03-01 それぞれの朝。新堂零時、七重芹香
その日、目がさめると新堂零時はまず自分のスキルのステータスを確認した。
昨日の出来事が夢であればいいな、という願望があったから、一刻も早く確認したかったのだ。
しかし、スキル『ナイトシールド』の詳細な情報はすぐに明瞭に視覚化され、新堂零時のほのかな希望はすぐに潰えることになる。
軽いため息をついてから、新堂零時はあることに気づき、
「なんだこりゃぁ!」
と少し大きな声をあげた。
スキル『ナイトシールド』のレベルは、なぜかたった一晩で三桁を越える急成長をしていた。
「……七重たちの仕業だな」
ベッドの中で、新堂零時は呟く。
それ以外に、思い当たる節がない。
「……あ、そうそう。
昨夜、珠世ちゃんと特訓ってやつをやってみてな」
七重芹香は朝っぱらからかかってきた電話に出ていた。
「そしたらさ、わたしらのスキルはどうやらレベルアップしやすいらしくて、やればやるほどどんどんあがる。
二人ともすぐに夢中になっちゃってねえ。
で、気がついたら二人も八十以上になっていたよ。
新堂くんの『ナイトシールド』のおかげで、思いっきりドツキ合いができたのがデカいと思う」
もちろん、通話相手は新堂零時である。
そして、昨夜の特訓とやらの具体的な内容はといえば、新堂のスキル『ナイトシールド』の結界に守られたままの状態で、七重芹香と路地遙がお互いにスキルを容赦なくぶつけ合ったのだった。
「いやあ、便利だし堅いねえ。
新堂くんの『ナイトシールド』は」
七重は気軽な口調でそううそぶいた。
新堂は、
──……スキルの持ち主自身を守ることができないという重要な短所があるけどな。
と答えた。
その一事さえなければ、『ナイトシールド』の物理防御力は完璧といえた。
新堂のスキル『ナイトシールド』は受動的なスキルであるからか、一度発動したらスキルの持ち主である新堂が意識的に解除するまで継続する性質を持つ。新堂がその場に居なくても、あるいは寝たり意識を失っていたりしても関係がなく継続するのだった。
新堂が心持ち疲れた声で報告してきたところによると、『ナイトシールド』のレベルは一晩で百五十八にまであがっていたという。
「そいつはまた、豪快だなあ」
七重はわざとらしく感嘆して見せた。
「おそらく、レベルだけを比較すれば、今の時点では新堂くんがダントツだと思うぞ」
──それはどうかな?
新堂は七重の言葉に懐疑的な態度で応じた。
──仮にそうだったとしても、スキルの性質がこれだけバラバラだと、レベルだけで比較してもあまり意味はないと思うし……。
「そらま、そうなんだけどね」
七重は苦笑いを浮かべる。
「わたし、朝ご飯がまだなんだけど、用件はそれだけ?」
──ああ、それだけだ。
悪かったな。朝の忙しい時間帯に連絡して。
「いえいえ。
一晩で百以上レベルアップしていたら、そりゃ驚くでしょうし」
──なにが起こったのか確認したかっただけだから、もう切るな。
じゃあまた、学校で。
「はいはい。
また、学校で」
通話を切った七重はスマホを机の上に置き、パジャマ代わりのジャージを脱いで制服に着替えはじめる。




