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4月3日水曜日 part1

長くなりそうなので、分割します

★目覚めは吸血と共に★


全身に甘い痺れが行き渡り、朝であることを自覚した。


僕の胸の上には、密着するように温かい生命体が乗っかっていた。


そして、彼女は、僕の首筋を丁寧に舐めていた。


黒那:「ああ、美味しかった。うっかり、自分の血液をおにいさまの中に出してしまいました」


僕の甘い痺れは、そのせいか、と思った。


八弥:「おはよう。黒那ちゃん。ダメだよ、僕の許可なしに吸血なんて。。。それに、そんな薄着で。密着して。黒那ちゃんは、もう10歳でしょ?」


黒那:「おにいさま。兄妹でそのようなことを気にする必要はありません。それから、おはようございます。おにいさまも、わたしの血を好きな時に吸っていいんですよ?」


うーん。

なんでだろ。

黒那ちゃんの血は吸う気になれなかった。

やっぱり九句の血が美味しいからね。

でも、そんなこと言ったら傷つくかもしれない。


八弥:「僕は血液パックで大丈夫だよ。それより、顔を洗ってくる。換気をしておいてくれる」


黒那:「はい!おにいさま」


・・・・・・

・・・

・・


僕が黒那ちゃんを吸血鬼にした後、黒那ちゃんは僕と同棲することを希望した。

なんでも、命の恩人である僕に恩返しがしたいのだとか。

それに、黒那ちゃんは僕の血しか飲むことが出来ないから、僕たちは、運命共同体だ。

吸血鬼にとって、眷属というのは、家族のようなものだと白炎先輩も言った。


そういう理由で、本当に急遽僕の家に様々な品が運び込まれた。


黒那:「はい、あーん。おにいさま、高級な珈琲ゼリーを取り寄せました。わたしがいる以上、ボルト家の全面的バックアップが約束されています。これからは、贅沢な暮らしをして良いんですよ?」


八弥:「恥ずかしいよ。黒那ちゃん。それから、贅沢は敵だよ。僕達は質素倹約を心掛けるんだ。でも、黒那ちゃんは好きなものを食べていいからね」


黒那:「おにいさま、その、黒那ちゃんっていうの、辞めましょう。黒那と呼び捨ててください」


八弥:「そう?じゃあ、黒那。僕のことも、八弥でいいよ」


黒那:「ありがとうございます。八弥おにいさま。でもわたし、おにいさまが欲しかったんです。だから、おにいさまって呼べるのが嬉しいんです」


黒那ちゃんは照れたように笑う。

本当に元気になって良かった。


黒那ちゃんは七歳のときから病気で学校に行けてない。

辛い闘病生活だっただろう。

今日から、僕の眷属として、僕のクラスに通うことになったらしい。

なんでも、ボルト家の力でねじ込んだとかなんとか。

本当にすごい権力を持っているんだね、ボルト家。


黒那:「でも、おにいさまより、おねえさまとお呼びした方が良いでしょうか?そっちのほうがしっくりくるのですが」


八弥:「それはだめ。誤解を生むからね」


黒那:「美しきおにいさま。我が主。わたしに出来ることがあれば、なんでも言ってくださいね」


少々芝居がかった様子で黒那が言った。


八弥:「では、勉学に励み、元気で過ごすように」


僕も主人らしく威厳を見せた。


黒那:「おにいさま!なんて可愛らしいお声」


あれ?

僕の威厳は?


八弥:「まあ、冗談はおいておいて、まずは黒那に僕と九句のことを知ってもらいたい」


黒那:「九句とは?誰のことですか」


八弥:「九句は僕の親友で将来を約束しているんだ」


そう、将来ギルドを創って、ダンジョン攻略するっていう約束をね!


黒那の瞳から光が消えた。

なんだか、怖い。


黒那:「なんですか?約束ですか?え?もう既に決まっている人がいるんですか?だめです。妹として認められません。だめだめだめだめだめだめ殺す殺す殺す」


黒那が壊れた機械のように何か言っている。

どうしたんだろう。

僕は親友を紹介したいだけなのに。


八弥:「黒那にもさっそく紹介するから、楽しみにしておいてね。とっても優しい人だから。心配いらないよ。黒那を助けに行くときも、手伝ってくれたんだ」


黒那:「え?そんなことが。じゃあ、殺せないじゃないですか?どうしたらいいですか・・・」


八弥:「???黒那?もしかして、人間が獲物に見えるとか、そういう症状があるの?」


黒那:「いえ、そんなことはありませんよ」


八弥:「じゃあ、なんで殺すなんて物騒なことを」


黒那:「おにいさまの貞操を守る為です」


どういうこと!?


八弥:「ちょっと待って、誤解だよ。僕と九句はそんな関係じゃないからね」


黒那:「そうなのですか?本当ですか?信じていいんですか?信じますからね!」


黒那はどんな勘違いをしたんだろうか。

僕の貞操って。

僕男だよ。

黒那は、もしかしたら、少し特殊な子なのかもしれない。

まあ、小学生から三年も病院に閉じ込められていたら、ちょっとくらいおかしくもなるか。


黒那:「おにいさま。魔女っ子印の縄文堂のカステラもありますよ。輸入品ですけど、直送ですので賞味期限は大丈夫です。せっかくだから食べてください」


八弥:「すごいね。そんな高級品。ウチでは食べられないよ」


黒那:「これからは違います。ウチは分家といえどボルト家。お金に不自由することはありません。おにいさまも、なんでも欲しいものをプレゼントします」


八弥:「じゃあ、冬に向けて、黒那の手編みのマフラーが欲しいな」


黒那:「え!?わたしの。。。そんなものでいいのですか?」


八弥:「うん。昨日白炎さんに聴いたんだよ。編み物が趣味なんだって。だから、僕にも作って欲しい」


黒那は顔を赤くして言った。


黒那:「作ります!マフラーも帽子も、手袋も作ります。おにいさまの私服も全部わたしがコーディデートします」


え、そんなことまでしてくれるの?


八弥:「服は、、、自分で選びたいかな」


黒那:「し、仕方ないですね。でも候補はわたしが選びます。これが妥協点です」


まあ、女の子の方がセンスが良いって聴くし、いいのかな。


八弥:「あんまり派手なのはダメだからね。地味で、目立たない系が好みかな」


黒那:「やっぱり、吸血鬼と言えば黒ですよね。ロックでパンクな感じで固めますか。露出は多めで。鎖骨とへそ出しは外せませんね。おにいさまの魅力を最大限知っている私の使命です」


だめだ。

完全に暴走している。

もしかしたら、黒那も中で二な病気なのかもしれない。


八弥:「そういえば、黒那。吸血鬼になって、変化はあった?」


黒那:「はい。まず、病気で苦しかったのが全くなくなりました。完全に治癒されたようです。それから、日光はかなり痛いです。銀製品にも触れられません」


八弥:「そっか。やっぱり僕と同じように制約がついちゃったか」


黒那:「それから、スキルとして、影を使えるようになれました」


八弥:「影?どういうこと?」


影を使うってなんだろう。


黒那:「影の中に潜んだり、影に形を与えたり。影を操って攻撃したり、ですかね」


なんだか便利そうな能力だ。


八弥:「それは、強いのかな?吸血鬼っぽい能力だとは思うけど」


黒那:「わたしは【魔女】の家系の出。だから、魔の力には上向きの補正がつく血統にあります。弱いことは無いかと思いますが」


八弥:「いざとなったら、影の能力で逃げるんだよ」


黒那:「おにいさまを置いて逃げたりできるわけがありません。わたしたちは運命共同体。おにいさまが滅びれば、わたしも遠からず滅びます」


吸血鬼は、死ぬ、と言わずに、滅びる、と言うらしい。


八弥:「じゃあ、強くならなきゃね。黒那を守れるくらい」


黒那:「わたしも強くなります」


方針が決まった。

とりあえず、学校に行って、能力の向上を目指そう。


八弥:「話さなきゃいけないことがたくさんあるんだ。黒那。僕の両親の話とか、子供の頃の話とか、九句との約束についてとか」


黒那:「時間はたっぷりあります。それこそ、永遠にも近い時間が。おにいさまのお側にずっと侍り、わたしが誰よりもおにいさまを理解します」


八弥:「そんなに僕のことを優先する必要はないよ。黒那は自分の好きに生きてくれたらそれでいいんだ」


黒那は少し真面目すぎるきらいがあると思った。


時計を見ると既に九句が到着している頃だ。


八弥:「大変だ。九句が待ってる。早く出発しよう」


僕達は急いで玄関へ向かった。


★九句と黒那と・・・★


九句:「で?その娘が噂の妹ちゃんか?」


八弥:「おはよう。九句。こっちは黒那。僕の初めての眷属だよ」


黒那:「・・・おはようございます。九句先輩。・・・その首の絆創膏はなんですか?」


黒那は目ざとく僕の吸血痕を見つけた。


九句:「蚊に刺されたんだよ。季節外れの蚊にな」


九句はそう言った。


黒那:「へー。そうですか。この時期に・・・蚊がいるんですか」


黒那の瞳から光が消えているように見える。

なんだか寒気がしてきた。


黒那は黒のゴシックロリータの衣装を着ている。

制服はまだ間に合っていないから、私服での登校となる。

僕とお揃いの黒い日傘をさしている。


八弥:「さっそくで悪いけど、教室まで瞬間移動をお願い」


九句:「・・・わかったよ。ほら、円陣組むぞ」


僕達は円陣を組む。

九句は、自分の触れているものを一緒に飛ばすことができる。

手を繋ぐのは安定性を増すためだそうだ。


教室につくと、クラスメイト達の視線が突き刺さる。

突然現れたら、誰だってびっくりするか。


その視線は、ゴスロリの黒那に注がれている。

(そりゃ、目立つよね)

中学一年生の中に、10歳の少女が混じるんだ。

注目もされるというところだろう。


事情は、昨日九句がクラスの皆にも説明してくれたという。


???「うまくいったのか!?やるな!月夜」


知らない男子生徒が話しかけてきてくれた。


八弥:「えっと。君は?」


小次郎:「俺は斎藤小次郎。剣術スキル持ちの剣士だ。三小からきたんだ。お前の話を聴いて、感動したぜ」


八弥:「斎藤君。昨日は突然のことで驚かせちゃったかな。なんとか、命を救うことができたよ。こっちが、僕の眷属になった黒那だよ」


黒那:「はじめまして、斎藤先輩」


小次郎:「いや、俺、最初は吸血鬼って聞いて怖がってたんだ。得体のしれない奴だと思っていた。ごめんな」


そんな風に思われてたんだ。

そうだよね。

吸血鬼だもんね。

でも、誤解が解けたようだ。


鉄夜:「なになに、おはよ!斎藤君じゃん。仲良くなったの?」


小次郎:「いや、昨日のアレ聴いちゃったら、ほっとけねぇっての」


ちょっとずつだけど、僕に好意的なクラスメイトが増えてくれたらいいなと思った。

黒那もいるし、居心地の良いクラスにしたい。


大和:「おはよーにゃ。あ!月夜君。七先生ぶち切れだったにゃ。大変にゃ」


ああ、逃げ出したい。

自分のせいとは言え、二日目からサボったのは不味かっただろうか。


八弥:「おはよう、テツ、灰猫さん。気が重いよ」


黒那:「わたしが嘆願します。おにいさまはなにも悪くありません。全部わたしが悪いのです」


大和:「黒髪のゴスロリっ娘!?大好物にゃ!」


黒那:「!?獣人!寄らないでください!」


鉄夜:「へー。可愛い子じゃん。ツッキーやったな」


黒那:「おにいさま。助けてください。この獣人の雌が離れてくれません」


八弥:「黒那。言い方に気をつけようね。それから、灰猫さんも僕の眷属に意地悪しないで」


大和:「ちぇっ!意地悪じゃないにゃ。ただ、可愛い子を堪能していただけにゃ」


小次郎:「ところで灰猫さん。その猫耳触らせてもらえないか?」


突然斎藤君が言い出す。


小次郎:「いや、ウチ猫飼ってて、小さい頃からずっと猫派なんだ」


斎藤君は顔を赤らめる。


大和:「死にたいのかにゃ?かかってくるにゃ」


灰猫さんが爪を構えた。

指の先からニュッと出てきた爪は鋭利で、相当痛そうだ。


九句:「そこまでにしとけ。斎藤も、諦めろ。女子の耳に触るなんて、セクハラだぞ」


小次郎:「確かに。。。ごめん。俺が間違ってたよ」


とりあえず、場は収まった。


朝のホームルームに来た七先生は普段通りに見えた。


七:「月夜君の眷属として、このクラスに編入することになった黒那・ボルトさんです。自己紹介して」


黒那:「黒那・ボルトです。ご存じだとは思いますが、月夜様に命を助けられました。吸血鬼になったことに、感謝しています。よろしくお願いします」


と、黒那の紹介が行われた。

そのまま僕へのお咎めは無しかと思った。

だけど、最後に、


七:「それでは、問題を起こした月夜君は、放課後職員室に来るように。わかってるわよね?ね?」


許してはくれないようだった。


★お説教★


七:「全く。月夜君は何もわかっていない。吸血鬼についてもっとよく知らなくてはいけないわよ」


僕は七先生のお説教を聞いていた。

無限ループだ。

もう一時間も拘束されている。


黒那:「先生。わたしが悪いんです。わたしの為におにいさまは」


七:「いいえ、責任は月夜君にあります。安易に眷属を作った責任もあります」


八弥:「うう」


なにも反論できない。


結局解放されたのは二時間後だった。


昨日の授業の説明等もあったから仕方ない。

それでも二度手間で教えてくれる七先生に感謝しなければならないだろう。


授業では、軽く個人の能力を確認したようだ。

僕も自分で能力を確認するように言われいる。


黒那:「おにいさま。放課後はどうなさいますか」


九句:「今は新入生歓迎週間だ。部活動の勧誘でどこも湧いている」


教室で僕達は話し合う。


九句は二時間も待っていてくれたのだ。

この親友に感謝しなければならない。


八弥:「それにしても、何の部活に入るべきだろう?」


九句:「なんかやりたいことはないのか?というか、俺達の目標はギルド創立だけどな」


そうだ。

その話を黒那にしておかないと。


八弥:「黒那。僕と九句はギルドを創るつもりなんだ。そこに黒那も入ってほしい」


黒那:「わかりました。ギルドというと、ダンジョンの攻略でしょうか」


八弥:「うん。それもあるけど。色んな事がやってみたいんだ。そのための仲間を集めないとね」


必ずしもダンジョン攻略の為だけのギルドじゃない。

多方面で活躍して、色々な世界に触れる。

そんなギルドを目指したい。


九句:「強い仲間集めなら、生徒会だな」


九句の口から出た一言。

生徒会。


確か、生徒会長は、【花】のスキルを持つ、桜坂三咲さくらざかみさき先輩だったっけ。


八弥:「どうして生徒会なの?九句」


九句:「能力の高い奴が生徒会役員に選ばれるからだよ。まあ、性格が良いかどうかはわからないけどな」


八弥:「うーん。やっぱり、能力で仲間を選ぶのは嫌だな。そう思わない?」


九句:「それは確かにそうだ」


黒那:「では、自分たちで部活を作るのはどうですか?いずれギルドを創る時の経験にもなります」


自分たちで作る部活か。

アリかもしれない。


八弥:「どう思う?九句。僕はやってみてもいいと思う」


九句:「わかった。俺も賛成だよ、八弥」


こうして、僕達は部活を作ることに決まった。

まずはメンバーを5名集めなければならない。

部活を作る条件が最低5名いることだからだ。


八弥:「活動内容はどうしようか?」


九句:「能力向上と、ダンジョン攻略、あたりが良いと思うぞ」


八弥:「じゃあ、ダンジョン部、かな」


九句:「ああ、いいと思う」


ダンジョン部。

僕達の部活。

メンバーが集まるといいな。


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