表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダゲレオタイプ、あるブルジョワジー夫妻の奇妙な真実  作者: RiePnyoNaro


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/6

ダゲレオタイプ、あるブルジョワジー夫妻の奇妙な真実 その5~占い師の正体が明らかになる~

フランツが目を丸くして


「どういうことだ?

占い師がエスターさんを恨んでいたというのか?

占い師は本物の『魔法使い』で超自然的能力を使って大怪我させたというのか!?

目撃者の証言は


『堤防の上にいた上流階級の女がきゃっ!と叫び声をあげ階段から転げ落ちた。

階段を降りようとしていた女がドレスの膨らみで階段が見えず、足を踏み外したんじゃないか?』



『パン!という銃声が聞こえたと思ったら、ご婦人が胸を押さえて階段を転がり落ちてきた』


だったよな。

占い師が魔法を使ってエスターさんの胸を撃ち、驚いたエスターさんが叫び声をあげて転落したのかな?」


と呟き、顎に指を添えて考え込んだ。


靴音を響かせ部屋を歩き回っていたレオポルトが立ち止まり


「いや、超能力と言っても魔法のことじゃない。

君もあの写真を見ただろう?

あれは・・・・・」


さえぎるようにアロイスが怒った声で


「その占い師を捕まえれば済む話だっ!

バウアー君、あいつを今すぐ見つけ出してくれっ!!

許せないっ!

妻がっ!エスターがっ!

ああっっ・・・・・!!

彼女を失うなんて・・・・!

考えたくないっっ!!」


最後は泣き出しそうな声で呟き、背を丸め、両手で顔を覆った。


沈痛な沈黙が立ち込めた。


キィッ・・・・・バタンッ・・


ドアが開いて閉じる音がして、ミシッミシッ・・・と誰かが歩いてくる気配があった。


部屋の入口に人影がさし、全員がそちらを向いた。


そこには二十代後半の美しい女性が立っていた。


クリノリンで丸く広がったスカートの、肘から袖口に向かって朝顔のように広がるパゴダ・スリーブの、白地に青のストライプのタフタのデイドレスと、レースで顔を隠すように飾られた帽子(ボンネット)を身に着けた、上品な装いの女性だった。


その目元の(かげ)の濃い、長い睫毛(まつげ)の、唇の紅い美女がためらいがちに口を開いた。


「あなた・・・・その悲しみは本当なの?」


アロイスが顔を覆っていた両手を離し、ハッと顔を上げ、声の方向を見た。


そして次の瞬間、驚きと喜びが全身を駆け巡り雷に打たれたようにアロイスが身を震わせた。


歓喜で顔を輝かせ、女性に素早く近づき


「あぁっ!!エスターっっ!!お前っっ!!

無事だったんだねっ!!

よかったっ!!」


そう叫ぶとギュッと胸に抱きしめた。


エスターもアロイスの背中に手を回し、ギュッと抱きしめ返し


「ペーターが助けてくれたの!

彼は転落事故を予想して、階段から落ちた私を受け止めてくれたのよっ!

だから怪我をせずに済んだのっ!

あなたには重傷だと思わせた方がいいと彼が言ったのよ!」


アロイスが腕の力を緩めてエスターを胸から開放し、顔をジッと見つめ


「どいういうことだ?

ペーターとはあの占い師のことか?

彼が予想した?

ということは、まさか本物の魔法使いなのか?

そんな非常識なっ!

そんな非科学的なことが現代にあるはずがないっ!」


フランツがハッ!と何か思いついた顔で口を挟んだ。


「じゃ、そのペーターが(たくら)んだんだ!犯人だ!

人を雇って堤防に配置して、エスターさんを突き落とさせたんだっ!

そして恩を着せるためにエスターさんを助けた。

信用させ大金をだまし取ろうとする悪党だ!

だって、本当に転落事故を予想できるなら、事故が起きる前にエスターさんに注意を促して防ぐはずだろ?」


エスターが焦ったような必死の形相で首を横に振り


「違うわ!

彼は、彼は私たちの息子よっ!」


その場にいた全員がその言葉の意味を理解できないように呆気(あっけ)にとられた。


アロイスは妻の正気を疑い、落ち着かせようとして、肩を掴み、優しく撫でながら


「大丈夫。

心配しなくても君を一生守るよ。

事故で気が動転してるんだね?」


慰めるように妻を見つめ微笑んだ。


エスターが困惑したように眉を寄せ、もっと必死になって上ずった声で


「違うわっ!

おかしくなってなんかないのっ!

彼はっ!ペーターは私たちの息子で、未来からやってきたのよっ!」


アロイスはもっと不安そうに無理やり笑顔を作り


「落ち着いて。ゆっくり休めばきっとよくなるから。今は何も考えなくていい。」


エスターは泣き出しそうな表情で口をつぐんだ。


フランツは戸惑ってレオポルトに助けを求める視線を送ると、レオポルトがさっきの写真をアロイスとエスターに差し出した。


「夫人の話は本当です。

ペーターのフロックコートの中にこの写真がありました。

ここに写っている男女はあなたたちですね?

そしてこの幼児と青年はペーターさんですね?」


エスターが写真を受け取ってまじまじと見つめうなずきながら


「そうっ!

ペーターはこの青年の顔でした!

ねぇ!あなたっ!見てっ!!

この青年はあなたにそっくりよっ!」


アロイスが写真を受け取り、じっくりと見つめ、あっ!と口を開き驚愕の表情を浮かべ


「本当だっ!

この青年は今の私にそっくりだ!

そしてこの写真の男女は、私と君の、年をとった姿のようだっ!

なんてこったっ!」


叫ぶと、息をのんで口を手で覆った。


フランツが警戒した険しい表情で


「まてよっ!

信じるのはまだ早いっ!

似てる別人を用意して写真を撮っただけかもしれないだろっ!」

(その6へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ