第4話 怪奇レポート0-4:『怪奇屋』開店
冒険者カードをもらってからはトントン拍子で、トウカさんに手伝ってもらいながらあっという間にお店の準備ができた。
「思ってたよりも早くできたわね。」
「うん。トウカさんのおかげだよ。」
「そういってもらえると嬉しいわ。そしたらこれ。」
結構ずっしりした袋?感触からしてお金かな?
「これは?」
「私からの贈り物。きっと初めのほうはいろいろとお金は必要でしょ?」
「そんな、悪いですよ。」
「いいから受け取っておいて。もし気が引けるって言うなら貸すってことにしといてあげるから。」
「それなら・・・」
「利子はとらないからゆっくり返してちょうだい。本当に余裕ができてからでいいからね。」
「分かったよ。ありがたくもらっとくね。」
「それでいいのよ。最低限の生活はここでできると思うからしばらくは仕事場兼住居として使いなさい。」
「うん。そのつもり。何から何までありがとね。」
「いいのよ。今日からこっちに移るのかしら?」
「うん。ずっとお世話になりっぱなしだと甘えちゃいそうだし。」
「甘えてくれたっていいのよ。といっても自分で生きていくっていうその意志は尊重するわ。」
「ありがと。」
「でも今日だけは甘えてちょうだい。荷物移した後は整理とかあるだろうけど、夕飯には来てくれるかしら?」
「うん。今日は甘えちゃおっかな。」
「何か困ったらいつでも甘えてくれていいんだけどね。」
「そうならないように頑張るよ。逆に恩を返せるようにね。」
ってことで荷物の搬入作業に入って、荷物の整理をしてるうちに外は暗くなってきてた。
「そろそろ行かないとだね。」
外に出てみたらちょうどアキラさんがいる。
「アキラさん。」
「アリスか。荷物のほうは片付いたのか?」
「とりあえずはって感じかな。アキラさんは?こんな時間まで外にいるなんて珍しいよね?」
大体いつも夕方には帰ってきてトウカさんの家事を手伝ってるんだけど・・・
「少し厄介な依頼が入ってな。守秘義務の関係上話せはしないが。」
「別にそこまで無理に聞こうなんて思ってないよ。」
「そうか。トウカ様から食事を共にすることは聞いている。ともに戻るか。」
「うん。2人で歩くのって初めて会った時以来?」
「そうだな。俺はトウカ様が望まれるから連れて行っただけだがな。」
「なんでトウカさんにそこまでご執心なの?もちろんいい人だし、私も助けてもらった恩はあるけどさ。」
「俺は世界を渡る際にスキルを得られなかったんだ。世界を渡る人間の場合スキルの効果に言語の理解が含まれているようでな。俺は言語も分からない状態でこの世界に来たんだ。そんな中日本語でやさしくお声をかけてくださり、俺を救ってくれた。その恩を返している最中ってわけだ。」
「そうなんだ。やっぱトウカさんって本当にいい人だよね。」
「あぁ。俺はあの人に一生ついていく。」
「私も何かあったら力になりたいと思ってるよ。」
他愛もない話をしているうちにあっという間にトウカさんの家についた。
すごいご馳走を用意してくれてておなか一杯食べさせてもらった。別れ際、トウカさんはちょっと寂しそうだったけど、ほかの日本から来た人たちと違って私はまだこの町にいるからね。いつでも会えるよね。
ご飯を食べさせてもらった後はまだ片付けが十分じゃないからお店の予定の建物まで戻ってきたけど、お店のほうはどうしようかな?看板用の板はもらったからこれに店名を書き込んどいてって大工さんに言われたんだよね。明日には貼り付け作業に来るって言ってたし・・・
「嬢ちゃん、看板は書けたか?このサイズの字を書きなれてないなら前にも言ってたが俺が書いてもいいが・・・。って余計なお世話みてぇだな。『怪奇屋』か。いったい何の店なんだ?」
「妖とか物の怪、あとは普通に幽霊、妖怪みたいな目に見えない現象の調査と解決を請け負う店だよ。ちゃんとそういう案件専門で冒険者ギルドにも登録してあるからあなたも何かあれば信頼して任せてもらっていいよ。」
「俺は今のところ困ってねぇが確かにそういう話は最近よく聞くな。困ってる奴を見つけたら勧めといてやるよ。」
「いいの?それならもしあなたに何かあった時は初回お安くしといてあげる。」
「そりゃいい。最近の噂の増え方からしたら俺も巻き込まれかねんからな。」
「それじゃ、これ取り付けお願いしといてもいい?終わるまでには戻ると思うけど、ちょっと出かけてくるから。」
「分かった。事前に聞いたとおりに取り付けるが何か問題があれば戻り次第言ってくれ。」
ってことで今度は冒険者ギルド。
「アリスさん、こんにちは。いかがなさいましたか?」
「ギルマスから聞いてると思うけど、お店の場所の登録に。」
「かしこまりました。場所は以前お聞きしておりますので、お店の名前のほうをいいですか?」
「うん。『怪奇屋』でお願い。」
「かしこまりました。ギルドマスターに報告しておきます。それと、明日ギルドマスターが依頼を渡しに行くと言っておりました。今は不在ですが。」
「そうなの?それじゃお店のほうにって伝えておいて。」
「かしこまりました。」
冒険者ギルドからお店は結構近くて歩いて5分もかからない。店が見えてきたけど、もう看板取り付け終わってるじゃん。仕事が早いね。
「おぅ、戻ったか。とりあえずつけ終わったがこれで問題ないか?」
「うん。完璧だよ。」
「それならよかった。それじゃ俺は次の現場に向かうとしよう。」
「頑張ってね。」
大工のおじさんを見送ってさっそく店を開けることにした。基本的にはカウンターで待ってるだけ。店の前に足跡で作った幟は立てたし、ここがどんな店かはわかるだろうし、相談は無料ってことにしてるから何か問題を抱える人は気っと入りやすいだろうしね。
「すみません。」
「いらっしゃいませ。」
「え?」
「どうしたんですか?」
「いえ。てっきり怪しい感じのお年寄りとかがお店を出してるのかと思って。すごくかわいらしい店主さんでびっくりして。」
「まぁ、こんな商売そう成り立つものじゃないですからね。せっかくですしおかけになってください。」
「はい。」
初めてのお客さん。いったいどんな『怪奇』を持ってきてくれたのかな?




