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第6話 完璧なアイドル様


「凛ちゃん、お疲れだねー」

「あぁ、身体中がもう糞ダルイわー。でもやっぱ、美貴の家が一番落ち着くねぇ」


今、私、花村 美貴の隣で、ダボダボのスウェット姿でソファに足を大股開きにして朝から缶チューハイ片手にくつろいでいる女性は()() ()、26歳。


私の姉だ。

そして、今日本で一番人気と言っても過言ではない大人気アイドルグループ、みやび坂56の不動のナンバー2だ。


彼女は綺麗で長い黒髪と、その名前を体現したような凛とした美しい佇まいから、長年、みやび坂56のクールビューティー担当して、グループの成長を牽引してきたメンバー。

そのルックスはもちろんのこと、神秘的でミステリアスな雰囲気や、卓越したダンススキルも相まって、今もテレビに引っ張りダコだ。そのスタイルのよさも評価され、大人気女性雑誌の専属モデルも務めており、彼女のその何でも卒なくこなすところから、ファン達からは、みやび坂の完璧アイドルと言われていたりもする。


「もうさ。私も26だし、腰がきっついんよ。若い子らとはもう全然エネルギーが違うってんだ。事務所にもそろそろ卒業させてもらって、いい感じにタレントとしてやっていかせて欲しいとは言ってんだけどね。フッ、お姉ちゃん、ファンからの人気がまだまだ凄いからさ。事務所がもうちょっと待ってくれ、待ってくれって、中々さ、辞めさせくれないのよ」


そう。嘘ではない。今、私の隣にいる半分元ヤンみたいな感じの雰囲気で今、ソファに身体を横にしながら、ぼーっとテレビを眺めているのが、その完璧アイドルだ。

おそらく、何も知らないファンがいきなりこの光景を目にしても、きっとこの姉をあの大人気アイドル花村 凛とはまず認識をしないことだろう。


「.....」


でも、そうだな。いつの間にかもうだいたいはこのパターンだな。

実際、次の日がオフの日は仕事終わりに、お姉ちゃんが私の家に来て、そのまま寝て、一緒に今日みたいに朝を迎えることがかなり多い。昨晩だって、音楽番組の生放送でお姉ちゃんが踊っていると思ってご飯を食べながら見ていたら、その数時間後にはもう私の自宅でくつろいでいた。


「お、美貴ー。これ、今流れてんのお姉ちゃんの新しいCM。この川がまた超いい感じでリラックスできてさぁ。今度一緒に行こう」


おぉ、お茶のcm。そして、そこには神秘的で綺麗な川を背景に、爽やかな黒髪を靡かせる美女、花村 凛が写っている光景。

あらためて本当に、寝起きのボサ髪で、今隣で缶チューハイをもう一本開けている人物とテレビの中の彼女が同一人物とは思えない。


「.....」


そして、おそらくこの川にお姉ちゃんと実際に行くことはないのだろう。

だって、何故かこの人はオフの度に私の家にきて、そのまま次の仕事までここに引き籠るから。そう。いつも口だけで、実際に行こうと言われたところに一緒に行った記憶はない。

まぁ、別にお姉ちゃんのことは好きだし、面白いし、この二人でいる時間は楽しくて好きだから別にそれは全然いんだけどさ。


でも、私的にはこういう素の人間味のあるお姉ちゃんも、もっとテレビで出して言ったら、さらに人気が出て、初のグループ1位の座も夢ではないと思っていたりもするんだけどなぁ。

どうせ卒業を考えてるのであれば、もうちょっとお姉ちゃんらしいお姉ちゃんもテレビで見てみたいなぁ。私はやっぱりそっちのお姉ちゃんの方が好きだなぁ...。


ま、そんなに簡単な話ではなのだろうけどね。


「.....」


あ、でも、好きといえば...


「ねぇ、お姉ちゃん。そういえば、爽やか王子と確か、今度CMで共演するんだよね。いいなー。サインもらってきてよ!」

「へ? あいつから?」


そして、気が付けば、何故か隣にいるお姉ちゃんの表情はものすごく嫌そうなものに...。


「え?美貴、あいつのファンなの? いや、あいつ。美貴には申し訳ないけど、めちゃくちゃ屑だよ。色んな女泣かせてる屑。色々あるけど、この前に音楽番組で遭遇したときも私のこと、めちゃくちゃしつこく口説いてきたからね。美貴、テレビに出ている人が裏でも同じような人だとは思わない方がいいよ。アイドルのファンをするのはいいけど、あいつを推すことはお姉ちゃんが許しません」


そうか。テレビに出ている人が裏でも同じような人だとは思わない方がいいよ...か。

お姉ちゃんが言うと、説得力が凄いな...。


あ、でも、そう言えば、今日のおはようTVは爽やか王子が出るって言ってたっけ。

うわ、何で忘れてたんだろう。もう普通に始まっちゃってる。


「ちょ、お姉ちゃん。チャンネル8に回して。今日はさ。おはようTVに爽やか王子が出る日だから」

「えー、言ってる傍から爽やか王子ー?まぁ、チャンネル変えるぐらいならいいけどさぁ。何かお姉ちゃん、美貴がいつの間にか駄目な男に騙されてそうで怖いんだけどー」


「大丈夫、大丈夫。さぁ、お姉ちゃん。リモコンの8チャンネルを押して」

「はいはい。かしこまりましたよー。ぽっちっとな」




「「.....」」




「え、お、お姉ちゃん?これ8チャンネルで合ってる?」

「あ、え、うん。合ってる...はず」




「「.....」」




「え、お姉ちゃん。本当に合ってる?」

「え、あ、合ってる...はず」




「「.....」」



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