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一万人の転移  作者: 藤村 次郎
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橋を渡す

 5月1日。今日も暑い。

「今日の議題は、橋を渡す件である。今すぐに必要ではないが、行く行くここも手狭になってくる。川向こうに進出していこうと思う。」

副官のマサムネの議長で話を進める。

「西から大きな川に命名をした。 ユルグ、カナン、マリーナ、イシカリ川だ。

皆が生活の基盤にしている西側の川はカナン川だ。いずれの川にも昔の橋の痕跡が確認されている。しかも、橋げたらしきものも散在しているが修復するにもかなり人が必要だ。

とりあえず、カナン川にかけたい。」

「今日は、大工のハンゾウと石工のゴンゾウから、説明してもらおう。」


 「各所に残っている橋げたを調べたら、円錐状に石を組み上げたものであることがわかりました。この方法は国でも使われていたもので、特別な工法ではありません。」とゴンゾウ。

「崩れた部分を修復してゆけば、再現可能です。」

「橋の部分は、川底を調べたところ、朽ちた丸太が若干見つかりました。きっと丸太を渡したものと思われます。この方法だと、大きな木さえあれば容易に橋が渡せます。」とゴンゾウ。


「それで、どのくらいの人をかけて何日ぐらいで、できるかな?」とシン。

「橋げた痕跡が20M間隔で36台あります。人が通れるくらいならば、1間隔に丸太2つを渡せば十分かと思います。」

「胴回り1・5M 長さ25Mの木が 37*2=74本必要です。」

「1本がおよそ4トンほどありますので、ちょっとやそっとで運べないですね。うーーんどうしよう!」


「そもそも、そんな大木はこの辺にはない。きっと北側の山に入らないと無いだろうな。」

「この辺で、手に入るとしたら柳や樫ですね。であれば、胴回り0・6M 長さ12Mが妥当なところですね。

うーーと。37台*2*4本 約300本になります。」

「1本の重さは、およそ300Kgなので、何とか持ち運べます。」

「木の切り出しには、3人*10チーム 1日1チームで2本として 15日。」

「橋げたには、石を探してくる班と、積み上げる組を考えて、1つの橋げたに5人のチームで20日はかかると思います。20日で仕上げようとすると、37*2*5=370人が必要となります。」


 口々に、皆が意見を唱える。 

大凡、発想も出尽くしたかな。

「よし、この案でやろう!、それにしても、まず一つの橋げたをやってみよう。一斉にやるのはそれを見てからにしてはどうか?。」とシンが皆の了解を促す。

「責任者は、ハヤシで良いかな?」

鉈と斧は、森などの行軍のため、兵糧隊が備えていた。それぞれ30丁なので、少し不足だが、とりあえずはこれで行けそうだ。


 5月10日 今日は橋げたの下見に行ってきた。

確かに、直径5Mほどの基礎といくらか上部が残っている。その昔は荷車が通れるほどの約2M幅が取れたように見える。水深はおよそ2Mぐらいだが基部の川下は、0・5Mぐらいの深さでえぐれている。

まず、川底から使えそうなものを引き上げて、そのまま基礎に積んでゆく。大雑把なことになるが、まずは人が通られれば良いとする。

やはり、既存の25Mの間に新たに橋げたを積むのは難しい。それで、丸太を継ぐこと長尺を得ることにした。

この方法は、上部が比較的、平たくなることでかえって歩きやすいのではと。


岸から、一つ目の橋げたを修復して、それに丸太の橋を架ける。

「おーい。できたぞー。」

「シン様、揺れるので注意してくだせぇ。」

「おお これは愉快 確かにちょっと揺れすぎかな?」

「丸太を2層にすれば、かなり揺れが収まると思いますだ。」

「じゃあ、2層ができたら、呼んでくれるかな。」


5日後、2層ができたということで、再び渡ってみた。

「かなり、しっかりした感じだが、まあ1間隔に2人を限度にしよう。

「ハヤシよ。この方法で向こう岸まで頼む。人員や機材など必要なものは、マサムネに相談してくれ。」


 それから、工事は着々と進んだ。3日で1スパン。完成には90日を要し、もう秋が深まったころに完成した。

幅60センチ、手摺なし、橋げたのところですれ違うことができる。まあちょっと揺れるが問題ない。落ちたところで、水深は1Mぐらいなので溺れることはないだろう。

一応安全をみて、泳げない者や、女、子供のみ通行はダメということで通達を出した。

主要な者たちを集めて通行式を行った。

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