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俺がヒロインで役立たず!  作者: 乃ガマ
第1章「ヒロイン役は返上したいのですが」
8/8

第6話「同棲と契約」



数分後。


俺は机に出来上がった料理を並べる。

涙が止まり、落ち着きを取り戻したミネリアを呼ぶ。


「よかったら、飯食えよ」


「あっ.....はい。ありがとうございます」


俺の座った席の机を挟んだ向かいの席にミネリアは座る。


「じゃ、いただきま」


「あのっ、桃川さん...」


弱々しく俺を呼ぶ。


「なに?」


「さっき、泣いたのは...」


「いいよ、今は」


「えっ?」


「さっきのには、なんか理由があんだよな。そーいうのは、もっとお(たが)いを知ってから話せばいいんじゃないか?」


「でも、桃川さんも知っておいた方がいい...とは思います」


と、言いつつミネリアは辛そうな顔をする。


極力言いたくはないことなのだろう。

まだ、俺のことを信じきれてないから言い出しにくいんだろう。

弱気に言うことなのだから、今すぐに聞いとかないといけないとかではないな。


なら...やっぱり今じゃなくていいな。


「こうやって知り合いになったんだ。これから話す機会なんていくらでもある。まだ、俺のこと、信じきれてないんだろ?」


「いえ、そんなことは.....っ!」


戸惑いながらミネリアは言う。


「だから、さ」


俺は照れながら。


「お前が信じられるようなヤツになるからさ。・・・・・そん時に、話せばいい」


さすがに、少しくさかったか?

まあ...いいや。


すると、ミネリアは俯き、少し微笑んで。


「・・・はい」


俺はわざとらしく咳払いをして、出来上がった料理を食べ始めた。


「いただきます」


一拍置いてミネリアも、


「い、いただきます」


==================================


「ほんじゃ、少しまた、聞いていいか?」


ミネリアも飯を食い終わるのを待って、話を切り出す。


「はい、なんですか?」


姿勢を正すミネリア。


「七つの大罪ってのと、ミネリアの力のこと、これから俺はどうしたらいいか...とか知りたいなぁ、と」


「分かりました。では、七つの大罪から」


「おう、頼む」


「簡単に言えば、サタンが取り()くのに重要な心の部分のことです」


「心の部分?」


「はい。私は詳しくは知らないのですが、人の感情7つのことを指すようです」


「詳しくは知らないってことは、また女神のお告げってやつか」


「はい.....、すみません」


「いや、謝んなくていいって。取りあえずサタンの好きな7つのポイントってこったろ?」


「はいっ、そんな感じです。それを7つ全て、満たしているとサタンは取り憑けるんです」


なるほど、それに当てはまっちまったんだなあ、オレ。


「次に、私の力のことです」


「おう!」


これについては、凄い気になるな。

この年頃の男子はそういうの興味が尽きませんからなあ。


「まず、女神様.....、神様はいます」


「ええ〜。うそん」


俺は、疑いの目を向ける。


「私は、その加護を最大限に受けた人間。【女神様の祝福】を受けたんです」


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

××××××××。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


(女神の.....祝福?)


なんだろう。なにか、脳裏をよぎったような...。


「女神様に選ばれた人は、その人に適した力を女神様が与えて下さいます。与えてくださった力を女神様の祝福と言います」


「それを、ミネリアは持っているから魔法が使えると?魔法使いの家系だからとかじゃないのか?」


「はい。私は、普通の人間でした。8歳ぐらいの時、今にも死にそうなお婆さんがいて、その人を助けたいと強く望んだら、この魔法に似た力を手に入れたんです」


俺は嫌な胸騒ぎがした。


わざわざ神が、元々(もともと)なんの力も持っていなかった人間に、力を与えたって言うのか?一体何のために?与えることによって、ミネリアの周りやミネリアの生活や未来、【運命】が変わるかもしれないんだぞ。

(みずから)が決めた運命を、それを変える力を人に与えるだと。

なぜ、力を与える?何が目的だ?

何かが、おかしい。


まあ、今はいいか。


気になることは、ずーっとさっから、山積みだ。


今は、魔法について知ろう。


「魔法に似たって...魔法だろ?違うのか?」


「あ...、はい。これは、【精霊術】です」


「せいれぇーじゅつう?」


「私は、この世界に存在する精霊の力を借りて魔法を使うんです」


「精霊って...、あの羽があってピロピロのやつか?」


「ピロピロって意味が、いまいちわからないですが、おそらく想像している通りです」


「なるほど、自分の持つ魔力を使用して魔法を出してるのかと思ってたけど、精霊の方かあ」


ラノベを見ていると、魔法を出すキャラは基本2種。

魔法使いタイプは、(おのれ)の魔力を消費して魔法を放つ。

そして、精霊使いタイプは、己の霊力を消費して、精霊の決められた能力、属性魔法を放つ。


「じゃあ、契約している精霊がいるわけだ」


「えっと...、それについても、説明します」


ゴホンと咳払いするミネリア。

かわいい。


「先程言った、女神の祝福で私は精霊と契約できるようになっただけではなく、周囲の”全精霊”となんの条件も、支障も、問題もなく、契約を交わせるようになったんです」


「ぜ、全精霊と!?」


これは、驚きだ。

いや、いや。

チートじゃないすか。ハンパないじゃないっすか。


「なんだ、その能力すげえな!どんな状況にも適応出来るじゃないか!!」


焦りと驚きと興奮。

声が強張り、少し震えてる。

声のトーンがいつもより上がる。


一方、ミネリアは。


「はい...どんな敵とでも戦えま」


暗い口調で何かを言うが、興奮した俺の耳には入らなかった。


「怪我した人を治したりだろ!火事で燃えた家の火を鎮火したりだろ!空に飛んじまった風船を取ったりだろお!うおー!!やれること多いなあ!!」


「・・・いや、この力は」


あれ?何か俺のテンション違う?

だって、そんなすごい能力なら。


「めっちゃ”人助け”できんじゃん!!」


自然と笑みが溢れる。


「桃川さん、この力は”人助け”のためだけの力じゃ...」


「何がだよ?すごい、いい能力じゃないか?」


「いえ...桃川さんの思っているような能力ではないんですよ...」


ミネリアは、また辛そうな顔をする。

俺は、能力を褒めまっくったけど、ミネリアは、良くは思っていないようだ。

もう少し考えて言えばよかったと反省。


「実際に使ってみないとわかんねえけど、人助けには使えるんだろ?」


「は、はい。いちよう...ですけど」


「なら、俺はその力を素敵だと思うよ」


「え・・・・・?」


俺は、今まで考えなしだった自分を反省して、ミネリアのことを考えて真面目に言葉にすることにした。


「精霊の力は、誰かを傷つけてしまう力ではあると思う。多分、ミネリアはそういうことが嫌なんだろ?詳しくは知らねえけど、表情や口調からはそうなんじゃないかなと思った」


「・・・・・っ」


「だからさ。人を傷つける力を使う時は、人助けのために使えばいいんじゃないか?」


「ど、どういう事ですか?」


「絶対、ミネリアは好き好んで人を傷つけたり、命を奪うようなヤツじゃない。けど、どうしても戦わなくちゃいけない、倒さなきゃいけない敵がいる。そうなると、(ひと)を傷つけてしまうし、命を奪うこともあるかもしれない」


ミネリアは、魔獣と戦う精霊使い。

戦うたびに命を奪っている。

多分、ミネリアはもう何体も魔獣と戦っているのだろう。

魔獣と会っても、戸惑いがなかった。


それでも、彼女は辛いのだ。

なら、少しでも気が楽に。

いや、気が楽になることはないだろうが。

その辛さを。苦しみを。胸の痛みを。

少しでも。ほんの少しでも。

軽くしてあげたいのだ。

彼女は傷ついているのだから。


「だから。守りたい人のために。大事な人を守るために.....。人を助けるために使えよ。誰かのために使うなら、神様だって許してくれるだろ?」


「それは、また励ましてくれているんですか?」


「まあ、そうなる」


「さっき泣いてしまったせいで、か弱い少女ってイメージを桃川さんは勝手に思ってるだけですよ」


「え、違うのかよ?」


「違いますー!私は別に今さらなんとも思っていませんよ」


「あんな顔しといて?」


「桃川さんは、少し失礼だと思うんです」


頰を膨らませるミネリア。


「悪かったって。俺の思い違いならいいんだ。だから、むくれないでくれって!」


「そうですっ!思い違いです!勝手に私の心を見透かすようなこと言わないで欲しいです」


(こりゃ、少し怒っちまったな)


ミネリアが、また泣きそうな感じがしたから思わず、偉そうなこと言ってしまったな。

まだ、何にも知らないのに。

俺の悪い癖だ。


「まあ、まあ。せっかくの力だろ?恐れて使うより、有り難みを感じながら使ったほうがいいじゃねーか。この力があって良かったなーとか」


「有り難いとは思っていますよ...」


「だろ?」


(「でも、大きな力には代償(うら)があるんですよ」)


ミネリアは、俺に聞こえないくらいの小声で呟いた。


「え?」


俺は聞き返すが。


「いえ、私は、全精霊と契約する力以外にも力を頂いているんです」


はぐらかされた気がするが。

まあ、いいや。と流す。


「まだ力あったのかよ。次は、どんなチートだあ?」


「それが、私が神様...女神様と呼ばれる神様からお告げが聞ける理由なんです」


「あ、それね」


精霊使いって話で胸が高鳴りすぎて忘れていた。

神様...ね。


「私は、女神様に唯一(ゆいいつ)助言を()え、お告げが聞ける存在なんです」


「と言うと?」


「女神の使者なんです」


「へ?それが能力?」


「はい」


「神に助言が...聞ける.....」


「はい」


「それチートとかの問題じゃないな」


俺は、ミネリアの言うことを信じたい。

それに彼女は嘘はついてない。

それは、分かる。

彼女は真面目にそう言っているのだ。


先ほどの全精霊と契約できるという話。

あれは、ゲームでいうチートだ。


「それは・・・・・・・」


なら、神とやり取り出来る状態はゲームで言えばどうなるか。

それは、ゲーム会社でゲームを運営している人に話が聞けるということ。

それが、ストーリーゲームなら攻略法や裏アイテム、バグやチートを教えてもらえるということ。

オンラインゲームなら、敵やアイテムの場所、課金アイテムの入手、イベントアイテムの入手。


つまりだ。


「せけぇ」


「え?」


「神から助言が聞けるぅ?お告げが聞けるぅ?せこいよ。せけえ。なんだそれは」


「え?桃川さん、神ですよ?感想それだけですか?」


「ああ。めっちゃ短くて簡潔な感想しか出ねえ」


「まあ、たしかにせこい...ですよね」


「ああ」


「とは言っても、お告げは女神様から突然来ますし、助言を請うてもなかなかくださりませんけどね」


「ゲーム会社の闇だな、ミネリアは」


「なんの話ですか?」


「口に出た戯言(たわごと)だ。気にしないでくれ」


「意外とこちらの方は、あまり関心がないんですか?」


「ああ。なんか天高い力過ぎて、あまり関心というか...あってもなあって気がする。あんまパッとしないし。宝くじ当てさせてくれるとかってのは出来るの?」


「いえ、女神様は、そういうせ、せこい...真似はさせてくれないですよ。人々の道を示すためのお告げと助言です」


「もはや、興味も関心も持てないよ。なんか、どうでもいい能力だなあ。せこい能力かと思いきや、予想外の裏切りだな」


「え?この力、欲しくないんですか?せこくないんですか?」


「ああ、いらない。しかも、せこくも何ともない能力じゃねーか。逆に『道を示す』って自分の”運命”が決められるみたいで嫌だな」


「そうですか...」


精霊の力に比べ、こっちは凄い有難いっ!ってミネリアは思っているみたいだな。


「まあ、たしかにそうかもしれませんね...」


と、思いきや、悲しそうな顔をする。

俺の予想を裏切られてばっかだ。


==================================


「じゃあ、こっからが俺にとって1番重要なことだ」


「たしかに、そうなりますね」


「魔王の候補というか、ただの器に選ばれた俺は、これからどうすればいいか」


「はっきり言って、私は例の組織.....自由の牙(フリーファング)の人間ではなく、女神様の意思として動いています。桃川さんの命を守るために」


「てか、俺のとこに来たのって女神に言われたからだったんだな」


「はい、桃川さんの名前と外見と魔王候補だから絶対に守りなさいってことを女神様から伝えられました」


いまいち伝えられたってのが、よく分かんないけど、よく分かんないのが神ってもんだよな。


「私は、あなたに普通に生きてもらいたいと思ってます」


「さっきも言ったけど、いいのか?保護してもらうべきだと思うぞ?」


「桃川さんは、もっと自由を求めて下さい!私と桃川さんの立場が逆じゃないですか!」


「あはは...たしかに」


「私はあなたを守りながら、儀式の場所を探って、一刻も早く桃川さんを普通(もと)の日常に戻します」


「ありがたい...な」


「桃川さんは、自由に生きて欲しいです。囚われの身で生きるのは、生きていないのと同じだと思いますから...」


ミネリアが、しばらく黙る。


「・・・ミネリア?」


俺は声をかける。


「は、はいっ!どうかしましたか?」


すると、ミネリアは肩をビクッと揺らす。


「いや、その・・・ありがとな」


「え?」


「俺以上に俺のことを案じてくれて、ありがとう」


「い、いえっ!私は、女神様の使者として、人々の自由を守るのは当たり前で...」


ミネリアは、明る様に照れ隠しする。


「その、フリーファンタとかいう組織の前にミネリアに会えて良かった」


「フリーファングですよ...。そう言ってもらえると嬉しいですが...」


「でも、そのフリーファングが俺を保護するって言ったら、どうするんだ?」


「まあ、確かにそんな場合があるかもしれませんね...。先程、自由を守ると言いましたが、やはりこの件は私一人で決めていいことではありませんからね...。私は、使者であって神ではありません。人間です。だから、話し合って、出来るだけ桃川さんが普通の暮らしが出来るよう交渉しますよ」


「そっか...頼もしいな」


「女の子に『頼もしいな』はないと思うのですが...」


「たしかに!はははっ」


「ふふふっ」


それから、俺らはしばらく何気ない会話をした。


==================================


まあ、何気ない会話と言うのは、ミネリアが日本に来るの大変だったろ?って聞いたのと、俺のちょっとした情報。

どこの学校に行ってるかとか。


俺は、そんな会話の中で、男子の夢を叶えれるチャンスがないか聞いた。


「なあ...ミネリア」


「はい?」


「俺にもさ、精霊術(まほう)って出したりとか出来ないの?」


「使えません」


「じゃ、じゃあ。聖剣を出せたり、魔獣を操れたりとかは?」


「出せません。操れません。食われますよ?」


「あらやだ」


「桃川さんは、魔王の器候補なだけで、”普通の人”なんですよ?」


「なんですとぉぉぉ!?」


悲しい。悲し過ぎる。

今の俺の状況だけ見れば(あこが)れの状況だ。

だが、まさかの俺に戦闘能力のかけらもないなんて。


「え、まじで、俺ってなんもないの?普通なの?こんな状況に巻き込まれてるのに?」


「はい。これぽっちも桃川さんになんの力も宿ってません」


「嘘だって言ってくれよ...」


「嘘だったら、今頃、桃川さんが1番悪魔に狙われていましたよ」


「え?他の2人って力あるの?」


「はい。1人は、式神を1体所持しているだけらしいですが、もう1人は、魔法使いで、神童と呼ばれているらしいです」


「まさか...実は、もうその2人は襲われてるの?」


「はい。2ヶ月前から襲われているらしいです。つまり、桃川さんは悪魔たちからしたら」


「(弱過ぎて)眼中にない...」


K・O。


「やってられっかあーッ!!」


涙目で机に足を乗せ叫ぶ。


「桃川さん、落ち着いて下さい」


「ああ?」


「力...欲しくないですか?」


「下さい」


シュパッ。

椅子の上で綺麗過ぎる正座する俺。


「私から貰う気満々ですね」


「もしかして、どこかで、『聖剣を抜けたら勇者ね☆キャンペーン』でも実施(じっし)されてるんですか!?」


「やってませんよ...そんなことしたら、異能力の存在がバレてしまうではありませんか」


「たしかに」


「桃川さんが、唯一力を手に入れれるのは、精霊です」


「へ?精霊?俺にも契約出来るのか!?」


「はい出来ますよ」


「全精霊」


「それは無理です。桃川さんには特殊な設定はないですよ。私だけですよ、全精霊と契約出来るのは」


「と、特殊な設定はない...」


がーんと落ち込む。


「桃川さん、落ち込まないで下さいよ」


「俺、主人公じゃ...ない?うそ...え?うそ...」


「早く契約しましょうよ」


「俺って、俺って」


「やらないんですか?」


「やりたいでえーす!やりましょう!!」


急なテンションの上がりよう。

落ち込み過ぎるせいで、せっかくのチャンスを捨てるわけにはいかない。

もしかしたら、最強の精霊と契約するのかもしれない、俺。


「じゃあ、手のひらを見せて下さい」


「ん?...ほい。これでいいか?」


「はい」


すると、ミネリアは、見せた俺の右手を優しく掴み、右手で手のひらに文字?文字?...文字?のようなモノを書く。...文字?


「く、くすぐったいんだけど...」


「我慢して下さい」


「へ、へーい」


文字?文字なのかぁー!?


「文字ですよ」


「心を読まれたぁあ!!?」


なんでだ?なんでだ?せ、精霊の力なのか?

怖ッ。


「はい、桃川さん。書き終わりました」


あれかなあ。精霊文字とかそんな感じかな?

赤い光でひょろひょろっと線みたいな文字が書かれたと言うより文字が浮かんだ、自分の右手を見る。


「そしたら、桃川さん。左手をグーを出すように(にぎ)って下さい」


「わ、分かった」


なんかドキドキして来た。

精霊。契約。

いろんな単語が......2単語しか出てないな。

だがッ。その2単語...()かれるぜ。


「そうしたら、左手を右の手のひらに向けてハンコを押すように叩いて下さい」


「りょ、了解だ」


多分、あれだ。

なるほど!とかってやる時の身振りだ。


「あ、その前に私が、『其の者に精霊との契約を交わすことを承認する』と言ったら、『精霊契約』と言った後に叩いて下さい。叩いたら『承諾(しょうだく)』と言って下さい」


「よ、よしっ!やってやるぜ」


緊張。


「【其の者に精霊との契約を交わすことを承認するッ!!】」


凛とした声が響く。

空気が一変する。

その変化を肌で感じる。


よし、行くぞ!


「すうぇっ、せっ...やく」


噛んでしまった。


「落ち着いて下さい、桃川さん」


「お、おうっ!」


俺は深呼吸する。


「【精霊契約ッ!】」


ビュンと赤い光の強さが増す。

俺は、赤い光で浮かんだ文字の書かれた自分の右手を叩く。



「【承諾ッ!!!】」



俺は。力を望んだ。

今、まさに向かっているヒロインになりそうな雰囲気を変えるために。

少しでいい。

戦う力を。


出来れば、めっちゃ強くて便利で可愛い最強の擬人状態美少女精霊来て下さい。


ぴかーんと周囲が光る。

俺とミネリアは腕で目を隠す。

(まぶ)しいからだ。

SF好きなら、この光はUFOでも来たのかと思うだろう。

SFは嫌いでも好きでもないが、自分も楽しみだ。

なにしろ非現実な力を手にするんだから。


さあ、いでよっ!!


だんだんと光は収まっていく。


「あれ・・・?」


なんも起きてないし、変化がない。

それどころか、文字が消えた。

え。これってもしかして。

失敗?精霊使い失格?

うそ。

泣きそう。


「も、桃川さんっ!泣かないで下さい!契約出来てますよ!成功です!」


あ、泣いてたらしいです。

手遅れでしたか...そうですか。

あー。もうヤになるなあ。

精霊契約が失敗するなんて...。

ん?


成功?


「よ、よっしゃあああああああ!!」


喜ぶ。

嬉しい。

簡単な言葉だが実際、本当に嬉しい時って言葉で表そうとするとあんまないからなあ。

シンプルが1番伝わるかな。意外と。


「桃川さん、右手の甲を見せて下さい」


「ん?分かった」


右手の甲を出す。

すると、そこには、先程ミネリアが俺の右手のひらに書いた文字があった。

いや、付け足されている?


「桃川さん、今、精霊が出てこないのは寝ているからです」


「ね、寝てる...?」


「あと、この精霊の能力はですね...」


なんだろう。

てか、属性とかじゃなくて、能力なんだな。

例えば、同じ火の能力でも、火の玉とか、火の剣とか、明かりとか。

バラバラなタイプか。

素早く理解。


さて、俺の精霊はどんな能力かなあ。

普通の高校生が非現実に巻き込まれたら、たいてい主人公キャラだ。

つまり俺。


そんな主人公キャラの俺には、元々の力はない。

唯一の力が精霊ってことはだ。

これが強いってことだろう。


例えば、不死身になれるとか。

時間ループ出来るとか。

絶対服従させることの出来る力とか。

個人的には、未来予知なんかいいなあ。


「桃川さんの精霊の能力は、『開ける』力です」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


(・・・・・・・・・)


表裏共に、無言無表情である。


「ぱ、ぱっとしねぇ...」


膝をつきうなだれる俺。


(なんだ、開ける能力って!?え、なんでだあー!!)


いや、いや、待て。

ワンチャン珍しい能力かも。


「み、ミネリア!この能力って珍しいのか!?」


「いえ、よくあります」


「う、ぅーん」


がくり。

よ、よくある.....。

いや待て。


「た、戦える力?」


「どう考えても、それは無理だと思います。どちらかと言うと尻尾巻いて逃げる時に、鍵のかかった扉を開ける時とかに使う力ですよ」


「べ、便利?」


「空き巣とかには」


「まさかの犯罪スキル。やべえ。ワンチャン俺、ヒロインどころか小悪党キャラ説あるじゃねーか」


お、オワタ.....。


かくして、俺は主人公キャラの道が遠ざかっていくのを自覚していったのであった。


==================================


「そういや、ミネリアは俺を守るってことはさ」


よくよく考えば、彼女は”それ”をしないといけないのでは?


「俺ん家の近くに住むんだよな?」


「あの、桃川さん」


「ん?なんだ?」


「実は相談が」


実は、俺はミネリアが近くに住むなんて考えてない。

まあ、もしかしたらって思ったが、違うだろう。

なぜなら、今日、飛行機で日本に来たにしては荷物が少ない。

この辺りに泊まれる場所なんてないし、空き家もない。いつ狙われるか分からない俺を守るには、一緒の場所にいた方がいい。

すると。


「しゃーないなあ。いいぜ、暮らせよ」


俺はドヤ顔ど言う。


「え?いいんですか?まだ、何もいってないんですけど」


ミネリアは、そんな俺に疑問を思っているようだ。


「ああ。いいよ、いいよ。全部分かってる」


「じゃ、じゃあ。はい、ありがとうございます」


うひゃー。恥ずかしいなあ。うっかり学校でバレて、からかわれちゃったりして。ど、ど、”同棲(どうせい)”なんて!


「では、”お外”をしばらくお借りします」


ミネリアは、ガラガラと窓と網戸を開け、外に出る。


(ん?ん〜?)


呆然と見る俺。


ミネリアは、荷物を外に起くとリュックを枕にして。


「では、おやすみな」


「さい、じゃないでしょうがぁぁあ!?同棲すんじゃないの!?一つ屋根の下で一緒に暮らすんじゃないのかよーッ!?」


焦る俺。


「え、私はここで充分ですよ?気にしないで下さい」


(気にするわあッ!!)


「こっちが気にするって!ほら、一緒に暮らそうぜ?」


「いや、まだ桃川さんも私のこと知らないじゃないですか?不安で寝付けなくなったりするんじゃないですか?」


(まあ、別の理由で寝付けられなそうだけど)


「それに、外を見張れますし、外の霊気に触れてた方が敵が来たのを察知しやすいんです」


(俺が、一緒に暮らそうって伝えてるのを素早く察知しろよ!)


「いや、思ってないって。それにほら、近所の方に不審に思われちまうじゃん。だから、ほら」


「・・・なら、この家で住んでいいですか?」


ミネリアは申し訳なさそうに言う。


(よっしっ!)


「おう、しゃ、しゃーねーしな!」


「しょうがなくなら精霊術で姿を消しても...」


「一緒に暮らしてえ!お願い!普通に言うと恥ずかしいから、照れ隠しで強がってただけなんです!だから、俺と一緒になってくれえー!!」


男、桃川。

魂の叫びだった。

これが、最後の主人公キャラっぽい設定なのでは、と必死だったのである。

なんとも悲しい。

なんとも(むな)しい男だった。


==================================


余談だが、次の日。


近所の人にひそひそと、俺が近々結婚するんではないのかと噂された。

『結婚大変だけど頑張れよ』、と近所のおっさん達は言って来て、『奥さんを幸せにするのよ〜おほほ』、と近所の奥様方に言われた。


しばらく、こんな恥ずかしいことをからかわれるのか、とあからさまにテンションが下がる。

からかわれるたびに『おほほ』、と俺は(なげ)くのだった。

どうもお久しぶりです。

山口 乃ガマです。

すいません。ほんとすいません。

前回、謝ったばっかなのに。

このままじゃ、せっかく『少しは見てやるかー』、『おもんないけど、そのうちおもろくなるのかなあ。そろそろブクマ外そうかなあ』と思ってブクマしてくださっている4人の方に申し訳が立たない!

気をつけます。

今回は、ストーリー構成に時間がかかってしまいました。

頑張るんで、見捨てないで下さい!すいませんでした!

しかし、その分、さらに面白い展開がこの先に作れたと思います。

なので、応援お願いします!

6話なんか、ミネリアが情けなく感じて、蒼姫が偉そう過ぎるって感じがするなあ。

僕が、もう少し上手く書けたらよかったんですけどね。これは、指摘されても仕方ないなあ。

次回は、ちょっとさすがに溜め書きしないと心配なんで、5日貰っていいですか?

その日までに3話書きます!

4/7の22時にに7話出します!

では、ここらで。本当にすいませんでした!

あと、ブクマ解除せずにいてくれてありがとうございましたー!

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