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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
四日目
56/109

05-02 事件の真相。

 ……やばいやばいやばいやばい。


 急ぎ、昇降口から脱出して階段を駆けあがった知念はなは、そんなことを思っていた。

 たった今、木ノ下紬のスキル『パニックボム』の威力を体感してきたばかりである。

 スキル『パニックボム』の威力は、知念の予想を遙かに上回っていた。


 あの爆発力は、すごい。

 狡い……と、そういいたくなるほどの威力だった。

 

 知念は、素直にそう思った。

 すでにスキル『エアタンク』をコピーしていなかったら、知念自身もあの爆発に巻き込まれてどうにかなっていたとことだろう。

 今、あの昇降口は阿鼻叫喚の巷と化しているはずだ。

 知念は改めて、「スキル」という代物の危険性を思い知らされた形だった。


 なぜか誰もいない教室に入ったあと、ようやく知念は深呼吸をして気分を落ち着けた。

 この教室に生徒たちの姿が見えないのは、昨日の叶と眞鍋の決闘によって、学校側が教室の使用を禁止していたからなのだが、この知念はその事件の存在自体知らなかった。


 遠くから、救急車のサイレンが近づいてくる。

 それも、複数。


 ……はは。

 と、知念は自嘲気味に思う。

 今まで、このスキルとスキルをもたらしたリライターという存在について、かなり甘く考えすぎていたのではないだろうか?

 スキルの中には、かなりの殺傷能力を持つものが多数含まれている。

 それに、うまく使用すれば、犯罪行為をし放題なスキルも。

 たとえば、知念自身の『ぼっち王』を使用すれば誰にも気づかれることなくたいていの場所へ進入が可能であって……。

 これは窃盗やある種の性犯罪を行うのにうってつけのスキルである、ということを意味している。

 スキルを与えられた側が、ゲームのみに使用する……という保証は、どこにもないのだった。

 初日に説明においても、その辺のことにはまったく触れておらず、リライターからは特に禁止もされていなかった。


 そんな危険なスキルという代物を、まだ倫理観や価値観が固まっていない十代の集団にポンと渡してしまう、リライターという存在。

 それも、ただ与えるのではなく、お互いに争うようにしむけている。

 悪意の有無までは判断できるところではないのだが……それでも、人間という存在や人間の社会というものを軽視していることだけは、確かであろう。

 あるいは……と、知念は、そうも考える。

 人間の行為や動向について、まるで関心を持っていないか、だ。


 そんなことを考えながら、知念はなは誰もいない教室で動悸が静まるのを待ち続けていた。


 この騒ぎのきっかけは、ごくごく些細な偶然に過ぎなかった。

 その存在を誰にも関知されない知念はなは、混んでいた昇降口で苦労して前進していた。

 それでも、誰にもぶつからずに……というのは無理なはなしで、ときおり、体のどこかが誰かに触れてしまう。

 通常であれば、知念のスキル『ぼっち王』のおかげで、そうした感触も相手にとっては「なかったこと」になって、無視されるのだが……。

 このときばかりは、間が悪かった。


 知念の存在を近くできないある生徒が、背後から、知念の不意をついてぶつかってしまった。

 よろけた知念は、そのまま前方に居た、そこで屈みこんで上履きを取っていた生徒の体につまずいて、倒れる。

 さらに、倒れ込んだ知念の体に足をひっかけて、何人かの生徒が躓いた。

 なにしろ、スキル『ぼっち王』のおかげで、このときの知念は「その場に居ない」ものとして近くされている。

 ないはずの知念の体に躓く者が多かったのは、ある意味では仕方がなかった。

 スキル『ぼっち王』は、必ずしも便利なだけのスキルではないのだ。

 とにかく、そんな騒ぎが起こっている最中に、たまたま木ノ下紬が登校してくる。

 そして、なにかと神経過敏になっている木ノ下は、その騒ぎに巻き込まれ……その結果、恐慌に駆られてスキル『パニックボム』を発動させてしまった。

 ……というのが、さっきの事件の真相だった。


 スキル『パニックボム』が発動したとき、知念自身は地面に伏せた状態でもあったので、その爆風を晒されずに済んだ。

 やばい、と思ったときにはスキル『エアタンク』も起動していたので、知念自身は無傷である。

 しかし……その場に居合わせた生徒たちは、違った。


 スキル『パニックボム』の暴発に巻き込まれて、何メートルも吹っ飛んで壁や床、天井に叩きつけられる生徒たち。

 破砕され、破片と上履き、靴をまき散らす下駄箱。

 それらを体で受け止めて、出血して倒れていく生徒たち。


 そうした情景を、知念ははっきりと目撃してしまった。

 そのおかげで、動転してその場から逃げ去ってしまったわけなのだが……。


 ……なんだよ、これは!

 と、知念は、心中で叫ぶ。

 なんだって、こんなに大勢の人たちが巻き込まれなくっちゃいけないんだ!


 知念はなをはじめとする一年D組の生徒たちだって、その大半はこんなゲームなど望んではいない。

 その意味では、「すでにリライターの気まぐれに巻き込まれている」ともいえるのだが……ゲームに参加していない人たちの安全まで確保されていないというのは、いくらなんでもあんまりな条件なんじゃないだろうか?


 さらにいうのなら……。


 知念は、初日の段階で配布されたプリントをしっかりと読み込んでいたのだが……。

 回復魔法に相当するらしいスキル名は、結局、確認できなかった。


 つまりは……なにかの拍子に死傷でもしてしまえば、ゲームが完了するまでそのまま。


 そういう、無慈悲な仕様なのだ。

 このクソゲームは。


 こんなゲームを用意したリライターと名乗るやつらが、人間の尊厳を認めているわけがない。


 知念はなは、そう確信をする。


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