4月3日水曜日 part2
★生徒会★
七:「部活を作るー?!」
職員室に舞い戻り、七先生に相談した僕たち。
先生は最初は呆れていたが、僕たちが本気だと分かり、真剣に考えてくれた。
七:「今の新入生歓迎週間の内に、人数を確保した方がいいわ。それ以降だと、既に決まっちゃってる人ばかりになるから」
八弥:「そうですよね。募集はしていいんですか」
七:「それは許可は必要ないわ。兼部でもいいから、5名集めて来なさい」
八弥:「わかりました。ありがとうございます」
僕たちは職員室をあとにした。
教室に戻る。
九句:「とりあえず、拠点は一年A組で良いよな。チラシを作ろう」
八弥:「チラシ?配るの?」
黒那:「他の部活もプラカードやチラシを使っているみたいです。あと、掲示板に張り紙をするとか」
八弥:「そっか、それじゃあ資材が必要だね」
黒那:「おねえさまに相談します。おねえさまは生徒会の副会長ですので」
八弥:「え!?そうだったの?」
白炎先輩、副会長だったのか。
黒那:「余っている紙やペンなどもあるでしょう。印刷もしてくれると思いますが」
九句:「それは助かるな。早速貰いに行こう」
僕たちは生徒会室に向かった。
その時点でもう午後の四時。
最終下校時刻は午後五時だ。
あと一時間しかない。
九句:「紙さえ貰えれば、自宅で仕上げてくることもできるな。今日は紙の確保までを目標にしよう」
八弥:「そうだね。僕が時間使っちゃったから、ごめんね」
九句:「新入生歓迎週間は来週まである。まだ焦る時間じゃないさ。気にするな」
黒那:「生徒会室は・・・あ!ありましたよ、おにいさま」
黒那が生徒会室を発見した。
僕も来るのは初めてだ。
なんだか、緊張してきた。
九句:「ここは、白炎先輩と縁のある八弥が頼んだ方が上手くいくと思うんだが、どうだ?いけそうか」
八弥:「わかったよ。やってみる」
僕は意を決してドアをノックした。
???「はい。どうぞ。お入りください」
部屋に入ると、その豪華さに圧倒された。
赤い絨毯は高級品だと一目で分かる。
部屋に飾ってある調度品も、モノクロで質が良いものばかりだ。
お洒落な洋館に迷い込んだかのように感じた。
正面、大きな机の前に座っていたのは、桜坂三咲先輩。
つまり、生徒会長だ。
美咲:「あら、一年生?こんな時期に、なにかしら?」
八弥:「あ、あの、僕たち、部活を作りたくって。。。それで、、、」
生徒会室にいる役員たちの視線を集める。
白炎:「あ!月夜君じゃないか!美咲!彼がボクの妹を救ってくれた月夜君だよ。話しただろ」
部屋にいた白炎先輩が気づいてくれた。
本当に副会長だったんですね。
???「ほう?吸血鬼が人間を助ける・・・か」
そういったのは金髪のセミロングの男子生徒だった。
野性味を感じさせる。
耳には碧いピアスをしている。
校則違反にならないのだろうか?
生徒会室にいるということは、彼も生徒会役員?
リボンの色はピンク。
2年生か。
八弥:「たしかに、僕は吸血鬼ですが、人間の味方です」
僕はそう言い切った。
白炎:「大我。月夜君を侮辱するなら、ボクが相手になるけど?」
白炎先輩が語気を強めて言う。
彼は大我というのか。
大我:「失礼。オレは四宮大我。二年生で書記をしている。ボルト先輩とも縁があってな。欧州に実家があるんだ。だから、吸血鬼が人類の味方っていうのに、ピンとこなくてな」
美咲:「確かに、欧州の吸血鬼は人間を支配している地域もあるわ。でも、だからといって、すべての吸血鬼を差別してはいけないわ」
八弥:「会長・・・」
美咲:「悪かったわね。私が代わりに謝罪します。それと、黒那ちゃんを救ってくれて、ありがとう」
黒那:「美咲おねえさま。黒那は今、とても幸せです。だから、おにいさまに協力してあげて欲しいです」
黒那は、三咲先輩とも知り合いだったようだ。
???「あのー。それで、何が必要なんですか?こっちで用意しちゃいますよー」
間延びした声が聴こえる。
そこにいたのは、ツインテールのピンクの髪の二年生。
同じく、ピンクのメガネを掛けている。
文系の女子って感じだ。
柚子:「あ、私、五幸柚子です。二年生で、会計をやってます。四宮君は態度は横柄ですが、根は優しいんですよ」
大我:「五幸、余計なことを言うな」
柚子:「同じ二年生仲間じゃないですかー。いい加減私とも仲良くしましょうよー」
大我:「馴れ合いは好かない。オレは個人の武を尊ぶ」
四宮先輩は、戦いが好きなのかもしれないな。
とりあえず、今必要なのは、紙とペンだ。
それから、出来上がった後印刷を頼みたい。
それを伝えると、
柚子:「それくらいなら簡単ですよー。紙は、そこの棚に在庫があるのでー。好きなの持っていってくださいー」
柚子:「はい、これ油性マーカーです。好きな色を使ってくださいねー」
次々と必要なものを持ってきてくれる五幸先輩。
八弥:「ありがとうございます。助かります」
美咲:「新部設立。応援しています。頑張ってくださいね」
八弥:「はい。ありがとうございます、会長」
僕たちは、生徒会室をあとにした。
★放課後★
キーンコーンカーンコーン。
鐘の音が鳴る。
もう最終下校時刻だ。
九句:「仕上げは家でやろう。どっちの家でやる?」
八弥:「僕の家でやろう。九句、跳んでくれる?」
九句:「ああ、必要なものを持ったか?」
黒那:「はい、準備はできています」
三人で円陣を組み、僕のマンションまで瞬間移動する。
八弥:「ああ、もう五時か。お腹すいたね」
九句:「給食は量が少ないしな。何か食べるか?」
黒那:「ユーバーイート頼みますか?すぐに届けて貰えますよ?」
八弥:「いや、外食はやめとこう。お金も節約しなきゃだし。もう暗いから、僕が買い物に行ってくるよ」
黒那:「おにいさまが行くならわたしも行きます」
九句:「待て、それなら瞬間移動で行ったほうが早いだろ」
八弥:「いや、せっかくの夜だから、少し歩きたいなって」
九句:「なるほどな、それなら晩飯の準備は任せた。俺はこっちの仕上げをやっておくよ」
八弥:「ありがとう。九句」
僕は黒那を連れて近くのスーパーへと歩く。
四月になったけど、まだ夜は冷える。
八弥:「黒那、寒くない?なにか羽織るものもってこようか?」
黒那:「大丈夫です。おにいさまにくっついていれば、暖かいです」
傍からみたら兄妹に見えるのだろうか?
それとも、子供のじゃれ合いか。
まさか、恋人同士には間違えられないだろう。
それよりも、僕に懐いてくれる黒那が可愛い。
でも、九句との二人の時間も欲しいな。
ほら、吸血とか吸血とか吸血とかしないとだし。
いや、頭の中が九句の血を吸うことだらけになってきた。
だめだ。
九句も貧血なんだし、血液パックで我慢しないと。
なんだか悲しくなってきた。
今日はスーパー【トテモデッカイドウ】の特売日だった。
なんでもお肉が20%引きだとかなんとか。
八弥:「うわー。いつも1000円クラスで手が出せなかったお肉に手が届きそうだよ」
黒那:「おにいさまの財布はわたしが預かります。そしてお金もわたしが管理します」
八弥:「え!?なんで」
どうやら僕は管理される側らしい。
黒那:「おにいさまに任せていたら本気で質素な生活しか送らないでしょうし。わたしがおにいさまの生活水準を上げます。異論は認められません」
八弥:「あんまり、無駄遣いはダメだからね?」
黒那:「無駄じゃありません。投資です。身体が資本なんです」
黒那の言うことにも一理ある。
八弥:「じゃあ、今日は鶏の胸肉でも買おうかな」
黒那:「いえ、牛のしゃぶしゃぶにしましょう。国産の霜降りが2000円台で買えます」
八弥:「霜降り!?なんて贅沢なんだ・・・」
黒那はポイポイと肉をカゴに入れていく。
ええい、もうどうにでもなれ。
八弥:「家にポン酢はあるけど、このゴマドレも買っていいかな」
黒那は親指を立てた。
OKらしい。
やっぱりしゃぶしゃぶにはゴマドレだよね。
八弥:「九句はお好み焼きソースかけると美味しいって言ってたな」
黒那:「それは、邪道ですね」
八弥:「でも、今日二時間も待たせちゃったからね。お詫びのケーキ買ってこう。ああ見えて、九句って甘いもの好きなんだよ」
黒那:「じゃあ、一番安いやつ買います。量産型の賞味期限ギリギリのを狙って」
八弥:「なんで!?」
黒那は九句に対して厳しいことがわかった。
なんだかんだ買い込んだら、8000円もかかってる!?
やばい、今月厳しいかも。
★襲撃?★
僕が荷物を持って、二人で帰る。
シンと静まり返った帰り道。
なんだか、今日は冷えるな。
黒那:「おにいさま、なんだかおかしいです」
八弥:「おかしい?なにが?」
黒那:「人の気配がしません。なにか、結界のようなものに囲まれています」
結界?
なんでまた、そんなものに。
八弥:「それって、、、やばいやつ?」
僕は先日貰ったナイフ【紅】を取り出す。
何かあっても大丈夫なのように。
黒那のことは僕が守らなければならない。
黒那:「わかりません。でも、視線を感じます。っそこ!」
黒那が影で出来たナイフを投擲した。
路地裏の塀の上。
いつの間にか男性が座っていた。
黒那のナイフは刺さったが、その男性の肉体は再生し、ナイフは抜け落ちた。
???「痛えじゃねえか。いきなり、ご挨拶だな」
双眸は紅。
吸血鬼だ。
???「目覚めたようだから、様子見に来てやったんだ。少しは楽しませてくれるんだろうな?」
男性が片手を上げると、空間から屍が何体も現れる。
屍だ。
???「さあて、どのくらい強いのかな。俺に見せてみろよ」
男性吸血鬼が挑発する。
屍が迫り、僕たちは取り囲まれる。
彼らは明確にこちらに敵意を抱いていた。
このままでは、殺されるかもしれない。
僕は紅を強く握りしめた。
闘うしかない。
こんなことなら、もっと自分の能力を把握しておくべきだったか。
だが、この紅には、強い力を感じる。
僕は逆手に構えた紅で、一番近くの屍を斬った。
腐った血が噴き出る。
豆腐のように、肉体が切れた。
この紅というナイフは、かなり危険なものだと理解した。
???「おいおい、もうそんな装備を手に入れてるのか?やるじゃねえか」
男性吸血鬼はどこか楽し気だ。
本気で僕たちを殺すつもりは、ないのかもしれない。
これは、お遊びなのだろう。
だったら、
八弥:「全力を出す!」
後ろは黒那が守ってくれている。
僕は前方の屍を屠る。
今まで、一度も全力を出したことは無かった。
だが、身体はしなやかに、その時を待っていた。
一瞬で屍に近づき、紅を振るう。
ナイフの先が屍の首を刎ねていく。
それでも動いている身体も、バラバラに切り刻む。
閃光のように身体が動く。
数秒後、前方はただの肉塊となり果てた。
紅が屍の血を吸う。
そのたび、力が増していくように感じた。
???「おっと、こっちの力を吸い上げていやがる。流石、我らが女王だけのことはある」
八弥:「遊びは辞めにしましょう。僕になにか御用ですか?貴方は誰ですか?」
彼が手を払うと、屍たちが一斉に消え失せた。
魔法のようだ。
兵士:「俺は兵士。兵士の吸血鬼の真祖だ。お前が目覚めたっていうから、わざわざ分体を差し向けたんだよ」
黒那:「真祖!?そんな!なんでそんな存在が!おにいさまを」
兵士:「そういえば、記憶が飛んでるみたいだな。何も知らないのか。全く面倒な奴だ。そこまでこっちで面倒を見ることにはなっていない。俺は招待状をもってきただけだ。ただの使い走りさ」
八弥:「招待状?」
兵士:「年末に、俺達主催のパーティーがある。今年は特別に日本でやってやるから、参加するように。と、確かに伝えたからな。これは強制だ」
八弥:「吸血鬼のパーティですか?」
兵士:「正確に言えば、吸血鬼の貴族のパーティーだ。野良の吸血鬼に参加資格はない」
黒那:「ということは、おにいさまは、吸血鬼の貴族なんですか?」
兵士:「ふふふ。何も知らないということは良いことだと思うぜ。責任が無いからな」
八弥:「僕が・・・貴族・・・」
吸血鬼と吸血鬼の貴族って、何が違うんだ?
でも、確かに体内の殻が一つ破れた感覚がある。
兵士:「さて、そろそろ俺は行くわ。久しぶりに会えて楽しかったぜ」
そう言い残して、彼は霧のように掻き消えた。
徐々に周りの音が戻ってきた。
僕たちは路地裏に残された。
手にした紅が、まだ熱を持っている。
黒那:「おにいさま、大丈夫ですか?」
八弥:「うん。黒那こそ、怪我してない?」
黒那:「はい、私は大丈夫です」
八弥:「良かった。とりあえず、家に戻ろう。九句にも相談したいし」
黒那:「あまり人間を巻き込むのはどうかと思いますが。。。」
八弥:「九句は親友だから、僕が九句だったら、相談して欲しいと思うよ」
黒那:「そうですか。・・・そうですね」
黒那も納得してくれたみたいだ。
それにしても大変だった。
まだ心臓がドキドキしてる。
真祖なんて、怖い。
でも、不思議と懐かしい感じもした。
僕たちは家へと急いだ。
★しゃぶしゃぶ★
九句:「ほんへ、はいじょうぶはったのか?」
八弥:「九句、食べながらしゃべるのは辞めようよ」
黒那:「九句先輩、お行儀が悪いです」
ジト目で黒那が九句のことを見る。
九句:「いや、お腹すいてたからさ。それで、大丈夫だったんだよな?」
八弥:「ヒヤヒヤしたけど、吸血鬼なりのジョークだったみたい。年末のパーティーに招待されたよ」
九句:「ああ、貴族のな。八弥は貴族だったんだな」
八弥:「みたいだね」
黒那:「おにいさまは只者じゃないと思ってました。これでわたしは貴族夫人ですね」
八弥:「義兄妹であって、夫婦じゃないからね。夫人じゃないでしょ」
黒那:「いえ、今後そうなる予定ですから」
八弥:「黒那にはもっとふさわしいひとが見つかるよ」
九句:「眷属にして、自分から離れられないようにして、何言ってるんだ」
九句がジト目で僕をみてくる。
黒那も同様だ。
八弥:「しゃぶしゃぶ美味しいね」
九句:「奮発したな。かなり良い肉だろ、これ」
黒那:「国産の黒毛和牛です。まあ、最低でもこれくらいのラインじゃないとおにいさまに食べさせられません」
九句はダンジョン部のチラシや掲示物を仕上げていてくれた。
助かった。
しかもクオリティも高い。
九句:「俺も吸血鬼の世界に詳しいわけじゃないからな。それこそボルト家のほうが詳しいんじゃないか?」
黒那:「おねえさまにも聴いてみます。わたしはそんなパーティのことは知りませんでしたので」
九句:「とりあえず俺達は学生だ。出来ることは、能力の向上に部活動、アルバイト程度。逆に言えば、それ以上のことを求められていないんだよ」
八弥:「でも初めて魔物を斬ったよ。緊張した」
九句:「それは、良い経験だったと思おう。ダンジョンでも魔物は出るしな」
でも、初めてで屍はトラウマものだよ。
もっとこう、スライムみたいなのが初心者向けなんじゃないかな?
僕たちはしゃぶしゃぶを堪能した。
ふう。
もう、お腹いっぱいだ。
八弥:「九句にケーキ買ってきたよ」
九句:「なんだと!?それは食べなければならないな」
黒那:「はい、一番安いやつですよ。九句先輩はこのくらいで十分です」
九句と黒那の間にバチバチと火花が散った。
九句:「八弥、俺、自分では食べられないんだ。食べさせてくれ」
八弥:「え?どういうこと?別にいいけど」
黒那:「!?なんて卑怯な!?」
九句:「ふふふ」
黒那:「許せません。やっぱり敵です」
八弥:「二人とも仲良くしてね」
その後後片付けをして、九句は瞬間移動で帰っていった。
★寝室★
黒那:「おにいさま、お願いがあるのですが」
黒那の瞳に紅が灯っている。
八弥:「血が吸いたいの?」
黒那:「・・・はい・・・」
瞳が潤んでいる。
僕はベッドで横になった。
八弥:「いいよ、飲んで」
黒那はもう我慢できないというように僕の首筋を舐めだした。
行為は長くかかった。
黒那が味わうように僕の血を飲んだからだ。
頬は紅潮して、汗をかいたみたいだ。
黒那:「ごめんなさい、おにいさま。わたしは、はしたない妹です」
八弥:「そんなことないよ。ちょっとドキドキしちゃったけど、大丈夫」
黒那:「ドキドキ?おにいさまがわたしにドキドキしたのですか?」
八弥:「うん。するよ、ドキドキ」
黒那は嬉しそうに微笑んだ。
家が狭いからベッドは一つしかおけなかった。
だから、今は一緒のベッドで寝ている。
黒那:「おやすみなさい。おにいさま」
八弥:「おやすみ。黒那」
また、一日。
終わっていった。




