最終話 世界を救った英雄たち
なんだか不思議な感じがする。私はアリスの体の中でバラスオキラの呪力を引き受けて・・・
だめだわ。それ以降のことが何も思い出せない。でもなんだろ?アリスの中にいた時とは違う、これは自分の肉体?シアの魂も感じないわ。
なんだか体を動かすっていうのが久々な感じがする。身体ってどうやって動かすんだったかしら?とにかく目を開かないと・・・
「レイ、目覚めたか。」
「アリス・・・?その喋り方は・・・?」
まだ声がちゃんと出ないわ。
「まだ声がちゃんと出ておらぬな。ほれ、水じゃ。起き上がれるか?」
「えぇ。ありがとう。」
少しお水をもらってちゃんと声が出せるようになった。
「さて、何から話そうかの。レイの最後の記憶はどこじゃ?」
「バラスオキラの呪力を受けて意識を失ったことは覚えているわ。それよりもあなたシア?」
「そうじゃ。それも含めて説明する。レイがバラスオキラの呪力を引き受けたのち、妾は転移魔法で戦地に送ってもらってアリスの中に取り込んでもらったのじゃ。そしてレイの魂の呪力を引き受け、魂を保護したのじゃ。そうでもしてなければレイはとっくに死んでおった。」
「そう、なのね。ありがとう。」
「礼には及ばぬ。それをアリスが望んだから妾は実行しただけじゃ。しかし、アリスはあの後もバラスオキラの呪力をかなりの量吸収してしまっての。アリスの魂ですら耐えきれなかったようなのじゃ。」
「そんな・・・それじゃアリスは・・・」
「まぁ、話は最後まで聞くがよい。不思議に思うことはないか?」
「シアはそのままなのに私は別の肉体に移っている。」
「そうじゃ。アリスのおかげでな。その肉体には[怪奇視]のスキルも宿っておる。使って視るといい。」
「分かったわ。[怪奇視]」
これがアリスが見ていた世界。ん?そこにいるのって・・・・
「久しぶり、と言っても意識がなかったんだしレイからしたら一瞬だったかな?」
「アリス、アリスなの?」
「そうだよ。私だよ。無事、とは言えないけどこうして2人の元に戻ってこれたよ。」
「でもどうやって・・・」
「私たちをこの世界に送った神様いたでしょ?」
「えぇ。あのちょっと胡散臭い。」
「そうそう。あの人が私の魂が消滅する寸前に回収してくれたみたいでさ、魔王を倒したご褒美ってことでスキルを2つ貰って霊体としてこの世界に戻ってきたんだ。」
「スキル?」
「うん。どっちも1回しか使えないんだけど、人間の肉体を作るスキルと好きな魂をその肉体に宿らせるスキル。まぁ、肉体が不老だから実質好きな対象を不老にできるスキルだね。」
「でもあなたは宿っていないじゃない。まさか・・・」
「レイの宿ってるその体だよ。レイがあのまま私の体の中で目覚めたらバラスオキラの呪力に充てられて衰弱しきっちゃってるシアは消滅しちゃうところだったからね。」
「だからといって、霊体として生きていくなんて・・・」
「そのくらいの覚悟はして戻ってきたんだもん。それに私だって物くらいになら宿れるし、この世界の技術が進んでホムンクルス的な感じで宿り先の体さえ用意できればいつかは肉体を得られると信じてるから。」
「そう、なのね。」
「一旦話はこんなところじゃな。レイ、さっそくで悪いのじゃが行きたいところがあるのじゃが・・・」
「大丈夫よ。歩くくらいはできそう。」
「それは良かったのじゃ。アリスが戻ってくるまでの1週間に用意したサプライズというやつじゃ。」
「「サプライズ?」」
ってことでシアに連れられてレイと3人トウカさんの家に来た。トウカさんには私のこと見えないんだよね。
「少し用を済ませてくるから2人は外で待っておれ。」
ってことで3分くらいレイと軽く話しながら待ってたらシアとトウカさんが出てきた。
「それでは本命に向かうとするかの。少し歩くからきつくなったらいうのじゃぞ。」
「えぇ。」
「レイちゃん目覚めたのね。アリスちゃんはいるのかしら?」
「レイの横にの。」
「私からは見えないけどまた会えてうれしいわ。」
『私も、って言いたいけど声は届かないんだよね。』
「アリスもあえて嬉しいって言ってるわ。」
「あら、レイちゃんには見えてるのね。うらやましいわ。」
「アリスがくれたこの体に[怪奇視]のスキルを宿らせててくれたのよ。」
「確かに宿ってるわね。でもその体魔力が流れてない上に老化しないようね。戦えるようになりたいのなら武器を使った戦闘を学ばないといけないわね。ドリアルちゃんにでも教えてもらいなさい。」
「そのつもりじゃ。妾も技術的なことはまだまだだと思っておるしの。」
「シアちゃんはそれだけの力があるんだし大丈夫に見えるわよ。元々3人が持ってた力全部がその体に定着しているもの。」
「そうじゃが、バラスオキラとの戦いで無力さを知った。あれを二度とは味わいたくないのでな。」
「そう。強くなる目的があるのはいいことね。あ、見えてきたわよ。」
町はずれまで来たけど、家?屋敷っていうには小さいけど子持ち世帯が住むにはちょっと大きいくらいかな?
「妾からのサプライズじゃ。元々はレイがこの体で意識を取り戻してからトウカに案内してもらうつもりじゃったのじゃがな。眺めも良いしもし今後恋仲になるものや仲間が出来ても一緒に住めるようにと大きめの家を買ったのじゃ。」
「眺めはいいけどちょっとだけ町から遠いのもあって借りる人も買う人もいなかったから助かるわ。」
「本当、いい家ね。」
「思ったよりも驚いておらぬな。アリスは驚きで声も出ぬといったところじゃな。」
『だって、だってさ、この家私がトウカさんに前聞いてゴーストプリズムとの戦いが落ち着いたら借りようか考えてるって言ってたさ・・・・』
「じゃからこの家にしたのじゃ。」
「シアちゃんの返しでなんとなくなんて言ってるか分かるわ。とても気に入ってくれてたみたいだし、私としても住んでほしかったから格安で譲っちゃったわ。肉体だけとはいえ世界を救った英雄様の住むお家だもの。霊体になって本人がついてくるとは思ってなかったけれどね。それじゃ私はこの後用事があるから帰るわね。何かあればまた来てちょうだいね。」
トウカさんが帰って行ってとりあえず中に入った。中ももう家具とか一式そろえてあってすぐにでも住めるようになってた。
「すごいね。まさか1週間でここまで?」
「うむ。毎日忙しかったがの。驚いてくれたのならやった甲斐があるというものじゃ。妾たちは皆不老、永遠に生きていく場所としてふさわしいのではないか?」
「そうね。それにこの家ならちょうどいいわ。」
「なにが?」
「多分シアもおんなじ考えなのでしょう?」
「そうじゃな。そのためにこの家を買ったわけではないのじゃがな。」
「さっきアリスの言ってたホムンクルスの研究を私たちでできるわ。」
「そんな、私のためにわざわざそんなこと・・・」
「妾たちは霊体となって帰ってきたアリスがいなければ今この時間を過ごせておらぬのじゃ。」
「私は生きてはいるけれど1人になるはずだったもの。」
「そうじゃ。だから恩返しになるかは分らぬがさせてくれぬか?」
「2人とも・・・!」
「とにかく今日はごちそうを買ってくるとしよう。レイの目覚めを祝うのじゃ。」
「そうだね。盛大にやろ!」
「ドリアルちゃん、入るわね。」
「トウカの姉さんじゃねぇか。どうしたんだ?」
「アリスちゃんのことに関してちょっと気になることがあってね。」
「レイが目覚めそうって話は聞いてたが。」
「目覚めたらしくてあの家の鍵を受け取りに来たの。アリスちゃんもいるって話だったからいる場所に対して鑑定をしてみたの。」
「幽霊って話だったよな。」
「えぇ。スキルは何も持ってなかったけど、幼霊神だそうよ。まだ幼いということらしいけど幽霊をつかさどる神ってことになるわね。」
「マジかよ。そりゃとんでもないことになりそうだな。」
「そうね。しばらくはギルドでも注意してみてあげて頂戴。」
「あぁ。そもそもシアの影響で不死になった肉体に残されるレイを代が変わろうと面倒を見るって約束しちまってるからな。」
「そんな約束してたのね。」
「俺だって世話にはなってるからな。まぁ、3人そろってるらしいからな。問題ないだろ。」
「それもそうね。まぁ、注意はしておいてあげて。あと本人には伝えないように。」
「分かってるさ。」
そんな会話を英雄たちは知らぬまま時は過ぎ去っていった。
魔王討伐を成し遂げた英雄アリス、シア、レイの名は当人たちが生きていながらも永遠に世界に語り継がれていく。
「英雄様!お助けください!」
そんな英雄たちのもとに助けを求めるものが今日も1人。これはまた別のお話。




