第18話 怪奇レポート4-2 リビング・アーマー
「貴様がギルドから紹介された冒険者か。」
「作用でございます。アリス・カグラと申します。」
「そうか。俺はヘルオール・レ・ヘルベイン。ヘルベイン法国の5分の1を預かる大貴族だ。ヘルオールと呼ぶが良い。」
「ヘルオール様、お目に掛かることができ、光栄でございます。」
「ふむ。最低限礼儀作法はわきまえておるようだな。とても冒険者とは思えん。」
「身に余るお言葉でございます。」
「そうか。早速だが、依頼の話に入るとしよう。ゼルよ。説明しろ。」
「はっ。1週間前、ヘルオール様の所持される特別な武器や魔道具を保管している蔵にて手入れをしていた魔導技師2名が突然動き出した甲冑に斬られ負傷しました。その調査をお願い致します。」
「かしこまりました。蔵への立ち入り許可と魔導技師への聴取を行いたいのですが、許可をいただけますでしょうか?」
「許可する。ただし、俺のコレクションに手を触れるでないぞ。」
「もちろんでございます。」
「必要なことがあればゼルに言いつけろ。俺はこれで失礼する。」
ヘルオールは部屋から出ていった。とりあえずは山場を越えれたかな?
「アリス・カグラ様、ヘルオール様より貴方様のご助力を任されております、ゼルと申します。何なりとお申し付けを。」
「まず、負傷した魔導技師に会いたいのですが、可能ですか?」
「かしこまりました。治癒魔法で完治しております故、お連れいたします。ひとまず、解決までの間滞在していただくお部屋にご案内いたします。他のものを通じて魔導技師もそちらにお呼びいたします故。」
「ありがとうございます。」
ってことで連れてこられた部屋はあかなり豪華だね。ちゃんと貴族の屋敷の客室って感じ。
「私は外で控えております故、何かございましたらお声がけを。」
ゼルも出ていって部屋の中には私とシアだけ。
「シア、どうだった?」
『ヘルオールとやらから妙な気配は感じなかったのじゃ。動く甲冑というのが気になるのじゃが。』
「それに関してはなんとなく予想がついてるんだよね。って、きたみたい。」
ドアがノックされた。
「魔導技師のサリアンと申します。もう1名負傷したものがいるのですが、本日は暇をいただいておりまして。」
「わかりました。座ってください。いくつかお話を聞かせていただきたいので。」
「はい。なぜ私に?」
「現場にいた人の方が何が起こったかがわかるかと思いまして。魔導技師ということは魔道具の管理をされていたのですよね?」
「はい。動き出した甲冑も魔道具の中の1つでした。」
「甲冑なのに魔道具なのですか?」
「えぇ。どうも甲冑でありながら身につけることができず、我々が鑑定しても名前以外は不明でして。」
「その甲冑の名前、聞いてもいいですか?」
「はい。リビング・アーマーだったと思います。」
やっぱり。ホラーよりかは異世界とかそういう系の話に出てくる動く鎧だね。一回この目で見てみないとわからないね。
「なるほど。甲冑に襲われたのは日中ですか?」
「いえ。魔道具の手入れは夜間に行いますので。」
「これまで夜間に手入れをしていて、リビング・アーマーが動き出したことは?」
「それが、リビング・アーマーはヘルオール様が1週間ほど前に見つけてきたものでして。手入れ初日に襲われました。」
「日中に動くことは?」
「無い、と思います。ヘルオール様が入られた際に動くことはないとのことですので。」
「わかりました。もう、大丈夫です。」
「これだけでいいんですか?」
「はい。なんとなくですけど、原因がわかったので。」
シアみたいに座敷童子がいるってことは日本に創作作品とかで存在してるモンスターとか妖怪とかがこの世界にはいるってことだよね。
「ゼルさん、動いたっていう甲冑を見てみたいんですけど、いいですか?」
「かしこまりました、ご案内いたします。」
ってことで蔵まで連れてこられたけどこりゃでかいね。1から捜索しろって言われたら無理だったかも。
「こちらでございます。」
「雰囲気もありますし、美しいですね。では、少し視させていただきます。[怪奇視]」
一旦解除してた[怪奇視]を再発動させてみたけどやっぱり鎧の中にゴーストが宿ってるみたいだね。今は精神界に行ってていないみたいだけど痕跡がしっかり残ってる。
「ゼルさん、原因と解決法は分かりましたが、状況が状況ですので、ヘルオール様と少しお話ししたいのですが、よろしいですか?」
「確認いたします。」
少しして不機嫌そうなヘルオールがやってきた。
「貴様、俺が忙しく無いように見えるのか?聴取などは自由にしていいと言っただろうが。」
「申し訳ありません。ですが、今回の件の原因と解決法が分かりましたが、少し特殊な状況でしたので確認をしたく・・・」
「解決法が分かった?バカを言え。まだ1時間程度しか経っていないだろう?それにあの鎧は夜にしか動かないと聞いたぞ?」
「それでも私の目があれば原因はわかります。魔導技師曰くあの鎧の名はリビング・アーマー。私は異世界から渡ってきた者なのですが、その名には覚えがありましたのでリビング・アーマーそのものの調査をいたしました。もちろん手は触れておりません。」
「ほぅ?それで?」
「リビング・アーマーとは動く鎧。この世界では鎧の中にゴーストが宿ったものです。ゴーストは日中、精神界に潜むため、夜間にしか動かないというわけです。そして私のスキルであればゴーストを消滅させることは容易いのですが、消滅させてしまえばあの鎧はただの美しい鎧になってしまいます。そのため、ゴーストの消滅をして良いか、ヘルオール様にご判断を仰がせていただこうと、お呼びした次第でございます。」
「ふむ、指輪の反応は無い。つまり真実というわけか。」
「如何いたしますか?もしリビング・アーマーとして残されるということであれば私は帰国させていただくことになります。」
「一つ問おう。リビング・アーマーは放置して問題ないものなのか?」
「ゴーストであるため人間への悪意は持っています。しかし、鎧に宿ったことで魔法の使用などはできなくなっております故、暴走への対策さえできれば問題ないと考えます。」
「そうか。俺としては無断で浄化してくれた方がありがたかったがまぁ、いいだろう。ゼル、調査報酬として金貨5枚を渡して帰してやれ。」
無断で浄化した方がありがたかった?リビング・アーマーがどういうものか知ってたわけだ。その上で勝手に魔道具をダメにされたって言いがかりをつけようとしたわけね。
「ありがたく頂戴いたします。」
「チッ、俺はまだ仕事が残っている。失礼する。」
最初から最後まで嫌味な感じだったね。




