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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
三日目
37/109

04-10 浜路透理、スキル『石蹴り遊び』。田所一 VS 有坂誠。

 授業中、浜路透理は自分のステータス画面を開き、スキルの詳細を確認する。


能力名: 石蹴り遊び Lv.8 ◇特殊系

『攻撃を物体越しに伝達。

 レベルアップするたびに伝達する物体数が増える』


 このステータス画面は、自分自身にしか認識できず、他人の目には触れないらしかった。

 例外として、頼衣玉世のスキル『スカウター』は他人のスキル名と概要、レベルなどを読みとれるということだが、浜路はあくまで噂話として耳に挟んだだけで本人から直に聞いたわけではない。

 しかし、これはどうすっかなあ……と、浜路は三日前にゲームがはじまった当初から思い続けている。

 使いようによっては大化けするような気もするのだが、現状ではあまりにも使いでがない……という、実に微妙なスキルなのだ。

 それに、浜路はテストプレイ中に他の有象無象と一緒くたに三峰刹那の『エアタンク』に破れており、その結果として三峰も同じ『石蹴り遊び』のスキルを所持している。

 唯一無二という希少価値さえなく、ことによると今では三峰の方がスキル『石蹴り遊び』のレベルをあげ、もっと有効に活用する術を身につけている可能性も大いにあった。


 スキルが微妙なこともあって、浜路のゲームに対するモチベーションは盛りあがらなかった。

 そのおかげでゲーム開始から三日後の今でも、レベルは一桁台。

 昨日の留河狩り騒動といい、始業前の騒ぎといい、さらに眞鍋と叶の決闘といい、あまりこのゲームに深入りする気がない浜路は、

「みんなよくやるなあ」

 と感嘆をするばかりだった。

 かといって、自分のスキルをあっさりと誰かに手渡すのも難しい。

 スキル『石蹴り遊び』と同じような特殊系スキルの持ち主に譲渡してもうまく活用できずに終わりそうだし、かといって、攻撃系スキルの所持者は癖が強いやつが多く、こちらからは声をかけにくい。

 第一、なんでおれがあいつらの手助けをしなければならないのか。

「誰かと組む」

 という選択枝も、同じような理由で却下。


 諸々、検討した結果、結局は、

「自分でやるしかないのか」

 という結論に落ち着くのである。

 基本的に浜路は、このゲームに限らずにすべてのことについて積極性が欠ける性格をしていた。

 自発的に「何かをやりたい!」と思った経験がほとんどなく、周囲の友人たちや大人の意見に反抗することもなく、流されるままにこれまで生きてきた。

 地域ではトップレベルのこの倉石中央の入試を突破できたのも、教師たちがいった通りの学習法を淡々と継続していた結果であった。


 つまり、浜路透理という少年は、一言でいえば極端に個性が薄いのである。


 そんな、自分自身の意見というものを特に持たない浜路がこのようなゲームに巻き込まれた結果、浜路は強い困惑をおぼえることになる。

 なんといっても、これまでに規範としていた処世訓、

「みながやっていることを真似る」

 というのが通用しない。

 なぜならば、このゲームの「みんな」とはすなわち同じ参加者であるクラスメイトということであり、普通なら浜路が規範とすべき「みんな」とはこの場合は正面からぶつかり合う競争相手ばかりなのだった。

 浜路の脳裏では、三日前のゲーム開始時から「どうしよう」、「どうすりゃいいんだ」のフレーズが繰り返されている。

 浜路には、あっさりと他のクラスメイト全員を敵に回して平然としている七重芹香と路地遙の剛胆さはなかった。ルールに則って正々堂々と戦うことを良しとする三峰刹那や、自分の欲望に忠実に動く田所一のわかりやすさもなかった。ゲームをあくまで「遊び」として扱い、戯れに興じる自称魔法少女四人組の闊達さもなかった。あくまでゲームの理不尽さを憎み、勝敗からは身を遠ざけようとする新道零時の達観もなかった。

 ある意味では、この浜路透理がこのクラスの中で一番「普通」という概念に近い存在なのかも知れない。

 が、そのために浜路はみずからの身の処し方をいつまで決することができず、これまで悩み続けているのである。


 昼休み、田所一はその日二度目の決闘を申し込んだ。

 田所はこの前に一度、路地遙に決闘を申し込み、

「いや、そんなの受けるメリットこっちにはないし」

 と、あっさり路地に断られている。

 そこで強引に田所が襲いかかることも可能ではあったが、路地のスキル『キッカー』の機動力を考慮すると華麗に逃げられて終わりだろう。

 レベル差からいっても、一対一でやり合った場合、田所が路地に勝てる確率はかなり低いはずだった。

 田所自身、そのことを認識していないわけではないのだろうが、なぜか自分から不利な決闘を申し込んでいる。

 坂道での一戦におて、田所がよほど忸怩たる思いを噛みしめ、それを払拭するためか。それとも、なにか他の動機があるのか。

 本人でなければ理解できない、田所の行動だった。

 それで、この昼休み、田所が二度目に決闘を申し込んだ相手は、これまた田所がまず勝てない相手、三峰刹那の『エアタンク』を破った有坂誠である。

 そのとき、有坂は早々に持参した弁当を平らげ、教科書に目を通しているところだった。

 有坂という生徒は以前から極端に口数が少なく、校内に友達らしい友達がいない。

 かといって誰かから疎外されているという風でもなく、自分からそういう空気を作って他人を遠ざけている節がある生徒だった。

 休み時間はいつでも、教科書を開いてぱらぱらとページをめくって過ごしている。

 成績についていえばクラス内でもちょうど平均値に近く、ただこの学校は地域でも随一の進学校として知られているわけだから、全国平均でみればそれなり優秀であるということもできる。

 特徴に乏しく、話題にもあがりにくい無個性な少年。

 というのが、ゲームがはじまるまでの有坂の評価だった。


「おう、有坂」

 その有坂に、田所が声をかける。 

「ちょっと、面を貸してくれねえか?」

「なんの用だ?」

 有坂は、顔もあげずに応じた。

「決まっている。

 例のゲームだ」

 田所は単刀直入に切り出した。

「お前とおれとでやりあって、勝った方が負けた方のスキルを奪う。

 単純だろう」

「詰まらん」

 有坂は、田所の申し出を一笑に付した。

「おれは、ゲームなんざには興味はない。

 あえてお前とやり合うメリットもない」

「お前は、スキルが欲しくないのか?」

 田所は聞き返す。

「欲しくないね、こんなの」

 ここで有坂は、はじめて顔をあげる。

「こんなゲームも、さっさと終わって欲しいと思っている。

 つき合わされるこっちは、いい迷惑だ」

「それじゃあ、お前の『チェーンコンボ』をおれにくれよう!」

 田所は大きな声をあげた。

「やる気がないやつより、やる気のあるやつが持っているべきだろう!」

「知らねーよ、お前の都合なんか」

 有坂は、興味を失ったかのように再び教科書に視線を落とした。

「そんなら、無理矢理にでも……」

 田所がスキル『ジャック・ザ・リッパー』を発動して席に座ったままの有坂に襲いかかろうとする。

 有坂は片手をあげながら中腰になり、田所の手首を下から突きあげた。

 同時に、もう片方の手は、田所のみぞおちに深く潜りこんでいる。

「動きが、遅い。

 動きに無駄が多い」

 有坂は田所に対して、静かに告げた。

「そんなんじゃあ、どんなに強力なスキルを持っていたとしても、宝の持ち腐れだ」

 田所は、目を見開いて有坂の顔を見つめ返したあと、その場にうずくまって激しく咳こみはじめた。

 有坂の一撃によって、肺の中の空気が一気に叩き出されたのだった。

「いっておくが、今のはスキルを使わない攻撃だったんだぞ」

 田所にむかって、有坂は追い打ちをかける。

「お前が相手なら、スキルなんざ使うまでもない」

 田所は手の甲で涎を拭いながら、恨めしそうな顔をして有坂の顔をみあげた。


 こうして、田所の決闘はまたしても不発のまま終わった。 


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