかったのだが……。

 こういってはなんだが、あらゆる攻撃を跳ね返す叶の『リヴェンジャー』は、防御系のスキルとして隙がなさすぎるのだ。

 その『リヴェンジャー』に対抗できるとすれば、『シーフ』のような癖のある、使用できる局面が限定されるようなスキルであるような気がしてならない。

 今日で、ゲームとやらがはじまって五日目になるわけだが、このゲームを設定したリライターという存在への不信感は田所の中で日増しに大きくなっていった。

 根本的なルールからして、クラス内の相互不信を増幅するような構造になっているので、「リライターという存在の底意地が悪い」ことは、いまさら指摘するまでもないことなのだが……。


「でも、ほら」

 叶はそうっいって、無邪気な笑みを浮かべる。

「おれ、『リヴェンジャー』以外にも、『ランサー』も持っているし!」

「それじゃあ、そのスキルを使ってせいぜい頑張れや」

 田所は、叶の動向に関心がないことを隠そうともしなかった。

「ただ、あいつは……」

 田所は、ちらりと視線を横に走らせ、芦辺のことを見る。

「……意外に、侮れない気がするぞ」


 田所が考えるところによると、結局のところ、どんなスキルを持っていたとしても、「そのスキルを使用する人間が駄目だったら駄目」、なのだ。

 叶の『リヴェンジャー』を警戒することなく自滅した、スキル『ランサー』の元の持ち主であった眞鍋がいい例だった。


 どんなスキルを与えられても、めげずにいい使い道を考え、いざとなれば躊躇なく使ってみせる。

 思考力、判断力、胆力……それに、運。

 そういった諸々の要素が、結局はこのゲームの勝敗を決定づけていくのではないのか?


 田所は、そんなことを思いはじめている。

 強力なスキルを多数集めればそれだけ有利になる、というのはその通りなのだが……それだけでは、まだまだ足りないのだ。


 どんなときも油断をせず、怜悧に判断して、そのときそのときに最上の結果を生むような選択をし続ける人間。

 最後に勝ち残るのは、そんな人間なのではないのか。


 その点……。


 三峰は、駄目だな。


 と、田所はそう直感した。

 三峰は、努力家だし胆力もあるのだが……いかんせん、隙が大きすぎる。


 今朝の騒動で、結局はひとり負けという結果に終わったのも、三峰は相対した相手を侮って、ほかの誰かが乱入してくる可能性を考慮していなかったからだった。

 なまじ、三峰自身に自負や自信があるだけに、この欠点はなかなか改善されないだろう。


 三峰には、決定的に「臆病さ」が欠けている。


 その三峰刹那は、スキル『アイスエイジ』のダメージが抜けきっていないのか、まだ教室には復帰していなかった。


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