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月島のその科白は、どういう意味か。言葉のままの意味ではないと、思う。色恋沙汰、の意ではない。
「口説く…、告白って。」
月島と橘の会話の真意が理解できず、彼らの言葉をなぞり落としたタクヤを、橘はふわふわと納得いかないとした表情のまま見る。そして次に月島へ視線を移すと、なぜか小さなため息を落とした。
「センセも、魅せられていますか?」
ため息混じりの問いに、月島は少し考えるように黙し、すぐに返事をしなかったが、
「そう、かもしれません。」
彼女の問いに肯定をした。
「私も気をしっかりと持たなければ、永良さんを貪り喰らい尽くす立場に、下手したらなりかねません。まぁ、そのようなことは絶対にあり得ませんが。」
そして、月島はタクヤを見遣り、
「あなたの持つその力、水晶は、確かに私をも惹きつけるほどのモノです。」
だから、と、
「クライアントの深層で永良さんの『浄化』の風を渡らせることは、しばらく止めましょう。」
意味が、わからない。
タクヤは思わず、月島を凝視した。
文脈が、続いていない。タクヤの持つ水晶を褒める言葉から、月島はどうしてそのような決断を下すのか。
それは、その提案は、タクヤは月島たちにとって、やはり役立たずで不必要だということか。
タクヤの深層は緑に映えていて清んで綺麗だ、とか、タクヤの持つ力の象徴であるきらきらと輝く水晶は、他者が持つことのないほどの稀有な物だ、とかタクヤを褒めて、いちどはタクヤの力を求めたが、結局は、タクヤは彼らには要らない者だったということなのか。
やはり月島も、タクヤの持つ水晶だけを求めているのであり、タクヤ自身には、水晶の力がコントロールできなければ、つまりは水晶がなければ、興味がないのだ。
先ほどの彼の言葉がそうだった。タクヤが輝く水晶をこの身に内包しているから、彼はタクヤをリハビリだといったもっともらしい理由で『月島の診察室』に、留め置いたのだ、と。
その前段にあった月島の、タクヤを、輝く水晶を持つ『永良タクヤ』とは捉えておらず、タクヤを、『永良タクヤ』といった人物がたまたまその身に水晶を宿していたと捉えていると、『水晶』が中心ではなくて『永良タクヤ』が中心にあり、友人だと思っているといった話は、所詮詭弁であり、口先だけだということだ。その話はタクヤを慰めるためだけの、虚偽でしかなかった。
結局は、『永良タクヤ』だけでは、彼らとの縁すら得られていなかった。
それは、月島だけのことではない。
誰もが、そう、なのだろう。
タクヤの価値は、この水晶だ、ということ。
水晶がなければ、水晶を内包していなければ、『永良タクヤ』は興味関心するに値する人物ではない、ということだ。
「それならば、水晶だけの価値しかないとあなたを捉えていたならば、私はこの場で情熱的に『永良タクヤ』を口説きません。」
タクヤの心の内が月島に読まれ、タクヤがネガティブな思考に走ったとたん、即座に彼から『永良タクヤ』を認める言葉が出る。
「確かに永良さんのその力は、きらきらととても清んでいて、私をも魅了し、ソレを、そしてあなたを手放すことを惜しいと思わせるものです。」
けれども、と、
「何よりあなたのその、誰かの役に立ちたいといったその強い思い。それに加え、そのことを成し遂げようとする、自己犠牲をも厭わないその気持ちが、とても貴重で大切なんだと思っています。そのようなあなただから、あなたから水晶の力が失われてしまったとしても、私はあなたとは友人関係を続けたい、と思っているのです。」
月島はこのような場になっても、『永良タクヤ』を是という。
けれども、それは。
「けれどもそれは、そのことは月島さんが認めてくれているような、綺麗事ではありませんっ。」
月島の言葉への反論が、即座にタクヤの口から吐いて出る。
月島が認めてくれているその部分は、タクヤがタクヤの自己肯定感を得るためにしているだけ、のものだ。自己犠牲などという綺麗なことではない。他者から認めてもらいたくて、その承認欲求の先の行動にすぎない。褒められるようなモノでもなんでもない。自分に益があるから、しているだけだ。タクヤが起こした行動が、たまたま相手にも益があるだけ。
ただ、それだけだ。
「でもそれが、水晶を護り育てているあなたらしいし、何よりもあなたを構成する根幹です。」
と、月島は先ほどまでとは違い、柔らかな笑顔をタクヤに見せる。
「あなたのその思い、行動が自己満足のためだけ、だというのなら、それはそうなのでしょう。往々にして、人は自己満足、己の益のために動くものです。けれどもあなたが自分の益のためにと起こすその行動は人助けであり、それは人を傷つけるものではありませんから。」
タクヤに対して、否定の言葉を紡がない月島のこの言葉たちは、カウンセラーとしてのものか。
それとも、月島の本心からくるものか。
タクヤは懐疑的に月島を見遣る。




