表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

第2話 偶然の出会い

夜の澄んだ森を1人で歩くのは、気持ちがいい。


風でかすかに揺らぐ植物たち。

カサカサと音を立てる小動物。


彼らが放つどの音も心地の良いものであった。

流石に植物や動物たちは俺の事情など知らないし、コソコソと噂を立てることもしない。


それがなによりも気楽で快適だった。


一応、魔獣が出ると言われているが、これまで見たことはない。

もう少し深く入った場所には出るのかもしれないが、お気に入り場所あたりで出ることはまあないだろう。






目的地がうっすら見えてきたところで、足が止まる。


なにか、嫌な気配がした。


動物ではない、別のなにかがそこにはいる、と勘が働く。


魔獣か、はたまた人か。どちらがいても厄介で嫌な場面だなと思いつつ、そっと歩みを進める。


近づくにつれ、ぼやけていた視界がクリアになり、その姿が鮮明となった。




———女、か?




そこにいたのは、意外にも自分と同じ年くらいの少女だった。


芝に座り込み、彼女の周りを浮かぶ鳥と戯れている。

優しい目で鳥を見つめ、時折ふっと笑っていて、その笑顔は少女らしい無邪気さを放っていた。


腰まである銀髪は月明かりでキラキラと輝いている。

瞳は濃い紫色だろうか。

深い色のはずなのに、どこか淡い雰囲気を纏っていた。

整った顔立ちに加え、綺麗な髪と瞳が合わさった彼女に、思わず見惚れてしまう。






「ワオーーーーーーーーン」






と、突然聞き馴染みのない鳴き声が耳を襲った。

動物にしてはドスの聞いた声である。

けたたましく長く続いた鳴き声は純粋な動物ではないのだろう。


———とすれば……魔獣、か。


鳴き声的に魔犬と呼ばれる類のものだろう。

瞬時に体を奮い立たせ、戦闘体制に入る。


持ってきていた剣を抜き、鳴き声のした方向へ、つまりは少女がいた場所へと飛び出す。



「おいっっっ! あぶねーだろ!! さっさと逃げろ!!!!」



ひとまず彼女を庇うように位置取る。


彼女は逃げ出すわけでもなく、床に座り込んだままであった。

恐怖で足が動かないのか、その場から動く気配はない。


想像通り、視界に映った敵は、魔犬であった。

しかし、予想に反して一匹ではなく、五、六匹はいるように思える。

一匹だと想定していた自分の甘さを憎み、思考を再度巡らせた。


今自分の後ろには守らなければならない人物がいる。


彼女を守ることを優先しつつ、隙があったら先に逃し、その後で対峙するのが最も現実的に思えた。


さすがに、複数の相手を捌きつつ、彼女を守り切る自信はない。


「はっっっっ!!」


目の前にいる相手に、思いっきり剣を振るう。一撃で仕留め、隙を作ろうと試みたが、俺のおろした剣は鋭い歯で噛みつかれ、勢いを殺されてしまった。


「くそっ。」


思ったより雑魚じゃない。初めての守りながらの戦闘に困惑して、思考がうまく回らない。弱い奴が後ろにいるだけで、こんなにも動きづらくなるのか、と顔を歪める。


とにかくもう一発打ち込むしかないと思い、足を1歩踏み出す。


と、その瞬間。





「待って!!!!」




後ろにいたはずの少女が目の前に立ち塞がり、両手を広げ魔犬を庇うような仕草を見せる。



「……は??」



何が何だかわからない俺は、ギリギリのところで勢いを殺し、攻撃を踏みとどまった。



「おまっ、あぶねーだろばか!!! 急に出て来んじゃねーよ!!!!」


「この子達は私のお友達なんです! だから傷つけないでください!!」


「…………はぁ??」


彼女の言っている意味がわからず、気の抜けた声が出る。


魔獣が友達?

何言ってんだこいつ。

恐怖で頭いかれたんか?


と、気を取られているうちに、後方にいた魔犬が勢いよくこちらへ走ってきていた。

やば、っと剣を構えようとしたその時。




「みんなも止まって!!!」




少女の声が響いた。

顔と体に似合わない、圧のある声に驚く。

しかし、さらに驚くべき現象が目の前には広がっていた。


先程まで敵意しかなかった魔獣たちの動きがピタッと止まったのだ。

指一本すら動かそうとしないその光景は異様な雰囲気を放っている。


おそらくは、彼女の「止まれ」というセリフの影響だろう。

そうでないと説明がつかないほどの気持ち悪い静寂が、目の前にあった。



「ふふっ、みんな良い子。ちゃんと落ち着けてえらいよ」



当の彼女はあっけらかんとした様子で魔犬に近づく。


「おまっ!あんま近づくとあぶねーぞ!!」


「へーきです、さっきも言ったでしょう? この子達は私の友達なんです。」


興奮が冷めない俺を置き去りのまま、彼女は魔犬に近づき、その体に手を触れる。


一通り撫で回した後は、魔犬の首元に顔を埋め、もふもふの毛に溺れているようだ。

魔犬の方も撫でられて表情が和らいでいる。


危険な魔犬のはずなのに、まるで普通の犬のようだと錯覚してしまうほどに、和やかな空間が広がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ