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未熟

────お前が守りたかった者はもう居ない。

 お前がこれから守りたいと思っている者達は二度とお前には救われない。

 それでも、運命に抗うと決めた。

 例えその思いが無くなったとしても、それがあったという事実だけは誰にも変えさせやしない────






 「あ~、楽しかった」


 緊張感を無い声が虚空に響く。だが、そんな簡単に物事が上手く進むわけでは無い。


 「って、そんな訳あるかっ!!!」


 気が、乱れている。コレでは陰陽師を名乗って良いのか分からない。


 まだまだ未熟と言うことが素人の目にも分かるだろう。


 今、僕はどこに居るのかも分からない。空気があるのならば、多分地球なのだろう。


 だが、この中の空間にいるだけでは方角も分からない。占いも出来ない。風水もだ。オマケに、情報があまりにも足りなさすぎる。


 俺の術式は「呪」そのものと相性がすこぶる良い事は今までの戦いでは分かっている。だが、それが呪術全てであるわけでは無い。呪とはもっと奥が深い物だからだ。睦に告白したのだって、一種の呪であると言えるだろう。一度きりの巡り会い。コレを使うのはもっと先のことだ。


 「切り札を揃えるのは良いが、基本がなってねぇなぁ」


 そんな事は俺が一番よく分かっているんだよぉ!!、と言わんばかりの形相で当たり前のことを言ってくる黒い霧を睨み付ける。


 「オイオイ、睨むなよ。そろそろ名前で呼んでくれても良いんじゃあ無いか?湊キュン?」


 「ふざけたことを言うなよ、俺はおまえには敬意を払うつもりはない。いまのところはな」


 「へぇ、じゃあいつかは俺に対して払ってくれるのか?その、敬意ってヤツをよ。」


 「そうだな。約束するよ」


 「んじゃ、そんな湊君に一つご褒美をあげよう。あ、この口調に変わったことについてのツッコミは無しで。ではいくよ。この空間は一体何でしょうか?」


「何って、そりゃあワームホールじゃないのか?この空間は九字を元にした位相をずらす、みたいな事はしていないわけだし」


 「うんうん、良いね。そうすれば見つからないと思ったんだ…。甘ぇよ。」


 お、僕が好きな台詞がここで来るとはやはりコイツのセンスは見習うべきところがある。


 「っておい、話聞いてるの?うわぁ、何?そんなに目を輝かせて。そんなにこの台詞が好きなの?」


 「うん、特に『甘ぇよ』の所」


 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!これ以上踏み込んじまうとガイドライン違反でBAN☆されるゾ☆」


 お、流石のコイツも大人しくなったか。よしよし、可愛い可愛い。


 「って、撫でるな。本当の俺の正体を知っているくせに!?」


 「当たり前だろ。だが、その姿は君であって君では無い。だから、今は親友ポジションと言うことで」


 性別も変わっているし...。


 「ダ、チガウ!と、とにかくお前は知識が足りない!!!練習量もだ!!!オマケに、オリジナリティがまるで無い。それに呪術と言えば、元はあの人のモノに影響されたからこうなっているだけだろう?」


 「否定はしないさ。確かに俺は彼女の呪力に触れてこの世界に入った。だが、それはきっかけに過ぎない。キチンと俺だけの技もあるし。まぁ、二次元の物から応用したのは多いと思うけど…。」


 もごもごと湊は口ごもる。


 「オマエ、弱いぞ」


 「言わなくても分かっているさ」


 「さっきから格好つけるのは止めろ。オマエも気づいているだろう。オマエに陰陽道を教えられる人は居ない。だから、フィクションから着想を生み出して術を繰り出す。それは至極まっとうな結論だ。それも一つの武器だ、認めるさ。だが、それじゃあダメだ。必ずツケが回ってくる。物事の見方が一面的すぎるんだよ、オマエは。オマケに法力や呪についての真髄について考えたことがあるのか?力を持つ者としての自覚が…」


 黒い霧はうんうんと一人で黙り込んでしまった。


 「って、そんな場合じゃ無い!!一体この空間は何なんだよ、ダークフォ」


 「その名を使うな!!さっきの質問の答えは、ワームホールで良いと俺も思う。が、本当に陰陽道でワームホールなんて者が出てくるのか?」


 「それは俺も思った。そもそも俺は太極図から着想を得たんだ。あの混ざり合う様子から何かできあがりそうだなーみたいな感じで想像したら、デキチャッタ」


「ア、ソウナンデスネー。いやはや恐れ入ります。これからも修行頑張ってください。取り敢えず隠形今日中にマスターな。じゃなきゃいつまでたっても外に出られませんよ。」


 口調や性格?が丸くなっても本質は変わらないブラックフォ


 「その名で呼ぶな!!」


 はい…。


 取り敢えず、今は修行を頑張ろうか。


 「オン・マリシエイ・ソワカ」


 数分前とは打って変わって、明るい声がワームホールの中に雄々しく響いた。






 

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