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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
四日目
55/109

05-01 四日目の朝の風景。 

 ナップザックの中に食料品と水のペットボトルを詰め、それを背負った知念はなは、

「よし」

 とひとこと呟いてから、自室を出た。


 入手したスキルの試用は、昨夜のうちに寮を抜け出して一通り行っている。

 昨日の昼間、知念が寝ている間にどの程度の進展があったのか不明であったから、午前中くらいは様子を見守る予定であったが、それ以降は狩りやすいものからスキルを集めていくつもりだった。

 他人から自分の存在を隠す『ぼっち王』のスキルに加え、相手のスキルについて読みとれる『スカウター』や攻撃能力に秀でたスキルをいくつも所持している知念は、現在の自分の状態にかなりの自信を抱いている。

 姿を隠しながら不意討ちを狙えば、ほとんど相手からスキルを奪うことが可能なはずだ。

 ……かなり特殊なスキルの持ち主以外は。


 一昨日、知念はスキル『見取り稽古』の能力を使って『スカウター』のスキルをコピーしており、そのあと、クラス全員の分のスキルを検分していた。

 警戒をするべき相手に、その必要がない相手。

 それ以外に、どう対処していいのかわからない相手など、スキルの内容は多岐に渡る。

 特に防御力に秀でている矢尻知道の『バリヤー』や叶治郎の『リヴェンジャー』などについてはうまい対処法が思いつかず、しばらくは静観するつもり予定だった。

 この時点で知念は、叶治郎が眞鍋伸吾のスキル『ランサー』を奪ったことを知らない。

 叶と眞鍋の対決があった時刻には、知念は意識を失って深い眠りについてい。

 だから、アナウンスには気づかなかったのだ。


 ともあれ、この知念は、この日から本格的に「スキル狩り」を開始するつもりだった。


 この五日目の朝、知念はなと同じように決意を新たにしていた一年D組の生徒がいる。

 木ノ下紬。

 もともと与えられていたたスキル『パニックボム』の他に、すでにかなりの数のスキルを自分のものにしている女子生徒だった。

 これまでこの木ノ下は、その小心さゆえにこのゲームに対してもかなり消極的に関わって来ていたのだが、昨日、叶治郎が眞鍋のスキルを奪う場面を目撃したことによって奮起することになった。

 あんな悲惨な目にあうくらいなら、自分から誰かのスキルを奪い続ける方がいい。

 ある意味では開き直りに近い心境ではあったのだが……一年D組の他の生徒たちも、程度の差こそあれ、この木ノ下と同じような心境の変化を来している者が多かった。


 そんな雰囲気の中で、また新しい一日がはじまる。

 昨日は七重芹香と路地遥が起こした事件によってかなり騒がしいものになってしまったわけだが、この日の登校風景は比較的穏やかなものだった。

 穏やか、というよりは、いつも通りの、というべきか。

 とにかく、なにも特別なイベントは起こらず、平穏な雰囲気のまま、全校生徒が登校してくる。


 ……昨日だけではなく、一昨日も瑠河の『トラップメイカー』関連でなにかとバタバタしていたんだよな、と、登校中の新堂零時は思い返す。

 その原因となったスキル『トラップメイカー』は、なぜか今では新堂自身のものとなっている。

 その瑠河とは違い、新堂は『トラップメイカー』を自衛以外の目的で使用するつもりはなかったが。

 あるいは、ゲームの決着がつくまで本当の意味で平穏な時間は訪れないのかも知れないが。

 いやだいやだ……と新堂は心中で呟いた。

 こんなゲームがいつまでも続くようなら、かなり気疲れすることなるんだろうな、とも思う。

 まだしも、ゴールデンウィークが終わったあとでよかった。

 こんなゲームをしたまま連休に突入したら、おちおち遊んでも居られない。

 学校が休みであっても、いつ、誰に襲われるのかと不安に思いながら、戦々恐々として過ごさなければならなかったはずだ。

 せっかくの連休がだいなしにならずに済んで、まだしもよかったというべきなのか。

 でも、あんまり長引いても、今度は梅雨に入っちまうしな。

 まあ、このままのペースでいくと、あと一月もすれば、最後の一人が決まると思うけど。

 いや、後半になっていくつれて、有利なやつとそうでないやつの格差がはっきりして、ゲームの進行は加速していくのかな?


 そんなことを考えながら歩いていると、

「新堂くん!」

 と声をかけられた。

 振り返って声の主を確認すると、頼衣玉世がいた。

 この頼衣とは、だいたい同じ時間に登校してくるのか、校門前で顔を合わせることが多い。

「ああ、おはよう」

 とりあえず、新堂はいつものように挨拶をした。

「おはよう」

 頼衣も、挨拶を返してくる。

「今日は、今のところなんにも起きていないみたいだね」

 やはりこの頼衣も、新堂と似たようなことを考えていたようだ。

「いや、なにもないのが一番でしょう」

 もっともらしい顔をして、新堂はそう答える。

「こういう平和なのが、もっと続けばいいんだけど……」

 という言葉をいい終わらないうちに、なにやら大きな物音がした。

「……なに、今の」

 茫然と、新堂は呟く。

「……学校の方だったよね。

 音が少し遠いみたいだけど……」

「その遠い音がここまで聞こえてくるっていうことは……かなり大きな音だってことじゃないか?」

 顔を見合わせてそんなやり取りをしたあと、新堂と頼衣の二人は早足で大きな音がした方向、つまり学校へと急ぎはじめる。


「……む」

 その頃、たまたま昇降口に居合わせた三峰刹那は周囲の惨状を見渡して、短くうめいていた。

「いったい、なにがあったというのだ……」

 下駄箱が半壊して、破片や中に入っていた靴などが、あたりに散らばっている。

 まだ煙が晴れていないので、見通しが悪くて細かく確認できないのだが……物だけではなく、爆風によって倒れた下駄箱の下敷きになった者、破片によって傷ついて出血している者などが無数に居る状況だった。

「痛てぇーよ!」

「誰か! 誰か!」

「救急車だ!

 救急車を呼んでくれ!」

 罵声や怒声、悲鳴などで、周辺はかなり五月蠅いことになっている。

 ちょうど、登校してくる生徒たちでこの昇降口が込み合う時間であったことが災いした。

 かなりの被害が、あった。

 この時点では、まだ正確なところはわからないのだが……軽傷まで含めると、数十人単位の被害者が出ていてもおかしくはない惨状だった。


「これは……お前がやったのか?」

 その爆心地にいた女子生徒に、三峰は声をかけた。

「……木ノ下」

 三峰自身は、自前のスキル『エアタンク』を咄嗟に起動していたため、被害らしい被害は受けていない。

「……あ、あ……」

 射すくめるような三峰の視線を受けて、木ノ下はゆっくりと首を振った。

「ちが……。

 わたし……そういうつもりではなくて……。

 だ、誰かに、いきなり押し倒されたから……」

「……思わず、自分のスキルが発動してしまった、ということか……」

 三峰は木ノ下から視線を逸らせて、軽いため息をついた。

「まあ、そうなんだろうな」

 三峰は、初日に配られたプリントの内容を暗記していた。

 それに、この木ノ下の性格についてもある程度は把握している。

 いや、それ以上に……周囲には、木ノ下と三峰以外の一年D組の生徒の姿が、見あたらなかった。


 こんな状況下では、この木ノ下が無駄に自分のスキル『パニックボム』を暴発させても、なんのメリットもない。

 周囲の状況を把握したあと、三峰は即座にそう判断を下した。


「……では、まずは……」

 この場を片づける手伝いをしてくれ、という三峰の言葉は、別の者が発した言葉によって遮られる。

「……なんだ、これは!」

 振り返ると、新堂零時と頼衣玉世が立っている。

「新堂たちか」

 二人の姿を見て、三峰は頷いた。

「ちょうどよかった。

 詳しい詮索は後回しにして、今はこの場を収めるのを手伝ってくれ」

「救急車は?」

 鋭い語気で、新堂が訊き返してくる。

「もう誰かが呼んでいると思う。

 それよりも、怪我をした人たちの面倒をみてやってくれ。

 応急処置ができれば一番いいんだが……それができなければ、せめて声をかけて落ち着かせてあげてくれ」

 三峰は、再度、木ノ下の方へ顔をむけ、

「……木ノ下もだ。

 協力してくれると、助かる」

 といった。


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