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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
三日目
32/109

04-05 騒動の始末。三峰の宣言。

 眞鍋伸悟と内膳英知が辺見洋子を引きあげ、比留間結衣が蹴り飛ばされた自称魔法少女の中で一番近くにいた奥地八枝に助けを差しのべていたとき、西城沙名は辺見のスキル『捲土重来』によって隆起した地面に肩口から激突していた。

「……うごっ!」

 とあまり可愛くない声をあげて、痛みのためにしばらくその場にうずくまる。

 しばらくして落ち着いたあと、ふと見あげて確認してみると、先ほどまで西城が居た坂道から二メートル半から三メートルほど、といったところか。

 高所、というほどでもないのかも知れないが……打ち所が悪ければ高度一メートルから落ちても死ぬことがある。

 そう考えると、自分は運が良かったのかも知れないな……と、西城は思った。

 落ちたときに打った肩と、それに路地遙に蹴られた脾腹がずきずきと痛んだ。


 夢川明日夢は、自分のスキル『疾風怒濤』を使って、なんとか自分の体を持ち上げようとしていた。

 人一人の体重を支えようとすればかなりの強風を必要とするわけで、夢川の周辺はもの凄い勢いの上昇気流が発生している。 

 努力の甲斐あってか、一度坂道の上から落下しかけた夢川の体は、じりじりと持ち上がっていた。

「……もう、ちょいっ!」

 夢川は、叫ぶ。

 もう少し、あとほんの数センチで、坂道の縁に手が届く。

 手さえ届けば、あとは自分で自分の体を引き上げることも可能だった。


 辺見洋子を引きあげようとしていた眞鍋伸悟と内膳英知は、横合いから何度もぶつけられる机と椅子に悩まされている。

 七重芹香のスキル『ロングショット』による攻撃だった。

 辺見の引き上げ作業を行っている以上、避けることもできず、そのまま攻撃を受け止めるしかない。

 新堂零時のスキル『ナイトシールド』による保護がなければ、もっと甚大な被害を受けていたはずだが、今のところ、なんとかなっていた。

『ナイトシールド』越しであっても、七重の攻撃は、非常に重い。

「……あとで、見てろよ……」

 と内膳が小さく呟き、眞鍋も内心でその声に対して大きく頷く。

 二人とも、今は手を離せないが、いずれは意趣返しを行いたいと思っていた。 


 そして、田所は……。

「……路地遙ぁ!」

 スキル『ジャック・ザ・リッパー』の見えない刃を振りかざし、路地の姿を求めていた。

 いや。

 路地の姿が認められない、ということではない。

 路地の姿を認めても、その次の瞬間には離れた場所に移動している。

 路地の動きが速すぎて、反応が遅れる。

 田所では、うまく攻撃できなかった。

 どんな強大な攻撃能力を持っていても、当たらなければ意味がなかった。

 田所がむなしく見えない刃を振り回している間にも、七重の投擲攻撃は次々と命中する。

 路地には何度も蹴られる。

 

 七重芹香と路地遙の二人組と、それに対抗しようとした田所たちとの戦いは、圧倒的に前者にとって有利な流れになっていた。

 このまま推移すれば、いずれ、田所たち七名は一人づつ各個撃破されて全滅していてもおかしくはなかった。

 しかし、その危機を、毎日耳にしているチャイムが救った。


 始業開始前に鳴る、予鈴が放送されたのだ。


「時間切れかあ」

 路地は一度足を止めて、田所たちの顔を見渡す。

 辺見洋子は、なんとか坂道の上に引きあげられていた。

 奥地八枝は、比留間結衣によってなんとか坂道の上にまで運ばれていた。

 夢川明日夢は、坂道の上まで自力でなんとかはい登ったところだった。

 西城沙名は、坂道の脇に隆起した場所で自分の肩を押さえ、顔をしかめていた。

 眞鍋伸悟と内膳英知は、人間一人を引きあげるという重労働をしたおかげで、汗にまみれて肩で息をしていた。

 田所一は、路地の方を睨んでいた。

 全員、何度も攻撃を受けたり強風に煽られていたりしたおかげで、服も髪もひどく乱れている。

 ひとことでいうと、ズタボロだった。

「それじゃあ、続きをやるとしたら、次の機会にねえー」

 路地は全員の顔を見渡したあと、まるで悪意を感じさせない笑顔を見せて手を振り、四階の空き教室にむかって駆けていく。

「……早く教室に入らないと、遅刻しちゃうようー」

 とも、つけ加えた。


「遅刻?」

「今の、予鈴か!」

「急がねーと!」

 その一言で我に返ったのか、坂道に残された全員が慌てはじめた。

 眞鍋が路地のあとを追って坂道を登り駆けたが、

「土足で校内に入るつもりか!」

 と内膳に指摘され、踵を返す。

 遠回りのようだが、一度坂道を降りてからいつも使っている昇降口まで出る必要があった。


「……おおーい!」

 ひとりだけ坂道の上には居なかった西城沙名が、大声で救援を求めた。

「助けてー!

 こっから引きあげてー!」

「今は、無理だ……」

 眞鍋がぽつりと呟いた。

「槍もデッキブラシも、今は出せない……」

「……あー」

 内膳も、頷いた。

「授業中は、スキルを使えないっぽいんだよなあ。

 なにかを具現化するスキルだけかも知れないけど」

「ひどい!

 じゃあ、どうすんの!」

 西城は、下から抗議の声をあげる。

「わたし、ずっとこのままなわけ?」

「そういわれてもなあ」

 内膳はそういって、頭を掻いた。

「おれたちにはどうにもできねーわ。

 先生に相談するか、それとも次の休み時間まで待っててくれ」

「沙名っち。

 それじゃあ、先に教室に入っているからねー」

「遅刻したくないしぃー」

 自称魔法少女の三人は、薄情にも西城を見捨てて坂道を駆け降りたいく。

「悪く思うな」

 田口も、一言そういい残してその場から去った。


「……おい。

 あの坂道を出したのはどいつだ?」

 坂道を降りたところで、生活指導の芝崎先生に捕まった。

「ゲームをやるのはしかたがないが、あのままでは一限目の体育の授業ができないじゃあないか。

 あれを出した者は、責任を持って元に戻すように!」

「あれを出したのは、このこの子のスキルです!」

 奥地八枝と夢川明日夢は、両脇から辺見洋子の腕をしっかりと掴み、逃げられないようにして芝崎先生の前に差し出した。

 辺見洋子は、

「あ、ずるい。

 裏切り者!」

 などと叫ぶが、それには構わずに奥地と夢川は昇降口へと駆けだしていた。

 他の者たちは、足も止めずに先行している。

「……なにぃ?

 授業時間中は、スキルとやらが使えないだぉ?

 それまで校庭をこのままにしておくのかっ!」

 背中から、芝崎先生の怒鳴り声が聞こえてくる。


 辺見を除いた者たちは、なんとか朝のホームルームがはじまる前に教室内に入る。

 ギリギリで、髪も服も乱れたまま、直す余裕もなかったが、それでも遅刻だけは免れることができた。

「……ええ。

 七重くん」

 ホームルームがはじまると、高橋先生がいきなりそんなことを告げる

「これからすぐに生徒指導室へ行くように」

「……生徒指導室、ですか?」

 七重は立ちあがり、首を傾げる。

「警察の方が、事情聴取のために来ていらっしゃる。

 なんでも、学校前の道路に机や椅子などを投げつけた件について、詳しい事情を説明して貰いたいそうだ。

 幸い怪我人などはなかったようだが、それでも周囲の車や建物が被害を受けているそうで……」

 高橋先生が淡々と説明を続けると、その途中で七重は、

「……げっ!」

 と声をあげた。

「それ……ゲームせい、ってことで誤魔化せませんかね?」

「先生には、わからないねえ」

 高橋先生はそういって、頷いた。

「わかっていることは、君がこの場から逃げたりしても、かえって事態を悪化されるだけだろうということだけだ。

 先生としては、申し開きしたいことがあるのなら、足を運んで直接自分の口からいうことをお勧めする」

「……はい」

 七重は悄然と肩を落として教室を出ていった。


 高橋先生が伝達事項を伝え終えると、学級委員である三峰刹那が手をあげて、

「少し、クラスのみんなに伝えたいことがあるのですが……」

 と、発言することを求めた。

 時間もあったので、高橋先生は三峰に発言することを認めた。


「伝えたいことというのは、他でもない」

 教壇にあがった三峰は、そういって教室中を見渡した。

「今朝の騒動は、いささか目に余る。

 ゲームを進めるのはいいが、それはなるべく他の人たちに迷惑がかからない形で行うべきなのではないのか?」


 次の瞬間、教室内は怒号に包まれた。

「お前がいうな!」

「テストプレイのときの暴れっぷり、忘れてねーぞ!」

 などの声があがっている。


「……静かに!」

 三峰は、剣道で鍛えた声帯を全開にして、教室内の喧噪に対抗した。

 三峰の大声に圧されて静まったところで、説明を続ける。

「テストプレイでのぼくの所行は、あくまでルールの範囲内で許容されている行為だった。

 あの場は、通常とは別の論理に支配されていた空間だったが、今は違う。

 たった今七重が出頭を命じられたように、いつもの現実、いつもの日常の中で行われているゲームだ。

 そうした場で、ゲームのルールに反していないからといって、法律や校則を無視していいわけがない。

 今後、このぼくの目が届く範囲内で、スキルを使用して常識から逸脱した迷惑行為を行う者があったら、ぼくをそいつを真っ先に潰しにいく。

 どの道……」

 ゲームを進めていけば、どこかで衝突することになっている。

 遅いか早いかの違いでしかない……と、三峰は続けた。


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