第26話 怪奇レポート4-10 リンの依頼
「アリスです。入っていいですか?」
「入れ。」
「失礼しまーす」
「ご機嫌だな。その様子だともう終わったのか?」
「もちろん。ちょっと厄介なものではあったけど、ゴーストのほうから動いてくれたからすぐに終わったよ。」
「そうか。これまでの分まで含めた報酬金の支払いは少し待ってくれ。額が大きいから手数料を普段の割合で取るべきか上と相談している。」
「取ってもらっていいよ。何なら貴族様たちからの依頼の受注をしてくれてるわけだし多めにとってくれたって良いから。ギルマスも無理しすぎない程度にね。」
「そんなこと言われたってお前が来てから忙しすぎるくらいだ。大貴族様たちからの依頼はひとまず終わりだが、貴族様たちからの依頼相談はまだまだ来ているからな。俺だけではなく、ほかのギルドに協力してもらいつつ、話を進めているところだ。」
「早めに元凶をどうにかしないとね。」
「可能ならそうしてくれ。それに関しちゃ多分ギルドからじゃなく国から報奨金が出るぞ。今回の件は王族の皆様方にも報告が行くだろうからな。」
「まぁ、情報がない以上どうしようもないんだけど、やれるだけやってみようかな。」
「そうしてくれ。」
「それじゃ私は帰るよ。ギルマスも休息はとりなよ。」
「あぁ。」
本当に疲れてそうなギルマスは置いといて私は怪奇屋に戻ってきた。
「ただいま」
「アリスさん、お早いお帰りですね。」
「うん。といってもちょっと休んだらまた出るけどね。」
「貴族様の依頼ですか?」
「いや、それは全部終わったよ。合間を縫って私が出向いた依頼が会ったでしょ?」
「そういえば行ってましたね。」
「ちょっとあの件1日じゃ解決しきれなくて応急処置しかできてないんだよ。人命がかかってる感じだったから最低限のことはしてきたけど、それでも最低限だからさ。ちゃんと解決しに行ってくる。」
「そうですか。こっちも依頼の選別は終わらせました。最終的に120件ですね。」
「ありがと。頑張って解決していくよ。もし今から行く件が早く終わったら何件か回るから近場にまとまってる場所があったら何件かまとめておいてくれない?」
「分かりました。ちょうど今日はエリアごとに仕分けをしていたところなので。」
「気が利くね。それじゃ私は行ってくるよ。」
以前合間を縫って出向いた依頼、墓所の管理をしているリーンさんに起こった謎の高熱。墓所自体を視てみる必要があるかな。
コンコン
「はーい。」
返事とほぼ同時に扉が開いてリンが出てきた。
「アリスさん?どうかしたんですか?」
「急ぎの依頼が全部終わったからさ、リンの依頼を解決しに来たよ。」
「もうですか?もっとかかると思っていたんですけど・・・」
「私も思ってたより早く終わってびっくりしてるところだよ。リーンさんはどう?」
「相変わらず熱はありますが、以前ほどの高熱でもありません。」
「安定してそうでよかったよ。リーンさんの管理してた墓所の場所聞いてもいい?」
「はい。えーっと・・・」
詳細な場所を聞いてみたけど、めちゃくちゃ近いってわけでもないね。徒歩圏内ではあるけど。
「分かった。それじゃちょっと見に行ってくるよ。」
「大丈夫なんですか?」
「心配してくれてありがと。でも私にはどんな呪いも効かないから。それじゃ、行ってくるよ。」
リンを心配させまいと強がっては見たけど、これまでで見たことがないタイプなんだよね。体調に影響してくるタイプは日本の心スポでも体験してるけどほとんどが相当な撮れ高があったし、多分私が自殺した原因の霊も自殺する近辺の期間に行った場所から考えてそのタイプの心スポから連れてきちゃった奴だと思うし。
そんなこと考えてたら着いたみたいだね。思ってたより近かったかも。それにかなり大きい場所だね。
「[怪奇視]」
もちろん墓所だからかなりの数の幽霊が見えるね。ほとんどは悪霊というよりはこの世に未練を残してるだけのタイプだね。悪霊化してないし、今後もしない意志の希薄な霊ばっかり。でもあからさまに強い痕跡があるね。それに幽霊のものだけじゃない。人間が残した呪いの痕跡も見える。もしかしたらリーンさんの呪いは人間から?
痕跡からしてその人間は今この墓所、管理小屋にいるはず。
コンコン
「どうぞ。」
「失礼します。」
「お嬢さん、どうしたのかな?」
「ちょっと気になることがあってね。あなたここの管理者じゃないでしょ?」
「元はリーンという女性が管理しておったのだがな。高熱で寝込んでいるらしいのでな。彼女から引き受けたのだよ。」
「それならなんであなたから呪いをかけた痕跡が見られるのかな?」
「・・・貴様、何者だ?」
「自己紹介が遅れたね。この町で『怪奇屋』を営むアリス・カグラだよ。」
「貴様がか。ちょうどいい。ここで始末してくれる。」
「ちょっと待って。お互いに街中で人間を殺すのはマズイ。そうじゃない?やりあうなら町の外、人目のない場所でやらない?」
「それもそうであるな。我々ゴーストプリズムの計画をこんなところで頓挫させるわけにもいかぬしな。」
こいつバカなのかな?なんでわざわざ自分の素性を明かすような真似をするのやら。自分の勝ちを信じて疑ってないみたいだね。
「場所はあんたに任せるよ。早く先導して。」
「貴様が背後から殺さぬという保証は?」
「私はあくまでもこの町で商売をする身だよ?人目のある場所で人を殺すとでも?」
「それもそうであるか。ついてこい。」




