第23話 怪奇レポート4-7 呪いの指輪
「変死?」
「はい。監禁されていた住人によると突如全身に切り裂かれたような傷が表れて倒れたとのことです。」
「口裂け女の対処法を知らなかった?いや、情報を漏らさないために自ら死を選んだ可能性もありますね。」
「犯人以外の被害者は?」
「監禁されていた期間が長かったようで栄養失調ではありますが、命に別状はないようです。」
「すぐに治療院に。」
「すでに送っています。」
「現場を見てもいいですか?」
「あぁ。アリスさんを案内して差し上げろ。」
ラパン様は何かあるのか待機していた部屋の奥に行ってしまった。私は現場に案内されて死体を確認した。
「[怪奇視]・・・・やっぱり口裂け女の呪いだね。私にかけられたものと同じだ。」
「例の怪異でありますか。」
「えぇ。綺麗だと回答すれば命は助かるというのに、この者は死んでいます。つまり対処法を知らなかったか死を選ぶほど情報を渡したくなかったのか。」
「見たところ冒険者でもない平民に見えます。本当にこの者が怪異を操っていたのでしょうか?」
「それに関しては魔道具的なものだと思います。ちょっと失礼して・・・」
死体の指から1つの指輪を外す。ぱっと見は宝石が埋め込まれた綺麗なものだ。
「この指輪をつけることで口裂け女の力を利用できるようになっていたようですね。何かしらの方法で封印か何かしておくべきでしょう。」
「そんな指輪が?」
「はい。魔道具というよりは呪物といったほうがいいですね。強い呪いが込められていますし、これほどのものとなると作った人がいるのなら呪術面において相当な術者でしょうね。」
「そうですか。ラパン様に進言しておきます。」
「この指輪、預かっていてもいいですか?もちろんつけませんが、これほどの力を持つものとなると人に渡るのが怖いので。」
「はい。ラパン様の判断が下りるまではお願いいたします。」
「一旦ラパン様の元に戻りましょうか。」
死体に触れたから手だけ洗わせてもらってラパン様のもとに戻った。
「戻ったか。」
「はい。遺体を観察し、死因は口裂け女の呪いによるもの、そして口裂け女の呪いは彼自身の力ではなく、呪物の力を引き出して使っていたものだと判明しました。」
「呪物?」
「呪いの込められた魔道具のようなものです。この指輪がそうなのですが、私の力では強い呪いの力があることしかわかりませんが、かなり強い力を持つことは事実です。おそらくは口裂け女の呪いを操ることが出来るのだと考えます。」
「トウカ殿に鑑定を依頼するか。」
「私がお呼びしましょうか?」
「あぁ。トウカ殿はこの町ではかなりの権力を持っている。くれぐれも丁重にお連れするのだ。」
「問題ございません。面識もありますので。」
「ならばよい。」
なんだか随分余裕がないって感じだね。死んだ人に心当たりでもある感じかな?とりあえずトーカさんの家まで来た。
コンコン
「トウカさん、いるー?」
「アリスちゃん?久しぶりな気がするわね。」
「会いに来たかったんだけどお店が忙しくてね。」
「ってことはただ会いに来てくれたわけじゃなくてお店の関係かしら?」
「そう。この辺りを統治されているラパン様からの依頼で、トウカさんの鑑定の力が必要で、呼んできてって言われてね。お金は私が依頼料の中から出すから、お願いできる?」
「いいわよ。」
「ありがと。今すぐでも大丈夫?」
「えぇ。案内してちょうだい。」
ってことであっさり受けてくれてすぐにラパン様の元に戻った。
「戻りました。」
「ラパンちゃん、お久しぶりね。」
「トウカ姉さん、その呼び方はよしてくれよ。これでも貴族なんだからよ。」
どうやらもともと面識があったみたい。
「それで、鑑定してほしいものっていうのは?」
「これ。ラパン様の別荘で起こった事件の犯人が持ってたものなんだけど・・・」
「見てみるわね。・・・・これものすごく危険ね。」
「やっぱり?」
「えぇ。これの名前は口裂けの指輪。昔、口を左右に大きく切り裂かれて出血死した女性の怨念が指輪になったものみたいね。装着することで選択した対象に指輪になって怪異化したその女性と対峙させる呪いの魔法を使うことが出来るようになるみたいね。口裂け女の都市伝説にそっくりだけど・・・」
「実際に口裂け女だったよ。綺麗かどうか聞かれたところを[退魔呪詛]で解決しちゃったから。」
「ちょっと待って。この指輪はつけただけじゃその力がわからないはずよ。本人は即死魔法を使えるようになったって思うはずなの。だから、この指輪をつけていた人は・・・」
「うん。死んじゃってた。」
「アリスさんが罪に問われることはない。現に傷害事件1件、監禁による殺人未遂1件、アリスさんへの殺人未遂1件の計3件の犯人だと判明している。重罪を犯している以上、未遂とはいえ殺人の対象にされたアリスさんの行いは正当防衛といえる。」
「それならいいのだけれど、アリスちゃんは大丈夫?」
「うん。精神的にも肉体的にも問題ないよ。まぁ、疲れはしたかな。ここ最近気疲れすることが多くてね。」
「そうであった。おそらく次の依頼でも同じことを言われるであろうが、私からも礼を伝えておかねばな。」
「礼、ですか?」
「あぁ。先日のヘルオール公の依頼を問題なく解決してくれたこと深く感謝する。」
「私は依頼を解決しただけなので。」
「そうは言ってもだ。ヘルオール公の依頼に失敗したり、彼の不興を買ったりしてしまえばこの国に攻め込む口実になっていたであろう。改めて感謝を伝えさせてくれ。」
「ラパンちゃん?隣国の大貴族様の依頼ってどういうことかしら?」
「それについては俺に聞かないでくれ。問い合わせるならギルドに頼む。」
「アリスちゃん、そうなの?」
「まぁ、ギルドのほうで貴族様たちの依頼を正式に受けるかどうかは無しをしてたってことだし、ギルドで管理してもらってる依頼だからそうかな?でもギルマスもトウカさんにバレたら詰められると思ってただろうけど、国の間でも板挟みにあってたわけだろうし、責めないであげて。」
「分かったわ。それで、私はもういいのかしら?」
「うん。ありがとね。」
ってことでトウカさんは帰って行った。
「ラパン様も面識があったのですね。」
「あぁ。もう気楽にしてくれ。ここには俺とアリスしかいない。」
「うん。それじゃその指輪の扱いは?」
さっきのトウカさんにかわいがられてる感じを見るとどうもギルマスと被るんだよね。
「我が家の魔法技師たちに封印を施させる。出所の調査もして情報があればそちらの店に人を遣って共有する。」
「分かった。他にこの依頼に関して何かある?なければこれで以来完了ってことにしたいんだけど・・・」
「そうだな。問題はない。次の大貴族様はちょっと変わったお方だから気を付けるんだな。依頼料はすぐに冒険者ギルドに支払っておこう。金額はこちらで決めさせてもらうが、満足してもらえると思うから楽しみにしておくんだな。」
「分かった。それじゃこれで正式に依頼完了ってことで。」
ってことで私も解放されたから一旦冒険者ギルドに来た。シアには先に帰ってもらってる。
「アリスさん、ギルドマスターに御用ですか?」
「うん。今大丈夫かな?」
「来客はありませんのでご案内しますね。」
ギルマスの部屋に通されるとギルマスは書類とにらめっこしてた。
「アリスか。ちょっと待ってくれ。」
にらめっこしてた書類を軽く片付けると来客と話す用のソファにどかっと腰を掛けた。
「ラパン様の依頼は終わったのか?」
「うん。その報告に来たよ。」
大体の内容を報告した。
「そうか。スキルでの死人が出たか。」
「ラパン様はあくまでも正当防衛って言ってくれたよ。」
「それならギルドとしても問題にはしないでおこう。その人物による被害者がすでにいたとしてもおかしくなかっただろうしな。それじゃ今度はこっちからだ。明日から行ってもらう大貴族様について説明しよう。」
「あと2件だっけ?」
「ひとまずは、だな。話を聞いたところその2件の現場がどうも近いようでな。大貴族カキュヤ様と大貴族レブ様からの依頼なんだが、お二方は仲がよろしいのだが、どうもカキュヤ様のお住まいになられているお屋敷と、その近くにあるレブ様の別荘で不可解な現象が見られるとのことだ。それぞれの方に確認したところ、お二方一緒にお会いになられるそうだ。今回以上にご無礼の無い以上にな。」
「分かってるって。場所は?」
「少し遠い。ギルドから転移魔法を使えるものに送迎を担当させよう。カキュヤ様とレブ様の意向で休む時間はアリスに自宅で休んでもらうようにとのことだ。」
「分かったよ。できるだけ早く解決できるよう頑張ってくるね。お店のほうも大変なことになってるし。」
「そうなのか?」
「100件以上依頼が溜まってるらしいんだよね。」
「それは大変だな。」
「だからできるだけ早くしないと今依頼の受付さえ止めてる状態なんだよ。」
「しかしそれだけの件数依頼が来るとなるとますます陰謀を感じるな。」
「その元凶をどうにかしないとこのまんまだろうし、ラパン様は今回の件で使われた呪物に関して情報が入れば共有してくださるってことだったから貴族様たちの依頼をこなして情報網を広げるしかないかな。」
「貴族様を利用するような発言は慎むように。」
「そうだね。でもこれも国のためになることだから。この部屋の中でだけは許してよ。」
「特別だぞ。俺はまだ仕事があるんだ。お前は明日に備えて帰って休め。依頼料はギルドへの支払いなんだよな?」
「そうだね。全部が終わって次の依頼の依頼料まで入ってから手数料抜いて支払いでお願い。」
「分かってる。」
「それじゃ帰って休むよ。」




