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第2話 色んな意味でのオープニング


「あぁ、姉ちゃんが言ってた、みっちゃんが好きなキュアブリリアントの変身セット買えた。うん。プリプリプリティタンバリンも一緒に。そう。キュアキュアラブリーバーションのやつ。わかった。じゃあ、予定どおり仕事終わりに行かせてもらうから電話切るぞ。え、プレゼントだけ送って?いやいや、可愛い姪っ子の誕生日はさすがに祝わせてくれよ。うん、みっちゃんが好きな桃のケーキも買っていくから」


ふぅ、あと数分か。緊張する。


「.....」


それにしても、あの週刊誌の暴露砲を喰らってしまってから一応、今日で3日...。

幸いにもまだ俺、柳楽雄大のもとには現在撮影中のドラマや映画、これから出演予定の作品の取りやめの連絡はない。


ただ、これから、これまでのようにまた新しい仕事が決まるかどうかはまた別の話。

イメージが命のこの仕事において、あれは俺にとっては痛出すぎたから何とか挽回をはかりたいところ。


そう。やはり俺は根っからの俳優だ。そんな俺ができる事と言えば、とにもかくにも演技で見てくれる人達をこれまで以上に圧倒するしかない。そこに集中するしかないと、昨晩あらためて強く決意をしたところだ。


「初めまして!柳楽さん。高崎華と申します。今日はよろしくお願いします」

「え、あ、初めまして。柳楽雄大と申します。こちらこそよろしくお願いします」

「フフッ」

「え、あ、よろしくお願いします」


なのに、なのにだ。



なんで、そんな大事な時にその俺が、朝の生放送の情報番組の番宣に出ることになっているのだろうか...。



今も、いきなり後ろからぴょこっと現れて挨拶をしてきた、これから俺が出演する番組の女性アナウンサー、高崎 華さんの爽やかさに圧倒されてしまったところ。


それはそうだ。彼女は27歳にして、好きな女性アナウンサーランキングで三年連続1位。

そのビジュアルの良さはもちろんのこと、愛くるしい笑顔と柔らかい雰囲気、そしてアナウンサーとしての基礎能力も高く、老若男女問わず絶大な人気のある国民的人気者だ。


初対面であることもそうだが、あまりにも俺とは真反対すぎる存在すぎて、眩しくて脱帽していたところ...。


「.....」


ただ、さっきも挨拶を返した時、じーっと俺の目を見てニコっと...いや、どちらかと言えば、クスクス?とした表情を見せてきた彼女のあの感じは何だったのだろう。ただただ、可愛すぎたけど、もしかして、俺の顔に何か変なものでもついていた?いや、ついていないな。


「......」


まぁ、天然かどうかは不明だが、さすがおじさんキラーの異名も持つ女子アナだ。清楚な顔をしてあざとい女性。今さっきの彼女の行動はつい、この俺が心の中でデレっとなってしまいそうになるレベルではあざとかったと言えるだろう。胸元もさりげなく、ちょっと開いていたような...気がするのは気のせいか。うん、気のせいだな。


まぁ、そこはさすがに俺だ。デレデレなんてさすがにしないけども、あんな感じで俺の目をじーっとそらさずに見てくる女性はドラマの撮影とか以外では皆無だから、ちょっとドキっとしたのは事実だ。

さすが、その世界のトップをとるだけあって、可愛らしい見た目によらず、実際は肝が座りに座っているということだろう。


そして、その一方で、情けないが、俺はこんなナリして絶賛大緊張中...。


そう。本来であればこの朝の情報番組での番宣は、ドラマで主役を張る人気メンズアイドルがキャスティングされるはずだったから。


それが、昨日の夜に、その彼がお得意のキャバクラ遊びで酒を飲み過ぎたようで、顔がパンパンにむくれたり、酒がまだ残っていたりと、プロ意識に欠ける行動により、とてもではないが、生放送に出せる状態ではないみたいで、俺に声がかかったようだ。


ほんと、可愛い顔して、彼の裏の顔を知ればファンが泣くことだろう。まあ、事務所がかなり大きいだけはあって、よほどのことがない限りはその痴態が表に出ることは絶対にないのだろうがな。


「......」


にしてもだ。

いや、代わりが必要だとしても、間違いなく彼の代役は俺ではないだろうが...。

いくら急遽誰かが必要だとしても、本当に朝の番組に俺はおかしすぎるだろう。

真剣に、どういうキャスティングしてんだよ。これ。


実際、今まではキャラを守るために、こういう場に俺を出すこと自体を事務所側がNGにしていたはずだし、本当に何で...。


もしかして、先日の一件で俺は事務所からもう実質的に見放された...?。


実際、こういう場は俺にとっては初めてすぎて、何をどうすればいいのかもわからない。要はこの仕事において俺は何の使いものにならないだろう。


まぁ、一応、マネージャーの桐谷さんは

「緊張しなくて大丈夫です。私もしっかりサポートしますから!」

と俺を健気に両手でガッツポーズをしながら励ましてくれはしたけれど、そもそもの話、何でまずこの仕事をオッケーした?


明かにイメージからして俺と朝の相性がよくないことは小学生でもわかるはずなのだけど...。


しかも、あまりにも急遽の代役すぎて、台本には彼が躍るはずだった、女子高生の間で今、バズりにバズっているとかいうラブリーダンスの項目が書かれたままになっているんだど、絶対に無理なんだけど。振り付けは簡単そうだけど、絶対に無理なんだけど。中学の頃の体育大会のダンスでは、そんなつもりは自分的にはないのに、柳楽だけロボットダンスしてるみたいとか言われるぐらいには無理だったんだけど。


あと、本来出演するはずだったアイドルの彼が、世間ではスイーツ王子と言われていることもあって、人気のスイーツパフェ食べ比べのコーナーとかも残されているだけど...。いや、実際甘いものはめちゃくちゃ好きだけど、俳優、柳楽雄大としては甘いものなんて生まれてきてから口にしたことないぐらいのキャラでやらせてもらっているんですけど...。


まぁ、さすがにこれに関しては桐谷さんに、さっき苦言を呈してきた。

ただ、ニコっと無言で何かを言われるわけでもなく、またガッツポーズされて話が終わったんだけど...


「......」


いや、そうだ。そうだよ。俺もプロだ。今までも数々の逆境をくぐりぬけてきたプロだ。

そう。ピンチはチャンス。だから、逆に今回の朝の番組で、俺のクールさをあらためてお茶の前に植え付けるつもりでここにいるべきだ。


悪役としてのイメージを回復するために少しでも抗えるなら抗ってやる。

もちろん、何としてでもラブリーダンスもスーツパフェも回避一択。


そう。まだ俺は終わったと決まったわけではないから。

そして、アレだ。昔ある俳優が巻き起こしたと言われている、こういう番組で司会から何を言われても不機嫌そうに「別に」と連呼するだけで、まともな会話を一切せずにお茶の間を凍りつかせたという、あの伝説を俺がもう一度巻き起こすぐらいの気概でいこう。


それが成功すれば、俺のイメージはまた戻せる可能性が高い。いや、悪の方向性をパワーアップさせることが出来る可能性まである。


そして、そんなことを考えていると、朝の情報番組の生放送の撮影がもうあと数秒で始まる合図。


よし、やってやる。絶対にやってやる。

見てろ。俺が伝説を越えてやる。


―――――そして、彼のその意気込みとともに、この日の番組のオープニングが司会の挨拶とともに始まったが、そこには横に並ぶ出演者の誰よりも深く、条件反射でカメラに向かってお辞儀をする柳楽雄大の姿がお茶の間の視聴者の目には映ってしまったことを、彼はまだ自覚していない...。


そう。ここから有名悪役俳優の彼、柳楽雄大の色んな意味での伝説が始まってしまうことになるのだ...。


色んな意味での伝説が...。


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