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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
四日目
67/109

05-13 見えない戦車と豆鉄砲。

 内膳英知は「鷺沢公園前」という停車場でバスを降りた。

 自宅最寄りの停車場のかなり手前であったが、実際に居るのか居ないのかはっきりとしない追跡者の有無を検証するには、この場所が都合いい。

 この公園はかなり広く、内部に小さくなだからかな丘や市立図書館などもあり、歩道以外の場所にはびっしりと植林されている。

 内膳が途中下車をして立ち寄ったとしても不自然ではない場所であったし、なにより、人通りが多かった。

 公園内には、案の定、いつもの通り、リードを引いて犬の散歩をしている人や、ジョギングをしている人、小さな子どもを連れた若い母親などが散策をしている。

 そうした様子を確認しながら、内膳は丘の上へと歩いていく。

 その公園の一番高くなっている場所には、かなり大きな噴水が設えてあるのだ。

 冬の寒い盛りには動作を停止している期間もあるようだが、五月中旬である現在、その噴水は盛大に水しぶきをあげているはずだった。

 内膳は、早足にならないように気をつけながら、丘を登る。

 市立図書館は、ちょうど丘を挟んで反対側に位置しているので、もし追跡者が居るのだとすれば、そこが目的であると誤認して欲しかった。

 少し歩くと、すぐに目当ての噴水が見えてきた。

 予想した通り、盛大に水しぶきをあげている。


 ……よし。


 と、そう思い、内膳は敏捷な動作でスキル『デリンジャー』を発動させ、両手に単発拳銃を出現させる。

 すぐうしろから、

「あっ!」

 と驚きの声があがったような気がしたが、それにはかまわずに、噴水にむけて拳銃をぶっ放した。


 スキル『デリンジャー』で出現する拳銃は、単発の上、口径も小さい。

 従って、少し距離を置くと途端に威力が減衰して実用的な破壊力は期待できなくなる……という、欠点があった。 

 しかし、その欠点も、標的となる物体とスキルの使用者である内膳との距離が十メートル以内という短距離であれば、ほとんど問題にならない。

 内膳自身がこれまでの経験から、拳銃の扱いに慣れていたことも手伝って、立て続けに発射した銃弾は、見事に狙っていた場所に命中し……噴水の基部にある、金属管を破壊した。


 内膳が経っていた方向に、大量の水がむかってくる。

 内膳は、その水がかかる前に、敏捷な動作で大きく横に跳躍して避けた。

 突如あがった銃声に、何事かと立ち止まっていた人たちが、悲鳴をあげて逃げまどいはじめる。

 そして……内膳のすぐうしろを歩いていた、姿が見えない追跡者に、まともに水が降り注いだ。


 駆け出しながら、内膳は確認する。

 居た。

 降り注ぐ水の中、不自然にぽっかりと開いた空間。

 その居るはずの人物は認識できないのだが、そこに何者かが居るはずだ……という事実は、もはや疑いようがない。

 内膳は、新たにスキルで拳銃を出現させて、その銃口を「水の中のなにもない空間」にむけて引き金を引く。

 スキル『デリンジャー』によって出現する拳銃はあくまで単発なのだが、立て続けに拳銃を出現させて発射すれば、ある程度の連射は可能であった。


「……ちょっ!」

 憤りを含み、抗議するような声が内膳の耳に入った。

 女の声だった。

 構わず、内膳は立て続けに手の中に拳銃を出現させては、それを発射する。

 大量のペイント弾が、姿なき追跡者に降り注いだ。

 まずは、相手の姿を視認できるようにする。

 ……というのが、内膳が立てた作戦の第一段階なのであった。


 こいつ、手強い!

 と、知念はなはそう思った。

 知念は、内膳が銃口をこちらにむけた瞬間にスキル『エアタンク』を発動する。

 身を守るための判断……というより、以前、直接あのペイント弾を受けた経験からの忌避感覚により、とっさに『エアタンク』を出現させて、ペイント弾が直撃するのを防いだ……というのが、実状に近かった。

『エアタンク』の見えない装甲に、立て続けにカラフルな塗装が施される。


 ……おお。

 と、内膳は内心で感嘆の声をあげながら、ペイント弾によって鮮明になった『エアタンク』の形状をざっと確認し、すぐに踵を返して駆け出す。

 戦車だ。

 見えない戦車だ。

 と、内膳は、思った。

 ということは、あのプレデターの噂は本当だったのか。

 プレデターー。

 一番最初に、瀬川のスキル『見取り稽古』を奪ったとかいうやつ。

 噂通り、そいつは、「見えない敵」であったわけだ。

 だが、その「見えない」というアドバンテージも……今となっては、失われたわけだが。

 歩道を横切り、植林された木立の中に身を隠しながら、内膳はそう思う。

 さて、そのプレデターは、その事態にどう反応してくれるかな……とか、思いながら。


 ……やられたな、と、知念は諦観とともにそんなことを思っていた。

 今の知念は、スキル『エアタンク』によって出現させた見えない戦車のシートに座ている状態だった。

 そしての、その戦車の「見えない」というアドバンテージは、内膳が放ったペイント弾によって潰されている。

 この『エアタンク』によって出現する戦車が意外に小さなものであるということを、今の知念は知っている。

 事実、こうしている今も、外部装甲がペイント弾によってかなり塗り潰され、視界がすっかり悪くなっていることも手伝って、かなり窮屈な気持ちになっていた。

 事実、その戦車は対戦車戦というよりは歩兵支援を目的に半世紀以上も前に旧帝国軍により開発された、「九七式中戦車 チハ」と呼ばれるかなり小型な車両であった。

 ペイント弾によって姿を露わにした『エアタンク』は、意外に小さな砲台と主砲、車両などを衆目に晒してしまっている。

 ……これでも、人間が相手なら無敵に近い強さを誇るはずなんだが……。

 と、知念は考える。

 そうして考え事をしている間にも、何度かペイント弾が命中して、『エアタンク』の視認性を高めていった。

 どうやら内膳は、この『エアタンク』を目の当たりにしても、戦意を喪失していないようだった。


 まだかなー……とか思いながら、内膳は木のうしろに身を隠しながら、ペイント弾を放っていた。

 スキル『エアタンク』の戦車が、予想していたよりは小さく迫力がない姿だったのは意外ではあったが、だからといって油断するつもりはない。

 いくら小さくてもあれは戦車。

 主砲でやれれればひとたまりもないし、そうでなくとも機銃がある。

 あの機銃は、内膳自身の『デリンジャー』の何十倍もの破壊力を秘めているはずだった。

 見えない戦車が見えるようになったとはいえ、圧倒的な戦力差はあまり変わっていない、ともいえる。

 ではなぜ、ここに至っても内膳は敵を攻撃することをやめていないのか?

 それは……。

「もう少しで、レベルアップすると思うんだがなあ」

 そんなことを呟きながら、内膳は自分のステータス画面をチェックしていた。

 現在の内膳のスキル『デリンジャー』のレベルは、二十九。

 これまで、レベルが十あがるごとになんらかの特殊弾頭が追加されてきたから、今回もまた攻撃手段が増えることになる。

 レベル十のときが、制圧用のゴム弾頭だった。

 レベル二十のときが、現在使用中のペイント弾。

 そろそろ、もっと殺傷能力が高い弾頭が来てもいい頃合いだと思うのだが……。


『エアタンク』の戦車の中に籠もっているプレデターは、現在の状況をどう打開するべきか決めかねているのか、動きらしい動きがなかった。

 やつが本格的に動き出す前に、どうにかレベルアップしてくれないかな……とか思いながら、内膳はペイント弾を発射する。


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