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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
三日目
31/109

04-04 坂道上の騒動。

「……べっ!」

 間抜けな声を出して、眞鍋伸吾がひっくり返った。

 路地遙の登場に気を取られ、足を止めたところに横合いから七重芹香の投擲攻撃を受けたのである。

「ほら、ほら!」

 路地は、囃したれるような口調でいった。

「こっちにばかり気を取られていると、芹香ちゃんの攻撃でやられちゃうよ!」

 いいながら、路地は、また姿を消す。

 いや、目で追えないほどの速度での移動を再開したのだ。


 辺見洋子がスキル『捲土重来』で作り出した坂道は、狭い道幅の一本道でしかない。

 遮蔽物がないこの一本道は、格好の狙撃ポイントでもあった。

 それまでと比較して、明らかに動きが鈍くなったため、眞鍋だけではなく他の生徒たちにも七重の攻撃が命中しだした。

「人数が多ければいいってもんじゃないよね!」

 そんなことを叫びながら、路地は、彼らの間をすり抜けるように走りながら、片っ端からクラスメイトたちを足蹴にしていった。

 蹴りによる衝撃は、新道のスキル『ナイトシールド』の保護によってある程度は軽減されるかも知れない。

 しかし、ここは狭い一本道。

 横合いに蹴り飛ばされれば、そこには足場とする場所がなにもない空間しかない。

 奥地八枝が、西城沙名が、辺見洋子が、夢川明日夢が、路地によって坂道の外に蹴り出された。


 奥地と西城は、それぞれスキル『ファイヤ・スターター』と『アイスエイジ』を発動させ、路地への攻撃を試みる。

 しかし、路地の動きが速すぎたため、この二人による魔法攻撃は空振りに終わる。


 それどころか、いきなり出現した炎と冷気は坂道上に残っていた男子たちをも襲った。

「……お前ら、ちっとは周りのことを考えろ!」

 自分の意志で倒れることですんでのところで唐突に現れた炎を回避した内膳英知が、悪態をついた。

「お前らのスキルは、こんな狭い場所で使うには威力が大きすぎるんだよっ!」

 しかし、肝心の自称魔法少女たちは、その内膳の声を理解できるほどには心理的な余裕を持てない状態であった。

 なにしろ彼女たちは、目下なにも足場とするものがない空中を落下中なのである。

 彼女たちが居た場所は、校舎の三階相当の高さになる。

 このまま地面に激突すれば、当然のことながら無事では済まない。

 

 夢川明日夢は、スキル『疾風怒涛』を発動させて、上昇気流を作り出した。

 それで落下中の四人の少女たちを少しでも押しあげようとするのであるが、いくら強風を作ったところで人間四人分の質量が落下する勢いに対抗できるわけでもなく、多少、落下の勢いを軽減させるだけに終わった。


 辺見洋子は、慌ててスキル『捲土重来』により、坂道の横合いの地面を隆起させる。

 高度差がかなりあるのですぐに足場になることはないが、いくらかでも落下の衝撃を軽減するつもりだった。


 そして、坂道に残っていた男子三名には、七重芹香の猛攻を受けていた。

 道幅が狭く逃げ場がない一本道、標的となる人数が大幅に減少、男子たちが落下した自称魔法少女たちの方に気を取られている……などの条件が重なって、七重が投げつける机や椅子はがんがんと男子たちのそこここに命中していく。

 新堂のスキル『ナイトシールド』の護りがなかったら、とうの昔にノックアウトされていただろう。


 それほどの猛攻を受けながらも、眞鍋伸吾はスキル『ランサー』を発動して、「十字槍」を具現化していた。

「昨夜、通行人に変な目で見られながらレベルあげをしていた甲斐があったぜ!」

 そんなことを叫んで、眞鍋は十字槍の石突きを近くにいた辺見洋子の手元へと差し出した。

 辺見は、目の前に差し出された十字槍の柄を両手でとっさに掴む。

「……うぉっ!」

 いきなりかかった負荷に、眞鍋が悲鳴をあげた。

「重い!」

 実際、眞鍋の体力では辺見の体重を引きあげきれず、眞鍋自身の体が持って行かれそうになっている。

「重いっていうなあ!」

 辺見は、十字槍の柄に必死でしがみつきながら、文句をいった。

「そんなに太ってないぞ!」

「……そういう問題じゃなあないだろう!」

 男子としてはかなり細身の眞鍋の体は、ずりずりと坂道の外へと引きずり込まれつつあった。

 跳ね起きた内膳が慌てて眞鍋の背後に近寄り、両手で十字槍の柄を握った。

「このまま引き上げるぞ!」

 内膳が、眞鍋の耳元で叫ぶ。


「……やりやがったな」

 田所一はまなじりを吊りあげて歯を剥いた。

「路地! 七瀬!」

 そういっている間にも田所の体には七重が投げた机や椅子が当たっている。


「おお、やってるやってる」

 そんな坂道上の騒動を、上空から見守っていた者がいた。

「七重ちゃんと路地ちゃんの作戦勝ち、ってとことかなあ。

 これは……」

 スキル『エアリアルダイブ』により空中を泳いでいた、比留間結衣であった。

 比留間は一時、七重の投擲攻撃から逃れるまで上空に逃げていたのだが、坂道が出現して田所ら七人がその坂道を登りはじめたあたりで七重の攻撃がそちらに集中しだしたため、高度をさげて一連の出来事を観察していた。

 観察した結果、比留間は、

「どんなに強力なスキルであっても、状況によってはその機能を使えない」

 という当たり前といえば当たり前な教訓を得た。

 たとえば、今回の件でも、自称魔法少女たちは狭い坂道の上に密集することで、自分たちのスキルをかえって自由に使えなくなってしまった。下手に使えば、同士討ちになる可能性が高いのだ。

 加えて、七重と路地のスキルのコンビネーションは、こうした状況下では本来の実力以上の能力を発揮する。

 そこで、比留間は、

「さて、どうするか」

 と考えた。

 勝ち馬に乗って、七重と路地のコンビに組みするのもいいのだが……。

「いや、この場は、不利な方に恩を売っておきましょうか」

 結局、そう結論する。

 今、七重は坂道に残っている男子たちに攻撃を集中している。

 仮にこれから比留間が救出にむかっても、狙撃される可能性は少ないだろう。

 そして、緩やかに落下中の自称魔法少女たちを救出すべく、さらに高度を下げはじめた。


「……おはよー、新堂くん」

 新堂零時に近づいてきた頼衣玉世が声をかけてきた。

「ああ、頼衣さんか。

 おはよう」

 新堂は、浮かない顔つきで頷く。

「みてよ。

 朝っぱらから、派手なことになっている」

 そういって新堂は、ついさっきまではなかった坂道を指さした。

「……この上で、誰かが戦っているの?」

 頼衣は、控えめな声で新堂に確認してくる。

「ああ。

 七重と路地がしかけて、それに反応した単細胞何人かが喧嘩を買った。

 それで、この騒ぎ」

「……大変だねえ、いろいろと」

「本人たちはともかく、周りがいい迷惑だ」

 新堂は、憮然とした表情でいった。

「でも、そろそろタイムアップだけどね」

「タイムアップ?」

 頼衣は、首を傾げる。

「もうすぐ、予鈴が鳴るから」

 新堂は、つまらなそうに指摘した。

「授業時間中、あるいは部活などの課外授業に参加しているときも、一切のスキルは使えなくなる」

 そのことは、初日にも高杉先生を通じてリライターによって説明されているし、過去二日で自称されてもいる事実だった。

 ただ、この坂道の上で騒いでいるやつらは、そんなことはすっかり忘れているんだろうなあ……と、新堂は思う。


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