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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
五日目。
101/109

06-22 男子トイレにて。

「つまり、スキルを譲渡したあとで、お前のスキルで復活させれば……」

「いくらでも、スキルを複製することができる、と……」

 須賀泰司の説明を聞いたあと、琉河と渡来はそんなことをいいあって顔を見合わせる。

「理屈としては理解できるんだが……」

 渡来は、微妙な表情をしてそういった。

「……そうやって際限なくスキルを増やしていったら、このゲーム、いつまでも終わらないんじゃないか?」

「……中間試験までには、終わって欲しいな」

 琉河は、誰にいうこともなくそんなことを呟く。

「いつまでもこんな状況じゃあ、落ち着いて勉強なんてできるわけがない」

「やなことを思い出させるなって!」

 渡来が、大きな声を出す。

「そんなことよりもだな。

 このゲームを一刻でも早く終わらせるためにも、おれたちのスキルをだな……」

「いや、そいつはおかしい」

 叶が、冷静な口調で指摘をする。

「まず第一に、君たちのスキルを復活させることとゲームの進行はまるで関係がない。

 強いていうのなら、一度他人にスキルを奪われたやつが復活するのは、どちらかというとゲームの進行を遅らせる方向だ。逆行だ。

 第二に、仮にスキルを復活させたにしても……すでに手の内がおおやけになってしまっている君たちでは、あまりにも不利すぎる。

 特に、琉河。

 君の『トラップメイカー』は、よっぽどうまく使わないとまた大勢で狩られるだけだぞ」

「こ、今度は!」

 琉河も、大きな声をあげる。

「もっと慎重にやるさ!

 これまでは、少し調子に乗りすぎただけだ!」

「そう願いたいもんだね」

 そういって、叶は、なにがおかしいのか軽く笑い声をあげた。

「まあ、いいや。

 須賀。

 まずはこの二人のスキルを復活させてくれ」

「あ、ああ」

 須賀は、躊躇いながらも素直に頷いた。

 この場の主導権は、唯一攻撃力を持つスキルを所持するこの叶に握られている。

 もっとぶっちゃけていえば、叶がこの場に居る者たちを瞬殺することが可能なスキルを持っている以上、「逆らう」という選択肢は残されていないのだった。

 須賀、琉河、渡来の三人は、眞鍋を自爆させた際、この可能がまるで躊躇するそぶりを見せなかったことを鮮明に記憶している。

 この叶は、いざとなればかなり思い切った手段に訴えることも辞さない人間だ……という認識を強く抱いていた。


「……復活させたぞ。

 二人とも」

 しばらくして、須賀は他の三人にそう告げる。

 スキル『臥薪嘗胆』を使用した、ということであった。


「おお、本当だ!」

「ちゃんとステータス画面が開ける!」

 琉河はと渡来は、歓声をあげた。

「それでは、次は……」

 単純に喜んでいた二人に対して、叶はそう命じた。

「……そうだな。

 琉河は、『トラップメイカー』のレベルをあげておいてくれ。

 渡来は、まずぼくから『ランサー』の経験値を少し奪って、スキルが奪えるようになるまで『シーフ』のレベルをあげる」

「……いいけど……」

「意味あるのか、それ?」

 琉河と渡来は、顔を見合わせる。

「いいから、やる」

 十字槍の穂先をかざして、叶はおだやかにいった。

 琉河は個室の壁にべたべた手で触りはじめ、渡来は叶の肩に手をかけた。

「いいか?

 奪うのは、あくまでも『ランサー』の経験値な。

 間違っても『リヴェンジャー』の経験値は奪うなよ」

 叶は、そう念を押すことも忘れなかった。

「わかっているよ。

 ……ほい。

 もうレベル五を越えた」

 そういって、渡来は叶の肩に触れていた手を離す。

「それじゃあ、渡来は『シーフ』を使って須賀の『臥薪嘗胆』を奪う。

 そのあと、渡来が『臥薪嘗胆』で須賀の『臥薪嘗胆』を復活させる」

「……やるのはいいけど……」

 渡来が、怪訝な顔をする。

「意味あるのか、それ?」

「あるよ」

 叶はそういってにやり笑う。

「『シーフ』を使ってスキルが移動した場合、他のときとは違ってアナウンスがないんだ。

 他のクラスメイトに対して、『臥薪嘗胆』のスキルが複製されたことを秘匿できる」


 叶の指示に従って渡来は須賀の『臥薪嘗胆』を奪ったのちに、復活させる。

 これで、渡来は『シーフ』と『臥薪嘗胆』の二つのスキルを持ち、須賀は元通り『臥薪嘗胆』を持ったままの状態となった。


「次は、渡来の『シーフ』をぼくに譲渡してくれ」

 叶はそう指示を出した。

 渡来はいわれるままに譲渡画面を出し、叶がそれに触れる。


《渡来治樹のスキル『シーフ』が叶治郎に譲渡されました。》


「それで、この『シーフ』でまず琉河の経験値を貰って、レベルが五を越えたところで、琉河の『トラップメイカー』も貰う。

 最後に、渡来から『臥薪嘗胆』のスキルもいただく」

 そんなことをいいながら、叶は琉河に二度触れ、次に渡来に触れる。

「うん。

 これで、三人分のスキルは確かに頂いた。

 あとは勝手にやってくれたまえ」

 そんなことをいい残して、叶は男子トイレから去っていく。


「……はぁ?」

「え、今の……」

「……命があっただけも、めっけもんということうだな」

 残された三人は、それぞれの反応を示した。


「まあ、気を取り直して」

 須賀が落ち着いていたのは、先ほど渡来と琉河のスキルを復活させる際、

「このゲームが終わるまで、須賀には危害を加えない」

 という言質を取っているからだった。

 少なくともこの二人は、ゲームが終了するまで須賀に危害を加えることを考慮しなくてもいい。

「どうする? 渡来。

 もう一度、スキルを復活させるか?」

「するよ、する!

 もちろんだろ!」

 渡来は、勢い込んで須賀に詰め寄る。

「ここで終わったら、単なる馬鹿じゃないか!」 

「またスキルを復活させるとなるも、もう一回、おれのいうことを無条件で受け入れて貰わないといけないんだが……。

 そいつは、覚悟の上か?」

「……そりゃあ……」

 渡来は、少し怯んだ様子を見せる。

 が、結局は、

「ああ、ここまで来て、引けるか!

 今度はなにを約束させようっていうんだ!」

「そうだな……」

 須賀は、数秒だけ考え込んだ。

「……叶に倣って、『シーフ』を貰おうか。

 もちろん、そのあとには、すぐに『臥薪嘗胆』で『シーフ』を復活させるつもりだが」

「……それでまた、約束を増やすのかよ!」

「それは考えていなかった」

 須賀にそうつっこまれて、渡来は憮然とした顔になる。

「だけどまあ、最後の約束は、なにかくだらないものものがいいな。

 あとでジュースを奢るとか」

「本当だな!

 嘘じゃないな!」

 くどいほど念をおしたあと、渡来は結局須賀にいわれた通りにする。


《渡来治樹のスキル『シーフ』が須賀泰司に譲渡されました。》


 これで、須賀が持つスキルは『臥薪嘗胆』と『シーフ』のふたつになった。

 その直後に、須賀は約束通りに渡来の『シーフ』を復活させる。


「琉河はどうする?」

 須賀は、今度は琉河に声をかける。

「琉河の『トラップメイカー』をくれるというのなら、二回、スキルを復活させてやってもいいが……」

「選択の余地、ないじゃん!」

 琉河はつっこみを入れた。

 須賀の申し出を拒否すれば、琉河はスキルを失ったまま。

 受け入れれば、かろうじて『トラップメイカー』は戻ってくる。

 しかし、この交渉の主導権はあくまでスキル『臥薪嘗胆』を持っている須賀の方にあった。


 結局、琉河も須賀の申し出を受けた。

 須賀に残っていた経験値根こそぎと『トラップメイカー』を奪われ、そのあとに須賀の『臥薪嘗胆』で『トラップメイカー』を復活して貰う。


 そこまでして、

「これで、貰うべきものは貰ったから」

 という言葉を残して、須賀も男子トイレから去っていく。

 二人とも、

「このゲームが終わるまで、須賀には危害を加えない」

 という約束を須賀と交わしていたので、そのまま見送るしかなかった。


「おい、どうする?」

「と、いわれてもなあ」

 残された琉河と渡来は、なんともいえない表情で顔を見合わせる。

 とりあえず、一度失ったスキルが復活できたことは喜ばしい。

 だが……。

「あれだけのいろいろやりあって、ようやくマイナスがプラスマイナスゼロになっただけだよなあ」

「『臥薪嘗胆』がないと、あの増殖法はできないしな……」

 二人は、力がない口調でそんなことを呟きあった。


 叶にしろ須賀にしろ、潜在的な競争相手をより有利にしてくれるほど親切ではなかった、というわけだった。


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