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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
二日目
20/109

03-08 強襲と捕縛。辺見洋子、スキル『捲土重来』。

スキル名:

捲土重来 Lv.28 ◇特殊系

『地形や建物を能力者の思い通りに変形することができる。

 レベルアップするにつれ、効果範囲が拡大する』


 辺見洋子に与えられたスキル『捲土重来』は特殊系に分類される。辺見本人は「地属性の魔法」といういい方をしていた。直接的な攻撃力には結びつかない代わりに、応用次第で多様な使い方ができるのが一番の特色だった。

 昨日のテストプレイが狩猟した時点でレベルはまだ二であったが、放課後に自宅近くの公園でスキルを使用して経験値を蓄え、現在ではここまで成長させている。

 昨日のレベル二の段階でも、教室の床を変形させて三峰のスキル『エアタンク』の攻撃を遮るくらいのことは余裕でできていた。

 それが二十八にまで成長すると、どれほどのことができるかというと……。


「ちゃんと手すりに捕まってねー」

「ちょっと、おい!

 これ、本当に大丈夫かよ!」

「あははははー。

 田所くんはガタいがいい癖に臆病だなあー。

 他の子たちはみんな落ち着いているじゃないかー」

「こいつらのは落ち着いているんじゃない!」

 田所一は叫んだ。

「諦めているんだっ!」

「それじゃあ、いっくよー」

 叫ぶ田所には構わず、辺見はスキル『捲土重来』を発動。

 彼ら四人の周辺のアスファルトが高速でせりあがり、すぐにネットカフェがある八階の非常口にまで到達した。

 その勢いに上に乗っていた男子四人が思わず悲鳴をあげている。

「このせりあがった分の地面って、いったいどこから出てくるんだろう?」

 そうした異変をスキルによって実現した当の本人である辺見が、そんなことをいって首を傾げる。

 はじめて派手なスキルの使用を目撃した周囲の観客からは、

「おおー!」

 と歓声があがった。

 すでにリライターによってこの現実は「スキルとかゲームの存在が自明視されている世界」として書き換えられているので、彼らの動きを咎める者はなく、時間が経つにつれて野次馬が増えている。

「はいはーい!

 通行の妨げになりますから、あまり立ち止まらないでくださーい!」

 周囲に集まってきた見物に客に、西城沙名が大きな声で告げた。

「それから、ゲームの勝敗にも関わってきますんで、まだ写真や動画はネットにアップしないでくださいねー!」

 

「……死ぬかと思った」

「下手なジェットコースターよりも怖いな、これ」

「あいつは加減ってものを知らねえ!」

 辺見のスキルによって一気に八階の非常口まで到達した男子四人は恐怖で顔色をなくしてそんなことを呟きあう。

 それから、三峰刹那が念のためにスキル『エアタンク』を発動させながら、ドアノブに手をかけて一気にビルの中に入った。

 心配していたように瑠河のスキル『トラップメイカー』によってなんらかの罠が仕込まれていたわけでもなく、非常口のドアは素直に開く。

 男子四人は周囲を警戒しながらそのままテナントのネットカフェへと殺到した。

 受付で店員に見咎められたが、打ち合わた通りに内膳英知が対応し、

「友人を捜しているだけですので。

 その友人が見つかったらすぐに出ます」

 と一応事情を説明。

 その隙に他の三人は瑠河が潜んでいるはずのブースへとむかう。

 瑠河が潜んでいるらしいブースの位置はネット上の垂れ込み情報でかなり絞り込まむことができていたし、事前にネットカフェの公式サイトで店内の構造なども下調べしていたので、迷うことはなかった。

 三峰を先頭にした三人は目指すブースまで進むとそこの引き戸を開け、ヘッドフォンをしてネットを使っていた瑠河秀夫を発見。

「この野郎!」

 田所が罵声をあげて瑠河のうなじを両手で掴み、そのまま直上に持ち上げた。

「……うぇっ!」

 そうしたことをまるで予想していなかった瑠河は小さな悲鳴をあげる。

 それと同時、瑠河に触れた田所の手元で爆発音が響いた。

「おおかた、同じクラスのやつが自分に触れると爆発するようにセットしておいたんだろうがよ……」

 田所は、低く唸る。

「今、おれたちは新藤と一時的に共闘していてな。

 やつのスキルで、身を守っているんだ。

 なんなら、あいつの『ナイトシールド』の防御力とお前の『トラップメイカー』の破壊力、ガチで比べてみるか?」

「それをやるのなら、外に出てからだな」

 三峰が冷静な声で指摘をする。

「ここでこれ以上暴れると、店に迷惑がかかる。

 最悪、警察とかに通報が行くかも知れない」

 三峰の言葉に嘘はなく、爆発音を聞いた客や店員たちが何事かと遠くからこちらをうかがっていた。

「ええ。

 すいません。どうも、すいません」

 眞鍋伸吾が周囲にむかって何度も頭を下げている。

「お騒がせして、どうもすいません。

 おれたちはすぐに出て行きますので」

「おれたち以外にも、お前ひとりをとっつかまえるために、八人もの人数でここまで来ている」

 田所は瑠河にメンチを切りながら低い声で囁いた。

「なんなら、おれたち全員対お前ひとりでやり合ってみるか? あぁん?」


 瑠河は、自分のスキルが直接に戦闘を行うことにむいていないことを自覚していた。

 居場所が割れ、こうして自分の身柄を押さえられたら、もうそれで「詰み」なのだ。

「抵抗はしない」

 だから、瑠河は即座にそう宣言した。

「誰かが希望すれば、ぼくのスキルもその人に譲渡する。

 ぼくのゲームはここでおしまい、ここでゲームオーバーだ」

「物わかりがよくて助かるよ」

 三峰は感情の籠もらない声で瑠河にそう告げる。


「……なんともまあ、あっけない」

 スキル『ぼっち王』を発動して他者からは「その場に居ないこと」にされていた知念はなは、一連の騒動を見守ったあと、そう呟いた。

「瑠河くんももう少し粘って、暴れてくれるとよかったんだけどなー」

 そうしたら、もっと多種多様なスキルを自分の物にできたのに。

 そうは思うものの、現状でも知念は瀬川から奪取したスキル『看取り稽古』の能力によってかなりのスキルを自分の物としていた。

 この『看取り稽古』で集めたスキルは、レベルをあげられないという欠点こそあるものの、スキルを使用した場面を目撃するだけのそのスキルをコピーすることができる。

『ぼっち王』のスキルで身を隠したまま、様々なスキルの使用例を目撃すればするほど、知念の手数は増え、有利になるはずであった。

「……しばらくは高見の見物でいいかな、これは」

 知念はなはそう声に出して呟いたが、スキル『ぼっち王』の効果により、その声に反応できる者はいなかった。



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