第5話「伝える言葉」
「ん、ん〜?」
意識が覚醒する。
俺はどうやら寝ていたようだ。
目を開ける。
視界には外の風景が広がる。
(あれ?俺、なんで外で寝てるんだ?)
記憶を呼び覚まそうとする。
のんびりと今までの記憶を思い出す。
(たしか、帰ってる途中で、何かが起きて...)
外で寝るなんておかしいもんな。
何があったんだっけか?
(というか、なんか頭に柔らかい感触が...)
横を向いてた顔を上に向ける。
「あっ、桃川さん。目が覚めましたか?」
「んっふぇ!!?」
上を向くと、美少女と目が合った。
俺は、謎の返答をしてしまう。
どうやら、現在、俺はこの美少女に膝枕をしてもらっているようだ。
(ビックリしたぁぁああ!!)
数秒後に、驚きから、変な返答をしてしまったことの恥ずかしさが襲ってくる。
いつまでも、膝の上に頭を乗せているわけにはいかない。
バッと起き上がる。
「えっ、あっ、す、すんません!!」
あたふたとする俺。
「い、いえ!お気になさらず!」
同じくあたふたとする美少女。
その美少女の姿を見る。
日本語を流暢に喋る少女は日本人には見えない白い髪。
白を基調とした羽衣の上から、藍色のローブを羽織った俺より下か同じ歳ぐらいの少女(フードは被っていない)。
月明かりに照らされたその姿は、どこか天使のような雰囲気が.....。
(もしかして、俺死んだの?)
「怪我は大丈夫ですか?」
そんなことを思っていると少女が、俺に問う。
(怪我?痛みとか、別にないよな...?)
次第に記憶を思い出して来て...。
(あっ。俺、化け物に襲われて...。この子が危なかったからつい飛び出して、化け物に投げ飛ばされたな)
壁に背中からぶつけて、かなり痛かった覚えがあったんだが...。
特に痛みとかはない。
意外だ。最悪、肋骨とか折れてるかと思った。
まあ、運が良かったのかな。
「別にないけど...。君の方こそ大丈夫?」
「治療が効いてるようですね。良かったです。私は.....桃川さんに助けてもらいましたから」
「ち、治療?」
化け物に襲われたことを夢と思いたかったが、やはり現実の出来事だったようだ。
少しの残念。
まあ、目を背けても仕方がない。
「えっと、君は?」
とりあえず、化け物に襲われた者同士、お互いの名前くらい知っててもいいだろう。
「私は、ミネリア・ハルクロットといいます。ミネリアと呼んで下さい」
「お、おう。俺は.....」
(ん?)
俺はふと、気が付く。
さっきから、ミネリアは、俺のことを『桃川さん』と呼んでいる。
なんで知っているのだろうか?
「み、ミネリア...さんは、さっきから俺のこと桃川さんって呼んでたよな。なんで、俺の名前知ってるんだ?初めて会ったよな?」
「えっとそれは...」
ミネリアは言葉を濁す。
まさか...。
「ストーカー?」
「違います!」
「じゃあ、両親の知り合いかなんか?」
「貴方の御両親の知り合いというわけではありません」
「俺と会ったことも関わったこともないよな?」
「ありませんけど...」
「なんで、知ってんだ!怖っ!どうゆう事よ!?」
「落ち着いて下さい!」
「やっぱ、ストーカーなんだろ?!俺のこと好きなんだろおーッ!!」
「違いますって言ってるじゃないですか!貴方のこと、本当に嫌いになりそうです!!」
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なんやかんやで、数分後。
「.....誤解が解けてよかったです」
ぷくっと頰を膨らませたミネリア。
「まあ、未だに信じられないけどな」
俺はジト目でミネリアを見る。
「占いなんかで、俺のこと知るなんて...」
「占いじゃありません!女神様のお告げを聞いて、貴方のことを知ったんです!」
なんか、女神とかよく分からないことを言っていた。
とりあえず、その事は一旦置いておこう。
話が進まない。
「俺の記憶が正しければ、ミネリアさんは、いわゆる魔法をあの化け物に使ってたよな?」
俺は落ち着いて、状況把握をする。
「はい、魔法に近いのですが少し違います。・・・いろいろと説明したい事があるので落ち着いて話せる場所に移動しませんか?」
まあ、短時間で化け物のこととか、魔法(?)のこと説明しろって言うのも無理な話だろうしな。
自分が先程まで巻き込まれていた.....いや。
多分、”まだ”巻き込まれてる。
非現実に。
知らなきゃいけない。
きっとこの先、必要なことだから。
「わかった。俺の家で話そう」
「案内してもらえますか?」
「もちろん」
俺はズボンのポケットから携帯を取り出す。
携帯は、圏外じゃなくなっており、電波マークがあった。
地図アプリを開き、現在地を確認する。
(あー。この辺か。結構、家から離れちまってるなあ)
携帯をしまい、歩き出す。
「こっちだぞ、ミネリアさん」
俺の家とは、正反対の方向を見るミネリアを呼ぶ。
「あっ、はい!あと、その...桃川さん!!」
歩き出した俺を呼び止めたミネリア。
「どうした?」
「敬語使っていないのに、『さん付け』っておかしくないですか?」
「あっ。そうか、気を悪くしたならごめん。敬語使うよ」
俺の言葉にミネリアは笑う。
「ふふっ。ミネリアでいいですよ。さん付けも敬語もいりません」
「・・・・・・」
「どうかしましたか?」
「・・・い、いや!なんでもない。行こうか...」
「はいっ!」
少し早歩きで歩いてしまう。
なんとも、恥ずかしいことか。
今、ミネリアの笑った顔に見惚れていただなんて、本人には言えないな...。
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帰り道。
「桃川さん、【敵】です」
「えっ!!?」
その知らせは突然だった。
背後にいたミネリアが知らせた。
歩き始めてしばらくは、沈黙が続いていたのだが、ミネリアが気を遣って話題を出してくれた。
神様のことってどう思いますか?ってテーマ。
正直なんじゃそりゃと思ったが、この吾輩、桃川 蒼姫。
真面目に答えてしまいました。
仕方ないではありませぬか。
普段、同世代の女性と喋る事が少ないんだ。
どうすりゃいいか分からないんだ。
ふざければよかったのか?
『君に出会わせてくれた神最高!!神様万歳!!まじ神様、リスペクトぉぉ!』
いや、ねぇな。
真面目に答えて正解だったわ。
「まあ、いるんじゃないか?」
・・・・・・・・。
つまんな。俺の返事、つまんな。酷いな。
しかも、それで話題についての会話が終わってしまうという。
辛い。沈黙が辛い。
俺も話題を出す。
「み、ミネリアも俺に敬語とかいらないぞ?」
「あっ、これは、私の癖なんです」
・・・・・・・・・・。
会話終わったぁぁぁぁぁぁぁああッ!!?
まあ、そんなこんなで、家まであと5分ほどってとこで、【敵】が現れたらしいです。
「桃川さんは、先に行っていてください」
(お前を置いて逃げろっていうのかよ!!)
そんなこと出来ねえよ!
確かに、俺は足手まといかもだけど...。
女の子戦わせて、自分だけ逃げるなんて選択。
俺にはねぇよ...!!!
振り向いて、ミネリアに言ってやることにした。
「ちょっ!待てよ、ミネリア!お前を置いて逃げるなんてでき...」
「ケラケラケラケラケラケラケラケラケラ」
ミネリアが見ている闇の先から、声が聞こえる。
(なんだ?)と目を凝らすと。
「のッ!のッ!のっぺらぼおーうッ!?」
俺の腰辺りぐらいしかない大きさに、目や鼻のない顔。
ホラーだ!!
「ギャァァァァァ!!出ぇぇたぁぁぁぁああ!!」
しかも、近づくにつれ、その姿の全容が明らかになる。
身体は蜘蛛だったのだ。
き、きもい。
ミネリアの手を掴み、俺の家に向け走り出す。
「えっ!桃川さん!?」
急な行動でミネリアは驚く。
「桃川さん、私が倒しますよ!」
ミネリアが抗議する。
「お、お、落ち着くんだ、ミネリア!と、と、とりあえず、に、逃げるんだ!下手に関わって呪われでもしたらどーすんだよ!!」
「落ち着くのは、桃川さんの方ですよーっ!あれは魔獣ですよ!?貴方の家がバレるのは、危ないんです!倒しておかないと!」
「な、なにい!?魔獣だと!?さっきの化け物と同じってことか?幽霊とか悪霊じゃないのか?」
「はい、そうですよ!」
「た、倒せるのか?」
「一体ぐらいなら、楽勝ですよ」
立ち止まる俺。
「ゴラァ!舐めてんじゃないぞ、化け物お!!帰れ!しっしっ」
「た、態度が違いすぎますよ...」
「ミネリアー!やっちゃってくれー!!」
「は、はい」
ミネリアは、手をかざし...。
「・・・・・・・」
「・・・・・ん?」
なかなか魔法(?)を出さない。
「どうした、ミネリア?早く魔法出さないと、あのバケモン来ちまうぞ!」
すると、ミネリアは顔色を悪くしながら俺に聞く。
「あの...桃川さん。なんか、声ふえてませんか?足音とかも」
「えぇ?」
耳をすませてみる。
「ケラケラケラケラケラケラ」
「ケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラ」
「ケラケラ」
「ケラケラケラケラケラケラケラケラ」
ドタドタ。バタバタ。ドタバタ。
ドダダダダッ!!
「ま、まじだ!」
「桃川さん、10体以上はいますよ!」
「で、でもまあ.....ら、楽勝なんだろ?」
「それは...その」
「やーい。バケモンども!今からミネリアがてめぇーらを倒してやっからなあ!覚悟しとけよ!ばーか。ばーか」
挑発を続ける。
「い、一旦逃げましょう、桃川さん!」
が、一方ミネリアは、そんなことを言う。
「え?なんで?」
ミネリアは、困った顔をして、言った。
「いっぺんに相手は、す、少しキツいかもしれません...」
「え.........?」
ギロッ(キラーんと効果音とエフェクトが付きそうな感じだった)。
次第に、バケモンたちは集まって来て、数えたところ約14体。
14体の目が俺らを見てい(るように感じ)た。
ミネリアと視線を交える。
「桃川さん......」
不安げな顔で俺を見る。
俺は、化け物たちに向けてこう言う。
「........す」
挑発したことを後悔しながら。
怒ってないことを祈って。
「すみませんでしたぁぁぁぁぁああ!!」
脱兎の如く逃げたのであった。
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数分後。
裏道からの奇襲などで、少しずつ化け物の数を減らしていき、最後は6体同時に。
「フルバーン・ボウ・ワスト!!」
炎系の魔法の大技で一網打尽にした。
これには、拍手でございます。
「おおお!」
といった感じで、化け物を倒して、やっと家に着いた。
「まあ、入ってくれ」
「は、はい。お邪魔します...」
おそるおそる入るミネリア。
「今誰もいないから別に変に気を遣わなくてもいいんだぞ?」
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とりあえずリビングのソファにミネリアを座らせ机の向かい側のソファに座る。
なぜか、ミネリアは正座だ。
「み、ミネリア。正座じゃなくていいんだぞ?」
「あ、はい!すいません」
照れながら、足を下ろす。
「それじゃ...話してくれるか?」
さあて、聞こうじゃないか。
「今の状況とあの化け物、そして君は何者なのかを」
ミネリアは、姿勢を整える。
それにつられて、自分もする。
「では、まず数百年前に何があったのか、から始めましょうか」
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数百年前。
時は戦国の世。
そこには、数多くの大名が天下を巡って争っていました。
そして、その中の一人に。
織田家当主。織田 信長という男の方がいました。
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「この方は、もちろんご存知ですよね?」
「当たり前だ」
「では、この織田 信長にも特殊な能力があったのはご存知ですか?」
「えっ?そうなのか?」
「はい。昔から私のように魔法のようなモノを扱う者など、異能力を持っている人がいるのが当たり前だったんです」
「な、なんだって!?」
俺はこの世界を非現実なんてない。
普通の世界だと思っていた。
教科書やネットにだってそんな記録はない。
けど.....。
俺はミネリアの顔を見る。
実際、魔法使いが目の前にいる。
「この世界は...」
俺が思っていた普通の世界とはかけ離れた...。
「既に非現実な世界だったってわけか」
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周囲の人々に織田 信長は、魔王だと呼ばれました。
残虐なことばかりをしたからです。
けど、それだけではありません。
魔王と周りが呼ぶほどの強い力と実力を持っていたからです。
そのため、織田信長は天下人に当時もっとも近かった人物だったのです。
ですが、周りは残虐で型破りな織田信長を認めはしませんでした。
数多くの敵と戦ってきました。
織田信長が第2次木津川の戦で、村上水軍を、持てる力を最大限に使って6隻の船を屠りました。
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「そういやさ。信長の力ってなんだったわけ?魔王って言うんだし魔法?」
「いえ、日本の大名には刀に力が宿ってそれで、戦っていたんです」
「どうゆうことだよ?」
「日本人は昔から呪術を操っていたんです」
「じゅ、呪術...」
「自らに呪いをかけ、対価として力を得ていたんです。しかし、時代の流れによって呪いの力は薄くなっていき、何故か大名や武将、高い地位を持つ者以外の日本人には使えなくなっていったんです」
「なるほど...どおりで、俺にも力がないわけだ。力なんて、何度頑張って出そうとしてもでねぇもん...」
「え?」
「な、なんでもない...」
おっと。いけない、いけない。
「その後、このままではいけないと感じた武将たちは、刀に呪いを宿すことによって妖刀を生み出し、それを家来などに使わせて戦わせたんです」
織田家で言うと羽柴秀吉とかかと勝手な推理をする。
あ、でも最後には天下取りになる男だしなあ。
どうなんだろう。
「まあ、呪いの力は結局、大名や武将、高い地位の人たちからは消えなかったらしいです」
「偉い人だけ特別扱いしてるのかねえ。神様が」
「織田信長の呪いの力によって生まれた妖刀は、次元を断ち切るらしいんです」
「じ、次元を断ち切る!?」
「はい。それによって...」
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それから、数日。
京の帝御所と呼ばれる室町将軍の住まう場所の近くで次元の亀裂が生じたのです。
まるで、小さな門。
そこから、悪魔達がやってきたんです。
帝御所は大慌てで、原因究明のために、次元の亀裂の先に捜査隊を送ったりなどしました。
何十人もの行方不明者を出して、帰ってきた者たちの発言から、次元の亀裂の先は、悪魔や桃川さんを襲った化け物。
魔獣などが住まう異世界。
魔界に繋がっていることが分かりました。
生じた理由としては、やはり次元を断ち切る力を持つ織田信長の影響が考えられました。
その数年後。
各地で、帝御所と同じような次元の亀裂が現れたんです。
そこから、悪魔が現れ人間を襲い、人間界を侵略し始めました。
それから、悪魔と人間との戦いが始まったんです。
人間側も、これには協力して立ち向かうしかないと戦を休戦し、協力することになりました。
世界各地の騎士団や、魔術師、異能力者など、戦闘のエキスパートから、異能者たちとも協力することになったんです。
悪魔側は、魔王サタンを筆頭に。
人間側は、人間側の魔王。
織田信長を筆頭に戦が始まりました。
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「おい、ちょっと待ってくれ」
「なんですか?」
「そんな歴史を俺は知らないぞ...!」
当然、そんな歴史どころか、噂すら聞いたことがない。
別に疑いたくて思ったわけではないが...それでもやはりおかしい。
辻褄が、合わない。
織田家と他の大名が戦を休戦したなんて記録はない。
「それは、歴史が改竄されているからです。今のこの世界には異能力者はごく少数。力がなく親しい人が殺され、死の恐怖は、酷すぎるほど高く、このままでは、危ないと思った、異能力者たちは、力のない一般人の記憶を変え、歴史の記録を改竄したんです」
「そんなことまで、出来るのかよ...!?」
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戦の結果は、織田信長によってサタンが打ち破られ、悪魔たちは魔界に帰ってきました。
次元の亀裂は、サタンによって生み出されていたようで、サタン討伐後には、次元の亀裂も消えていきました。
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と、なると疑問が出る。
「じゃあ、なんで、俺は魔獣に襲われたんだ?ゲートはもう消えたんだろ?」
「実は、ここからが重要なんです」
お茶を入れたカップをミネリアに渡す。
「あ、ありがとうございます」
俺もお茶を飲む。
「サタンを倒した後に、サタンが最後に言い残したことがあるんです...」
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禍々しいオーラを纏った人に近い化け物が吠える。
「我は、必ず蘇る!必ずだ!600年後待っていろお!!!」
それに、黒衣の男。
信長が答える。
「例え蘇っても、他の悪魔や人間に頼らなければ復活できぬ雑魚に興味はない。先に蘇る地を破壊する。面倒ごとも御免なんでな」
「600年後だろうが、蘇ることの出来ないお前に出来るものか」
サタンは笑う。
「俺の同志と”俺の魂”が殺る。代わりに同志が”儀式”をぶっ壊してくれるだろう」
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「最初は蘇る事など信じていませんでした。けど、600年後」
「まさかっ!?サタンが蘇った...?」
「はい。...しかし、完全には蘇ってはいませんが、肉体を持たない魂だけが蘇ったようです」
「魂だけ...?」
「蘇ったことを証明するかのように、サタンの力で 次元門が開いて、そこから、まれに悪魔や魔獣が現れて人間を襲いました」
「魂なんかにゲートが開けるのか?」
「よくは分かりませんが、サタンという存在はそれほど、強大という事なんだと思います」
「や、やべえな。どうやったら完全に復活するんだ?信長が、人に頼るとかなんとか言っていたけどなんなんだ?」
「それが、先程、桃川さんが魔獣に襲われた理由なんです」
それからも、時間を気にすることなく話を聞いた。
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俺は頭を抑える。
「ま、まじかよ...」
少し整理しよう。
まずは、今までのこと。
昔は異能者がいて当たり前だった。
ある日、他世界である魔界の敵、悪魔が攻めて来た。
まあ、敵の親玉は、魔王サタン。
人間と悪魔たちの戦争になってしまう。
戦いの結果、人間が勝利する。
戦いに敗れたサタンがあることを言い残す。
600年後、死んだサタンが蘇るという話。
その後、異能者ではない一般人から、記憶を消し、歴史を改竄して、異能力者などいない...非現実などない世界だと思わせた。
そして、今。
「サタンは、人間の肉体に取り憑く以外蘇る方法がない。600年間は、傷ついた魂を修復し取り憑く準備をしていたと...」
「はい。そして、人間の持つ『七つの大罪』と呼ばれる心の器が、サタンに合ったものでしか取り憑くことは出来ません。まあ、幸いなことに、まだ悪魔たちはその魂を見つけていないようですが」
「そして、その『七つの大罪』がサタンと合った人間が現在3人いて、その内の1人が...」
「桃川 蒼姫さんです」
「なんですよね...はい」
な、なんだってぇぇ!って反応は先程した。
「だから、悪魔たちはサタンの魂を俺や他の2人の肉体に宿らせる儀式的なことをして、復活させようとしているわけだ」
それが、悪魔の目的らしい。
「儀式の場所は破壊したのか?」
信長が言っていたらしい。
蘇る地。つまり儀式の場所。
「いえ、それがわかっていないんです」
「な、なんでだよ!?」
「その戦の後、儀式の場所を知っていたらしい織田信長は、戦いでの疲労で気を取られ、明智光秀という家臣に殺されたからです」
「まさか、本能寺の変!!?」
「はい、その通りです。そのため、まだ儀式の場所は破壊出来ずにいるんです」
なるほどなと、納得。
「あと、魔獣ってのは」
「先程も言ったように、私たちの世界で言うペットなんです。飼い主の悪魔たちの命令を聞いて動く存在で...しかし」
ミネリアの言葉を遮る。
「俺を後半捕まえるのではなく殺そうとしたのは...俺が魔獣を攻撃したからキレたと」
「そ、そうなりますね...」
「てか、俺、こんな自由でいいのか?」
「なにがですか?」
「いや、サタンが蘇ったらヤバいんだろ?俺を軍事基地とかに保護とかしなくていいのかよ?」
「たぶん、大丈夫だと思います」
「た、たぶんってお前なあ...」
「実は、貴方方を守るために結成された組織があるのですが、私は参加していないんです」
「組織?」
「私が入らなかった。いえ、入れなかった理由としては、その組織が極秘過ぎて、情報が全然なかったんです。女神様からその組織の存在を知っただけなので、接触することも出来なかったんです」
「なるほどな。その組織だったら、俺をどうするかは分からないわけだ」
「はい...」
「じゃあ、お前が来てくれなかったら危なかったな」
「え?」
「だって、お前が来てくれなかったら、あの魔獣に殺られてたかも知れないだろう?」
「いえ、きっと組織の方が守ってくれましたよ」
「いや、助けてくれなかっただろ?実際何回か危なかったしな。実際に俺のピンチを助けたのはミネリアだよ。ありがとう」
「・・・・・・・い、いえ。どういたしまして」
ミネリアは、顔を俯かせる。
表情が見えない。
「あの、桃川さんっ!」
と、思ったから、すぐに顔を上げるミネリア。
「は、はい!?」
びっくりするじゃねえか。
ミネリアは真剣な顔で話し始める。
「なんで、桃川さんは私が敵じゃないと思ったんですか?」
「はあ?なに言ってんだよ?」
「だって!一般人の桃川さんには、怖かったはずです。魔獣に襲われたり、急な出来事ばかりで...。しかも、魔法なんか使う変な女と一緒に行動して...気味悪く感じたんじゃないんですか?」
ミネリアが辛そうな顔でそんなことを言う。
俺は慰めればいいのか?
怒ればいいのか?
否定すればいいのか?
肯定すればいいのか?
嘘を言うのか?
違うだろ。
「桃川さん...正直に言って下さい」
その...通りだ。
彼女がどう思うか考えて、悲しませないように嘘を言うなんてことは絶対にしない。
しちゃいけないんだ。
彼女は、俺の。
本心を聞きたいんだから。
「ミネリア...俺はお前を...」
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私は精霊使い。
桃川さんには、まだ言っていないけど、女神様が与えた力によって精霊を操れるようになり、魔法のような精霊術をだせるようになった。
周囲の人は怖がった。
人を.......傷つける力の方が多かったから。
きっと桃川さんも、私のことを怖がる。
「ミネリア...俺はお前を」
桃川さんも私のことを『怖い』と、『不気味』だと言うに違いない。
私は目を瞑った。
けど、桃川さんの返事は...。
==================================
「ミネリア...俺はお前をカッコイイと思った!」
「・・・・・・・・・・・・へ?」
俺はミネリアを真っ直ぐ見て、本心を伝える。
思っていたことを。
「魔法を放った時のお前はカッコよくて美しくて、すごかった!!」
「なに...を言って......」
「怖いだの、不気味だの言うと思ったのか?」
「・・・・・・・・」
「魔獣を倒す魔法の力!怖いだの不気味だの思ったかも知れない!けどな!お前は俺を助けるためにその力を使った。俺を守るために!」
「・・・・・・・・」
ミネリアは黙って聞く。
「そんな後には、感謝と魔法を出した驚きぐれえしか出て来ねえよ!」
「・・・・・う、嘘言わな」
「これが俺の本音だ!・・・・・・・その証拠に俺はお前を敵だと思っていない。お前だってさっき言ってたじゃねえか。だから、家に連れてきたし、真面目に話も聞いた。......お前は、俺にとっちゃなあ!」
バッと俺は立ち上がる。
「俺の命を助けてくれた恩人だろうが!!敵とかそんな風に思えるわけねえだろうが!!」
ミネリアは、俺から目をそらしまたも俯く。
「俺はお前を恩人としか見てねえ!お前に伝える言葉は、『お前が怖い』だの『気味が悪い女』だのクソみてぇーな言葉じゃねぇんだよ!!!」
俺はミネリアに近づき、ミネリアの顔を俺の方に向かせる。
「ありがとう!って言葉だけだ!!!」
「・・・・・・・・・・っ!!」
ミネリアの瞳には、涙があった。
俺と目が合ったミネリアは、すぐさま、俺から離れ、涙を拭う。
俺には、ミネリアが泣いた理由も、なんであんなこと言ったかもわからない。
けど、俺の正直な思い。
伝えたい言葉は。
ありがとう、だけだな。
ミネリアが落ち着くまで待とう。
落ち着ついたら、ミネリア個人のことを教えてもらおう。
俺は、ミネリアが泣き止むまで、キッチンで”2人分”の夕食を作り始めた。




