第25話 怪奇レポート4-9 使役されるゴースト
「こちらがラブ様の別荘だ。ラブ様から鍵は預かっている。開けるが準備はいいか?」
「大丈夫です。外から視ただけでもかなりの痕跡が残っていますし、この屋敷全体がゴーストの領域と思ってください。」
「了解した。」
トリアスさんが扉を開く。唐突に襲われることはないみたいだね。それにしてもあくまでも直接的な被害が出てないのが気になるね。誘い込むみたいに奥の部屋に痕跡が遺されてるね。
「トリアスさんはここで待機していてください。明らかに誘い込むような痕跡があるので、少し様子を見てきます。ゴースト相手であれば私1人のほうがいいので。」
「了解した。」
浴室に向かって痕跡は伸びてるね。わざわざこんなことまでして、しかも呪いまでかけてる。屋敷の人に危害は加えていないのに私に対する殺意は高いね。
「あのさ、それでバレてないとでも思ってるのかな?」
「何のことであるか?」
「私の眼は特別でさ。あんたらみたいなゴーストでも視えるんだよ。だから体を乗っ取ったところで無駄。しかもトリアスさんの精神力の高さのせいでろくに身体を動かせないんでしょ?」
トリアスさんの体は今ゴーストに取り憑かれて体の主導権を巡ってトリアスさんの精神とゴーストの力が拮抗している。ちょっとずつゴーストが押してるみたいだけど、今なら簡単に倒せちゃうかな。
「せっかく人語を理解できるみたいだし聞きたいんだけど、この屋敷にいるのはなんで?」
「そんなの俺を使役する人間に指示されたからに決まってるだろうが。そうでもなきゃこんなきらびやかな場所居たくもねぇよ。」
「使役する人間がいるんだ。まぁ、その人間自体も駒なんだろうし、あんたから抜き取れる情報もなさそうだね。一応もう1つ、なんで私にはそんなに殺意が高いの?」
「そんなもんてめぇに拒絶反応が出るからに決まってんだろ。そんな物騒なスキル持ちやがって!」
「やっぱり位の高いゴーストにもなるとなんとなく察知できるんだ。シアもそうだったし、妖怪とかゴーストの相手は気を付けないとね。」
「何をごちゃごちゃと・・・」
「こっちの話。それにしても相手が悪かったね。私に呪いは効かないし、逆にそれのせいであんたがどこにいるかバレちゃったってワケ。どうやって遠距離で呪いをかけたのか気になるけど、トリアスさんの精神が負けて肉体の主導権を握るまでもうちょっとってところかな?さすがに肉体の主導権を握られちゃうと厳しいし、終わらせちゃおうかな。」
「ちょ、待ちやが・・・」
「待たないよ。[退魔呪詛]」
音もなくゴーストは消滅した。他に痕跡はないしこれで終わりかな。
「すまない。迷惑をかけた。」
「いや、トリアスさんがあれだけ持ちこたえてくれたからこそある程度情報を得られたんだし、むしろ感謝してますよ。素晴らしい精神力ですね。」
「この程度騎士として当然だ。だが、本当にすまなかった。」
「だからいいですって。それよりも早く報告に行きましょう。元凶は取り除きました。」
ってことでカキュヤ様のお屋敷を出てから約30分で戻ってきた。
「もう終わられたのですか?」
「はい。トラブルもありましたがつつがなく。」
別荘での話をかいつまんで説明した。
「素晴らしいな。私の屋敷では毎日ほぼ同時刻に現象が起きていた。それがないことを確認次第冒険者ギルドに依頼料の支払いを済ませよう。私とラブ殿の2件を合わせて金貨20枚でいいだろうか?」
「そんな大金頂けません!私は大したことをしておりませんし・・・」
「あのヘルオール公を相手に我が国との戦争の火種を作らなかったことだけでもこの金額では安いくらいだ。受け取ってくれたまえ。」
「カキュヤ殿の言う通りです。受け取ってくださいませ。」
「そこまで行ってくださるのであれば、ありがたくいただきます。」
「それにしても本当に優秀なのだな。まさかこれほどまでにあっさりと解決されてしまうとは・・・」
「そうですね。アリスさん、もう少しお時間良いですか?」
「はい。いかがなさいましたか?」
「これといったことではないのだけれど、ヘルオール公の依頼に関してのお話を聞かせていただけないかと思いまして。」
「もちろんです。」
ヘルオールの件で起こったことを包み隠さずに話した。もちろん向こうが戦争の口実のためにわざわざ今回の件をでっち上げたであろうというところまで。
「それは災難でしたね。」
「そんな中よく問題を起こさずに解決してくれた。改めて深い感謝を告げよう。・・・と、そろそろ時間を過ぎたころだな。報告がないということは例の現象も起きていないということだな。」
「こんな日中に起こっていたのですか?」
「あぁ。ゴーストが相手となるとやはり不自然か?」
「はい。ラブ様のお屋敷に伺った時点で出てきたことも含めやはり今回の件には裏がありますね。先ほど申したように使役する人間の存在もほのめかしておりましたし。」
「そうですね。私も調査させておきます。何か分かればギルドに報告を入れますね。」
「私もそうしよう。今回の件大儀であった。こちらから人間を出して送らせよう。ギルドからの迎まではまだ時間があるであろう?」
「いいのですか?」
「もちろんだ。恩人には恩で返さねばな。」
ってことでカキュヤ様の計らいでギルド前まで転送魔法で送ってもらった。




