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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
四日目
62/109

05-08 睦月庵の疑問。

 おかしい。


 と、睦月庵はそう思う。

 教室内に居る生徒たちの人数と、実際に感じることができる気配の数とが、一致していない。

 気配、とはいうものの、スキル『ファイブセンス』に慣れてきている睦月にとっては、五感すべてで感じることができるかなり具体的な痕跡になる。

 特に体臭は、睦月にしてみれば誤魔化しようがない。


 具体的にいうと、昨日は感じなかった体臭が、今日の二時限目、つまり一年D組本来の使っていた教室に戻ってきてから、いきなり増えていた。

 そのくせ、その増えた体重が具体的にどの生徒のものなのかは、まるで検討がつかないのだ。


 座敷ぼっこじゃあるまいし、いつの間にか生徒の数が増えていて、しかし具体的に誰が増えているのかは指摘できない、という状態なのである。 

 異常だ、と、睦月は思う。

 そう思った睦月は、まず最初にスキル『スカウター』の持ち主である頼衣玉世に確認をしてみた。


「……昨日までとは変わったスキルを持っている、人?」

 睦月から唐突に声をかけられた形になる頼衣は、そういって首を傾げた。

「どうかな?

 特に、おかしなことには気がつかなかったけど……」

「そっかぁー」

 睦月は嘆息した。

「なんかおかしなことがあれば、真っ先に頼衣さんが気づくんじゃないかなあ、って思ったんだけど……」

「それは、あれじゃないか」

 頼衣の隣の席の新堂零時が、会話に混ざってきた。

「一番最初に、瀬川からスキルを奪ったやつ。

 あいつについては、アナウンスもノイズ混じりで名前が聞き取れなかったくらいだし、おそらくは自分の姿を隠すようなスキルの持ち主なんじゃないかと……」

「……なにそれ!」

 睦月は、小さく叫ぶ。

「透明人間になるスキルってこと?

 そんなの……」

 ズルい、といいかけて、その言葉を飲み込む。

 そんなことをいいはじめてしまえば……程度の差こそあれ、どんなのスキルも「ズルい」部分は存在する。

「なにと比較するか」という問題でしかなく……結局は、配られたカードで勝負をするしかないのが「このゲームの現実」というやつなのだった。


「……仮に、その、完全に姿を隠すスキルという予想が本当だったとして……」

 睦月は、真剣な顔をして、新堂に問いかけた。

「なにか対策とか、ある?」

「相手の出方次第」

 新堂は、そういって肩をすくめた。

「正直、油断をしたときに背後からどかんと襲われたら、どんな強力なスキルの持ち主だってやられかねないわけだし……。

 ただ、こちらも対処のしようによっては……」

「具体的にいうと?」

「……できるだけ大勢、できれば、クラス全員を巻き込んで、大がかりな罠を仕掛ける……とか?」

 そういって、新堂は首を傾げた。

 所詮、仮定の上に仮定を重ねた、空論でしかない。

「逆にいうと、そこまでしないと対抗できないだろうね」

 新堂は、そう結んだ。

 この時点では、そこまでする必要も特に感じていなかったので、新堂のつもりとして「雑談」の域を出ていなかった。


 三時限目の授業が終わってから、睦月は芦辺素直に呼び出された。

 具体的にいうと、教室から廊下に出ていこうとする芦辺と目が合い、そのときに芦辺が顔を少し動かして、

「あ。

 呼ばれているな」

 と、睦月が芦辺の意図を了解した。

 昨夜のアナウンスによって、林道鈴と芦辺が組んでいることはクラスの全員に知れ渡ってしまったわけだが、睦月についてはその限りではない。

 そこで、昨夜芦辺と軽い打ち合わせをして、睦月と芦辺が繋がっていることはしばらく伏せたままにしておこう、ということになったのだった。


 芦辺は階段を一番上まで登りきり、睦月もそれに従った。

 たいての学校が屋上を閉鎖しているように、この学校でも屋上は生徒たちに解放されていない。

 屋上に出るための扉は鍵がかかった状態で、その前の踊り場はほとんど人がやってこない場所となっている。

「……お前なあ」

 そこで、芦辺は睦月にぼやいた。

「なにか気がついたことは、真っ先にぼくに相談してくれよ。

 隣の席同士なのに、わざわざぼくのうしろを素通りして頼衣や新堂に相談するか?」

「いや」

 憮然とした表情で、睦月は答えた。

「鈴ちゃんはともかく、別にわたしはあんたのこと信用しているわけではないし」

 とりあえず、期間限定の同盟関係を結んでいるのは、睦月にいわせれば「たんなる成り行き」というやつでしかない。

 さらにいえば、「林道鈴があぶなっかしいので、芦辺にいいように使われないように見守る」ため、という隠れた目的もあった。

 その林道鈴の方は、なぜかこの芦辺に対して全幅の信頼を寄せているようであるが……。

「別に信用してくれなくてもいいけど……」

 そういって、芦辺はゆっくり首を横に振った。

「……せめて、気づいた情報は共有してくれ。

 そうでないと、組んでいる意味がない」


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