【 4 】
美味しいおかゆを食べ終え、役目を終えた桃色土鍋と桃色レンゲは下げられた。
最初は真柴さんばかりを眺めていたので気がつかなかったけど、よくよく見てみるとこのキッチンエリアはどこもかしこもピンク色だらけでなんだか酔ってきそうです。
「お茶をどうぞ、勝利さま!」
僕の前に湯気を立てた湯のみが置かれたけどまたしてもピンク色だ。でも味に変わりがあるわけではないし、お礼を言っておとなしくお茶を啜ることにする。
ん? うわっ、真柴さんが穿いているスリッパもピンク色じゃん……。どれだけこの色が好きなんだろう。すごい徹底ぶりだなぁ。
お茶を淹れてくれた真柴さんはさっそく後片付けを始めだした。まめまめしく動く姿にドキドキしてしまう。
湯呑片手にその様子を見ていると、パタパタとキッチン内を忙しく移動している最中にリノリウムの床に水滴でもあったのか、ツルンと滑ったピンク色のスリッパが豪快に宙を飛ぶ。
「きゃんっ!?」
スリッパが空を飛んだから当然真柴さんも豪快に転んだ。
すぐにズダン、と結構な音がして真柴さんの身体がダイニングテーブルの向こう側に消える。僕は慌ててテーブルから立ち上がった。
「大丈夫!?」
って声をかけようと思ったけど、転んでいる真柴さんの格好があまりにも衝撃的だったので結局それは声にならなかった。
「あぁん、いったぁ~い……」
す、凄い……!
前のめりに転んだ真柴さんはお尻を高く上げて床に四つんばい状態になっており、彼女の青いスカートは常に半球状の形態を保っているのでその中は僕から丸見え。
つまり、僕はまたしても “ 半永久的に使用可能なおかず ” をここで見させていただいたわけです。
「かっ勝利さまッ! 今ワタクシの下着をご覧になられておしまいになってしまわれちゃったのでございますの!?」
どうやらパニックになると真柴さんの言葉の使い方は多少混乱するみたいだ。真っ赤な顔で素早く身を起こし、ペタンと床に座り込む。
「み、見てないよ?」
「嘘ですわッ! その位置! その角度! そして勝利様のそのお顔! 絶対ご覧になられて候ですわッ!」
マズい! 慌てて口元を手で覆う。
僕、今どんな顔をしているんだろう? すっごくしまりの無い顔をしているのかな。あぁ恥ずかしい。でももっと恥ずかしいのはきっと真柴さんだよね……。
「ご、ごめんね! 今度もちゃんと忘れるから!」
すると真柴さんは急に恥ずかしそうに俯き、床の上でもじもじと人差し指で字を書くような素振りをし始める。
「……す、済みません勝利さま……ワタクシったら取り乱したりしてしまって……。いいんですのよ、無理にお忘れになろうとなさらなくてもっ」
え!? いいのッ!?
実は元々忘れる気は無かったけど、こうやってお墨付きをもらえると嬉しいな。でも口元がほころばないように気をつけなくっちゃ。
「だって、勝利さまとワタクシはすべてが結ばれる運命なのですし、下着を見られたくらいで恥ずかしがってはいけませんわね。申し訳ありません」
……って、ぬわんですとぉぉぉ――――ッ!?
「ま、真柴さん、む、む、結ばれるって……!?」
「はいっ! ワタクシと勝利さまがお互いの着衣を取り払い、この世に生を受けた姿に戻った後、秘部と秘部が渾然一体となって溶け合い、神々しく結合されることですわっ」
魅惑的な笑顔で殺人的な台詞を言う真柴さんに頭がクラクラしてきた僕の背中に、
「勝利さま……」
と真柴さんが身を寄せてくる。
「……さきほど、ずっとワタクシの後ろ姿を見つめていて下さいましたわよね? ワタクシ、あの後、勝利さまの熱視線を思い出して胸がドキドキしてきて、危なくささ身の部分と間違えて自分の指を切りそうでしたわ……」
白い手が僕の前に回り、さわさわと体をまさぐってくる。……あ、あの、真柴さん!?
「勝利さま……、勝利さまがよろしければワタクシは構いませんが……?」
「か、か、構わないって、な、な、何を?」
「今ご説明したではありませんか。これ以上は恥ずかしくてワタクシの口からは言えませんわ……」
真柴さんがさらに体を僕に密着させてくる。白い両手が今度はお腹の前に来て、僕を後ろからぎゅっと抱き締めてくる。ふにゃん、と背中に柔らかい感触が二つ。
……し、心臓がばくばくし始めてきた……!
うぅ、正気を保つために脳に血液を集めたいところだけど、実際は脳天じゃなくての下半身の方角に血液が集まりだしてきているような気がします……。




