第12話 マネージャーさん
やばい。やばいです。本当にどうしたらいいの。
まさか、まさか、こんなことになるなんて...。
彼は見た目や、これまでのメディアでの役柄と違って本当にいい人だから、素の姿が世間にさらに広がれば、絶対にもっと人気者になれると思っただけなの。
週刊誌に色々と暴露されたこの機会に、役の幅も広がって、マネージャーとしても、手助けができると思ったの。
そ、それが良い意味でも悪い意味でもまさかここまで...。
いや、最近は特にもう...。
今日も、彼は外はもう暖かくなってきているというのに、すっかり気に入ったのか。あの某アニメの黒づくめの組織の構成員みたいな服装をしっかりと着こんで事務所に現れた...。
しかも、あの一式で70万円だそう...。
私のせいで...70万。
それに、昨日の高崎さんとのロケの打ち合わせで初めて知ったのだけど、彼はまさかのアメリカ出身...。ロサンゼルス。
そして、今日はその黒ずくめの姿で、彼はずっと何故か私に移動中などに、アメリカでの生活の仕方についてレクチャーをしてきた模様。
いや、一緒に連れて行ってくれようとしているのは物凄く嬉しいんですけど...。かなり嬉しいんですけど...。本当に嬉しいんですけど...。
「.....」
それに、おそらく今日の朝なんて、彼はアメリカに住むご友人と電話で連絡までとっていた気がする...。
確かに、私からすれば、かなり流暢な英語を話していてすごくかっこよかった。初めて見る光景だったし、ギャップも含めてかっこよかったんだけど、聞こえてくる単語から推測するに、まさかのもう...
アメリカの物件探しとか始めちゃってない?
な、何か、ハリウッドとか言う単語も聞こえてきたよね...。
「.....」
いや、もしそうだったとしても、ちょっと、あまりにも気持ちが早すぎではないかな?色々と飛躍しすぎぎゃないかな?エンジンぶっ飛ばしすぎじゃないかな?色々とおかしくなっちゃってないかな?
もう、おそらく世界デビューしか見えてないよね、彼。いや、場合が場合ならマネージャーとして全力で力になりたいし、なるつもり。
でもでも...
え? 確か、柳楽さんへの番組の《《ドッキリ》》のネタバラシって来週だよね...。
いや、無理無理無理無理。このペースだと本当に大変なことになっちゃう。
「.....」
そして、何よりもそのネタバラシで彼は....
「.....」
この状態で、あのネットリフックスのドラマはドッキリでした。本当はそんな話はありませんってネタバラシでもしようものなら、一体、か、彼はどうってしまうの?反動があまりにもえぐすぎない?
駄目、本当に。想像しただけで耐えられない。
もう、実際、私は彼の前で平静を保つのも難しくなってきたところ。
そう。あんなにもお世話になっている柳楽さんを傷つけてしまうなんて、ありえない。ありえなさすぎる。本当にそんなつもりはなかった。
正直、私は前に担当していた女優さんのパワハラに耐えられずに事務所に異動希望を申請。そして、新しく担当するのが柳楽さんだとわかった際には、もう会社からの実質的なクビ宣告だと思って、ここを辞めるつもりだった。
でも、実際に柳楽さんの元でマネージャーとして働いてみると、その見た目とは裏腹に、彼の人間性の高さと優しさに脱帽した。彼の元で色々とマネージャーとしての勉強もさせてもらった。仕事がやりがいがあって楽しいと思えるようになった。柳楽さんには本当に感謝しかない。こんな人、初めてだった。
「.....」
そ、そんな恩人のような彼に私はなんてことを...。
しかも、今、まさにその彼からまたスマホにline...。
『最近、ちょっと元気がない時がある気がするけど。大丈夫?いつも桐谷さんには頑張ってもらっているし、全然休みもとってもらっていいからね。何か俺にできることがあったら言ってね』
あ、あああああああぁ、私はこんなにもいい人に本当になんてことを...。
嫌だ。本当に柳楽さんを傷つけたくはない。
そして、柳楽さんに嫌われたくない。
何よりも、柳楽さんと離れたくない。
「.....」
あああぁぁぁぁぁぁぁぁ、どうしよぉぉぉー




