表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラレル人生 ミジンコなボク  作者: IKEDA RAO
◆三つ目の世界 ・ とっても粗野なボク◆
PR
24/46

【 5 】



 シウラ建設予定地に着いた僕らはその広さに困惑するばかりだった。

 さすがに百ヘクタール以上の土地を開発しているだけのことはある。色とりどりの重機がよりどりみどりで忙しく立ち働いている様はすごく壮観だ。


「これだけ広いと、ヒナがいたとしてもどの辺りにいるのか全然分からねぇな……」


「カツ、あそこ見てよ!」


 僕は一つの広告塔を指差した。そこにはこのすぐ先で建設中のマジックタワーの一部公開が行われている、と書かれてある。


「これを見に行ったんじゃない?」


「あぁ、行ってみるか」


 僕らは看板に書かれてあった地図を頼りにシウラ区域の立ち入り許可エリアに入る。

 マジックタワーの前に着くと、平日午前だというのに公開現場はかなりの人がいた。皆ヒマなんだなー。


「カツ、真柴さんはいた?」


「人が多すぎるな……。二手に分かれようぜ」


「うん。じゃあ僕はこっちを探すよ。カツはそっちを探して」


「分かった」


 僕らは右と左に別れた。

 マジックタワーはまだ建築途中で危険なため、タワー周囲にかなりの余裕をとって【 KEEP OUT! 】のイエローテープがぐるりと張り巡らされている。そのテープ外側のスペースにわらわらと群がってタワーを見上げている野次馬さん達の中から真柴さんがいないかを探す。これは思ったより難作業かもしれない。

 ゆっくりと歩きながら黒山の人だかりを順に眺めていく。真柴さんは小柄だし背も高くないから前の方にいるなら見つけづらいなぁ……。

 目を皿のようにして黒いつくしの群れを凝視していると、その大群の中に赤いカチューシャがチラチラと動いているのが見えた。


「真柴さん!?」


 僕の呼び声に赤いカチューシャをつけたつくしさん、つまり真柴さんが振り返る。

 あ、まだちょっとウサギさんの目になっているなぁ。泣き止んだばかりなのかもしれない。かわいそうに……。

 僕は真柴さんが逃げ出さないように出来るだけ自然な笑顔を作る努力をしながら、右手を高く上げておいでおいでと手招きをする。

 真柴さんは僕を見て一瞬警戒したけど、隣にカツがいないので100%の警戒を50%付近のラインにまで解除しながら僕の側に来た。


「あなたは朝の人……」


「うん。初めまして。北原勝利だよ。よろしく」


「それ、ジョークのつもり? あまり面白くないかも」


「ジョークじゃないよ。僕も北原勝利なんだ」


「……だからそれ面白くないってば」


 はぁ、全然信じてくれないなー。さて、どうしよう。真柴さんを見つけたからカツとも合流したいし……。


「ちょっといい? じゃあ詳しく説明するよ」


 きっとこの真柴さんなら飲み込みが早いだろうし、人込みから離れたところにいればその内カツも僕らを見つけるだろう。

 マジックタワー前から離れ、僕は通算三度目のこの奇妙な並行旅行(パラレルトリップ)の話を始めた。真柴さんは半信半疑の表情だったけど、とにかく最後まで黙って聞いてくれた。


「……というわけなんだ。だからこの世界に僕が二人いるんだよね。信じてくれるかな?」


 すかさず真柴さん。


「ごめんね、ちょっと無理」


 はは、やっぱダメか。でもそれがフツーの反応だよね。しょうがないや。


「だって荒唐無稽すぎだわ、あなたの話」


「んー、そうだよね……。理解してもらうのが難しいことは分かっているんだ。今まですんなり信じてくれたのはまだ一人だけだしね」


 僕はトシさんの顔を思い浮かべながら答える。トシさん今頃何してるのかな。


「でもそれはいいんだ。僕のことは横に置いておいてさ、実はカツのことなんだけど」


「!」


 カツの名前を聞いて真柴さんの体がまた濃い警戒のオーラに包まれていく。あぁ僕がなんとかしてあげなくっちゃ……。


「カツさ、さっきはあんな事を言っちゃったけど、今はすごく反省してるんだ。だから今回は許してあげてもらえないかな?」


「イヤッ!」


 にべもない真柴さん。


「だってあそこまでバカにされて許せるレベルじゃないわ……!!」


 あぁ……また真柴さんの瞳がうるうるしてきちゃったよ……。よっぽどショックだったんだなー。


「泣かないで真柴さん。ほら、これ使ってよ」


 僕は制服のスラックスのポケットからハンカチを出すと真柴さんに差し出す。


「ありがと……。あなた、カツと顔は似ているけど性格は全然違うのね。あのデリカシーゼロのバカカツとは大違いでとっても優しいわ」


 僕のハンカチで涙を拭いながら真柴さんは微笑む。……うーん、カワイイ……。


 ……ん?

 もっ、もしかしてこれが初めてじゃない!? 

 真柴さんとその世界の僕よりも、この僕の方がぜんぜん好感触だぞ!?

 うわわわわ、なんだか緊張してきちゃったよ……!!



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ