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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
三日目
36/109

04-09 視聴覚室にて。 

 睦月庵と同様に、黒森永遠も自分のスキルを使用して目をつけたクラスメイトの動向を探っていた。これは、ゲームが開始されてから継続して続けていることであり、そのおかげで黒森のスキル『フェアリーテイル』のレベルは今では二百五十を超えている。

 黒森は、テストプレイのときに目立った活躍をした三峰刹那、有坂誠、田所一、それに、特殊なスキルと見識を持つ新堂零時、同じ青藍寮のルームメイトである知念はななど、十名前後にスキル『フェアリーテイル』の見えない妖精を張りつけて動向を監視していた。

 スキル『フェアリーテイル』が出せる妖精の人数自体には制限がなく、やろうと思えばクラスの全員に対して同じように妖精をつけることも可能でなのあったが、その妖精から送られてくる情報を監視する側の黒森の処理能力は常人以上のものにはならなかったため、あまり増やしすぎても意味がないのである。

 常時監視という意味では、現在の現在の人数くらいが上限になるのであろう。いや、正直にいってしまえば、今の人数でも黒森は持て余し気味なのであった。

 黒森と知覚を共有できる見えない妖精。

 それを偵察目的以外で使用するとなると、これがなかなか難しい。というか、それ以外の用途にはほぼ使えない。

 見えない妖精は不可視であるばかりではなく、触れることもできず、実際には「なにもない」のと同然だった。妖精に触れることができない、ということは、妖精がなにかに触れることもできないということであり、いうまでもなく妖精を介して攻撃を行えもしないことになる。

 スキル『フェアリーテイル』の妖精は、使用者との知覚共有以外にも取りついた存在の運、不運を操作するという機能もあるのだが、こちらの機能についてはまだ昨日、知念はなを対象にして試用してみただけであり、まだ具体的な手応えを感じられるほどには使い込んでいなかった。

 ちなみにその知念はなは、数々の不運に見回れながらも夜が明ける前に寮に帰り、今は自室で死んだように寝ている。

 昨夜、知念につけた妖精に知念の運を悪くするように念じたため、溜桶からの帰路でさんざん苦労したようだが、どうにか寮まで帰りつけたようだ。黒森が津川問といっしょの部屋で就寝したときにはまだ溜桶でたまたまどこかから脱走していたボクサー犬に追いかけられている最中だったが、今日、目がさめたら知念は寮に居て自室のベッドで寝ていた。あちこちに綻びができ、全体に埃っぽくなった制服を身につけたままで寝ていたから、知念が寝てからもかなりの危難に遭遇していたことはまず確実であった。

 しかし、それでも知念が途中で力つきることなく帰り着いたていることは事実であり、これは黒森の妖精が与えた不運よりも知念が昨日のうちにスキル『見取り稽古』で複製したスキルを駆使した対応力の方が上回っていたと、そう解釈するべきなのだろう。

 とりあえず、ぼちぼちスキルの披露合戦の様相を呈してきている今日、知念が登校してきていないのはまだしも幸いではあった。朝から今までの時間でさえ、かなりの生徒たちが公然と自分のスキルを披露している。その場に知念が居あわせたとしたら、知念は数多くのスキルを自分のものとし、かなり有利になるはずなのだ。

 黒森はこの時点でスキル『見取り稽古』でコピーしたスキルはレベルアップができないという事実を知らなかった。


 黒森は『フェアリーテイル』の妖精を通じて新堂零時と頼衣玉世の会話も拾っている。

 新堂はどうやら、授業中に大半のスキルが使用できないことに気づいているようだった。

 しかし、それも、黒森の『フェアリーテイル』自体がそうであるように、例外は多い。おそらく新堂の『ナイトシールド』や頼衣の『スカウター』なども授業中に使用可能なのではないか。 

 黒森が観察するところ、授業中に使用できなくなるのは攻撃系など、直接的な影響力が強いスキルが多いようだった。

 逆に、物理的な影響力、干渉力をほとんど持たない特殊系の大半のスキルはそのまま使用できるのではないか、と、黒森は推測している。

 これは、リライターが最初に提示したルールの三番目、

「授業中、ならびに課外活動中には攻撃を行うことも受けることもできません。

 ゲームは学業に支障がない範囲内で行ってください」

 に対応した操作をリライターが行っているせいではないのか、と、黒森は推測していた。

 黒森の『フェアリーテイル』や新堂の『ナイトシールド』、頼衣の『スカウター』などのスキルは、授業中に使用していてもそれ自体では他の生徒たちを妨害することはない。だから放置をされている……というわけである。そういえば、昨日、知念はなも一日中スキル『ぼっち王』を使用して人知れず教室内の居たわけだが、このときも、授業中にも関わらず、『ぼっち王』の機能はなんの支障もなく十全に発揮されていたようだ。

 こその推測がどこまで正しいかは、もう少し時間をかけて観察してみないことにははっきりとしないわけだが、そんなに大きく外してはいないだろう、と、黒森は思っている。


 しばらくすると、まず叶治郎が別室に呼び出され、次に叶と眞鍋伸吾とのやりとりを間近に目撃していた生徒たちが教員によって順番に呼び出された。

 ゲーム関係の事情などは、例によってリライターの極めてご都合主義的な能力によって教員たちにも周知されているはずだったが、白昼の校内で流血沙汰があったことも事実であり、大人たちも当時の事情を詳しく詮索しないわけにはいかないのだろう。

 ひょっとしたら、いや、負傷時の様子をみる限り、十中八九の確率で眞鍋はあのまま生命を失っているはずだった。

 校内で傷害を飛び越えて殺人事件が起こったのだ。

 いくらゲームのためであるとはいっても、教師たちも警察も、そのまま看過するわけにもいかず、さりとて関係者を長時間拘束してゲームの進行を遅滞させるわけにもいかず、せめて詳しい事情くらいは把握しておきたい……というところで、今回のような扱いになったのだろうな、と、黒森は予測する。

 大人たちにしても今回のような事態ははじめてのことであり、大いに戸惑っているのに違いない。

 しかも、こんなのはまだまだ序の口であり、ゲームが終わるまでにはまだ三十名近くの犠牲者が出るはずなのである。

 現時点の脱落者は三名、1年D組の生徒数は三十四名。最後に勝ち抜ける者は一名。

 順当にいけば、あと二十九名の敗者を必要とする。

 これは、そういうゲームなのだった。


 生徒たちが雑談の振りをした腹のさぐり合いや談合を進めているうちに二時限目の自習時間が終わり、三時限目以降はそのまま視聴覚室を使用して通常の時間割通りの授業が行われることになった。

 ゲーム絡みで派手な事件が立て続けに二件も起こったばかりであり、そのあとは流石に大半の生徒は大人しくしていた。

 すべての生徒が大人しくしていたわけではなく、休み時間に田所一が路地遙に一対一の決闘を申し込みすげなく断られるといった珍事はあったが、基本的には静かな時間が経過していた。

 ひょっとしたら、朝のホームルームで三峰刹那が恫喝をしたことも多少は影響していたのかも知れない。なんといっても三峰は強力なスキル『エアタンク』を所持し、それ以外にもテストプレイの報償として多数のスキルを所持している。優勝候補を予想させればまず最初に名前があがる生徒であり、紛れもない強者なのである。

 多少、思うところがあったとしても、公然と三峰に逆らおうとする生徒は少ないだろう。

 ましてや、三峰が要求していることは決して理不尽な内容なのではなく、一言で要約をすれば、

「他人に迷惑をかけるな」

 という極めて常識的なことなのであるから、あえて逆らおうとする者もいなかった。

 その程度のことさえ遵守できなければ、ゲームの最中に日常的な平穏はすっぱりと諦めるしかなく、そうした無法状態をあえて望む者はいなかった、ともいえる。

 少なくとも、人目のある場では。


 今後は、人目を避けての待ち伏せや闇討ち、あるいは、田所が路地にやりかけたように、正々堂々と決闘を申し込むとか、そういう形でゲームが進行していくのではないか、と、黒森は予想する。

 あるいは……。

 あるいは、スキルを使用して黒森の予想しないような攻撃を行ってくるか、だ。


 その日、1年D組の生徒たちは、表面的には穏やかな時間を過ごすことになった。

 表面的な平穏とは別に、生徒たちの内面では不安や危機感、計算、打算などが絡み合った未来への予想図が描かれていたはずなのだが、それらはまだ、表面化はしていない。


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