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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
五日目。
102/109

06-23 女子会。

「まあまあ、飲んで飲んで」

「いえ、飲みますけど、その」

「いやー。

 一時はどうなることかと思ったけど結果オーライってか」

「元のスキルが戻ってきた上に、全員、四つも増えたんだから実質的は勝利なんじゃないでしょうか?」

「勝利だ勝利だー!」

「そのかわり、レベルは一にリセットされちゃったけどね。

 せっかくあそこまで育てたのに……」

「なに、また育てればいいって! そんなもん!」

「……ちょっとっ!」

 木ノ下紬が立ちあがって、大声をあげる。

「もうちょっと静かにはなしてくださいっ!

 ここは、はしゃぐようなお店ではないんですから!」


 日中でもシャッターが降りた店が多いような商店街の一角にある、古風な喫茶店だった。

 今となっては、常連客以外はほとんど訪れないような店だ。

 だが喫茶店は、木ノ下が幼少時から両親とともに通っていた大事な店でもある。


 木ノ下の剣幕に驚いて、西城ら四人の自称魔法少女たちは凍りついていた。

 誰もが沈黙した中、有線の安っぽいJポップだけがむなしく流れる。


「……あ、ああ」

 最初に口を開いたのは、夢川明日夢だった。

「こりゃ……失礼しちゃったかなあ……」

 夢川は肘で隣に座っていた辺見洋子をつついた。

「そうだねえ」

 辺見は、のんびりとした口調でそういう。

「TPOってのがあるし。

 もう少し、ボリュームを落とそうか」


 そんなとき、五人の頭の中に、


《渡来治樹のスキル『シーフ』が叶治郎に譲渡されました。》


 というアナウンスが響いた。


「お」

「あ」

 西城沙名と奥地八枝は小さく呟いて顔を見合わせる。

「叶くんかあ」

「らしいといえば、らしいけど……。

 でも、あのサイコが『シーフ』持ちになったとすると、割とやばいんじゃあ……」


 それを期に、その場にいた五人の少女たちはテーブルに座り直した。

「他の子たちに警告入れておいた方がいいかな?」

「いらないんじゃない?

 あのアナウンス、クラス全員が聞いているはずだし」

「『シーフ』のヤバさは、昨日わたしらがまとめてスキルを奪われたことで知れ渡っているし」

「叶くん、もともと危険視されていたし、好んで近寄る人はいないと思われ」

「『シーフ』使われると、アナウンスがないからなあ。

 いつの間にかスキルが移動している、っていうのが……」

「あと、『見取り稽古』のコピー機能ね。

 ……あのスキル、今、誰が持っているんだっけ?」

「わかっているのは、あの短小鉄砲だね。

 プレデターを返り討ちにして奪った」

「……滅茶苦茶有利じゃん、あの短小デブ」

「今頃、いっぱいスキルコピーしてうはうはだろうなあ」

「プレデターとか叶くんに持たせているよりは安心できるかな?」

「それよりも、うちらのことさね」

 奥地はそういって他の少女たちの顔を見渡す。

「とりあえず、魔法系スキル四種はコンプリートできたわけだが、これからどうする?」

「……攻撃力だけでいえば、かなり強いよね?」

「あと、相性とか考慮してもな。

 攻防両面において物理に強いスキルはいくつか確認されているけど、魔法系の攻撃に有効なスキルっていうのは今のところ見つかっていない」

「……うちらこそ、有利な位置に居るってわけか」

「割とね。

 ……もちろん、油断はできないけど」

「……『シーフ』なんてノーマークのスキルに全滅させられたからね。

 これからも、どんな伏兵が潜んでいるのかわかりゃあしない」

「どのスキルも、癖があるからなあ。

 その癖が枷になることもあれば、状況にハマってうまくいくこともある」

「それで、今後の方針として、なんだが……」

 七重は、そんな提案をしてきた。

「……ここで油断して返り討ちにあうのも馬鹿らしいし、もうしばらく連んで、片っ端からうちのクラスの子たちを取り囲み、ちょっとスキルを分けて貰おうよ」


 スキル『臥薪嘗胆』がありさえすれば、そうしたことも十分に可能であることは、すでに証明されている。

 そしてこの場に居る五人は全員、その『臥薪嘗胆』を持っていた。


「……それが一番確実かな?」

「だねえ」

「この週末で、どれだけのスキルを集めることができるか……というあたりが鍵になるかな」

「『臥薪嘗胆』がある限り、貰っても減るもんじゃないからね」

 木ノ下紬を除く四名は、悪びれることもなく、そんなことをいい合っている。

相手からスキルを奪うことなく事実上そのスキルを複製することができるので、彼女たちは罪悪感はほとんど感じなかった。


「あ、あの……」

 おずおずといった感じで木ノ下は片手をあげ、発言を求める。

「……そういうのはあとにして、先に魔法系スキルのレベルアップの仕方とか教えてもらえませんか?」

 もともと、そういった情報を教えてくれると約束してくれたので、木ノ下は彼女ら四人に同行しているのだった。

「あ、そうか」

 夢川はそういって、大仰に天を仰いだ。

「そういや、そういうこともいってっけかな……」

「どんなスキルでも、基本的には使い続けていればレベルなんて勝手にあがるもんなんだけど……」

 奥地は、木ノ下に説明をしはじめる。

「同じようにスキルを使用するのでも、より精密なコントロールをしようとすると、経験値の溜まりがいいみたい」

 そういって奥地はスキル『ファイヤ・スターター』を起動して指先に小さな火をともした。

「こういう単純な使い方よりも……」

 奥地の指先に出現した炎は細い紐状になり、天井近くまで伸びていく。

 それから、鎌首をもたげて急降下し、ぐるぐると螺旋状にとぐろを巻いた。

「……こういう隠し芸的なやり方をいっぱいしていた方が、レベルアップが早くなる傾向がある……みたいだねえ」

 奥地がいい終えると同時に、その炎は消滅する。

「それよりもさあ、木ノ下さん」

 夢川がそんなことをいいだした。

「よかったら、だけど……このまましばらくわたしらと行動をともにしない?

 人数が多い方がなにかと安心できるし……」


 ……どうしようか?

 と、木ノ下は少し考えてみる。

 そうして誘ってくれるのは、正直なところ嬉しいのだが……。

「ごめんなさい」

 しばらく考えた末、木ノ下はそういって四人に頭をさげた。

「みんなといっしょにいても、迷惑しかかけないと思うし」

 木ノ下は運動神経にまるで自信がない。

 どんなに強力なスキルを持っていたところで、それを使いこなせなければ意味はないのだ。

 木ノ下は、目の前に居る少女たちの足を引っ張りたくはなかった。

 ……というのは表向きの理由で、実のところ、木ノ下は、この自称魔法少女の四人組を心の底から信頼することができなかった。

 彼女らが自分を裏切るだろう……ということについては、まるで心配していない。

 性格を考えれば、そういうことだけはしない子たちなのだ。

 それよりも木ノ下が心配だったのは……この少女たちの単純さだった。

 悪意がなくても、どこか肝心なところで大きなポカをし、行動をともにしていれば自分のそれに巻き込まれてしまうのではないか……という漠然とした不安。

 その不安が払拭できないため、木ノ下はこの少女たちと組むことを選択肢からはずした。


「……そうか」

 西城は、感慨深げに頷いた。

「まあ、いろいろな考えがあるんだろう。

 それじゃあ、さ。

 せめて、例の『臥薪嘗胆』を使って、木ノ下さんのスキルをコピーさせてくれないかなー……なんて……」

「もっと、駄目です」

 木ノ下は、きっぱりと告げる。

「いざというときに、自爆するだけのスキルですよ?

 そんなスキルをいっぱい増やしても、誰の得にもなりません」

 木ノ下がもとから与えられているスキル『パニックボム』は、自衛手段として割り切ればかなり強力なスキルなのだが……木ノ下は、その破壊力の大きさを恐れている。

 自分の意志で他人にこの『パニックボム』をコピーさせるなど、論外だった。

「……そっかぁ……」

 西城は、ねだった玩具を買って貰えなかった子どものような表情をした。

「いやあ、残念」


 それでも、力ずくで奪うという発想は最初から持っていないようだ。

 仮に奪おうとしても、うまくはいかなかったろうが。

 なにしろ現在所持しているスキルの数では、木ノ下がこの場に居る誰よりも勝っている。

 木ノ下が本気で抵抗してきたら、他の四人が束になっても勝てる公算がなかった。


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