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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
三日目
33/109

04-06 休憩時間の雑談。それに、決闘。

 一時限目が終わり休憩時間に入ると、辺見洋子と七重芹香が教室に入ってきた。

 二人とも先生とかにこってりと絞られたらしく、顔色が悪かった。


「いやあ。

 校庭の件はあれ、授業時間が終わるまではどうしようもなかったんだっけどさあ」

 西城ら自称魔法少女の仲間たちに取り囲まれた辺見は、そんな風にいった。

「さっき、落ちたとときに肩を打っちゃってねえ。

 そんで、保健室で診て貰って来た。

 おそらく、打撲だろうってことだったから、湿布だけ貼って貰ったけど……」

「むしろ、その程度で済んでよかった」

 西城沙名はもっともらしい表情で頷く。

「本気で蹴り飛ばしてきたからな、あの女は……」

 そのあと、四人の魔法少女は一斉に教室内にいる路地遙の方に目線をやる。

「いや、だって」

 路地は、特に慌てた様子もなく、いってのけた。

「このゲームって元々そういうもんでしょ?

 それに、仮にあそこで死んだとしても、ゲームが終わったら元通りになるってことだし」

「そうそう」

 七重も、路地の言葉に頷く。

「わたしと遙ちゃん、テストプレイのときに委員長の『エアタンク』に蜂の巣にされたけど、こうしてピンピンしているよ」

 当然のことながら、こうした態度は自称魔法少女の四人組の神経を逆なですることになる。

「あれは、自業自得だろ!」

「考えなしの自滅と明らかに殺意がある攻撃といっしょにすんな!」 

 などと、ひとしきり非難の声があがった。

「ねえねえ!

 豆鉄砲もなにかいってやって!」

 西城は内膳英知の方に助けを求めた。

「そういわれてもなあ」

 内膳は、ゆっくりとした口調で応じる。

「路地のいうとおり、ゲームってのはそういうもんだろう?

 文句をいう方がおかしいというか……いやなら自分のスキルを誰かに譲渡して、このゲームから降りるしかないんじゃないのか?」


「……その手があったか!」

 そのやり取りをたまたま耳にしていた男子が、大声をあげて立ちあがる。

「芦辺か」

 その男子生徒を確認し、内膳は軽くため息をついた。

「譲渡してゲームから降りるというのは、誰でも思いつく方法だと思うがな。

 とはいえ、これまでにそういう方法でゲームから降りたやつはいないようだし、そういうのが立て続けに起こったら、リライターはルールを増やして禁止するかも知れない。

 やつらはどうも、おれたちが派手に潰し合うことを期待している節があるかなあ」

「いや。

 少なくとも、ぼくは思いつかなかった」

 芦辺素直は、小声で呟く。

「その手を真っ先に思いついていれば……」

「芦辺くんのスキルは、そんなに不利なスキルなの?」

 夢川明日夢が質問した。

「不利……っていうことは、ないと思う。

 使いようによっては、かなり役に立つスキルだ」

 芦辺は首を横にする。

「ただ、みんなとは違って攻撃力はないから、単独だとかなりきつい」

 自称魔法少女と内膳は、攻撃力の高低はあれども、みんなそれなりの攻撃力を持ったスキルを与えられている。

「そっかぁ」

 奥地八枝はもっともらしい顔をして頷く。

「早めに誰か、攻撃力があるスキルの人と組めればいいね。

 わたしたちのところは……」

「お前たちは、無駄に攻撃力ばかりが高すぎるだろう!」

 内膳は、つっこみをいれる。

「もっと補助的なスキルを組み込まないと、すぐに行き詰まるぞ!」


「……いやあ、さっきは惜しかったなあ」

 七重は、頭を掻きながら新堂零時の席に近寄ってくる。

「時間切れにならなければ、一気に何人か倒せたのに……」

「お前、ちっとも悪いとは思っていないだろう?」

 新堂は半眼で七重を睨みつける。

「今朝の、流れ弾に当たれば校外で死人が出ていてもおかしくはなかったぞ。

 ゲームが終われば元通りになるっていっても、自分が死んだときの記憶まで消してくれるほどリライターがサービス精神旺盛だとも思えない。

 お前のせいでトラウマ植えつけられた人がいたら、どうするつもりだよ」

「そのへんのことについては、たった今先生たちにこってりと絞られてきた。

 反省文の宿題もたっぷりと貰ったから、もう勘弁してよ」

 七重は、苦笑いを浮かべてそういう。

「それよりも、さ。

 新堂くんからみて、今朝の作戦はどうよ?」

「ゲームに関係のない人たちに迷惑をかけまくり……という点が、まず駄目。

 でもまあ、その部分を度外視すれば、それなりにいい線いっていたんじゃねーの」

 新堂は素っ気ない口調で応える。

「遠距離の七重のスキルと機動力がある路地のスキルは、組み合わせ的にはそれなりにバランスが取れていると思うし。

 それを生かそうと思ったら、ああいう方法になるんじゃないかなあ……」

「やっぱり!」

 七重は顔を輝かせた。

「そうなんだよねえ!

 敵が近づいてこられる経路を限定して、長距離から狙い撃ち。

 接近して来た人がいたら遙ちゃんが迎え撃つ……というのがやりたかったんだけど。

 辺見ちゃんがスキルで坂道を作っちゃったのは、正直予想外だったなあ。

 予定では、四階の廊下で迎撃戦をやる予定だったんだけど……」


「いいか、見てろよ」

 眞鍋伸吾は、男子生徒を集めて自分のスキルを披露している。

「はっ!」

 眞鍋がかけ声をあげるのと同時に、眞鍋の手の中に十字槍が出現した。

「おお」

「すげえ」

 などと、見物に集まった男子たちは感嘆の声をあげている。

「いやー。

 最初にデッキブラシが出てきたときは、ゴミスキルだと思いましたわ」

 眞鍋は、十字槍の穂先を持ち上げながら得意そうにいった。

「昨日、家に帰ってからそのデッキブラシを電柱に打ちつけてレベルあげに専念した甲斐がありましたわー」

「電柱にデッキブラシを打ちつけてたのか?」

「ずっと?」

「そうそう。

 通りかかった人には可愛そうな人を見る目つきで見られるし、何度か警官に職務質問をされたりしたけど、めげずにレベルが十になるまで続けた結果がこれだよ!

 しかもこの槍、技能補正までついているんだぜ!」

「技能補正?」

「なんだ、そりゃ?」

「槍の扱い方っていうのかな?

 振り方や突き方、使い方が、これに触れている間は、自然に身についているんだ!」

 眞鍋はドヤ顔で告げる。

「こいつがあれば、おれは槍の名人も同然!」

「でも、それ……」

 柔和な顔つきの少年が、指摘をしてきた。

「技能補正ってことは、体力や筋力はそのままなんだよね?

 うまく扱えるようになったとしても、身体能力が追いついていないと結局はうまく使いこなせないし、すぐに息切れするんじゃないかな?」

「そ……そりゃあ……」

 指摘された眞鍋は、すぐに顔を伏せた。

「その通り、なんだけどよ。

 でも、レベル十でこれだぜ!

 レベル二十とか三十になったら、もっとずっといい槍が出てくるはずだ!」

「そういうお前のスキルは、どんなやつなんだよ」

 見物に集まっていた男子生徒の一人が、指摘をしてきた少年に問いかけた。

「ぼくの?」

 少年……叶治郎は透明な、笑みを浮かべて答える。

「ぼくのスキルは、たいしたことないよ。

 詳しく説明するつもりはないけど、勝つためにはあまり役に立たないスキルだ。

 でも……かなり負けにくいスキルではあるのかな?

 たとえば……そうだね。

 委員長の『エアタンク』が相手でも、互角以上にやりあるスキルだと思う」

 それを聞いていた生徒たちは、戸惑った表情で叶の顔を見つめる。


 三峰刹那の『エアタンク』の強力さは、初日のテストプレイのときに誰もが認めているのだ。

 有坂誠の『チェーンコンボ』ような特殊なスキルでなければ、まず対抗できないだろう。

 それを、この叶は「互角以上にやりあえる」と豪語している。


「それじゃあ、よ」

 お調子者の渡来治樹が、眞鍋伸吾の肩を叩いてからそんなことをいい出した。

「この眞鍋が相手でも、いけるのか?」

「いけるね。たぶん」

 叶はあっさりと頷く。

「勝てるといはないけど、負けることはまずないと思う。

 なんなら、試してみるかい?」

「だってよ、眞鍋!」

 渡来はばんばんと平手で眞鍋の肩を叩いた。

「眞鍋、どうする?

 叶がこういっているし、試してみれば?」

「……そんなことを、いわれてもな……」

 眞鍋は、狼狽した様子で周囲を見渡した。

「だって、この槍、スキルで出しとはいえ本物だぞ?

 穂先の刃物に触れれば、なんでもすっぱり斬れる。

 冗談で人に使うことは……」

「冗談ではなく、そういうゲームでしょう、これは」

 叶は柔和な笑みを崩さずに、いった。

「なんなら、ぼくの方から一切攻撃をしない、という条件をつけてもいい。

 そこまでいってもまだ躊躇するようなら、早めにスキルを誰かに渡してこのゲームから降りた方がいいと思う」

 口調こそ柔らかであったが、明らかに眞鍋を挑発することを意図した発言だった。

 眞鍋の顔つきも、先ほどとは打って変わって厳しいものになっている。

「……冗談ではなく……本当にやっていんだな?」

 しばらくして、押し出すような口調で眞鍋がいった。

「いいよ。

 ぼくの方からは、なんにもしないと約束もする」

 叶は眞鍋の正面に立ち、自分の胸の手で叩く。

「慎重に、ここを狙って。

 こんな大きな的を外すとは思わないけど……」

「……よし!」

 眞鍋は、厳しい顔つきのまま、十字槍の穂先をあげて、叶の胸元につきつけた。

「そこまでいうんなら……本当に、やってやる!」


「おっ……おいっ!」

「やべえ! やべえよ!」

「本当にやんのかっ!」

 それまで、眞鍋の周囲にたむろしていた男子が、慌ててその場から離れた。

 いつの間にか教室内が静まりかえっていて、誰もが眞鍋と叶に注目している。


「ああ、やるさ。

 やってやる!」

 そういう眞鍋の声は、震えていた。

「こいつがやれっていったんだからな!

 それに……そうだ!

 ゲームだ!

 こいつは、そういうゲームなんだ!」


 そんなことをいってから、眞鍋は一気に十字槍を突き出した。

 女子の誰かが、悲鳴をあげている。


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