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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
三日目
30/109

04-03 路地遙、スキル『キッカー』 

「はい。

 ここまでの人は大丈夫です」

 その頃、新堂零時は正門前に集まった生徒たちにスキル『ナイトシールド』による防御を施していた。

 この時点で新堂のスキル『ナイトシールド』のレベルは三百近くにあがっていたので、一度に五十人以上を保護することが可能となっていた。

 その機能を利用して、校門前の生徒たちに前から順番に保護し、その生徒たちが校舎に入ったところで『ナイトシールド』による保護を解除、次に待っている生徒たちを新たに保護する……ということを、はじめていた。

 もう、始業までいくらも余裕がない時間になってしまっている。

 このままいつまでも足止めを食らったままで、遅刻者を大量に出しても誰も得をしないのだった。


 それこもこれも、七重芹香と路地遙がそれぞれの『ナイトシールド』を叩き合ってレベルをあげてくれたおかげである。『ナイトシールド』の場合は、防御面に攻撃を受ければ受けるほど経験値が蓄積していく仕様になっているらしいかった。

『ナイトシールド』に限らず、スキルは全般に使用すればするほどレベルがあがるシステムになっている……ようだ。

 そこまで『ナイトシールド』が育っていたおかげで多くの生徒たちを助けることができたわけだが、そもそも七重芹香と路地遙が今回の騒動を起こさなければ、『ナイトシールド』をこんなことに使用する機会もなかったはずなのである。

 そのことについて、新堂はかなり苦々しく思ってもいた。

 リライターとかいう正体不明のやつらのいいなりになって、おれたちはゲームに参加するしかない。

 それはいいにしても、そのためにまるで無関係の人たちまで迷惑をかけていいという理屈にはならない……というのは、新堂のポリシーであった。

 七重芹香と路地遙との同盟関係を一方的に破棄したのも、そうした新堂の思想に由来している。

 ゲームのためならなりふり構わず、周囲にいくらでも迷惑をかけてもいい……という言動をしている連中とは、新堂は組みたくなかった。


 七重芹香は次々と机や椅子を、辺見洋子のスキル『捲土重来』によって隆起した坂道に沿って投げ降ろしている。

 坂道はほぼ直線であり、道幅は三メートルほどしかない。遮蔽物もない。

 七重にしてみれば、そこを駆けのぼってくるクラスメイトたちは格好の「的」でしかなかった。

 七重のスキル『ロングショット』はかなりのレベルにまであがっており、そのスキルによって投げつけられる机や椅子の勢いも相当なものだったが、相対するクラスメイトたちは何度命中してもめげずに坂道を登って来る。

 衝撃はかなりのものだったはずだが、なにより彼らは新堂のスキル『ナイトシールド』によって護られているため、決定的なダメージを与えることができなかった。

 命中しても、せいぜい、うしろに転ぶ程度なのだ。

 先頭の田所一は、自分のスキル『ジャック・ザ・リッパー』で自分にむかってくる障害物を斬り伏せながら走ってくる。

 そのあとに、内膳英知が続く。

 彼は、何度も正面から命中して押し戻されては、背後に続いている女子たちに押し戻されて走っていら。

 太っている割にははしっこい内膳の運動神経だったら、七重の攻撃も余裕で避けられそうなものだが……おそらく、自分が避けるとうしろに居る女子たちに直撃するので、それを恐れてあえて弾丸避けになっているのだろう。

 そうしたクラスメイトたちからかなり遅れて、眞鍋伸吾が続く。

 この眞鍋は、何度も何度も七重の攻撃を受けて尻餅をつきながらも、何度でも起きあがっていた。

 他のクラスメイトたちのスキルについては、七重はある程度の予備知識があり、それぞれに強力なスキルだとも評価しているのだが、この眞鍋のスキルについてはまるで記憶にない。

 それだけに、この眞鍋のことを一番不気味にも感じていた。

 これだけ熱心について来るのだから、よほど自分のスキルに自信があるのか、それとも、ただ単に無謀なだけか……。


「遙かちゃん、ごめん!」

 投げ降ろす手を休めずに、七重はかたわらの路地に声をかける。

「どうやら、接近戦になりそう!」

「いいよ、いいよ」

 路地遙は軽い口調でそういって、頷いた。

「どの道、そうなるってことも予想はしていたし。

 そのために、わたしがいるんだし」

「援護はするから、もう少し近づいたら頼むよ!」

「うん!

 任せて!」

 近接戦闘になったら路地がメインとなり、七重はその援護にまわる……という役割分担は、以前から二人ではなしあった末、決めていた。

 ちなみに、このときの二人は動きやすさを重視して学校指定の体操服を着用していた。


「……ほい!」

 夢川明日夢はスキル『疾風怒涛』を発動して、前方から飛来する七重が投げつけた机や椅子の進路をそらせた。

 進路をそらしても、そうした椅子や机が消失することはないので、結局は坂道の下に落ちてなんらかの被害をもたらすことになるわけだが、このときの攻略組にはそんなことを気にしている余裕はない。

「いけいけ、進めー!」

 西城沙名が、脳天気な声をあげて、みんなに発破をかけた。

「敵は間近に迫っているぞー!」

 あと二十メートルも進めば、あの二人が居る空き教室も、自称魔法少女たちのスキルの有効範囲内に到達してしまう。

 そうなれば、あの二人は、まず間違いなくそこで「終わり」なのだ。

 自称魔法少女たちのスキルは、そのひとうひとつが強力で、それに射程も長い。

 直接的な攻撃しか能がないスキルの持ち主なら、まず太刀打ちできないだろう。

 ……と、西城は思っていた。


 しかし、その自称魔法少女たちが得意とする距離内に行き着く前に、空き教室の窓から黒い影が坂道の方へと飛び出してきて、あっという間に攻略組との距離を詰めた。

「……このぉっ!」

 田所一が、自分のスキル、見えない剣である『ジャック・ザ・リッパー』でその影に斬りかかる。

 と思った次の瞬間には、田所は膝を折って地面に手をついていた。

 その影は、間髪をいれずに内膳の方へと迫る。

 内膳は素早い挙動で後退して、その影をやり残した。

 内膳が自分のスキル、『デリンジャー』を具現化して構えたときには、その影はまた別の場所へと移動している。

「素早いぞ!

 そいつ!」

 内膳は、誰にともなくそんな警告を発した。

「気をつけろ!」

 その影の動きが目で追えないほど素早いことは、その場に居る誰もがいわれるまでもなく実感していた。

「……野郎……」

 したたかに鳩尾を蹴られて悶絶していた田所は、歯を食いしばりながら立ちあがった。


 影は素早い動きで田所、内膳という前衛を突破し、自称魔法少女の四人組へと迫った。

 おそらく、そちらが本命……というよりは、先に始末したい相手、なのであろう。

 しかし、その影の前を、唐突に隆起した壁が阻む。

 阻むどころか、その壁は影の四方を塞ぎ、さらに延びて天井まで作って影を包もうとしていた。

 間一髪のところで、影は壁の隙間から逃げ出す。


「……遙ちゃんかぁ」

 足を止めたことで、ようやく西城沙名はその影の正体を知った。

「そういや、七重ちゃんと仲がよかったなあ。

 でも……相手が誰であろうが負けないけどね!」

 炎が、風か、冷気が、路地の周囲を襲う。

 しかし、路地は次の瞬間にはそこからかなり離れた場所まで移動している。

 ……瞬間移動?

 と錯覚するほどの、素早さだった。

「……少しは手加減しろよ! お前ら!」

 巻き添えを食らって坂道から落ちそうになった内膳が、味方である自称魔法少女たちに文句をいった。

 そして、次の瞬間、空き教室からの七重の攻撃をモロに食らって、その場に倒れる。

 七重の援護攻撃も、相変わらず続行しているのであった。

 にもかかわらず、田所は完全に空き教室に背をむけて、路地を睨んでいる。

「よくも足蹴にしやがったな……」

 押し出すように、田所はそういった。

「人を殺す覚悟もないの、そんなスキルを使おうとはしない方がいいよー」

 路地遙は、軽い口調で田所にそういった。

「田所くん、振り抜く直前に、躊躇ったでしょう?

 そういう甘い覚悟じゃあ、この先やっていけないんじゃないかなあ」

 そんなやり取りをする間にも、田所の背中には七重の攻撃が何発も命中している。

 田所の体格が比較的大柄であること、それに、例によって新堂のスキル『ナイトシールド』の護りによって、致命傷だけは免れていた。

「……貴様ぁ……」

 田所は、うめくようにいって……そのまま、流れるような動作で『ジャック・ザ・リッパー』を振りかざした。

 しかし、そのときには路地の姿は別の場所に移っている。


スキル:

 キッカー Lv.198 ◇攻撃系

『蹴りの威力がレベルに応じて増大する。

 同時に、足腰の機能も強化される』 


 というのが、路地のスキルだった。


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