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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
五日目。
82/109

06-03 目撃者と、乱入者と。 

 加賀姫香と七重芹香、路地遙、林道鈴の三人との決闘を遠巻きにして見守っていた生徒たち。

 その中には、内膳英知も紛れ込んでいた。

 内膳は、この決闘の勝敗についてはあまり興味がなかった。

 が、昨日入手したばかりのスキル『見取り稽古』の試用をしたかったところではあったので、たまたまこの場に居合わせたのは都合がよいと感じている。


 スキル『見取り稽古』は、「実際にそのスキルを使用しているところを目撃しなければ、スキルのコピーができない」という制限があった。

 この決闘を目撃したことによって、内膳は加賀からスキル『マックススピード』を、林道からはスキル『シーフ』をそれぞれにコピーして自分のものとした。

『マックススピード』のレベルは百を越えており、『シーフ』のレベルは三十四となっている。

『マックスピード』に関する付随事項はなかったが、『シーフ』については、「経験値を盗む」、「スキルを盗む」、「強奪する」のみっつの事項が解放されている。

 スキル『シーフ』は、どうやら、内膳が元から持っていたスキル『デリンジャー』と同じく、レベルがあがると機能が増えていくタイプであるらしかった。


 気になるのは……。

 と、内膳は、自分のステータス画面を確認しながら考える。

 ……スキル『見取り稽古』によってコピーしたスキルの、レベルの数字が赤字で表示されていることだ。

 これは、「通常のレベルアップは望めない」ということなのだろうか?

 そう思い、内膳は『見取り稽古』の説明文を改めて読み直す。

 ちゃんと、「『見取り稽古』で取得したスキルはレベルアップできない」という説明が記載されてあった。

 これまで内膳は、スキル『見取り稽古』を過信しないという方針でやって来たため、スキルの説明文もしっかりと点検していなかったのだ。

 そうなると、しかし……と、内膳は思う。

 以外に、使えないスキルだな。

 と、『見取り稽古』について、内膳は判断を下した。

 あのプレデターのように、完全に自分の姿を隠すスキルを持っているのならともかく、そうでなければ、スキルをコピーする条件が意外と厳しい。

 その割には、コピーしたスキルは自力ではレベルアップが図れない。

 つまり、より戦略的な使用法がかなり制限されてしまう。

 さらにいえば、この『見取り稽古』の詳細が周知されてしまえば、当然のことながら、誰もがこのスキルの持ち主の前では自分のスキルを使用しなくなっていく。

 一見有利なようにみえて、時間が経過すれば経過するほど使い出がなくなっていくタイプのスキルといえた。

 まあ、『デリンジャー』とか『シーフ』みたいに、初期段階ではたいしたことはなくても、レベルアップすればそれだけ強力になっていくスキルもあるわけだし、その反対にスタートダッシュだけ有利なスキルがあってもいいのか……と、内膳は思う。

 とりあえず、この『見取り稽古』についてはあまりあてにはせず、たまたま他の生徒がスキルを使用する現場に居合わせたら、遠慮なくコピーをさせて貰う……程度の、軽い使い方をしておく方が無難かも知れないな、と、内膳は結論する。


 もうひとり、この場の人だかりに紛れ込んでいた一年D組の生徒が居る。

 昨日、内膳にスキル『見取り稽古』を譲渡した、知念はなだった。

 知念は、例によってスキル『ぼっち王』を起動させて自分の姿を隠しながら、一連の騒動を見守っていた。

 ……あの、『シーフ』というスキル、使えるなあ。

 というのが、知念の感想だった。

 七重、路地、林道の三人の会話から、あの『シーフ』を起動させるための条件がなかなか厳しいらいい、ということは推測がつくのだが、知念は、その不自由さを上回るメリットを見いだしていた。

 あの『シーフ』は、できるだけ速く欲しい。

 と、知念は思う。

 スキル『見取り稽古』を失った今、安全に他者のスキルを奪うことができるスキルを、知念は切実に欲しいと思った。

 いっそのこと、この場で林道を倒して、奪い取るか。

 そうも思うのだが、周囲を見渡した段階で知念は人混みの中に内膳の姿を見つけ、即座にその思いつきを破棄した。

 七重、路地、林道の三人は、意外に単純な性格をしているから……やつらがどんなに強力なスキルを持っていたとしても、完全に圧倒する自信はあった。

 スキル『ぼっち王』を使ったまま襲えば、あの三人ならなにが起きたのか悟る前にあっけなく倒されることだろう。

 だが……内膳だけは、警戒しなければならない。

 昨日、酷い目にあったばかりだし、知念は、あの内膳の目が届く範囲内では派手な行動を慎もうと改めて決意した。

 そしてすぐに、知念はその決意を下した自分に感謝したくなった。

 ゆらりと胴着姿の三峰刹那が現れ、林道たちに声をかけたのだ。


 朝練が終わってそのままここまで駆けつけたのか……三峰は袴姿で、首にタオルをかけてさえいた。

 その三峰は、七重、路地、林道の三人の近くまで歩いていくと、

「……お前たちが勝ったのか」

 と、そう声をかけた。

「ああ、委員長。

 おはよー」

 七重が、他の二人を庇うようにして、前に進み出る。

「うん。

 鈴ちゃんが、勝った。

 加賀ちゃんからスキルを奪ったよ」

「すると、林道は……これで、最低みっつ以上のスキルを持っていることになるな」

 三峰は、静かな口調で確認してくる。

「最低みっつ以上の」とあえて断りをいれたのは、林道のスキル『シーフ』を使用してスキルを入手した場合、その旨のアナウンスがなされないから……であった。

 あれから、三峰たち他の一年D組の生徒たちが知らないところで、林道が他者のスキルを盗んでいる可能性は否定できなかったわけで……三峰は、あえてこういういいかたをしている。

「確かに、今、みっつのスキルを持っているけど……」

 林道は、まっすぐに三峰の顔を見返して答える。

「……それが、なに?

 委員長には、関係ないと思うけど」

「関係ないということはない」

 三峰は断言する。

「同じクラスの仲間じゃないか。

 林道が、みっつ。あとの二人がふたつずつ……か。

 ……そろそろ、頂くか」

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、三峰の体に、黒い塊が襲いかかる。

 ガン、という大きな音がして、路地のつま先は三峰の体に届く前に、空中で弾かれた。

 まるで……見えない壁に激突したかのように。


「……逃げて!」

 初撃を防がれた路地は、そのまま三峰の前にうずくまる。

「こいつ……やる気だ!」

 そういいながら、路地はスキル『捲土重来』を起動、三峰の体を四方から取り囲むように、地面を盛りあげた。 

「逃げてどうにかなるもんじゃないでしょう!」

 七重は、自分の鞄の中からテニスボールを取り出しながら、叫ぶ。

 今、七重のスキル『ロングショット』のレベルは五百を越えている。

 そのスキルを起動したまま投げつければ、たかがテニスボールでも立派な凶器と化す。

 三峰のスキルは見えない戦車を出すそうだが、今の『ロングショット』の威力なら、その戦車の装甲さえ突破できるかも知れない。

「ここは迎撃一択!」

 路地が、前衛で攪乱を担当。

 少し距離を置いた場所から、七重が支援。

 もともと持っていた『キッカー』と『ロングショット』に加えて、今では、『捲土重来』と『疾風怒濤』のスキルも増えている。

 さらにいえば、二人は実戦経験もそれなりに積んでいた。

 あっけなく三峰に一蹴された初日のテストプレイのときとは、条件がかなり違うのだ。

 七重は、そう判断する。


 しかし……。

 すぐに、路地が『捲土重来』で作った土の壁が、内部から破砕された。

 中から、長大な薙刀を手にした三峰が現れる。

「このままだとあまりにも不公平だから、あえて説明してやる」

 姿を現した三峰は、そういった。

「ぼくの手持ちのスキル、そのうちのひとつである『ランサー』は、レベルアップすると使用可能な武器が増える仕様になっている。。

 そうした武器には、使用者の能力を向上させるための付与効果が与えられており……この薙刀は、身体能力全般の向上、ならびに武芸技能付与だそうだ。

 一種のスーパーマンが、達人並みの技芸を身につけた状態だと思ってもらえれば、まず間違いない」

 

 ……三人が持つスキルすべてを、貰い受ける。

 三峰は、そう宣言する。


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