05-23 それぞれの反応。
《林道鈴のスキル『捲土重来』が路地遙に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『疾風怒濤』が七重芹香に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『ジャック・ザ・リッパー』が睦月庵に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『ファイヤ・スターター』が芦辺素直に移譲されました。》
そのアナウンスを、田所一は自転車の車上で聞いた。
「おっ」
と小さく声に出し、そうか、林道のやつか、とひとりで納得をする。
昨夜、林道が奪ったスキル『シーフ』は、あれでかなり「使える」スキルであったらしい。
しかし、持ち主が変わったスキルから判断すると、今回の相手は例の自称魔法少女たちか……。
それぞれに強力なスキルを持っていたはずだったが、どういう手段を使ったのか、今回の件で一気にスキルを奪われたらしかった。
さらにいうなら、七重や路地、睦月までもが林道になんらかの協力をしているらしい。
その面子が、さらにそれまで自称魔法少女の四人組が持っていたはずのスキルまで新たに獲得したとすると……。
これはまた、ゲームの進行が加速するかな、と、田所は思う。
そういう田所自身は、以前に三峰刹那から貰った『ファイブセンス』を矢尻知道に譲り、今は元から持っていたスキル『ジャック・ザ・リッパー』のみを所有するだけである。
放課後は毎日寄りたいところがあったし、自宅に帰ってからスキル『ジャック・ザ・リッパー』のレベルや熟練度をあげるべく、相応の努力もしているつもりであるが……。
そろそろ、本腰を入れてスキルを狩りにいかなけりゃあなあ……と、田所は思う。
このスキル争奪戦も、今日になっていきなり加速をつけてきた形であるが……この分でいくと、今週末くらいには明暗がはっきりと分かれそうな気がした。
それに乗り遅れないように、明日中にいくつかのスキルを奪っておくか……と、田所はのんびりと考える。
この時点で、田所はあまり危機感をおぼえていなかった。
なんだかんだいって『ジャック・ザ・リッパー』は強力な攻撃力を持つスキルであるし、田所自身もその『ジャック・ザ・リッパー』を使いこなせる自信を持っている。
あの自称魔法少女四人組のように、どんな強力なスキルを持っていたとしても、いざというときに使いこなせなければ宝の持ち腐れになるだかだったが……自分は、違う。
田所は、そう自負している。
《林道鈴のスキル『捲土重来』が路地遙に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『疾風怒濤』が七重芹香に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『ジャック・ザ・リッパー』が睦月庵に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『ファイヤ・スターター』が芦辺素直に移譲されました。》
そのアナウンスを、有坂誠はロードワークの途中で聞いた。
だからといって、特になんの感慨も抱かなかったが。
基本的にこの有坂は、ゲームとやらへの関心が薄い。
直接、自分の身になんらかの災難が降りかかりでもしない限り、自分からなんらかの介入をしようとは思わなかった。
今の有坂にとっては、ゲームなどよりも重要な関心事があるのである。
もっとも、そんな有坂も、自分に危害が加わる可能性があるのならば、躊躇せずに、全力でそれを叩き潰すつもりであったが。
《林道鈴のスキル『捲土重来』が路地遙に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『疾風怒濤』が七重芹香に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『ジャック・ザ・リッパー』が睦月庵に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『ファイヤ・スターター』が芦辺素直に移譲されました。》
そのアナウンスを、知念はなは寮に帰る途中のバスの中で聞いた。
……あ、そ。
と、知念はぼんやりと思う。
移譲した、ということは、林道がどこかよそからそれだけ大量のスキルを奪い取ってきたということを意味する。
自分は、内膳知道ただひとりを相手にしてボロ負けしてきたばかりだっていうのに、もう……。
と、このときの知念の心境は、なかなか複雑であった。
……やっぱり、ひとりっきりで……というのが、無理なんかなあ。
と、知念は思う。
とはいっても、つい先ほど内膳が指摘した通り、知念のスキル『ぼっち王』は、他人と組んだらそれだけで長所の大半を潰してしまう性質を持つスキルでもある。
スキル『ぼっち王』の真価は誰からもその存在を知られないことにあるわけで……。
そういう意味では、強いのか弱いのか、判断に困るスキルでもあった。
いや、確実に長所はあるのだが、それを打ち消してしまいかねない性質もあるというべきか。
とにかく。
現在の知念には、組むべき相手のあてがない。
知念は、男女問わず友人は多い方だったが、無条件に信用でができ、なおかつ、その判断力やスキルの能力にも全幅の信頼をおける相手……とまで絞ると、実質上は「皆無」になってしまう。
結局、自力でコツコツとやっていくしかないのか……と、知念は思った。
内膳との対戦で予想外に消耗を強いられた今の知念は、疲労困憊してしまっている。
物事を突き詰めて考えるような余力がなかった。
やはり、体力面では男子にはかなわないな、と知念は思い、これからはできるだけ長期戦になるのを避け、不意打ちに失敗したら即逃亡のヒット・アンド・アゥエイ戦法を徹底しよう……と、そう思う。
どんな手を使うにせよ、長期戦になればなるほど自分が不利になっていくのは目に見えている。
せっかく、『ぼっち王』という不意打ちに最適なスキルを持っているのだから、それを有効に活用するようにしよう。
路線バスのシートに体重を預けながら、知念はそんなことを考えていた。
《林道鈴のスキル『捲土重来』が路地遙に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『疾風怒濤』が七重芹香に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『ジャック・ザ・リッパー』が睦月庵に移譲されました。》
《林道鈴のスキル『ファイヤ・スターター』が芦辺素直に移譲されました。》
そのアナウンスを、叶治郎はスキル『ランサー』のレベルあげをしちえる最中に聞いた。
幸い、叶の家は農家であり、『ランサー』で出した得物を振り回す場所に不自由はしないのだ。
「……へえ」
と、叶は呟く。
「林道、鈴……か」
そんなにいっぱい、他人に分け与えるくらいにスキルを持っているのなら……たぶん、それだけ強いスキルを持っているんだろう。
叶はそう考え、
「次の標的は、その林道にするかな」
とか、思う。
林道鈴。
一応、同じクラスであるから顔くらいは知っている。
小柄で、なにかとはしっこい動きをする女子だったはずだ。
この叶は、ゲームに勝つこと自体よりも、自分の能力とか判断力でどこまでやれるものか、試してみたいという欲求の方が勝っている。
そのため、他の生徒たちのスキルについても情報も、積極的に収集していなかった。
こちらから挑むにせよ、相手の挑戦を受けるにせよ、すべては運次第……と割り切っている部分もある。
田所に挑もうとして一蹴されたことがあったが、そのこもこの叶の中では、
「しょうがないなー」
程度の軽い扱いで落ち着いている。
勝利への執着はほとんどなく、
「とりあえず、やれるところまでやってみる」
という行き当たりばったりなスタンスを、この叶は持っていた。




