第4話「女神の救い」
お遊びはここまでだと、神は笑った。
「誰かぁ!助けてえー!!」
絶賛、本物の化け物だというのに、ドッキリだと勘違いして、演技中の主人公。
恥ずかしすぎる。
だが、そろそろ蒼姫も疑問に思い始める。
何を?
もちろん。
「ネタばらしは.....?」
未だに、状況を分かっていなかった。
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もう少しで家、着くんだけど...。
中学で陸上やっていたのが、こんなとこで裏目にでるなんて。
早く走り過ぎたようだ。
まあ、モンスターのロボットも、そこそこ足が速い。
あと、両手を塞いでいる学生鞄とマイバッグが重いのですが。
(これは捕まらなきゃいけない系なのかな)
何回か、ロボットが俺に追いつくことがあった。
そのたびに、俺を捕まえようとしている気がした。
襲って軽い攻撃というか、噛み噛み攻撃ではなく、手で攻撃して来るから、頑張って避けたら。
その後、ロボットの手を見ると、手のひらを閉じていたのだ。
考えが正しければ、捕まえようとしているはずだ。
そう考えた俺は、次の曲がり角を曲がり少し行ったビルの前辺りで『捕まっちゃったー!作戦』を決行することにした。
俺は息を切らしたふりをして、立ち止まる。
ワザとらしく、「ゼェゼェ...」と息を切らした声も出しとく。
振り向いて、ロボットが近づくのを待つ。
10秒ぐらいで、”ソレ”は姿を現わす。
初めて近くで見たけど、本当に生きているみたいだ。
鼻とか、毛とか、かなり凝ってある。
どうしようか。
この後の反応としては。
1.泣く。
2.逃げる。
3.攻撃。
4.気絶。
5.恐怖のあまり、頭がいかれて笑う。
5つの選択肢。
1はさすがに、学校で番組を見た生徒にバカにされるから、なし。
2は、もう疲れるから、なし。
4は、そんな技術を持っていないから、なし。
5は、引かれる。普通に引かれる。圧倒的、なし。
じゃあ...。
「これでも、俺は中学時代、卓球部だったんだぞ!」
俺は、手のひらを卓球のラケットのようにイメージする。
「泣き叫べえ!!てぃやあ!!」
まるで上下の空気を切断するように(おおげさだが)殺人スマッシャー(必殺技)を繰り出す。
見事に鼻に直撃。
赤い液体が飛び散る。
「・・・・・・・・」
数秒の静寂。
赤い液体?
血?
俺は飛び散った赤い液体、そして、手についた同じ液体を見る。
血だ。
つまり、コイツは...。
ロボットじゃない?
【「ガウオ''ォォォォォッッ!!」】
目の前の獅子が咆哮する。
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「まずい.....ッ!!」
手のひらの映像を見ながら、男は焦る。
このままでは、堕獅子は。
”連れて帰るはず”の、モモカワ ソウキを。
【”殺してしまう”・・・!!】
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え、生きてるの?
あれか?ブラックタイガーとライオンの親戚のダークネスライオンか(?)。
ずっと、ロボットだと思っていた蒼姫は、動揺していた。
けど、まだ蒼姫は、ドッキリが悪い展開になってしまったぐらいだと思っていた。
「す、すいません!TBCさ...」
謝ろうとした瞬間、またも鼻を攻撃した俺を捕まえようとしてるのか手を振りかぶり、俺に向け振り下ろす。
よく思えば、お前に謝る方が先じゃないかと少し反省する。
ビュンッと音を立て、ライオンのようなヤツの手は空振り、ビルに当たる。
ドゴンッ!と大きな音がする。
腰を曲げて、会社に謝ろうとしたのが、運良くか、ライオンのようなヤツの手に捕まらなかった。
あ、しまった!早く捕まって終わらせば、よかった。
てか、当たった音デカすぎねぇか?
ライオンの手が当たったくらいでこんな音ならないよな、普通。
なっても、せいぜい爪で引っ掻いてしまって、嫌な音とともにビルが傷つくぐらいだろう。
効果音でもつけたのか?
などなど、思いながら頭をあげる。
カツンっ。
「あ、痛っ」
上から何かが、俺の頭の上に当たる。
なんだろうと、当たった物が落ちたと思われる、地面を見る。
そこには、どこから出たのか石がたくさんあった。
否。
横のビルに使われている石材の瓦礫だった。
俺は横のビルを見る。
「・・・・・・はあ?」
いつも登下校で通るそのビルの壁は、何かに抉り取られたような穴が空いていた。
これは、このライオンのようなヤツが、やったように見せかける仕掛けが何処かにあったんじゃないか?
ドッキリは、ビルが壊れるとこまで計画されていた?
いや、そんなことあるわけない。
断言しよう。
このビルは、俺が物心ついた頃には建てられていた。
そして、最近、工事などはしておらず、仕掛けなんて用意できてるはずがない。
しかも、2年前、地震で倒壊するといけないとかで、耐震工事をした。
たかが、ライオンの一振りで簡単に壊れるはずがない。
しかも、ライオンのようなヤツの手にはしっかり。
地面に落ちていない石材の瓦礫がしっかり握られていた。
なんだ、このライオンのようなヤツは。
こんな、怪力...。
まるで。
「”化け物”かよ.....!」
俺は狼狽える。
目の前にいた”化け物”から、一歩身を引く。
先程までと、ライオンのようなヤツ。
”化け物”の雰囲気が変わっていることに気付く。
化け物は、瓦礫を地にパラパラと落とし。
次の”攻撃”に移る。
こんなの、ドッキリなんかじゃねぇ...!!
ヤバい。逃げろ!!
俺は手に持ったマイバッグを投げ捨て、振り向き走る。
ビルに手をぶつけたためか、少し動きが遅くなっていた。
ギィイ!!
その音に振り向きながら、走る。
俺を狙うつもりが外れて、俺の少し後ろの道路を引っ掻いていた。
道路は、化け物の爪痕を残していた。
逃げるのが少し遅かったら、俺があの道路のように爪痕を刻まれていたかもしれない。
道路を見た後、化け物の方を見た。
化け物は、真っ直ぐ、俺の”目”を見ていた。
「・・・・・・ッ!?」
瞬間。急に足が震えた。
おぼつかない足取り。
「う、うわっ!」
それは、数秒も経たず、何もないところで躓き転ぶ要因となった。
バタリと倒れる。
痛い。
だが、痛みなんて気にならなくなるぐらいの、”ある恐怖”が、俺を襲う。
「お、おい...嘘だろ...」
力が...入らないのだ。
なんでッ!なんでッ!なんでッ!?と、頭が混乱する。
あの目を見たからか?能力とかか?
いや、違うと断言する。
今、見たヤツの目はどこかで見た、”目”と一緒だった。
どこで見た?思い出せ。なんだ?
俺は、危険な状況なのは、承知の上で、余計なことを考える。
数秒もかからず、その思考は止まる。
その答えを導き出したのだ。
それは、今朝見た夢の続き。
男に見つかったとき。
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「ヤァ。少し調子に乗りすぎたナァ?」
男の言葉は頭に焼きつく。
まるで、呪いのようだった。
徐々に思い出す。
夢の。懐かしく忌々しいあの記憶を。
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振り向いて化け物の目を見る。
瞬間。
最後のピースが合わさるような感じがした。
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あの男は化け物と同じ目をして。
禍々しい声で。
こう、言った。
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【「【斬り殺すぞ】」】
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この目は・・・・・”【殺意】”だ!!
「・・・ッ!!!」
俺は息を飲む。
「ヴガァァァァァッ!!」
化け物は、咆哮し、近付いてくる。
俺が動く様子がないからか、ゆっくりと。
逃げろ。
そう本能が叫ぶ。
頭の中で、【『逃げろ』】という言葉が繰り返される。
でも、足はさらなる、震えを増す。
(止まれ!止まれ!止まれ!止まれ!止まれ!止まれ!止まれぇ!止まれぇ!止まれぇ!止まれよぉお!!!)
そう嘆いても、震えは止まらない。
消し去ることのできないトラウマが、俺の行動を禁じる。
立つことも、逃げることもできない。
(「どうすれば...どうすればッ!」)
呼吸が荒く激しくなる。
化け物は、近付いて来る。
早く逃げねば、俺は。
【死ぬ】。
頭の中はもう、”死の恐怖”で覆い尽くされていた。
逃げるためにも落ち着こうと、深呼吸をする。
そして、自分に言い聞かせるように。
(落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、「落ち着け!落ち着け!」)
次第に小さく呟くように言う。
「落ち着け!!」
最後にはっきりと口に出して、言い聞かせる。
足の震えは、止まってはいないが、少しは抑えることができた。
今しかない。
学生鞄を化け物に、ぶつけた後。
俺は、震える足で、化け物から”逃げた”。
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先程までとは、かなり走るペースが遅い。
今走っている道は、道が狭い。
図体のデカい化け物には、走りづらいだろう。
そのうちに、なんとか距離を取る。
だが、この先は、また広い道に出る。
それまでに、足の震えが止まらなければ、俺は化け物に追いつかれるだろう。
あの化け物はなんだろうか?
ただの人食いなのか?目的があるのか?
答えなんか、分からない。
ただ、俺を殺そうとしているのは確かだ。
ならば、今は、逃げることだけ考えよう。
「ウオ''ォォォォォ!!」
化け物の咆哮が聞こえる。
俺を探している。
こんなに、うるさいのに、周りの家は電気の一つも点いていない。
確実に、人避け系の魔法か能力が、この辺にかけられているのだろう。
人も誰一人見かけない。
周りに助けを求めても無理ということは分かった。
あと、携帯も圏外だ。
俺は、今、直進していた道の左側にある脇道に入る。
狭い脇道を通り、広い通りに出る。
左右を確認する。
化け物はいない。
だが、左を見た時、俺はあることを発見した。
それは。
ローブに付いたフードを被った人がいたのだ。
(・・・やっと人がいるとこに出れた!)と喜ぶ。
まあ、この暗さだ。
相手は俺に気付いていないだろう。
こちらの方に、走って来ている。
急ぎの用でもあるのだろうか?
(「よかった。助けてもら...」)
俺はあることに気付く。
この通りの家も、まだ6時前だというのに、電気が点いていない。
つまり、ここにも。
化け物は来る!!
(それじゃあ、あの人も俺と同じで巻き込まれたのか!?)
このままでは、ヤバい。
あの人までも、巻き込んでしまう。
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【ジジッ】と音を立て、夢の女の子が【”傷付く姿”】が、俺の頭でフラッシュバックする。
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それだけは、絶対、駄目だ...!!
もう、俺のせいで誰かが傷付くなんてこと、
「させてたまるかよ!!!」
俺は振り返り、脇道を戻った。
脇道を出て、右を向くと、奥に化け物がいるのを確認する。
俺は、さっきの人のところへ、化け物が行かないよう、
「こっちだ!バケモン!!!」
と、叫んでいた。
気が付けば、足の震えは止まっていた。
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数分後。
時刻は、午後5時37分。
俺は狭い道を、複雑に曲がりまくった。
それによって、化け物を巻いたようだ。
「ハァ...ハァ...ハァ」
俺は右手で汗を拭う。
巻いたはいいものの、ここがイマイチどこか、分からない。
圏外のため、携帯のマップ機能が使えない。
俺は、とりあえず、見覚えのある道や店を探すため歩き出す。
無闇に動くのもどうかと思うが、安全な場所に早く行きたいと思う気持ちが強いのだ。
来たことのない脇道を通る。
家に電気が点いていないため、こういう脇道は、特にホラー的な怖さを感じる。
そんな、呑気に考えれるのは、死ぬかもしれない状況から、一時的に、抜け出したためだろう。
奥から、電灯の光を見つける。
広い道に出れるかなと、思いながら、歩いていると。
「ウオ''ォォォォォ!!」
(・・・・・・ッ!?)
声にならない悲鳴が出た。
あの化け物の声だ。
しかも、この先に。
巻いたと思っていたが、かなり近くにいたようだ。
早く離れた方がいいな。
と、振り向こうとしたが、
「も–––さ−が、–らいな––す–」
日本語が聞こえた。
その声に振り向こうとした体は止まる。
何を言っているかは、少ししか聞き取れない。
俺は脇道から、こっそり頭を出す。
そこには、あの化け物と、先程、会ったフードの人がいた。
フードを深く被っているため、顔がよく見えない。
お互い向かい合う。
化け物は、フードさんに襲いかかりそうな勢いだ。
一方、フードさんは、左の手のひらを広げ、化け物に向ける。多分、止まれって感じの意味だろうと思う。
(「おい、おい...どうすりゃいいんだ」)
もしかしたら、あの人も、化け物のことをドッキリのロボットだとか思っているのだろうか?
そしたら、やばいぞ。
最初は、捕まえようとしていたから、避けれたけど、今は、殺そうとしている。
俺がさっき、攻撃が食らわなかったのは運が良かったからだ。
(あの人...このままじゃ.....死んじまう)
俺が、逃げろと言うべきか?
だが、よく見たらフードさんは、背中に大きいリュックを担いでいる。
あれじゃ、逃げられないだろう。
リュックを下ろしたとしても、その下ろしている最中にやられてしまうだろう。
(ならば...見捨てるのか?)
無理だと。
救えないと。
(諦めるのか?)
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【ジジッ】と音を立て、夢の女の子が【”傷付く姿”】が、またも脳裏でフラッシュバックする。
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(「傷付けるのか!目の前のヤツを!!!」)
だけど。
どうやって、助ける?
ここから、飛び出し、囮になるのか?
体力もそろそろ限界だ。
走って逃げきるなんてことはできないだろう。
そんなことをすれば、俺は、間違いなくどこかでバテて。
【殺される】。
(「く、くそっ!」)
先程よりはマシだが、また、足が震えてくる。
やはり、人間、死ぬのは怖い。
けど、逃げるわけにはいかない。
何故なら、それが俺の罪の代償であり、呪いなのだから。
さあ、一歩踏み出せ。
早く!
早く!!
右足が一歩踏み出そうと浮かす。
そうこうしているうちに、化け物は、脇道の前まで来る。
つまりは、目の前。
「・・・・・・ッ!!」
それを見た俺は、右足を一歩踏み出すどころか、退かせてしまう。
(「くそ!くそ!くそ!くそ!くそぉ!!」)
ビビってしまった。
恐れてしまった。
化け物は俺に、気が付いていない。
また、化け物はフードの人の方へ進もうとする。
俺は、目を瞑った。
✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎
俺はあの日を思い出す。
先程、男の言葉の続きを思い出した時と、同時にもう一つ思い出したのだ。
「ヤァ。少し調子に乗りすぎたナァ?」
男の呪うような言葉。
それを聞いた俺は、足が震えた。
立っていられなかった。
盛大に尻餅をつく。
今まで知らなかった。
恐怖。それも【死】の。
それらが、幼い自分を襲った。
涙が出た。
止まらない。
体中が恐怖で震えた。
止まらない。
俺はずっと怖がって、逃げることも。
立ち向かうことも。
助けを乞うことすら、出来なかった。
そんな弱い自分を、女の子は庇った。
それが一番、辛かった。
苦しくなった。
その姿を見てようやく。
【”逃げ出したのだ”】
その女の子を置いて。
ただただ、臆病な。
ただただ、卑怯な。
ただただ、最低な。
ただただ、”無力”な【クズ】。
それが、”【俺】”だ。
✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎
俺の表情は、暗くなる。
自分がどれだけ、クズな人間なのか。
自分がどれだけ、憎まれるべき人間なのか。
自分がどれだけ、罪を持った人間なのか。
自分がどれだけ、罰を受けるべき人間なのか。
自分がどれだけ、呪われるべき人間なのか。
分かった。
これで、もう。
”【死ねる】”。
”覚悟”は決まった。
”後悔”などない。
後は、一歩踏み出す”勇気”だ。
俺は、夢幻の神に願う。
「神様...お願いです」
うわ言のように呟く。
「目の前の人を助けるために」
化け物は進む。
「誰かを助けるためなら、こんな命いらないですから」
あたりの闇が、蒼姫を囲む。
「”あの子”に、許してもらいたくてやる訳じゃないんだ」
冷たい風が蒼姫の身体を撫でる。
「神様...」
震える足を手で無理やり抑えながら。
「俺に」
蒼姫の首とシャツの間から、赤く、紅く、朱く、緋く、赫い植物の根のような線が5つに枝分かれし、右の頬に伝っていく。
「勇気を・・・」
5つの枝分かれした線は、まるで手のようなカタチを成し、
「勇気を、下さい!!」
そっと、右の頬を撫でる。
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思い出すのは、ある夏のある日。
”あの子”と山に冒険に行った日。
木の上で猫が降りれずに、困っていたんだ。
「そうきくん!猫が木の上に!」
やはり、顔は見えない。
いや、思い出せてない。
「わっ!ホントだ!?」
「猫ちゃん、危ないよ〜!!」
女の子は、木の上の猫に呼びかける。
「もしかしたら、降りれないんじゃないかな」
「そうかも!そうきくん、助けてあげて!!」
「え!?怖いよ、あんな高いとこ」
「頑張って!”勇気”出して!!」
「んん〜〜!!」
女の子が僕の肩を掴み身体を揺らす。
「頑張って!そうきくん!お願い!!」
「・・・わ、わかったよ。頑張る」
持っていた虫あみに虫かごを地面に置いて、気をよじ登る。
登る際は、下は見ない。
きっと怖くなるから。
猫がいる枝まで登って来る。
こんなところに、自分よりも小さい猫が登るなんて、すごい勇気がないと出来ない行動だと思う。
僕は猫を捕まえ、女の子が虫あみを僕がいるところまで伸ばしてくる。
僕は、あみに猫を入れる。
おっとっと!と、女の子がよろけながら、猫を下に降ろす。
「猫、ちゃんと無事に降ろせたぁー?」
「うん!大丈夫だよ!そうきくんも早く降りてきてよ!!」
「う、うん...」
なかなか降りない。どこか、戸惑っているような表情。
それに、女の子は気付く。
「あれ?もしかして、そうきくん、降りれないの?」
「うっ!.....うん」
情けなくそう答える。
「あははっ。そうきくん!頑張って降りてきてねー!」
「そ、そんなあ!?」
そんな僕を、女の子は笑う。
「そうきくん!」
くるりと踵を翻し、僕の名を呼ぶ。
「なにい?」
降りようと頑張ろうとする僕。
「勇気出して頑張ってくれて、ありがとう!」
女の子は、僕の顔を見て頰をほんのり朱くして笑う。
(「あ、そっか...臆病だった俺が勇気を出すときは、君のために。君に頼まれたときだけ。勇気がなぜか、出たんだったよな...」)
「う...うん!!」
僕は、
俺は、その”笑顔”を見るために、”勇気”を出したんだ。
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俺は脇道を飛び出す。
(後悔・・・一つあったな)
化け物の横腹に向け、一直線に駆ける。
「うおぉぉぉぉぉぉおおッ!!」
思いっきりぶつかる。
俺の狙い通り、化け物は、体勢を崩し倒れ、壁際まで押す。
(君に、謝りたかったな......)
それが俺の、たった一つの後悔。
「・・・・・・・え!?」
フードの人が、俺の登場に驚く。
化け物は、予想外のことが起きたためか、まだ動かない。
今のうちだ。
「今のうちに、逃げて!早く!!」
フードの人を見ながら、そう叫ぶ。
「いや、その・・・・・」
フードの人は、戸惑いながら、弱々しくそう言う。
その人は、その場から逃げず、動かない。
俺と同じで、恐怖のあまり、足が動かないとかかもしれない。
けど、見たところ、なにも問題なく感じる。
「おい!どうしたんだよ!早く逃げろよ!!」
動かない。
なんでだよ!?
「グゥア...」
「・・・・・・ッ!?」
化け物が動き出した。
「くそっ!」
俺はできるだけ、時間を稼ぐため化け物の身体を抑え込む。
効果はあまりないだろうが、いちようだ。
「早く逃げてくれ!俺のことが心配ってことなら、気にしなくていいから!逃げ......うわッ!!?」
化け物が、上に乗っていた俺を、向かい合ってる店の壁にまで投げ飛ばす。
「グハァッ!!」
背中から当たる。
体中に痛みが走る。
口の中に血の味を感じる。
いてぇえ。
「だ、大丈夫ですか!?」
フードの人から、俺の身を案じる言葉が出る。
俺の身など関係なく、化け物は体勢を立て直す。
(間に...合わなかったのかよ...!)
そして、化け物は俺を無視して、フードを被った人の方を狙っているようだ。
(「ちくしょうッ!このままじゃあの人が、やられちまう!!」)
俺は、痛む身体に鞭を打ち、立ち上がってフードの人の前まで駆ける。
バッと両腕を広げ、フードの人を庇うように立つ。
化け物の動きが一瞬、止まる。
「な、何してるんですか!!」
フードの人が、またも驚く。
「ハァっ、ハァっ、ハァっ」
立っていられるのがやっとの俺。
睨むように化け物を見る。
「グゥルルルルル」
化け物が唸る。
そして、ガバッと両手を挙げ襲いかかる。
(「この人だけでも...!!」)
結局、やられてしまうのだから、意味のないことかもしれないが、それでも、俺は退かない。
(「ちゃんと、立ち向かうんだ!!」)
目の前で、化け物が口を開く。
死んだ...!と思った。
しかし!!
【「ボウワァ!!」】
声が闇に響いた瞬間、炎の球のようなものが化け物が開けた口の中に入る。
化け物は、俺らの後ろの方に転がる。
丸焦げだ。
しばらくすると、灰になって消えた。
(え.........?)
俺は事態を上手く飲み込めていない。
え、どうゆうこと?
俺は、炎の球を出したと思われる人物を見る。
フードを被った人だ。
「え、えっとぉ.....今のって、なんです?」
今の状況を戸惑いながら、素直な疑問を問いかける。
すると、フードを被った人が答える。
「魔法ですよ」
その時。
少し強い風が吹いた。
その人のフードがめくれる。
「ふぇ?」
情けない声が俺の口から漏れる。
その人は。
「あ、どうも!こ、こ、こんばんわ!」
月に照らされた白髪がよく似合う。
「は、はい。こんばんわ...」
美少女でした。
(どうゆう展開だよ...)
俺は、もう何が何だかよく分かんねえ。
先程の衝撃による、怪我。
死の恐怖という、緊迫感。
そして、ずーっと走っていたため、疲れ。
それらが、今。
気を抜いた瞬間。
「あ.....」
ばたり、と倒れ、
俺は、意識を失った。
昨日投稿できず、すいません!やはり、1日じゃ無理でした!
今回、その分長く書きました。それで、勘弁を...!
どうも、全国の山口さん。山口 乃ガマです。
やっとですよ!やっと、始まったって感じです。
途中、シリアスっぽくなりましたね。
最初はこの作品は、シリアスなしでやろうと思っていました。
けど、こればっかりはなっちゃいますね。
蒼姫の後悔の想いがどれほど大きいか伝わったならして良かったかなと思います。
次回から、フードを被っていた子も物語のメインキャラとして頑張っていきますよ!
次の投稿は、3/14の22時です。




