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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
三日目
35/109

04-08 聞き耳をたてる。睦月庵、スキル『ファイブセンス』

 睦月庵は視聴覚室で他の女子たちと談笑しながら、さりげなく聞き耳を立てている。

 睦月のスキル『ファイブセンス』は、そうしたことに適したスキルだった。


スキル:

 ファイブセンス Lv.382 ◇特殊系

『五感が研ぎ澄まされる。

 威力はレベルに依存』


 この『ファイブセンス』はテストプレイの際、三峰刹那に報償として与えられており、その三峰は昨日の留河狩りに参加することの対価として田所一に譲渡していた。

 だから、現在、スキル『ファイブセンス』の所有者は、睦月と田所の二名ということになる。

 だが、田所は昨日『ファイブセンス』を得たばかりであり、おそらくは、まだこのスキルの真価をまだ理解していないはずだ。十分なレベルをあげるだけの時間はそんなになかったはずだし。

 スキル『ファイブセンス』はその名の通り五感を増幅するスキルだった。英語で表記すると「five senses」であり「sense」の部分が複数形になっていなくてはいけないはずなのだが、スキル名はなぜか単数形になっている不思議。その理由はリライターにでも聞かないかぎり不明である。

 ともかくもこの『ファイブセンス』はレベルが十分にあがりと五感が敏感になるのと同時に、選択的に必要な情報のみを知覚できるようになってくる。

 たとえば現在、睦月は視聴覚室内に居る生徒たち全員の会話はもとより、心音や血液が流動する際に生じる微細な音、消化器官内で発生する雑音などもすべて聴くことができる。また、今ではそうした生体音を自分なりに分析した末、対面している者の心境まである程度推察できるようになっていた。

 自習であるのをよいことに、生徒たちはそれぞれ好きな者同士でえ集まってだべっている。人間の処理能力は、そうした会話のすべてを即時に理解できるようにはできていない。

 そこで睦月は、今の自分に必要な音声情報のみをピックアップして「聞き耳をたてる」ことにした。


 たとえば睦月は、その『ファイブセンス』を使ってここからかなり離れた保健室の様子をある程度把握することができた。

 見ることはできないが、音はかなり鮮明に拾うことができる。

 今、保健室には養護教諭と今朝の騒動で被害にあった軽傷の生徒たちが何人か休んでいた。

 その中には、スキル『バリヤー』の所持者である矢尻知道も居る。

 この矢尻は、登校中に七重による攻撃を受けた最初の被害者であった。

 幸いなことに、自分のスキル『バリヤー』に護られて軽い脳震盪を起こしただけで済んだようだが、今も気分が優れないとかで保健室で休んでいた。


 新堂零時は、相変わらず一歩引いた位置から的確な状況分析を行っている。

 スキル『ナイトシールド』の性質が性質だから、積極的にゲームに参加することは考えていないようだ。少なくとも、今のところは。

 そのためか、新堂はこのクラスの状況を俯瞰してみているようだった。

 これまで新堂が発していた言葉から推測すると、新堂はこのゲームの勝敗よりも、こんなゲームを押しつけてきたリライターに対して憤りを感じているらしい。


 西城沙名ら自称魔法少女の四人組と、今朝の騒動を引き起こした張本人である七重芹香と路地遙のコンビは、少し大きな声で軽いいい合いを行っていた。

 このふたつのグループは、今朝の出来事によって確実に決裂したとみていいらしかった。

 決裂といえば、七重と路地は、やはり今朝の騒動によって、『ナイトシールド』の新堂からも見放されたようだった。

 少しでも誰かのスキルを奪うことができればよかったのだが、現実ではなんの成果もなかった今朝の騒動は、七重と路地にしてみれば無駄に敵を作っただけの結果に終わった。


 今のところ、最多のスキルを所持している三峰は、周囲の喧噪をよそに黙々と自習をしていた。

 三峰は、自他ともに認める優等生ではあるが、普段から他のクラスメイトに細かいことをいう性格ではない。どちらかというと、今回のゲームにおいて、なにかというとルールを持ち出して同じ生徒たちに干渉しようとする態度が、普段の三峰らしくないのだ。


 今の時点で一番有利とされている三峰の『エアタンク』を事実上ほぼ単独で破った有坂誠は、やはりおとなしく教科書を読んでいる。

 この有坂は、テストプレイのとき以来、一度も積極的にゲームに参加しようとはしていなかった。

 ゲームの勝敗には興味がないのだろうか? それとも、動くべき時期を待っているだけなのか。

 いずれにせよ、この有坂も不気味な存在ではある。


 不気味といえば、さっき眞鍋伸吾を挑発して見事にスキル『ランサー』を奪取した叶治郎は柔和な微笑みを浮かべて室内を見渡していた。

 先ほどの凶事などなかったかのように、平穏な表情を浮かべている。心音などを確認してみても普段とまるで変わらず、平穏なのは決してポーズだけではないようだ……と、睦月は判断する。

 この叶も、今回の件で周囲の生徒たちから引かれているようだ。

 直接手をくだしていないとはいえ、ああも平然と同じクラスメイトである眞鍋を死地に追いやり、その上、ああして平然としている。

 ごく普通の感性しか持たない高校生にしてみれば、自分が原因となって起こった流血沙汰の力五にまるで動揺した様子が認められない叶の態度は、不気味としかいいようがない。

 叶本人は、そうして自分が孤立した様子を気にもかけていないようだったが。

 謎が多い叶自身のスキルとあいまって、この叶も不穏な存在感を放つようになっていた。


 昨日欠席していた芦辺素直と黒森永遠の二人は、今日は出席していた。

 一日休んだ直後に今朝の騒ぎと眞鍋の脱落というふたつのイベントに遭遇したわけだが、この二人にはあまり変化がない……の、だろうか?

 いや、違うな。

 と、睦月は思い直す。

 普段と変わらない態度を装っているだけだ。

 芦辺はといえば、ゲームがはじまる以前は内向的で自分から誰かにはなしかけるということをあまりしない少年だったが、今日はやけに自分から誰かしらに声をかけている。

 まるで、情報収集でもしようとしているかのように。

 いや、実際にしているのか。

 そうした行為を隠そうとせずに公然とやっているところに、睦月は芦辺のナイーブさをみる。

 もう一方の黒森は、なぜだか今日から蘭世明と津川問の公認バカップルと連んでいた。

 公認バカップルの方はともかく、これに黒森が加わるとなるとかなり不思議な組み合わせといえる。

 黒森永遠もあまり友好的な性格ではないらしく、クラスの誰かと親しく会話をしているところをみかけたおぼえがない。

 いつの間に、その黒森が蘭世と津川の二人組と親しくなったのだろうか?

 昨日、欠席している間に黒森になにかがあったのか?

 疑問はあるのだが、睦月のスキル『ファイブセンス』ではその疑問を解くことはできないようだ。


 やっぱり、どうにかしてもっと役にたつスキルを奪うしかないのかなあ……と、睦月は思う。

 五感が研ぎ澄まされる睦月のスキル『ファイブセンス』は、実のところ、闇討ちや待ち伏せのときなどにも重宝するスキルではあるのだ。

 近くを誰かが通りかかったとしても、他の誰よりも早く気づくことができる。

 だけど、女の細腕だしなあ……と、ここで睦月は足踏みしてしまうのだった。

 最初に瀬川を襲った名も知らない襲撃者は、おそらく睦月と同じように闇討ちに適したスキルの持ち主だったのだろうが、「よくもあんな大胆な真似をできたもんだ」と睦月は関心をしてしまう。

 最初にこちらから襲うのならば、やはり非力な女子かひ弱そうな男子がいいかな、と、睦月は思う。

 たとえば……そうだ。

 あの黒森永遠とか、芦辺素直のような。

 初日に配られたプリントの内容を、睦月はすべて暗記している。

 黒森が所持するスキル名は『フェアリーテイル』、芦辺が所持するスキル名は『自動筆記』。

 語感からいっても、どちらも戦闘にはあまり役に立たないのだろうな、と、睦月は予測した。

 この二人のうちどちらかを選べといわれたら……睦月はやはり芦辺の方を選択する。

 なぜなら、どうやら黒森は蘭世や津川と組んだらしいが、芦辺の方は今の時点でも誰とも組んでいないらしいからだ。

 ひ弱そうとはいっても芦辺は男子だから、身体能力的な部分で不安はあったが、それでも三人を一度に相手にするよりはまだましだった。

 それに、見渡したところ、芦辺以上に弱そうな生徒はこのクラスにはいないみたいだった。

 そこまで考えてから、

「そうね。やはり最初の獲物は芦辺くんにしよう」

 と睦月は結論する。

 体力差については、なんらかの武器を用意することと不意をつくことでフォローできるだろう。

 

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