第23話 蟻
何だ、これは...。
なぜ、俺、フォニーズ所属のトップアイドル、神宮司 大翔が逮捕なんてされて...
もちろん保釈はされたが、出演予定のドラマも、CMも全てが...
ありえねぇ。こんなのありえねぇ。ありえるわけがねぇ。
しかも、俺のパワハラ音声なんてものも出回っていやがる始末。
あれがパワハラ?違う。マネージャーのあいつ等が無能すぎるだけだろうが、だから、今回も俺がこんな目に...。
それにだ。番場の糞野郎...。あいつも社長にかけあって即クビにしてやった。
あの音声の出所は間違いなくあいつだったからな。本人は必死に否定していやがったが、あんな音声を録れるのはお前しかいねぇんだよ。何でそれでバレねぇっと思ってんだよ。俺があれだけ目をかけてやったにも関わらず、とことん恩知らずの能無しのカスが。
まぁ、いい。少し大人しくしておけば、ほとぼりはどうせ冷める。
それにしても、何よりも許せねぇのはあいつだ。あいつ。
柳楽 雄大。
CMやロケだけでなく、どうやら、俺の流れた仕事の大半をあいつが奪って...
しかも、何であんな野郎の好感度がバカみたいに上がって、俺が...
くっ、あいつのところが、俺を嵌めやがった。そうに違いねぇ...。
この状況、それ以外は考えられねぇ。
「ねぇねぇ、大翔くん。そんなにイライラしちゃ駄目だよ。ヒメで何かできることがあれば言ってね」
「あ? できること。なら、いい加減、俺の女になれよ。今日こそアフターどうだ?」
「フフッ、ヒメと結婚してくれる覚悟があるならいいよ?」
「あぁ、もちろん、その覚悟はあるぜ」
「もー、全然、心こもってなーい。嘘なのバレバレー。そんなんじゃヒメは靡かないんだから。でも、本当に大翔くんの力にはなりたいと思っているんだよ。何かヒメに頼みたいことあるんじゃないの?」
くっ、まだ駄目なのかよ。で、頼みたいこと...?
「.....」
そうだ。この女をあいつに...
そう。今、俺の隣に座るのは、この激戦区である六本木で№1キャバ嬢の《《舞桜》》 《《ヒメ》》。彗星の如くこの町に現れ、その美貌も含め、話術や知性、あざとさ。そして、何よりもその鑑識眼から瞬く間にトップまで上り詰めた本物の女。
嘘か誠か、ヒメの目には人の放つオーラの大きさや色、その強さが見えているみたいだ。
初めは俺も、ただ顔がいいだけの、そういう痛いキャラのスピリチュアル女だと思っていたのだが、実際にここに通ってからのこの女や、その指名客の面々を見ている限りでも、少なくても何か確実に普通の人間には持ちえない特別な力を持っていることは確かだ。
フン、油断をした途端、この俺がつい手玉に取られそうになっちまう女なんて、本当にこの女ぐらいだからな。現に、今までに狙った男は、財政界の大物も、大企業の社長も、プロスポーツ選手も、どんな男も確実に仕留めてきた女だということを俺は知っている。
「.....」
そしてだ。頭のキレる俺はもう思いついた。
あの柳楽に返しをくれてやる方法をな。
「なら、ヒメ。その柳楽 雄大に現実の厳しさってものを教えてやろうと思っているんだが、手伝ってくれるか?」
そう。この女にあいつの弱みを握らせて...
絶対にこの女ならあんな野郎ぐらい簡単に堕としてくれるはずだ。
「フフッ、もちろん。繋いでくれさえすれば、ヒメ。本気だしちゃうよ」
フン、最悪、弱みがなければ、襲われたとか何とか言って、作りだせばいいだけだしな。
それに、またあいつ等の力も借りるとするか。
そんなことを考えながら、俺はとある奴らにスマホでメッセージを送る。
柳楽。どうせ、あいつは見た目だけがイカツい、戦闘力0の中身のない雑魚だ。
ちょっと、小突かれただけでビビッて、すぐにメッキが外れるのは明らかだ。
あいつ等使って、今までどおりに気に入らない野郎どもは潰す。ハハ、物理的にな。今回はあばらの一本や二本は覚悟してもらわねぇとなぁ。リアルタイムで動画も回すかぁ?まさに公開処刑発注!!!
ハハハハ、柳楽ぁ。覚悟しろ。お前のその似合わない善人面した部分もその悪人面も、全てぶっ壊してやるよ。
「ハハッ、ヒメ。俺と柳楽。一応聞いておくが、どちらの方が男として上だ?」
まぁ、聞くまでもないが一応な。
オーラが見えるとかいうお前のその目で再確認だ。
「フフッ、もー、そんなこといちいち口に出さなくてもわかるでしょ」
そう愚門だ。
「アハハ、だって、象と蟻ぐらい違うもの」
フッ、象と蟻か。確かにな。さすがはヒメだ。よくわかっている。
その目はやはり本物のようだ。
「フハハハハ、いいね。ヒメ。気分がいい。ドンペリもう一本入れてやるよ」
「やったー。大翔くん。大好きー」
いいねぇ。さあ、完膚なきまでに踏みつぶしてやるよ。柳楽 雄大。
「柳楽ぁ。絶対に逃がさねぇからな」
「フフッ、私も絶対に逃がさない」




