61、華
ラークの体は毒がだんだんと侵食して行く。
「ゴホッゴホッ……ゲホッ……」
ラークは口から血を吐き出した。
「ラーク!」
くっそ……。
絶対に死なすわけには……。
何か方法を……考えろ!
俺は白属性だぞ!
選ばれし白属性。
こんなところで1人の少女も救えないで何が……。
白属性……?
俺は少しひらめいた。
俺は白属性だ。
花魔法を使えばいい!
でも……花魔法は使うのは5歳ぶりぐらいだ。
それに使えたことがない!
でも、やらないより……。
「ラーク!少し触れるぞ……花魔法“癒花“」
俺の手元から少しの光が放たれた。
いや……違う……これは傷を多少治すだけの魔法だ。
解毒だ解毒。
「花魔法“除毒花“」
――――――――
俺の手からは何も発せられない……。
「ゴホッ……ゲホッ……」
ラークはさらに血を吐き出した。
「おい……ラーク!」
症状は悪化している。
ここで諦めたら……ラークが……。
「花魔法“除毒花“」「花魔法“除毒花“」「花魔法“除毒花“」「花魔法“除毒花“」
何回も……何回も……。
治るまで……治るまで……治るまで……治るまで……。
俺の変な汗が流れてきた。
本当に……頼むよ……ラークをこんなところでは……。
「花魔法“除毒花“」「花魔法“除毒花“」「花魔法“除毒花“」「花魔法“除毒花“」
「く……くくそおおおおお!!!!」
俺の手元から何も魔法が放たれない。
おい……!俺は選ばれし人間なんだろ!だったらこんな状況なんて簡単だろ!
転生したんだ!
白属性なんだ!
こういう追い込まれた状況で覚醒するんだろ?
おい!ゲッツァ!頼むよゲッツァ!
俺が……ゲッツァがどうにかしないと……ラークが死んじゃうんだよ!
俺の目から大粒の涙が流れる。
だめだだめだだめだだめだ!
ラークを……こんなところで……。
俺がなんとか……しないと……。
――――――――
「誰か〜〜!!!助けてくれええ!!!頼む〜この森の近くにいるやつでもなんでもいい!!!誰か〜助けてくれえええ!!!」
俺は喉が壊れるほどの声で発した。
もう……俺にはどうすることもできない……!
頼む……誰か!
今できることを……やらないと……。
頼む……ラークを救ってくれ!
「ゲッツァ……君……」
ラークの目元も青紫になっている。
ラークの意識を朦朧としてきている。
やばい……本当に……。
「誰かああああああああああああ!!」
――――パカパカパカパカパカ――――
後ろの方から馬がかける音が聞こえてきた。
「どうしたんだ!」
後ろから声が聞こえた。
そこには2人。
1人は白馬の馬に乗っており、白髪に髭を顎までびっしりと蓄えている。
しかし、目元などはまだまだ若々しい感じの老人ではない……青年だ。
圧倒的なオーラを放っている。
そして、もう1人は俺と同じくらいの少女だ。
こちらの少女も白髪だ。
そして、長い髪の毛をまとめてポニーテイルにしている。
「頼む……ラークを……ラークを……助けてくれ!」
俺はボロボロな顔でそう伝えた。
「ラーク……その少女のことだな……」
その白髪の青年はゆっくりと馬から降りると、こちらへと近づいてきた。
「早く……早くしてくれ……!」
「落ち着きたまえ少年……こういう場合は焦っても意味がない!」
その青年は落ち着きを放っている。
しかし、俺はその姿にブチギレそうだ!
なんで人がやばいというのにこいつはこんなに平然といられるのか……。
その白髪の青年はラークにそっと近づくと、体全体を眺めるようにみた。
「これは……猛毒を大量に取り込んでいるな……それに魔法の使いすぎで魔量も乏しくなっている……。それを同時に喰らっているせいで毒の侵攻も早くなっている……相当無理をしているな!」
「おっさん……治せるか?治せないのか?治せるんだよな?」
「ああ……安心しろ!私だったら治せるな……」
治せる……。
「じゃあ早く……早く治してくれ!早く……早く……早く……」
――――バチーン――――
俺は後ろから右頬を殴られた。
へ……?
俺は地面に横たわると拳を突き出していた白髪の少女が俺の前に立っていた。
「何すんだよ!」
「何すんだよじゃないわよ!落ち着きなさい!これから助けようっていうのにあんたがそんなんだから助けるにも助けられないじゃない!」
「何が助けられないだよ!人の命があぶねえんだぞ!」
「何もわかってないわね!もういい……あなたはこっちにきなさい!」
そう言われると、俺はその白髪の少女に足を引っ張られると引きずられるようにしてその場から離された。
「おい!何すんだよ……」
「うるさいわね!黙ってみていなさい!」
――――ゴン――――
「痛ってえええ……」
俺は少し離された場所に少女に突き飛ばされた。
「仕上げに……土魔法“土重力“」
白髪の少女すると、俺の上には大量の土が乗り掛かった。
「何すん……だよ!」
痛い……骨も何本か折れているのだ、本調子なら……こんな魔法!
「あなたが暴れるのが悪いじゃない!黙ってみていなさい!」
「なんだと……」
俺はなすすべがなくなった。
ラークの元には白髪の青年が1人寄り添っている。
これから……ラークをどうするつもりなのか……。
本当に助けてくれるのだろうか?
まさか……水の国の姫だと知っていて……何かするんじゃ!
「おい!ラーク……」
――――パン――――
動けない俺に平手打ちが飛んできた。
「男がうだうだいってんじゃないよ!いいから落ち着いて見ときなさい。ダンテさんの華魔法"は"凄いんだから……」
俺はこの一言で少し頭を冷やせたかもしれない。
俺は確かに……焦りすぎだ。
焦っていていいことなんてないよな……。
それに今、華魔法って言ったか?
それに……ダンテさん?
俺は何かが引っかかったがラークのことを気にかけている今はそのような疑問が残り続けることがなかった。
とりあえずラークの体調だ。
それだけ治れば……。
ラークの隣に寄り添っている白髪の青年は光出した。
「あれって……?」
「黙っていなさい!ダンテさんが集中できないわ!」
俺の話はすぐに少女にかき消されてしまった。
「華魔法“上級除毒華“」
その魔法をラークへ向けて放つと周り全体は神々しい輝きに包まれた。
その光はどこか優しく……そして、自分までも癒えて行く感覚だった。
――――――――
「…………よし!」
しばらくすると、青年はラークから手を離すと魔法を止めた。
「ラークは……ラークはどうなったんだ?」
「多分……助かったわよ!」
そう言うと、少女は土魔法を解いてくれた。
俺の体の自由が戻った。
俺は急いでラークの元へと駆け寄る。
「ラークは……大丈夫なのか?」
ラークは意識はなかったが、体の青紫が消えており、呼吸も通常に戻っている。
「ああ……大丈夫だよ!」
その白髪、髭の青年の声は温かく、どこかで聞いたことのあるような声だった。
すると、その青年は俺にそっと触れた。
「君も相当な怪我を負っているね……華魔法“上級癒華“」
俺も神々しい光に包まれた。
体が……軽い……。
折れていた骨も多分治っている。
傷ひとつ残っていない。
「ありがとう……おじさん」
俺はこのタイミングで初めて冷静さを取り戻した。
「ふっ……おじさんね!」
何か少し噴き出して笑うと俺の頭をそっと撫でた。
「本当は私たちがウィングサーペントを倒さなければいけなかったんだけど……無理させちゃって悪かったね……」
「いや……こちらこそあなたたちが来なかったら助からなかったでしょう……助けてくださりありがとうございます……」
俺はしっかりと頭を下げた。
本当にこの人たちが来ていなかったら俺らは助かっていなかった……。
助かったのは奇跡だ。
「全然……。それより、君たちはサナヒラにすぐに戻りなさい。私たちが途中で魔物とかはほとんど倒しておいたから早めに帰れば魔物に遭遇しないで帰れるよ!」
「あ……ありがとうございます」
「そして……そこの少女だけど……かなり危険な状態だったから多分3日ほどは目を覚さないよ……」
「3日間も……」
俺は驚いたが……文句なんて言いようが無い。
しっかりと受け入れよう。
「そして、万全に体が回復するまでは多分1ヶ月ほどかかるだろうね……魔法で消せない毒は自然回復で治さないとだめだからね!それまではそこの少女に無理はさせちゃだめだよ!」
「はい……わかりました」
1ヶ月もか……。
俺は相当ラークに無理をさせてしまっていたんだな。
俺の実力不足で……。
「じゃあ私たちは先に行くとするよ……また会うだろうしね!」
そう言うと、ダンテと呼ばれた青年は白馬へと乗り込んだ。
もう1人の少女も馬へと乗り込んだ。
「助けてくれてありがとうございました!」
俺は改めて感謝を伝えた。
「いいんだよ!じゃあ行くよミュウラ!」
「はい!ダンテさん!」
そう言うと、二頭の馬は駆け出して行った。
ミュウラ……?
ミュウラだと……。
俺の妹の名前……。
「ちょ……ちょっと!待ってえ!」
しかし、俺の声が届くことなかった。
そのまま消えて行ってしまった。
ミュウラにダンテ……。
俺はなんとなく思い出した。
……………………。
いや、今はラークの安全が第一だ。
俺はラークをおぶるとそのままウマオに乗り込み、来た道を真っ直ぐと引き返した。
本当に魔物が1人も出てくることはなかった。
サナヒラは大いに盛り上がっていた。
魔獣が倒されたという噂が出回っていた。
「あの白髪の親子が倒してくれたんだぜ!」「あいつらに感謝だな!」
なんて言葉が飛び交う。
倒したのはラークだし……あいつらは親子でもないし……。
そんなことにいちいち突っ込まずに俺は宿へと真っ直ぐに向かう。
急いで宿を取るとラークを優しくベッドの上へと寝かした。
そして、そっと仮面を外してあげた。
ラークはとても良い表情をしている。
もう……大丈夫だろう……。
そう考えた瞬間に俺の体は崩れ落ちた。
力が一気に抜けた……。
それに手を見てみると手が震えている。
ミュウラと……ダンテさん……。
生き別れた妹と再会できた……。
けれど……今はそんなことに浸る余裕なんてない……。
俺は弱い……弱すぎる!
あの時に……俺が一発で仕留めていれば……こんなことにはなっていなかった……。
俺がラークから込められた魔槍を……しっかりと口の中に放っていたなら……こんな失態には繋がらなかった。
いや……あの時に俺がラークの魔法を使わずに自分自身の魔法で仕留められる実力があるなら……。
自分自身の魔法の力があったのなら……。
それに……ラークは互角に……いや、互角以上の戦いを繰り広げられていた……。
俺が怪我を負っている間も……1人で戦い続けていた。
それに比べて俺は……有効だが1つでもあったのだろうか……?
作戦に関しても……立ち回りに関してもラークが考えたものだ!
俺は一切何もしていない……。
そして、ラークがウィングサーペントの毒を喰らった時……、
俺が花魔法で解毒ができたのなら……。
それに……俺が回復させる能力があるのに……助けることができないなんて……。
5歳の頃に習ったことをしっかりやれていれば……。
あの時に花魔法を嫌いと言って練習しなかった。
そして、かっこいい火魔法や電魔法、水魔法ばかり練習していた。
しかし、そんな頑張っていた火魔法や電魔法、水魔法もウィングサーペントに通用したのか?
いいや、全く通用しなかった……。
それが事実だ。
何が選ばれし白属性だよ!
何もできていないじゃ無いかよ!
選ばれし存在というのに水属性しか操れない同い年の少女の足を引っ張っている……。
俺は何をしていたのだろう……。
今まで……。
何がラークを俺が守るだよ!
何も守れてないじゃないか!
なんなら俺はラークに守られていなかったら多分、ウィングサーペントの口の中で毒に塗れでミンチにされて食べられていた。
毒を喰らわなければいけなかったのは俺の方だったのに……。
情けない……。
白属性……ってなんだよ?
俺が追い込まれた時に覚醒とかするんじゃねえのかよ?
俺はラークを助けるために必死だったはずだぞ!
助けたいと思えば助けられるはずだろ?白属性……。
なんだよ……ほんとに……。
あの場にたまたま、ダンテさんが現れたのは奇跡だとは認めよう。
でも……ダンテさんをあの場所に呼び寄せた奇跡が白属性の力だって?
笑わせるんじゃねえよ!
本当に俺には何が残っているんだよ……。
白属性にさえ選ばれていないカルバーツだったらどうしただろう……?
多分、一瞬で片付けてラークを救っただろうな!
なんだよ……なんだよ……なんだよ……なんだよ……なんだよ……なんだよ……




