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八方塞がり

 かれこれ体感二時間ほど練習しているが、流石に集中力が限界だ。


 「ええい!!一か八かでやってやる!!開け、ごま!!!!」


 にゅいん、と近未来的な音がしたかと思うと目の前には川が見えた。


 やったぁ!!と叫びたいがまだその時じゃ無い。


 「オン・マリシエイ・ソワカ」


 隠形の範囲をワームホールのガワにも及ばせる。


 「ぐっ、うううううううううっ!!!」なんだコレ、今までの呪術とは比べものにならないぐらいには呪力の消耗が激しいっ!!俺の術式の根幹は痛みに重きを置いているため、このような場合でも変わらずに呪力を練り続けることが理論上は可能だが、集中力はとっくに限界を迎えている!!!術式の広がるスピード、丁寧さ、呪力のごり押しだけでは決してたどり着けない領域!!誰かに気づかれる前に終わらせなきゃ行けないのに!!!


 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!!!!!!!!」


 って、叫んだらダメでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!



 



 「あれ、今アイツの声が聞こえ無かったか?」校門の前で、結人が立ち止まった。


 「ううん、気のせいじゃない?」


 「そうか…」


 結人はがっくりと肩を落とし、目を伏せた。


 「ほら、今は集中集中!!転校生っていうのも可笑しいけど、今日から新しくこの学校の一員となるんだから」私は普段通りを装って結人を励ます。


 「あ、ああ。そうだな」


 そうだ。教会の計らいもあって俺はすんなりとこの学校の転校生として入り込むことが出来た。さすがだな。たった一日でこれほどのことを為すのも造作も無いと言った所か。ますます、腹の虫が治まらん。だが実際には、教会の上層部らが良い機会だと言って俺に学校へ行くチャンスを与えてくれたのだからな。感謝とまではいかなくとも、それに相応しいような行動はするつもりだ。もちろん、アイツらには一つの感謝も無いけどな!!!!!!


 


 どすん


 おっと、考え事をしていたせいで誰かにぶつかってしまったみたいだ。


 「すまない。大丈夫か?」


 ぶつかった相手は同じ制服に身を包んだ少年だった。白髪に整った顔立ち、すらっとしたスタイル。俺から見ても認めざるをえんな。八代の方も顔もスタイルも彼と遜色ないレベルのはずなのだが、アイツはどうにも雰囲気が良くない。陰気が纏わり付いているのが分かる。それに比べて彼はどうだ!!!陽気に満ちあふれている感じがこちらにまで伝わってくるようだ。


 「どうかしましたか?」不思議そうな目でこちらを見てくる。


 「いや、何でも無い」


 少年は立ちあがり、さっきとは打って変わった鋭い目で真っ直ぐこちらを見据えていた。


 「そうですか、ご心配には預かりません。ただ、ぶつかった代わりには何も無いと言うのもつまらない。どうです。ここは僕の話に付き合っていただくと言うことで()()()にすると言うことで」


 「ああ、かまわないぞ」急な提案にも動じず、結人はさっさとついて行ってしまった。


 「大丈夫、何だよね…」あまりの出来事に睦は声を上げることも出来なかった。昨日の集団下校から一夜明けてもなお、学校には不穏な影が未だ付き纏っていた。


 それでも、彼女は昇降口へと歩き出す。結人を信じているから。そして、湊の思いを無駄にしないために…。







 この話は、高坂にとって本来は害のある内容のはず、だった。しかし、それは無理矢理捻じ曲げられる事になる。天によって。





 

 連れてこられたのは、体育館倉庫の裏側だった。


 「へぇ、随分立派じゃあ無いかここは」


 「オマエも初めてなのか、制服を着ているが」


 「ああ、そうさ。君と全く同じだよ、高坂結人」


 「ほう、俺の事を知っているとは。何者なんだ、おまえは?」


 「僕は現土御門家当主 土御門 社」


 「社、だと…」オマケに土御門ときた。何をやらかしたんだ、アイツは?


 「おや、話が早いね。君と戦った湊クンはね、僕の敵だ」


 「て、き…?」


 意味が分からなかった。陰陽師同士の戦いは物語の中でしか無いと人づてに聞いたことがある。それが、現実になろうとしているのか?


 「どうして、アイツを…」


 「決まっているじゃないか。理由はたった一つ。シンプルな答えさ。彼は生きてちゃいけないと呼ぶに値する存在、ただそれだけだ」


 「何を根拠にそんな事を!!!」


 「八代だから、ただそれだけさ」


 「それは可笑しい。八代だからといえば彼の両親達も当てはまるはずだろう。なぜ彼らは生きているのだ!!!」


 「何って、彼らは()()()()()からだよ。まあ、湊クンのせいで力が目覚めてきているようだけどアレじゃ脅威にはならない。なれないんだ」


 「な、何を言っているんだオマエは!!あの力は血縁による物では無かったのか!!」


 「おや、君も八代に影響されてしまったのかな。夢の中で見たのかい?いいさ、教えてあげよう。八代家の血筋は少々特殊でね。僕も未だに分かってないことが多々あるんだよね。ただ、分かっていることもある。それは関わった人間に不幸を及ぼすこと」


 「不幸を呼び込む…」


 「そう、言い換えれば何らかの力を人間に与え、その力に与えられた人はだんだんと溺れていき身を滅ぼす、といった感じのものだったそうだ」


 「だった?」


 「そう、問題はそこなんだ。どうやらとある神様は八代湊という存在がどうも気に食わなかったらしいんだ。そこで勝手にデメリット無しの能力を振りまくように一部調()()を施したらしいんだ。凄いよねぇ、神様って!!しかーし、彼はその分不幸になるというオマケつきでね」


 「ちょ、ちょっと待った。それはどういう」


 「いいから最後まで聞きなよ。ただ、湊キュンの術式は厄介でね、痛みや苦しみの大きさに比例して、彼の呪力もどんどん比例していくんだ。コレだけ聞くと陰陽師なら当たり前のことだと思うだろう。実はね、いくら土御門家の当主といえども彼ほどの呪力を内包できる人材はどこにも居ないんだ。陰陽師としての素質の一部分を極限まで突き詰めたような物だからね。人間としてはどうしても対応するにも限界があるはず、が彼は出来てしまった。今のうちに対処しておかねばこの世界が崩壊する危険があるってところかな。彼の自殺願望のせいでね。怨霊にでもなられたらそれこそ手に負えなくなる。いわば、マジで世界が終わる五秒前って感じかな」


 今のは少し無理があるだろ、と思いつつ高坂は話を続けた。「それでそのやらかした神の尻拭いをしろと?」


 「ご明察!!そしてね、コレは君の幼なじみである睦ちゃんとも関係があるんだ~。彼女の持つ悪魔の力の一つと八代家の能力、似てない?」


 「いや、それは悪魔はこの世界にある全ての能力を個人差はあれど使える訳だから別に可笑しくはな、い!?」


 「そう!!君たちの神様が関わっている可能性が大!!何だよね~。堕天使、まあ面白いとは思わないかい?」


 「睦は、あの人が悲劇の末に残した最期の()()だ。睦という名前も教会のヤツらに言われてつけたはずだが、あの人は『しっかり意味を込めているさ、あの人達が皮肉ってつけたような思いで私はこの子に名前を付けない。いくら命令であっても、その時に発せられた言葉を私は断じて許しはしない!!!何が獣の数字(悪魔の数字)である666をもじった言葉であり、丁度いい、だ!!!そんな意味を覆すほどに『睦』と言う漢字には親の愛情が詰まっている言葉なんだ。そんな発言、誰が認めると言うのだ!!!誰かにバカにされようとも、この名前の本当の意味を知っている者には分かるはずだ。結人、それほどまでに睦と言う名は素晴らしいものさ。彼女が幸せになるように、オマエも本当のことを教会の皆には伝えていって欲しい。こんな役目を負わせてすまないな』と言っていた。やはり何か、意味があるのか?」


 俺は話している途中で睦の境遇を思い出し、思わず泣き出しそうになっていた。だが、


 「ほう、名前ね。うん、やっぱり君が言うあの人は凄いんだね」


 「ここにも八代の力が!?」


 すぐに、引っ込んでしまった。それどころでは無かった。


 「ああ、冗談冗談。その反応を見るに本当らしいね」


 こ、こいつ謀ったな!!

 

 「と、まあ冗談は置いといて今頃彼の所には大勢の陰陽師がいるだろうね。彼は逃げ切れるかな?」


 社はくつくつと笑い声を上げる。続けて、僕の勘は良く当たるしね、と悪びれもせずに言った。そこは占ってほしいものだ。だが、それがこの男の恐ろしさだ。


 湊、と高坂は思わず叫び駆け出そうとした、が、


 「彼の願いを破っちゃあダメじゃ無いか、高坂君?君は睦ちゃんと甘々な学園生活を楽しめば良いんだよ。()()()、ね」


 突如、ぶわぁと白い閃光が高坂を襲った。


 何か言わなくては、そう強く思った。そこで俺が発した言葉は


 「オマエのキャラ変わりすぎだろ!!!」


 えっへん、と湊に似たような仕草をした後、こう言った。


 「行ってらっしゃい、高坂君。君は、君たちは幸せに暮らすと良い。本当によく頑張った。後、心配もしなくて良い、僕は彼が死なない方に賭けているのでね」

 

 とまあ、彼を学校の中に送ったところで僕は行動を開始する。



 「行くぜ、湊キュン。こわいこわ~い鬼ごっこのは・じ・ま・りだぜぃ!!!」



 






 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 助走をつけて外へと走り出した、が空間を閉じるのに意識を要したため、気づいた時には僅か10センチにまで顔面が地面へと接近している所だった。


 たまらず、受け身を取った結果がでんぐり返しとなった。


 ドボン。


 でんぐり返しを重ねに重ね、たどり着いた先は真っ昼間の河川敷だった。


 「畜生、目立っちまったZE☆」


 周りを見渡すと土御門の家紋が かれこれ体感二時間ほど練習しているが、流石に集中力が限界だ。


 「ええい!!一か八かでやってやる!!開け、ごま!!!!」


 にゅいん、と近未来的な音がしたかと思うと目の前には川が見えた。


 やったぁ!!と叫びたいがまだその時じゃ無い。


 「オン・マリシエイ・ソワカ」


 隠形の範囲をワームホールのガワにも及ばせる。


 「ぐっ、うううううううううっ!!!」なんだコレ、今までの呪術とは比べものにならないぐらいには呪力の消耗が激しいっ!!俺の術式の根幹は痛みに重きを置いているため、このような場合でも変わらずに呪力を練り続けることが理論上は可能だが、集中力はとっくに限界を迎えている!!!術式の広がるスピード、丁寧さ、呪力のごり押しだけでは決してたどり着けない領域!!誰かに気づかれる前に終わらせなきゃ行けないのに!!!


 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!!!!!!!!」


 って、叫んだらダメでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!



 



 「あれ、今アイツの声が聞こえ無かったか?」校門の前で、結人が立ち止まった。


 「ううん、気のせいじゃない?」


 「そうか…」


 結人はがっくりと肩を落とし、目を伏せた。


 「ほら、今は集中集中!!転校生っていうのも可笑しいけど、今日から新しくこの学校の一員となるんだから」私は普段通りを装って結人を励ます。


 「あ、ああ。そうだな」


 そうだ。教会の計らいもあって俺はすんなりとこの学校の転校生として入り込むことが出来た。さすがだな。たった一日でこれほどのことを為すのも造作も無いと言った所か。ますます、腹の虫が治まらん。だが実際には、教会の上層部らが良い機会だと言って俺に学校へ行くチャンスを与えてくれたのだからな。感謝とまではいかなくとも、それに相応しいような行動はするつもりだ。もちろん、アイツらには一つの感謝も無いけどな!!!!!!


 


 どすん


 おっと、考え事をしていたせいで誰かにぶつかってしまったみたいだ。


 「すまない。大丈夫か?」


 ぶつかった相手は同じ制服に身を包んだ少年だった。白髪に整った顔立ち、すらっとしたスタイル。俺から見ても認めざるをえんな。八代の方も顔もスタイルも彼と遜色ないレベルのはずなのだが、アイツはどうにも雰囲気が良くない。陰気が纏わり付いているのが分かる。それに比べて彼はどうだ!!!陽気に満ちあふれている感じがこちらにまで伝わってくるようだ。


 「どうかしましたか?」不思議そうな目でこちらを見てくる。


 「いや、何でも無い」


 少年は立ちあがり、さっきとは打って変わった鋭い目で真っ直ぐこちらを見据えていた。


 「そうですか、ご心配には預かりません。ただ、ぶつかった代わりには何も無いと言うのもつまらない。どうです。ここは僕の話に付き合っていただくと言うことで()()()にすると言うことで」


 「ああ、かまわないぞ」急な提案にも動じず、結人はさっさとついて行ってしまった。


 「大丈夫、何だよね…」あまりの出来事に睦は声を上げることも出来なかった。昨日の集団下校から一夜明けてもなお、学校には不穏な影が未だ付き纏っていた。


 それでも、彼女は昇降口へと歩き出す。結人を信じているから。そして、湊の思いを無駄にしないために…。







 この話は、高坂にとって本来は害のある内容のはず、だった。しかし、それは無理矢理捻じ曲げられる事になる。天によって。





 

 連れてこられたのは、体育館倉庫の裏側だった。


 「へぇ、随分立派じゃあ無いかここは」


 「オマエも初めてなのか、制服を着ているが」


 「ああ、そうさ。君と全く同じだよ、高坂結人」


 「ほう、俺の事を知っているとは。何者なんだ、おまえは?」


 「僕は現土御門家当主 土御門 社」


 「社、だと…」オマケに土御門ときた。何をやらかしたんだ、アイツは?


 「おや、話が早いね。君と戦った湊クンはね、僕の敵だ」


 「て、き…?」


 意味が分からなかった。陰陽師同士の戦いは物語の中でしか無いと人づてに聞いたことがある。それが、現実になろうとしているのか?


 「どうして、アイツを…」


 「決まっているじゃないか。理由はたった一つ。シンプルな答えさ。彼は生きてちゃいけないと呼ぶに値する存在、ただそれだけだ」


 「何を根拠にそんな事を!!!」


 「八代だから、ただそれだけさ」


 「それは可笑しい。八代だからといえば彼の両親達も当てはまるはずだろう。なぜ彼らは生きているのだ!!!」


 「何って、彼らは()()()()()からだよ。まあ、湊クンのせいで力が目覚めてきているようだけどアレじゃ脅威にはならない。なれないんだ」


 「な、何を言っているんだオマエは!!あの力は血縁による物では無かったのか!!」


 「おや、君も八代に影響されてしまったのかな。夢の中で見たのかい?いいさ、教えてあげよう。八代家の血筋は少々特殊でね。僕も未だに分かってないことが多々あるんだよね。ただ、分かっていることもある。それは関わった人間に不幸を及ぼすこと」


 「不幸を呼び込む…」


 「そう、言い換えれば何らかの力を人間に与え、その力に与えられた人はだんだんと溺れていき身を滅ぼす、といった感じのものだったそうだ」


 「だった?」


 「そう、問題はそこなんだ。どうやらとある神様は八代湊という存在がどうも気に食わなかったらしいんだ。そこで勝手にデメリット無しの能力を振りまくように一部調()()を施したらしいんだ。凄いよねぇ、神様って!!しかーし、彼はその分不幸になるというオマケつきでね」


 「ちょ、ちょっと待った。それはどういう」


 「いいから最後まで聞きなよ。ただ、湊キュンの術式は厄介でね、痛みや苦しみの大きさに比例して、彼の呪力もどんどん比例していくんだ。コレだけ聞くと陰陽師なら当たり前のことだと思うだろう。実はね、いくら土御門家の当主といえども彼ほどの呪力を内包できる人材はどこにも居ないんだ。陰陽師としての素質の一部分を極限まで突き詰めたような物だからね。人間としてはどうしても対応するにも限界があるはず、が彼は出来てしまった。今のうちに対処しておかねばこの世界が崩壊する危険があるってところかな。彼の自殺願望のせいでね。怨霊にでもなられたらそれこそ手に負えなくなる。いわば、マジで世界が終わる五秒前って感じかな」


 今のは少し無理があるだろ、と思いつつ高坂は話を続けた。「それでそのやらかした神の尻拭いをしろと?」


 「ご明察!!そしてね、コレは君の幼なじみである睦ちゃんとも関係があるんだ~。彼女の持つ悪魔の力の一つと八代家の能力、似てない?」


 「いや、それは悪魔はこの世界にある全ての能力を個人差はあれど使える訳だから別に可笑しくはな、い!?」


 「そう!!君たちの神様が関わっている可能性が大!!何だよね~。堕天使、まあ面白いとは思わないかい?」


 「睦は、あの人が悲劇の末に残した最期の()()だ。睦という名前も教会のヤツらに言われてつけたはずだが、あの人は『しっかり意味を込めているさ、あの人達が皮肉ってつけたような思いで私はこの子に名前を付けない。いくら命令であっても、その時に発せられた言葉を私は断じて許しはしない!!!何が獣の数字(悪魔の数字)である666をもじった言葉であり、丁度いい、だ!!!そんな意味を覆すほどに『睦』と言う漢字には親の愛情が詰まっている言葉なんだ。そんな発言、誰が認めると言うのだ!!!誰かにバカにされようとも、この名前の本当の意味を知っている者には分かるはずだ。結人、それほどまでに睦と言う名は素晴らしいものさ。彼女が幸せになるように、オマエも本当のことを教会の皆には伝えていって欲しい。こんな役目を負わせてすまないな』と言っていた。やはり何か、意味があるのか?」


 俺は話している途中で睦の境遇を思い出し、思わず泣き出しそうになっていた。だが、


 「ほう、名前ね。うん、やっぱり君が言うあの人は凄いんだね」


 「ここにも八代の力が!?」


 すぐに、引っ込んでしまった。それどころでは無かった。


 「ああ、冗談冗談。その反応を見るに本当らしいね」


 こ、こいつ謀ったな!!

 

 「と、まあ冗談は置いといて今頃彼の所には大勢の陰陽師がいるだろうね。彼は逃げ切れるかな?」


 社はくつくつと笑い声を上げる。続けて、僕の勘は良く当たるしね、と悪びれもせずに言った。そこは占ってほしいものだ。だが、それがこの男の恐ろしさだ。


 湊、と高坂は思わず叫び駆け出そうとした、が、


 「彼の願いを破っちゃあダメじゃ無いか、高坂君?君は睦ちゃんと甘々な学園生活を楽しめば良いんだよ。()()()、ね」


 突如、ぶわぁと白い閃光が高坂を襲った。


 何か言わなくては、そう強く思った。そこで俺が発した言葉は


 「オマエのキャラ変わりすぎだろ!!!」


 えっへん、と湊に似たような仕草をした後、こう言った。


 「行ってらっしゃい、高坂君。君は、君たちは幸せに暮らすと良い。本当によく頑張った。後、心配もしなくて良い、僕は彼が死なない方に賭けているのでね」

 

 とまあ、彼を学校の中に送ったところで僕は行動を開始する。



 「行くぜ、湊キュン。怖い怖~い鬼ごっこのは・じ・ま・りだぜぃ!!!」



 






 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 助走をつけて外へと走り出した、が空間を閉じるのに意識を要したため、気づいた時には僅か10センチにまで顔面が地面へと接近している所だった。


 たまらず、受け身を取った結果がでんぐり返しとなった。


 ドボン。


 でんぐり返しを重ねに重ね、たどり着いた先は真っ昼間の河川敷だった。


 「畜生、目立っちまったZE☆」


 周りを見渡すと数十人ほどの人影が居るのに気が付いた。


 「マズい!!!」


 直後、待機していた社の命によって待機していた陰陽師達が一斉に詠唱を開始する。


 「「「「「「「「「「「「「「燃えよ、火行符、急急如律令!!!」」」」」」」」」」」」」」


 おいおい、河原を焼け野原にするつもりかよ!!オマケに火行符だけで対応か。様子見と言えば聞こえは良いが、要は舐められている訳だ。ただ、基本の技で対抗しようとする人にしては、いやに落ち着きが見える。


 誰だ、此奴らは?


 「リンク」小さく呟く。


 直後、波長を死角に入った陰陽師の一人に合わせ、思考を覗き見る。


 余計な情報は排除して、と。コレだ!!!


 え~と、つ、つ、つ、つ、つつつつ土御門ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!


 いや、一旦深呼吸だ。相手は様子見、のはずだ。


 まずはここをどう切り抜けるか、だろ?


 「良いね。やってやるよ!!!」


 こんな状況だからこそ、湊は笑みを浮かべ声を張り上げる。


 あいにく自分は川の中だ。そうとなれば、やることはただ一つ!!!


 せぇーのっっ!!!


 「水の力、お借りします!!!」


 とある光の戦士に変身するような叫びをして、即興で印を結び、水行符を川に叩き付けて放つ。


 「水流よ!!うねり、煌めき、龍となれ!!龍神演舞、急急如律令!!!」


 空中に水で模られた高さ五メートルほどの龍神を作り出した。


 火を相克するために放った技であったが、やはり相手は土御門家に使える陰陽師。一枚上手である。


 「土剋水、急急如律令!!!」


 余裕を持って対応される。これほどの人数であれば、大抵の術は封じ込められるだろう。


 暴れ狂うはずの龍神は今、まさに死に絶えようとしていた、はずだった。


 「ガオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 龍が吠えた。


 五行の相性の良し悪しを己の身一つの呪力だけでぶち壊したのだ。


 この様子には思わず陰陽師達が息を呑まざるを得なかった。


 「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


 もう、誰にも止めさせない。そのまま龍神とともに空中へと飛び上がる。


 自分を捕らえるための結界は無い。ストン、と空中に湊は立った。足場用の結界を張ったのだ。


 もっと早く、丁寧に、絶えず、一滴残らず呪力を絞り上げろ。生きるために────


 俺は、今成長する!!


 構築せよ、己の全てを掛けて!!!


 空中に今持っている約八割ほどの呪符を空中に浮かべ、柏手を打つ。勿論、足裏には足場も兼ねた結界を何枚も重ねて張り、敵の攻撃に備えている。


 ジジジジ、と先程設置した呪符から新たな呪符が生まれ落ちた。


 そのまま、湊を中心としてぐるぐると回ったかと思うと、一瞬にして彼の姿を二メートルほどの球状となって覆い、そのまま消えてしまった。


 「すみません。逃げられました。社殿」


 河原にいた陰陽師の一人が悔しそうに社へと連絡を取る。


 「ああ、大丈夫。さあ皆、屋敷に戻っておいで、宴の時間だ」


 「はっ、はい!!!」


 これくらいやってもらわなくちゃ困るよ、湊キュン。


 さっきまで影が立ちこめていた体育館倉庫の裏側には、いつの間にか太陽の光が差し込んでいた。










 あ、そういえば僕も学生の一人として楽しませてもらうよ、君が彼らに与えたがっている()()ってヤツをね。

 

 



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