第12話 怪奇レポート2-6 知性を持つ怪異
アレスは手際が良くて夜には頼んだものを準備してくれた。頼んだものというのが・・・
「初めまして。聖職者のセシルと言います。」
やっぱりどこからどう見てもお坊さんなんだよね。すごく若い人だけど。
「アリス・カグラです。わざわざこんな時間にありがとうございます。」
「いえ。商業組合にはお世話になってますし。契約もありますので。」
「そういってもらえると。今回の件についてはどこまで聞いてますか?」
「この場所で起こったことと、それを解決するために呼ばれたということくらいです。」
「分かりました。それでは今回なぜ呼んだのかをご説明します。まず、私のスキルに関してですが、幽霊や妖怪のような目に見えない存在を視ることが出来て、そういった存在、もしくは私に対して呪いをかけた存在を呪殺することが出来ます。」
「幽霊を呪殺ですか?」
「はい。今回の件、ハサミサソリの魂が集まってゴースト化したものだと私は考えています。」
「モンスターのゴースト化ですか・・・」
「はい。解決自体は私1人でもできますが、万が一に備えて呼ばせていただきました。厳密には私の安全の確保ですね。私が傷を負った際に治していただきたいんです。」
「それだけでいいのですか?霊体が相手となるのなら私も助力できると思いますが。」
「いえ。私は呪いから身を守る手段がありますがセシルさんはそうもいきません。なので私1人で入ります。」
「分かりました。万が一動けなくなるようなことがあれば大声を出してください。駆けつけますので。」
「分かりました。」
現在日付が変わったくらいの時間。今から現場でゴーストを探す。なんだか日本にいた時の心スポ巡りみたいでワクワクしてきたかも。
昼に傷を見せてもらった人たちは重傷者は骨折の人1人、軽症者はみんな切り傷だった。そこから考えられるのは骨折だけが呪いの可能性。切り傷に関しては物理干渉の可能性があるんだよね。
って言ったそばから呪いをかけられる気配だね。スキルのおかげでその影響はないみたいだけど。呪いをかけた奴がいるのは・・・
「真上!」
『俺様が見えているのか』
言語を介してる?見た目はハサミサソリをそのまま巨大化させたような感じかな?
「あんたが事件の元凶だね?」
『事件?あぁ、あの人間どものことか。』
「そ。正直あんたがどんな手を使ったか気になりはするんだけど、悠長にしゃべってると私の身が危ないからさっさと終わらせるよ?」
『俺様に勝てる、と?』
「もちろん。あんたゴーストでしょ?それならこれがよく効くはずだよ[退魔呪詛]」
『ゴーストではない。・・・・グハッ、何だこれは・・・?』
「ゴーストじゃないんだ。どんな存在なのかますます気になるけど、依頼だし遊ぶわけにもいかないからね。」
『クソが!呪詛解放!』
ん?さっきかけられた呪いが爆発するような感覚?なるほど。軽症者に痕跡が見えなかったのはそういうことね。
「なるほどね。事前にマーキングした対象に呪いの効果を発動する。これなら痕跡も大して残らなければ効果のバラツキもあるだろうし、同時発動もたやすいってわけね。残念ながら私は呪いから身を守るスキルを持ってるんだ。」
『そんな、人間が、いていいわけあるか!』
「それにしてもあんた随分苦しそうなことは置いておいて、ずいぶんと人語を理解しているし、人間を理解してるようだね。単なるハサミサソリの魂の集合体ってわけでもなさそう。まぁ、教えてくれるとは思ってないけどね。」
『クソが、なんで霊体の俺様が苦しみを感じるんだ・・・』
「教えてあげるよ。私の持つスキル[退魔呪詛]は呪いへの絶対耐性を所持者に付与すると同時に、霊体や妖怪みたいな呪いを扱える者、もしくは自分に呪いをかけた対象を呪殺できるスキル。今みたいに相手の力量次第では時間がかかるけどね。でもそれはそこまで重要じゃない。」
[退魔呪詛]を発動しようとしたときになんとなくだけど、その相手が対象になるかっていうのが分かるんだけど、こいつは今の時点で対象に取れる。
さっき発動した[退魔呪詛]は呪いに対する反撃、そして今から使うのは
「霊体に呪いをかけられれば重複して発動できるってこと。[退魔呪詛]」
音もなく崩れ去っていく。怪我もなく終わらせれてよかったや。それにしても確実に人間の関与はありそうだったね。アレスさんに報告しないと。今日は商業組合の事務所で遅くまで報告を待っててくれるってことだったし、セシルと別れてさっそく向かおうかな。
「アリスさん。ご無事でしたか?」
「うん。大丈夫だったよ。思ってたよりあっさり終わっちゃったや。商業組合のほうには報酬渡すよう話付けておくからもう帰って休んでいいよ。」
「いいのですか?」
「もちろん。私もあとは報告して依頼完了だからね。それじゃ報告待ってくれてるから私は行くよ。」
ってことでサクッと別れてアレスのもとへ急いだ。
「アリスさん、ご無事でしたか!」
デジャブだけど、まぁいっか。
「うん。無事解決できたよ。」
「お話を聞いても?」
「うん。まず元凶だけど、予想通りハサミサソリの魂の集合体だったね。本人はゴーストじゃないって言ってたけど、霊体で実体は持ってなかったよ。」
「ちょっと待ってください。言っていた?」
「うん。それが報告の一番大事なとこ。人語を理解してたし、知性もかなり高かったよ。町の人たちよりは策略とか謀略に関しては頭が回りそうなタイプって感じ。」
「そこまでですか。本来意思もまともに持たないハサミサソリがそこまで・・・」
「まぁ、裏に何かついてるのは事実だろうね。新しい商会の立ち上げをこのまま進めるのはお勧めしないよ。せめて裏にいる元凶がわかるまでは中断すべきだと思うよ。今回の相手だって相当強かったし。」
「それについてもお聞きしても?」
「そうだね。不便だからハサミサソリって呼ぶけど、ハサミサソリは事前に人間に呪いのマーキングをしてそのマーキングした人間に対して呪いを発動させれるみたい。マーキングから時間が経てば経つほど呪いの効果は薄まるみたいだけど、その分発動後の痕跡も残りづらいみたいだね。」
「それで軽症者に痕跡がなかったのですか。」
「そういうことみたい。ってことで、報告はこんなものかな。もしまだ何かあるようなら直接お店のほうに来てよ。ギルドを通すよりは安くなるよ。」
「分かりました。今回の報酬の件ですが・・・」
「あ、そうだ。言い忘れてたけどセシルにもちゃんと報酬渡してあげて。これだけ危険な依頼だったんだから。」
「そうですね。危険手当を出すとしましょう。それよりも今はあなたへのお支払いです。」
「そうだね。手数料のこともあるし、何ならかなり危険な依頼だったからね。金貨2枚でどう?」
「その程度でよろしいのですか?」
「あくまでも私は好きでこの仕事をやってるからね。今回は私も結構楽しかったしいいよ。」
「分かりました。それでは金貨2枚でお支払いします。」
「うん。それじゃ私は帰って寝るよ。」
「ありがとうございました。お疲れ様です。」




