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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
一日目、放課後
7/109

02-02 テストプレイのまとめとルールの考察。新堂零時、頼衣玉世、七重芹香、路地遙

 新堂零時は、倉石市内、国道沿いにあるファミリーレストラン内に来ていた。

 どこか静かな場所ではなしを……といったとき、中央高校からは少し距離があるため、同校の生徒は滅多に来ない穴場である、と、頼衣玉世から薦められたためである。時間帯にもよるが、昼下がりから夕方にかけては比較的客が少なく、ドリンクバーだけで長居もできる、というはなしだった。

 新堂の家は学校を挟んでほとんど反対方向にあるため、この近辺へ来たことがほとんどなかった。


「……で?」

 新堂零時は半眼になって七重芹香と路地遙の二人を見据えた。

「なんでお前ら二人までついてくんの?」

「あれ?

 さっき、相互ボディガード協定結んだじゃん!」

「新堂くん、冷たい!」

「いや、それ……

 おれの方は、承知したおぼえがないんだけどな」

 新堂はげんなりとした顔をして、二人の女子生徒に応じた。

「だいいち、お前らみたいなおっちょこちょいと組んだところで、こっちにあんまりメリットがないような気がするんだよな。

 さっきだって、慌てて突っ込んで勝手に自滅してたし」

「は……はは」

「そりゃ……そうなんだけどね」

 七重芹香と路地遙は慌てて新堂から目をそらした。

「まあ、こいつらはしばらく放置しておいて、っと……」

 新堂は自分のバッグから筆箱とレポート用紙を取り出す。

「頼衣さん。

 とりあえず、今までわかっていることをまとめていこうか?」

「そう……ですね」

 頼衣は、控え目な声で返事をした。

「あ。

 あくまで、協力してくれるつもりなら、ってことだけど」

 なにしろ新堂のスキルには、自分の身を守る方法を持っていない。

 せめて、情報が欲しいところなのだ。

「あ、いえ。

 それは問題ないんですけど……その、皆さん、仲いいなあ、って」

「仲いい?

 これらと、か?」

 新堂が、微妙な表情になる。

「これらだって! うちらこれら扱いされたよ路地ちゃん!」

「泣くな芹香!

 新堂くんはもともと冷たいやつなんだっ!」

 なにかきっかけがあるとすぐに漫才をはじめる二人だった。

「……こんなの相手にして緊張するの、無駄だろ」

「そう……ですか」

「まあ、無駄な会話はここまでにして……。

 テストプレイで一番多くのスキルをゲットしたのは、結局、委員長ってことでいいのかな?」

「あ、いえ。

 そのことなんですが……三峰くんよりもサブスキルが多い人がいました」

「……はぁっ!」

 新堂が、少し大きな声をあげる。

「なんだ、それ……いつの間に……」

 新堂だけではなく、七重や路地も目を丸くしていた。

「どうも、そういうスキルがあったみたいで……」

「誰?」

「どういうスキル?」

「ええっと、スキル名は、『見取り稽古』。

 スキルのユーザーは瀬川くんですね」

「瀬川くん、っていうと……芹香の前の席の、ちょっとぼーっとした感じの子か」

 路地が、そんなことをいう。

「そうそう。

 うらなり瓢箪みたいな下膨れ顔をした男子」

 七重は、そんなことをいいながら頷く。

「お前ら、本人がいないと思っていいたい放題だな……」

 いいながら、新堂はテストプレイがはじまる前に配られたプリントを出した。

「あった。

 瀬川……確かに、スキルは『見取り稽古』で間違いはないな。

 このスキル名から察するに、見るだけで他の人のスキルをコピーする、とか?」

「いえ、見るだけでは駄目で、そのスキルが発動する現場を目撃しなくてはコピーできないみたいです。

 それと、そうやってコピーしたスキルの数には制限がありませんが、一度コピーしたスキルはレベルアップさせることができません」

「……ふむ。

 その程度の制約はあるのね」

 いいながら、新堂はレポート用紙に頼衣の発現をまとめて箇条書きにしていく。

「そうなると、瀬川は、あの場で発動したスキルすべてを取得済み、と考えた方がいいのかな?」

「おそらくは」

 こくこくと、頼衣が頷く。

「すべてをおぼえきれませんでしたが、最後にみたとき、瀬川くんのサブスキルは十以上、ありました」

「なにげに強キャラだな」

「いや、彼の目が届かないところでスキルを使い続ければ、これ以上強くなることもないわけだから……」

 七重と路地は、そんなことを話し合っている。

「というか、そもそも今日のテストプレイという環境が、例外的だったと思うぞ」

 新堂が、指摘する。

「普通に考えたら、あんな敵だらけの場所で一戦交えようとは思わんだろう」

「……あ……」

「それも……そうか」

「でも、そうしたら……」

「周りに誰もいないような場所で、一人きっりになったときが一番危ないってこと?」

「そりゃあ、普段からのことなんじゃないのか?」

 新堂は、少し呆れ顔になる。

「仮にも、お前らも女子の端くれなわけだし」


 それから、クラス全員の名簿とスキル名を記したプリントと四人の記憶をつつきあわせ、なんとか現在のスキル取得表を制作する。


 瀬川太郎

スキル:

 見取り稽古 Lv.12 ◇特殊系

サブスキル(レベルアップの可能性なし):

 チェーンコンボ Lv.42 ◇攻撃系

 デリンジャー Lv.26 ◇攻撃系

 ファイヤ・スターター Lv.24 ◇攻撃系

 アイスエイジ Lv.24 ◇攻撃系

 疾風怒涛 Lv.24 ◇攻撃系

 スカウター Lv.23 ◇支援系

 ナイトシールド Lv.14 ◇支援系

 ジャック・ザ・リッパー Lv.6 ◇攻撃系

 パニックボム Lv.5 ◇攻撃系

 愛の鞭 Lv.4 ◇特殊系

 エアタンク Lv.3 ◇万能系

 捲土重来 Lv.2 ◇特殊系


 三峰刹那

スキル:

 エアタンク Lv.3 ◇攻撃系

サブスキル:

 ランサー Lv.1 ◇攻撃系

 石蹴り遊び Lv.1 ◇特殊系

 ファイブセンス Lv.1 ◇特殊系

 ロングショット Lv.1 ◇攻撃系

 キッカー Lv.1 ◇攻撃系


 木ノ下紬

スキル:

 パニックボム Lv.5 ◇攻撃系

サブスキル:

 トラップメイカー Lv.1 ◇特殊系

 リヴェンジャー Lv.1 ◇特殊系

 チェンジリング Lv.1 ◇特殊系


 有坂誠

スキル:

 チェーンコンボ Lv.42 ◇攻撃系

サブスキル:

 エアタンク Lv.1 ◇万能系


 奥地八枝

スキル:

 ファイヤ・スターター Lv.24 ◇攻撃系

サブスキル:

 ジャック・ザ・リッパー Lv.1 ◇攻撃系


「こんなもんか」

 リストを書き上げたあと、新堂は、いった。

「ただし、見落としている人とかおれたちが気がつかなかった人がいる可能性があるから、これが完全版だとは思わないこと」

「凄いな、新堂くん」

「こんなに手早くまとめられるとは思わなかった」

「……これくらい、誰にもできるだろう」

 新堂は、謙遜ではなくそういった。

「今日の出来事をみんなで思い出していって、誰が誰に倒されたのか順番に思い出していけばいいんだから」

「いや、そういう理屈をきちんと実行できるのが凄いんですよ。

 そのリスト、写メ撮ってもいいかな?」

 そういいながら、七重はスマホを取り出している。

「好きにしろ」

 答えて、新堂は腰を浮かしかける。

「おれ、コーヒー取ってくる」

「いいから、いいから」

 路地が中腰になった新堂の肩を軽く押さえて、新堂のカップを手に取った。

「それくらい、行かせて貰うから」

「お、おう」

 新堂はドリンクバーへむかう路地の背中を不安そうに見守った。

「でも、これ……やはり、瀬川くん以外の人は、奪取したスキルはすべてレベル一に初期化されているんですね」

 頼衣が、指摘する。

「スキルで見たとき、なにかの見間違いじゃないかと思って確認もしてみたんですけど」

「奪取したスキルは、レベルがリセットされる」

 新堂がいった。

「これ、このプリントには書かれていないルールらしいね。

 ゲームバランスのことを考えると、妥当な仕様だとは思うけど……でも、あえてプリントに書いていない、というありが底意地が悪いな」

「実際にスキルを奪取すれば、否が応でもわかるから……では?」

「細かい仕様は体験して確認しろ、か。

 それはそれで、不親切なゲームマスターだ」

 実際には、取説を読まないでゲームを開始する人も多いのだろうが、それと最初から説明をする気がないのとでは、大きな違いがある。


「あの……」

 路地が新堂にコーヒーカップを手渡してから、頼衣が、プリントのある部分を指さして、そんなことをいいだした。

「この、ルールなんですけど。

 いろいろ、気になることがありませんか?」

「うん」

 新堂は頷いて、頼衣に先を即す。

「たとえば?」

「えっと。

 では、順番に。

 まず最初に……」

 前置きをして、頼衣がプリントの内容を音読する。


1.クラスメイトを倒すか、相手の同意を得ることによって相手のスキルを奪うことができます。


「……という項目が、あります。

 この項目に従えば、みんなで話し合って、誰か一人にスキルのすべてを譲渡することが可能なはずですよね?」

「理論的にはな。

 でも、最後に……」

 今度は、新堂が四番目のルールを音読する。


4.ゲームの参加者があまり熱心でない場合は、ペナルティとして追加ルールを課すことがあります。


「こういう項目がわざわざ書かれているということは、このゲームの主催者は、おれたちがガチンコでぶつかり合うことを強く望んでいる、っってことなんじゃないのか?」

「手を抜いたら……なんらかの制裁があるというんですか?」

「制裁かどうかはわからんが、追加ルールというやつでおれたちの言動を縛って、ゲームに熱心になるしかないよう、しむけてくると思う。

 そうでなけりゃあ、こんな項目が存在している意味がない」

「……この項目があるのは、そういう意味の脅しでしたか……」

 頼衣は、軽く眉根を寄せた。

 このゲームの企画と主催をしているリライターという超越的な存在の悪辣さを、いまさらながらに実感しているらしかった。


「わたしとしては、この二番目のルールが気にかかるな」

 そういって、七重が、その項目を読みあげる。


2.攻撃対象はクラスメイトに限ります。

 その他の物体や人物、動物などにスキルによる攻撃を行っても、効果はありません。


「これ、効果はないって書かれているけど……でも、田所の机の天板、なにかで斬りつけたようなあとがなかったか?」

「……これ、『効果がない』、という表現がずいぶん曖昧だよな」

 新堂は、即座に指摘した。

「田所のスキル名は、『ジャック・ザ・リッパー』。

 名前からいっても、なにかを斬り刻むようなスキルだろう」

「そうです。

 田所くんのスキルは、見えない刃物でした。

 間合いの長さがレベルによって変わってくる、っていう」

 スキル『スカウター』のユーザーである頼衣が、即答する。

「見えない刃物、か」

 新堂は、唸る。

「エクスカリバー! とかいいだしたら、某所から怒られるぞ」

 七重が、謎の発言をした。

 そのあと、

「でもさあ。

 それだと……田所、自分の机を斬って、スキルのレベルアップをしたんじゃね?」

 と、指摘してくる。

「……あいつも、なんの成算もなしに、暴発はしないか」

 新堂も、頷く。

「ある程度レベルアップして……といっても、そんなことが可能な時間はごく短かったはずだから、できることはたかがしれていたはずだけど……」

「さっき新堂くんが書き出したリストによると、田所のスキル『ジャック・ザ・リッパー』のスキルは六まであがってたことになるよ」

 今度は路地が、新堂が書いたレポート用紙の該当個所を指さして指摘してくる。

「あのときは、ほとんどの人がレベル一だったはずだから、それだけでも優位にたてると判断したんじゃないかな?」

「だとすれば……短絡的だねえ」

 七重が、ため息をついた。

「スキル同士の相性もあるだろうに」

 ……人が静止するの聞かず、三峰のエアタンクに突っ込んでいったやつがいうなよ……と、新堂は思った。

「とりあえず、この項目の中にある、『効果はありません』という文句は、ブラフとみていいのかな?」

 七重は、そう確認してくる。

「ゲームの勝敗には直接関係しません、だろうな。

 正確にいえば」

 新堂は、七重の推測に賛同する。

「ただし、『ジャック・ザ・リッパー』のような物理攻撃系のスキルを他の物体に使用したとき、レベルがあがって有利になることはありえます……ってところじゃないのか?

 その辺は、完全にスキルによりけり、だろう」

 どんなスキルであれ、レベルが低いよりは高い方が有利になるはずだ。直接交戦できない時間を地道なレベルアップのために費やす、というのも十分に有効な戦術だろう。

 少なくとも、新堂の『ナイトシールド』や頼衣の『スカウター』には、無縁の話題だったが。


「あと、気になったのは、最後の……」


5.その他、わからない点があったら手近な教員に質問してください。


「……という部分ですね。

 これってやはり……」

 ためらいがちに、頼衣がそんなことをいいだす。

「教員全員が、ゲームに関する受け答えをするときだけリライターのスポークスマンになる……って意味になるんじゃないのかなあ」

 新堂は、軽く肩を竦めた。

「なにせ相手は、リライター。

 おれたちが現実だと思っているこの世界を好き勝手に書き換えることができると豪語する、謎の存在だ。

 その程度の芸当は平然とやってのけるだろう」

「……なんなの? やつら?」

 路地が、憮然とした声を出す。

「好き勝手やってくれちゃって」

「知らんよ」

 新堂も、憮然とした声で答える。

「おれたちなんかでは到底全容を理解できないような存在であることは確かだろう」

「娯楽と実験、だったっけ?

 このゲームの目的」

 七重が、露骨に不機嫌な声を出す。

「さしずめ、あたしらはモルモット兼競走馬ってところか?

 どっちにしろ、やつらにしてみれば下等動物をイジって遊んでいるようなもんなんだろうな。

 胸くそ悪い」

「文句をいいたければ、最後までゲームに勝ち残るんだな」

 新堂は、静かな声でそう指摘した。

「優勝者は、なんでもひとつ、願いを叶えてくれるそうだ。

 お前らを思うさまタコ殴りしたい、ってお願いをしたら、案外、すんなり叶えてくれるかもしれないぞ」

 リライターと名乗る存在に、殴ることができるような実体があるとすれば、だが……と、新堂は心中でつけ加えた。

「いいなあ、それ。

 わたしが最後まで勝ち残ったら、そういうお願いにしよう」

 七重は無邪気にそういって、笑った。

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