私の期待を返しなさいよ!
屋敷の使用人が減ってから一週間。
レーベル家には、新たな使用人たちがやって来ていた。募集に応じて集まった者たちである。
とはいえ、その人数は決して多くない。
集まったのは、貴族出身の令嬢が数名だけだった。
急な募集だったため、これが精一杯だったとお父様は話していた。
今後は貴族同士の伝手を頼って人員を集める予定らしいが、いつ十分な人数が揃うかは分からない。
つまり、この窮屈な生活がすぐに終わることはないということだ。
それでも私は、少しだけ機嫌が良かった。
「お嬢様、今日はなんだかご機嫌ですね」
「当然じゃない」
新しく雇われた使用人は、子爵家や伯爵家の令嬢たちだという。
全員、学業を終えた年上の女性らしいが、同じ貴族同士なら話も合うだろう。
「さて……新しい召使いたちの顔でも見に行ってあげるわ」
「あっ、お待ちください、お嬢様!」
レイミの制止も聞かず、アンジェリカは使用人部屋へ向かった。
彼女たちに与えられたのは屋根裏部屋ではなく、上級使用人用の居室だった。
質素ではあるものの、広さも設備も申し分ない。
貴族出身なのだから、それくらいの待遇は当然だろう。
もっとも、だからといって立場を勘違いされては困る。
彼女たちはあくまでも召使い。そして私は、偉大なるレーベル家の孫娘。
その身分の差は、決して埋まるものではない。
私のような高嶺の花に仕えられるのだから、向こうも光栄に思っているに違いない。
だからこそ、最初が肝心だ。
どちらが主で、どちらが従なのか。
そのことを、きっちり教えておかなければならない。
「失礼するわよ!」
勢いよく扉を開ける。
――しかし、その瞬間。
「……え?」
思わず声が漏れた。
「あっ、やばっ」
「だから言ったじゃない。見つかったら面倒だって」
「まあまあ、少しくらい大丈夫でしょ」
部屋の中央では、令嬢たちが優雅に紅茶を楽しみ、お菓子をつまみながら談笑していた。
上質なソファにゆったりと腰を下ろし、その姿はまるで自室でくつろいでいるかのようだ。雇い主の孫娘が入ってきたというのに、慌てて立ち上がる者は一人もいない。
それどころか――。
「あっ、もしかしてアンジェリカ様ですかぁ?」
「先週からお世話になってまーす。これからよろしくお願いしまーす」
間の抜けた調子で挨拶を済ませると、彼女たちは何事もなかったように再び紅茶へ口をつけた。
まるでアンジェリカなど、大して気に留める必要もない相手だと言わんばかりに。
頭の中で思い描いていた理想が、音を立てて崩れ落ちる。
「お前たち……何をしているのよ……!」
怒りに震える声が、静まり返った部屋に鋭く響き渡った。




