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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
五日目。
85/109

06-06 朝の教室。

「……こ……」

 三峰刹那は白い息を吐く。

 スキルがすべて解除されたといっても、一度氷点下まで下がった体温がすぐに回復するというわけでもない。

 事実、三峰の胴着には霜がついたままだし、三峰自身の体もすぐには動かなかった。

 上半身にべったりとついたペイント弾の塗料がすっかり凍りついて、三峰の体温を奪っていく。

 三峰は、白い息を吐きながら、しばらくうずくまった姿勢のまま動けないでいた。

 その横を、ギリギリの時間で登校してきた生徒たちが通り抜けていく。


「……おつかれー」

 新堂零時も、三峰にそう声をかけて三峰の横をすり抜けていった。

 予鈴はすでに鳴っているわけだし、急がなくては始業時間までに教室に入れなくなる。

 遅刻になる。

 新堂自身も、三峰に構いつけている余裕はないのだった。

 

「おつかれー!」

「おつかれー!」

「おつかれー!」

 七重芹香、路地遙、林道鈴もそんなことをいいながら、三峰の横をすり通って去っていく。


「……くっ!」

 三峰は、半ば凍りついていた体を必死になって動かそうとした。

 凍傷にでもなっているのだろうか?

 ごく短い時間に、ごっそりと体力を消耗してしまった実感がある。

 とにかく、体が、思うように動かない。

 三峰が魔法系のスキルをまともに食らったのは、これがはじめてのことであったが……。

 その威力は、予想以上のものだった。

 スキル『アイスエイジ』。

 あらゆるものの温度を、瞬時に低下させるスキル。

 林道がスキルの持ち主になった時点でレベルはリセットされているはずであり、従って現在の『アイスエイジ』はかなり低レベルのはずであったが……それでも、この威力。

 正直……三峰は、魔法系スキルの威力を舐めていた。

 あるいは、「敵の攻撃を食らう前に始末すればいい」程度に軽視していた。

 相手が単独、あるいは少人数であれば、現在の三峰のスキル構成でも問題なく撃破可能だったはずだが……先ほどのように、予期せぬ乱入者が居た場合は、こちらにもそれだけ隙ができる。

 魔法系スキルを舐めていた、というよりも、複数の敵を相手にした場合の連携を、軽視していた。

 たとえ、ひとつひとつのスキルが大したことはないものであったとしても、その組み合わせや連携しだいでは、十分な脅威となり得る。

 そうした認識を、三峰は新たにする。

 いってしまえば、三峰は……。

 自分の強さを過大評価して、戦術面的な考察をおざなりにしてしまったのだ。

 その結果が、現在のていたらくであった。

「……このっ!」

 三峰は、校庭にうずくまったままの姿勢でそう呻き続けた。

「……動けっ!

 動けっ!」


 結局、三峰は教師数名によって保健室に運び込まれ、そこで体を暖め、そのあとシャワー室で体の汚れを落とし……などをして、ようやく人心地がついた。

 もちろん、三峰は一時限目の授業を受けることはできなかった。


「……ということで、三峰くんを倒しそこねました!」

 林道鈴は元気よく芦辺素直に報告をした。

「惜しかったねー」

「もう少し時間があったら、確実にいけたんだけどねー」

 七重と路地も、そんなことをいう。

「……あのねえ」

 芦辺は、ゆっくりと首を左右に振った。

「全然、惜しくない。

 それどころか、話を聞く限り、途中で乱入して来た人たちがいなかったら、まとめてやられていてもおかしくはない状態だったんだけど……」

「えー……」

 三人の少女たちは、不満そうな声を出した。

「……詳しいことは、あとでゆっくり説明しよう」

 芦辺は、がっくりと肩を落とす。

「もうホームルームがはじまるから、一時解散。

 とにかく、これからはくれぐれも、勝手に動かないように」


 そんな四人のやり取りを教室内の生徒たちが興味深そうに見守っていた。

 林道と芦辺が組んでいたのは知られていたが、七重と路地まで連んでいる事実が公然のものとなったのは、これがはじめてのことである。

 とはいえ、今朝の校庭での騒ぎのあとでは、下手に隠しても意味がないわけだが……。


 そうしたやり取りを横目に見ながら、新堂は、

「……芦辺くんも苦労しそうだなあ」

 と、そんな感慨を抱いた。

 特に、七重と路地。

 あの二人は、ろくに考えずに動くからなあ……。


「……ふうっ」

 内膳英知は太いため息をついて自分の席にどっかと腰掛けた。

 朝から、かなりいい運動をしてしまった。

 今になって、どっと疲れを感じる。

「ノリで三峰をやりこめちまったけど……」

 こんな疲れること、滅多にやるもんじゃないな……と、そんなことを考える。

「やあ、短小鉄砲」

 そんな内膳に、声をかけてきた者がいた。

「さっきは、大活躍だったね!」

 振り返ると、西城沙名ら、元魔法少女の四人組が勢ぞろいしている。

「……お前らかよ」

 内膳は、渋い顔になる。

「お前ら、もうスキルを失ったんだから、ゲームには関係ないだろう」

「まあまあ」

 夢川明日夢が、そんなことをいいながら内膳の肩を揉む。

「そう連れないことをいわないで」

「そうそう」

 辺見洋子も揉み手をしながら内膳にはなしかけた。

「内膳くん、わたしらとも何度か共闘した仲じゃない」

「なにを考えているのか知らないが……」

 内膳は、素っ気なくそう答える。

「……おれはお前と、必要以上に仲良くするつもりはないぞ」

 内膳にいわせれば、あのクソッタレなゲームから身を引ける立場であるのなら、素直に遠ざかっておいた方がいいのだ。

 昨日と今朝、立て続けにしんどいプレイをした直後である内膳は、心からそう思った。

「それに、もうホームルームがはじまる。

 さっさと自分の席に帰れ」

 内膳は、疲れた声でそういった。 


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